Eternal Providence ~死と眠りの神々の異世界珍道中~ 作:とんこつラーメン
受験の日から時は流れ、遂にやってきたIS学園の新学期。
新一年生は入学式の後に各々に割り当てられた教室に入り、担任が来るのを待っていた。
(いやー…遂にオレたちも待望の高校デビューだねー! どうするどうする? 思い切って髪でも染めちゃう? それとも耳に穴でも開けてピアスでもする? もしくは肌を焼いてガングロでもやる~?)
(どれもやらんわ!! 何が悲しくて自分の肌を焼かないといけないのよ!)
(え~? でも、この時代から一昔前ぐらいの女子高生は皆揃って肌を黒くしてたよ~?)
(だからなんだってのよ! そんな事をしても何のメリットも無いでしょうが! それに、髪なんて染めなくても、もう十分に派手な髪色をしてるじゃないのよ! お互いに!)
(それには同感。ヒュプノスの金髪は割とフツーだけど、オレの銀髪は中々にお目に掛かれないよね~。天然以外でやってる奴がいるとしたら、そいつは間違いなく電波ちゃんか中二病患者のどっちかだ。オレの場合はどっちになるのかな~?)
(両方じゃない?)
もうなんとなく察しているだろうが、静かな教室の中でタナトスとヒュプノスは念話を使って会話をしていた。
神なのでこれぐらいは朝飯前なのだ。
因みに、タナトスとヒュプノスはお互いに一番後ろの隣り合った席に座っていて、タナトスはさっきからニッコニコでウッキウキな笑顔を振りまいていて、逆にヒュプノスは早くも疲れたかのように頬杖を突きながら溜息を吐いていた。
(それにしても、仕事とはいえまさか華の女子高生になれるとはね~。中々に貴重な経験だニャ~)
(私は初めてじゃないけど)
(え? そうだったっけ?)
(ほら…サハラ砂漠の地下に作られてた超巨大コンピューターの時の…)
(あー…あれね。22世紀末に行われた地球規模のプロジェクトの)
(そ。あの時に私、女子高生から就職、結婚までした挙句、子供から孫まで作っての大往生してるから)
(そーいや、そんな事もあったね~。あれでしょ? オレが全力でヒュプノスの脱出を阻止してたやつ)
(そーよ。んで、今度は私がアンタの事を閉じ込めてあげた奴)
(1万1723年と飛んで12秒は中々に長かったな~。幾らオレが神だからっつってもね~。暇過ぎて自己崩壊しかけてたし)
(私を面白半分で閉じ込めた罰よ)
(だって~。右往左往してるヒュプノスがマジで可愛かったんだも~ん!)
(そんな理由で私に人生経験させるなッつーの)
(でも、楽しかったんでしょ?)
(うっさい。アンタはいい加減に黙れ。ほら、先生来たわよ)
金銀双子姉妹が脳内で騒いでいると、教室のドアが開いて一人の女性が入ってくる。
緑の髪に眼鏡で巨乳と言う個性爆発な容姿をしている女教師だった。
「はーい。全員ちゃんと揃ってますねー。それじゃあ、今からHRを始めますよー」
眩しい笑顔で全員の顔を見渡す女教師。
殆どが反応していなかったが、タナトスとヒュプノスだけは違った。
(うーわー…ヒュプノス見てよあれー。すっごい巨乳…いや、爆乳なんですけどー。豊胸…とかはしてないっポイね。あれ天然だわ)
(嘘でしょ? 条件さえ合えば有り得るとは聞いてたけど…本当に存在したのね…)
(顔も中々に可愛いし、こりゃ世の男共を釣り放題だー)
入学早々に副担任を変な目で見る死を司る神。
「それでは皆さん。これから一年間よろしくお願いしますねー」
「はーい! よろしくお願いしまーす!」
「「「「…………」」」」
溢れ出るコミュ力で元気よく返事をしたのはタナトスだけで、その他の生徒達はヒュプノスも含めて誰も何も言わなかった。
(ちょっとヒュプノスー。無視はちょっち可哀想じゃないのかなー?)
(言いたい事は分かるけど、こーゆー時は空気を読んで周囲に合わせるのがベターでしょうが。なんでアンタだけ返事をしてんのよ。思いっ切り目立ってんじゃないのよ)
(別にいいじゃーん。この髪色と額の五芒星&六芒星がある時点で超目立ってるし)
(それはまぁ…そうだけど…)
因みに、彼女達の額にある五芒星と六芒星は、各々に自身を現す印のような物であり、有機物や無機物に関係なく、二柱が憑依した存在には自然と浮かぶ上がるようになっている。
「えっと…ありがとうございますね?」
(ほらー。却って気を使わせたー)
(えー? これってオレが悪いのー?)
全く悪くは無い…が、この場合は何とも言い難いのが現実だ。
現実は難しい。
「それじゃあ、まずはお互いの事を知る為に自己紹介から始めましょうか。出席番号順でお願いします」
(出席番号順って言うけど、要は五十音順ってことよね)
(出席番号の順番が誕生日なのは中学までだからねー。って事は、オレのほうがヒュプノスよりも早くに順番が来る訳か―。なんて言おうかなー。やっぱ趣味とか特技とかを言うべきかなー?)
(どっちも止めれ。適当に読書とか音楽鑑賞とかにしときなさいよ)
(えー? つまんなーい)
(つまんなくていいの!)
(はーい)
妹に説教される姉。
なんとも締まらないが、いつもの事なので気にしない。
(そういや、よくよく考えたらオレよりも最初からいるヒロイン二人の方が先だよねー)
(確かにそーね。ま、どうでもいいけど)
(今回の要救助対象だよー? よーく知っておいた方がいいと思うけど)
(名前なんて知っても今更でしょうが。こっちはあの子達の名前は愚か、詳しいプロフィールまで知ってるんだから)
(それはそーだけどー…雰囲気って大事だと思うけどなー。ヒュプノスが好きなメルヘンだって雰囲気が重要じゃない)
(アンタと一緒に仕事をして雰囲気の良かったメルヘンな世界なんて一つも無かったでしょうが…!)
タナトスとの仕事で碌な思い出の無いヒュプノスは必死に無表情を貫きながらも眉間に皺を寄せていた。
傍から見たらかなり怒っているように見えるが。
そうして、生徒達の自己紹介が始まった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
自己紹介は順調に続いていき、さ行の番になった。
「…篠ノ之箒。中学時代は剣道をしていた…よろしく」
見事な仏頂面で簡素な自己紹介を終え、箒は席へと座った。
(予想はしてたけど、ありゃ相当ね)
(周囲に壁を作ってるってレベルじゃないね。完全にA・Tフィールドを張ってるわ。使徒共とタメ張れるんじゃない? エヴァに乗せたら強そうかも)
(気持ち分かるけど、変なネタを持ってくんな)
本人たちなりの感想を言っている内に、今度はイギリスから来た『彼女』の番になった。
「私は、イギリスの代表候補生のセシリア・オルコットですわ。皆さん、何か教えて欲しいことがあるのならば、同じクラスのよしみで特別に教えてあげてもよろしくてよ?」
まるでお手本のような高飛車お嬢様な自己紹介を披露してくれた。
これにはタナトスもニッコリ。
(キタキター! 聞いてたヒュプノス~!? あの子、まるで教科書に載せるレベルの高飛車エリートお嬢様発言をぶちかましてくれたよー! 三日天下のフラグがたった今立ったよー!)
(ホント…どうして、この
大喜びではしゃぐタナトスを余所に、ヒュプノスは痛そうに頭を抱えていた。
そして遂に番が回ってきた。
「次の人、お願いします」
「はーい」
元気よく返事をしながら立ち上がるタナトス。
銀髪銀眼な上で額に五芒星がある上に、さっきの挨拶でかなり目立っていたので、全員がタナトスに注目した。
「ギリシャから来たタナトス・エリシオンでーす! この銀髪は生まれつきで、この目の色もカラコンとかじゃなくて天然でーす! よろしくお願いしまーす!」
思ったよりも無難な自己紹介。
てっきり開口一番、下ネタでもブッ込んでくると思っていたヒュプノスは完全に出鼻を挫かれた。
(おやおや~? オレだって真面目にする時はするんだよ~?)
(意外過ぎる結果に驚いてるだけよ…)
(普通に自己紹介しただけで驚かれるって…)
それだけ日常の心象が悪いと言う証拠だろう。
完全に自業自得である。
そうして『た行』の番も終わって次は『は行』の番になる。
「えー…ヒュプノス・エリシオンです。名前と見た目でお見通しかもですけど一応一言。私とタナトスは一卵性双生児の姉妹です。これから、よろしくお願いします」
後で必ずツッコまれるであろうことを先に行っておくことで余計な手間を省いた。
自らクラスメイトとの話題を一つ潰したとも言えるが、ヒュプノスにはどうでもよかったので問題は無い。
ヒュプノスの自己紹介が終わり、そこから一気に他の全員の紹介も終了する。
最後の一人が終わったタイミングで再び教室の扉が開かれた。
「済まない。遅くなった」
「あ…織斑先生。もう職員会議は終わられたんですか?」
「ついさっきな。悪かったな山田先生。先に教室に言って貰ってクラスの挨拶を押しつけてしまって。会議の内容は後で君にも報告しよう」
「ありがとうございます」
黒髪で黒いスーツを着た美人女教師。
その姿を見た途端、ほんの少しだけ双子に緊張が走る。
(遂に来たねー。原作主人公くんのお姉さんにして我等が担任サマであり、同時に元世界最強のIS操縦者だ)
(ブリュンヒルデ…だっけ? どうして北欧神話に例えてるのかしら? オーディンが聞いたら爆笑しそうだわ)
(本物のブリュンヒルデは、凄くおっとりしてる典型的なお嬢様タイプだったよねー)
当然だが、この双子は他の神話体系の神々や英雄たちも普通に親交があったりする。
なので、こう言った会話も出来るのだ。
「諸君。私がこの一年一組の担任である織斑千冬だ。お前達新人を今から約一年で使い物になるようにして素人を卒業させるのが私達の仕事だ。私を初めとする教師の話はよく聞き、同時に良く理解をしろ。出来ない奴には出来るまで徹底的に指導をする。別に逆らっても構わんが、その時に後悔するのは未来の自分達であると言う事を忘れるな」
まるで入隊直後に新人単員に放たれる鬼軍曹の台詞。
どう考えても高校教師が言って良い言葉ではない。
(なんともまぁ…見事なスパルタ宣言ね)
(あそこまでズバっと言われると、逆に気分が良いよねー。それよりもヒュプノスー)
(何よ?)
(急いで聴覚遮断をしておいた方が良いよ。入学早々に鼓膜を破壊したくなかったらね)
(は? それってどういう意味…)
次の瞬間、女子生徒達の大興奮の叫び声という名の音響兵器が一年一組の教室を襲った。