Eternal Providence ~死と眠りの神々の異世界珍道中~ 作:とんこつラーメン
うぅ…あんな思いはもうこりごりだよぉ~(泣)
あんなにも不安になったのは、前使っていたノートパソコンがぶっ壊れた時以来でした…。
ラウラのISからVTシステムを排除した次の日。
カーテンから差し込む朝日に瞼を刺激されてからヒュプノスは目を覚ました。
「んん~…! 良く寝たぁ~…」
眠りを司る神と言う事もあってか、ヒュプノスは睡眠には少しうるさい。
ちゃんと睡眠に関するメカニズムを理解した上で、常に最適な眠りをして自分の体の調子を最上な状態で維持しようと心掛けていた。
「昨夜は少し残業しちゃったけど、それでもきっちり7時間は眠れたわね。これなら今日も頑張れそうだわ」
ベットから降りて、思い切り背中を伸ばす。
その後に首や肩などを解す意味で軽くストレッチ。
そうしている間にタナトスも瞼を擦りながら、ゆっくりと目を覚ました。
「ふわぁ~…おはよ~…」
「おはよう、タナトス。顔でも洗ってスッキリしたら?」
「んー…そうするー…」
妹に言われるがまま、洗面台まで歩いて行き、そこでバシャバシャと顔を洗う事で、ようやくいつものタナトスになった。
「はぁ~…ヒュプノス~」
「どうしたのよ? 朝から景気の悪そうな声出して」
「夢の中でハーデス様に叱られた~」
「はぁ?」
上司とも言うべきハーデスに叱られるのは、まぁいい。
でも、どうして夢の中で?
「多分だけど、ヒュプノスが普段から可愛がってる『夢の四神』の力を借りたんじゃないかな~」
「あぁ…あの子達ね」
タナトスの言う『夢の四神』とは、ヒュプノス直属の部下にして、夢を司る四柱の神々の事を指す。
癖の多い神々だが、ヒュプノスの言うことには忠実で、忠誠心が強すぎるが故にヤンデレっぽい発言をする事もしばしば。
「で、なんて言われたの?」
「『仕事を頑張るのは結構だが、専用機がヤルダバオトとビレフォールなのはやり過ぎだ』って」
「そりゃそうでしょ。私でも過剰戦力だって思ってるし」
「ハーデス様にも同じことを言われた。だから、あの二機は問答無用で回収されちゃった」
「別にいいんじゃない? そんなに困ることは無いでしょ」
「でも、その代わりになる機体を渡された」
「どんな機体?」
「これ」
朝の牛乳を飲んでいるヒュプノスに、タナトスがあるペンダントを投げ渡した。
飲むのを一旦止めながら器用にそれを受け取る。
「これって…オーブ、プラント、大西洋連邦が組織した世界平和監視機構『コンパス』のエンブレムを模したペンダント? ってことは、まさか…」
「そ。今日からヒュプノスの専用機は、あの『ライジングフリーダムガンダム』になります。これぐらいなら丁度いいだろうって」
「…もしかして、近い将来に核兵器で死にますよって言う暗示?」
「んなわけないでしょ」
「だと良いけど。じゃあ、タナトスの専用機は…」
「勿論、『イモータルジャスティスガンダム』だよ」
「『あの時はジャスティスだから負けたんだー』なんて言い訳はしないようにね」
「しないよー…多分」
「そこはせめて確約しなさいよ」
紛れもない最新鋭機ではあるが、前の修羅神に比べれば遥かに落ち着いた機体ではある。
少なくとも、理不尽なまでなチートではないから人前で普通に展開しても問題は無い。
「しかもハーデス様さー…オレ達が専用機を持っている事に対する設定も考えてくれたみたいなんだよねー」
「嘘でしょ?」
「ほんとー。ほら、ポセイドンが現世に復活する際に、よくギリシャの海商王の当主の体を借りてるのは知ってるでしょ?」
「あー…確か『ソロ家』だったっけ?」
「ポセイドンに力を借りて、表向きにはオレ達は『ソロ財閥』のテストパイロットって事になってるみたい」
「私達…ちょっと行き当たりばったり過ぎたわね。反省だわ。アテナならまだしも、あのポセイドンに借りを作っちゃうだなんて」
「地上、海界、冥界の休戦協定が無かったら大変なことになってたねー」
「全くよ。今度からは気を付けましょ」
「さんせー。で、試運転とかしてみるー?」
「うーん…もしアリーナが空いてたらね」
この時のヒュプノスの発言がフラグになったのか、この日は見事にアリーナは満員御礼で空いていなかった。
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専用機を変更してから五日後。
土曜日の放課後になってから、ようやくアリーナを使う事が出来た。
その場には当然のようにセシリアと鈴も付き添っている。
「えぇっ!? あんたら、専用機を持ってたのッ!?」
「始めて聞かされましたわ!」
「初めて言ったしねー」
それから二人は、ハーデスとポセイドンが用意をした設定を語る。
主にヒュプノスが説明をしたお蔭で、セシリアと鈴はすぐに納得してくれた。
「成る程…。確かに、あのギリシャ一の大富豪ならば、ISを開発してテストパイロットを雇っていても全く不思議じゃありませんわね…」
「その『ジュリアン・ソロ』って奴、そんなに凄いの?」
「凄いなんて物じゃありませんわ。若干16歳でソロ家の当主となり、その類稀な手腕と才能で瞬く間に『海商王ソロ』の名を世界中に広めてみせたんですから」
「じゅ…十六って…あたし達と同年代じゃない! 世の中には、とんでもないことをしれっとする奴がいるのねー…」
取り敢えずはなんとかなった。
これで今後、専用機の事を尋ねられてもなんとかなるし、専用機を展開しても問題は無くなる。
因みに、この事はちゃんと学園側にも知られているようで、担任である千冬や真耶もいつの間にか把握していた。
この辺の事は『神だから』の一言で片付くので気にしてはいけない。
「それで、アンタ等の専用機ってどんなのなの? 見せてくれるんでしょ?」
「まぁね。見せるってよりは、やっと本格的に動かせるから試運転のつもりでいるんだけど」
「今までは、やりたくても出来ませんでしたものね。中々にアリーナが使えませんでしたから」
「そゆこと。んじゃ、いっちょやりますかー」
セシリア達が少し離れたのを見計らって、双子は精神を集中させて専用機を展開する。
勿論、脳内でイメージするのは『蒼い自由』と『紅い正義』だ。
「お。キタキター」
「ふーん…こんな感じなのねー」
全身が青白い光に覆われ、足から順に見覚えのある装甲で覆われていく。
白と青のコントラスト。
腰にあるレールガンに、背部ウィング内にあるビーム砲。
そして、高エネルギービームライフルに専用シールド。
「展開完了っと。初めての展開にしてはまずまずじゃないかしら」
「いいねー。なんかちょっと視点が高くなってるー。おもしろーい」
見た目は間違いなく、皆がよく知っている『フリーダム』と『ジャスティス』の姿だが、そこから双子神の声が出ているから違和感が半端じゃない。
「蒼い機体と…紅い機体…」
「全身装甲のISなのね…。なんか色合い的に、あたし達のISとお揃いね」
「「言われてみれば確かに!」」
こうして実際に展開をしてから気が付いた。
確かに、ライジングフリーダムとブルー・ティアーズ、イモータルジャスティスと甲龍は色合いが非常に似ていた。
「名前はなんて言うんですの?」
「私のが『ライジングフリーダム』で…」
「オレのが『イモータルジャスティス』だよー」
「「自由と正義…」」
普通の発想では思いつかないような機体名。
自由も正義もカッコいい名前の代名詞ではあるが、だからと言って、それを堂々とつけるのは中々に度胸がいる。
「因みに、フリーダムが射撃重視で、ジャスティスが格闘戦重視の機体なんだよー」
「それって増々、あたし達と同じじゃない。甲龍は中近距離が得意だし…」
「私のティアーズは遠距離が主戦場ですわ。ここまで同じだと、なんだか偶然とは思えませんわね」
もしかして、ハーデスは全てを分かった上でこの二機をチョイスしたのかもしれない。
そう思うと、やっぱりハーデス様には敵わないなーと実感するのであった。
「タナトス。そっちの武装は大丈夫?」
「ちょっと待ってねー。えーっとー…MA-M727A3高エネルギービームライフル…OK。MMI-GAU27Q近接防御連装機関砲ヴァンダーファルケ。MMI-S2M5/Xカルキトラビーム重斬脚×2。MA-F2D2ヴィーゼルナーゲルビームブーメラン×2。Mk-1高エネルギービーム砲×2。RQM75フラッシュエッジ4シールドブーメラン。全部纏めてオールOK! そっちは?」
本格的にISのチェックをするなんて事はこれが初めてなのだが、タナトスとヒュプノスは慣れた手つきで淡々と済ませていく。
これも偏に、今までに何度も似たような事をし続けてきた結果だろう。
「今やってるわよ。えっと…MA-M727A3高エネルギービームライフル。MMI-M2020ヴァイパー3レールガン×2。MA-FZ51ヴェルシーナ・ビームサーベル×2。MA-BBF75超高インパルス砲シュトゥルムスヴァーハー×2。MMI-GAU30近接防御機関砲シュラーク・ファングBlock7。RQM73フラッシュエッジG-3シールドブーメラン。MMI-X525インフィクタスビーム・シールド。こっちも全部大丈夫よ」
武装の確認は大事。
これ絶対。
面倒くさいかもしれないが、これをちゃんとする事で万が一のトラブルを防ぐことが出来る。
「それなら、試運転も兼ねてあたし達と模擬戦でもしましょうよ。同じ色同士でさ」
「いいですわね鈴さん! ヒュプノスさん! やりましょう!」
「模擬戦ねー…別にいいけど。どうせ、いつからしなくちゃいけないんだし」
「わーい! 初陣が代表候補生とだー!」
「言っておくけど、負けないからね!」
これもまた若さ故の特権なのか。
やる気満々な二人の少女を前にし、双子は苦笑いを浮かべながらも宙に浮いてから準備を始めるのであった。
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双子が専用機を展開する様子を、陰から見ていた一つの影があった。
それは一組の転入生にして、ドイツの代表候補生のラウラ・ボーデヴィッヒ。
転入初日から双子の事を注視していた少女だった。
「あれが…奴等の専用機か」
ラウラは現役の軍人だ。
だからこそ一発で分かる。
あの二体のISは相当な高性能機であると。
あれ程までの機体の性能を発揮するには、操縦者にもかなりの実力が求められる。
「矢張り…二人揃ってタダ者ではなかったか」
そう呟いてから、ラウラは静かにアリーナを後にした。