Eternal Providence ~死と眠りの神々の異世界珍道中~   作:とんこつラーメン

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CHAPTER Ⅴ 代表候補生

 凰鈴音と予想外の出会いをした次の日。

 

 一年一組の教室はいつものように賑わっていたが、今日はその話題が少し違っていた。

 

「ねぇねぇ聞いた?」

「聞いたって…なに?」

「二組に来たっていう転入生の話!」

「あぁー…あれね。確か、中国から来たんだっけ?」

「そ! しかも、代表候補生らしいよ!」

「マジか―…」

 

 話題の中心となっているのは、どうやら鈴の事のようだ。

 神特有の人間離れした聴覚でそれを聞き耳を立てていたタナトスとヒュプノスは、これまた念話で会話をしていた。

 

(え? あの子が来たのって昨日の夜よね? どうしてもう学園の噂になってるのよ? 情報伝達速度が速すぎない?)

(女子高生のネットワーク恐るべしってところだねぇ~。多分、今朝になってどこかで、偶然にもそんな話をしていた先生でも目撃したんじゃないのかな? 知らないけど)

(普通に有り得そうだから怖いわね…。別に私達の仕事には微塵も支障はないからいいけど…)

(本人がこれを知ったらどう思うんだろうね~)

(普通に呆れるか。それとも自分の噂を聞いて自慢げにするか…)

(あの子、あれでも織斑一夏が絡まなくなると割と常識人ポジションだからね。呆れるんじゃない?)

(かもしれないわね。この学園自体は複数の意味でカオスだから、あの子のような人間は本気で貴重だわ…)

 

 実を言うと、この双子の中で鈴の人間としての評価は割と高い。

 『ラブコメヒロイン』という枠組みから解放されたことによって、立ち位置的には寧ろタナトスとヒュプノスに近くなっているから。

 積極的に絡むような事は無いだろうが、向こうから話しかけて来たり誘って来た時には友好的にしても良いと思い始めていた。

 

「代表候補生って事は、当然のように二組のクラス代表にもなるんだろうねー。うわー…普通に優勝する可能性が低くなるわー」

「あれ? 二組の友達の話じゃ、もうクラス代表は決まってるって聞いたよ?」

「別に今の時期なら変えても問題無いんじゃない? 『一年間変更なし』っていうのは、あくまでうちらの担任が織斑先生だからなわけだし」

「それもそっか。二組の先生だって、少しでも自分のクラスが優勝する可能性を引き上げる為なら、代表の変更だって容認するだろうしね」

「っていうか、ぶっちゃけ誰に変更になってもクラス的にはそこまで大きな変化はないしね。精々、今回の対抗戦の勝率に影響がある程度でしょ」

「確かに」

 

 クラスメイトの話を聞いて、双子神は目を丸くしていた。

 てっきり女子高生らしい中身の無い話でもしているのかと思いきや、意外と冷静に現状を把握していたから。

 

(…『主人公』がこの場にいないってだけで、ここまで劇的に生徒達の思考が変化するもんなのね…。正直、驚きだわ…)

(うん…オレも割と素で驚いてるかも。やっぱり彼は、原作世界における『特異点』だったんだなって改めて認識した)

(それは、この世界でも…じゃないの?)

(んー…それはどーだろ。オリ主の存在とかのせいで織斑一夏が単なる舞台装置に成り下がるパターンも往々にあるからなぁ~)

(もしくは、織斑一夏とオリ主二人が特異点となる可能性…か)

(どこぞのアホな神の気紛れで転生させられる人間も多いからねー)

(最近じゃ、そんなのが世に溢れかえってるんでしょ? 嫌なご時世になったもんよね)

(まさか、ここ十数年で輪廻転生がここまで大流行するなんて、流石のハーデス様も想像出来なかっただろうねー)

(でもお蔭で、冥界三巨頭の仕事が激減して、彼らが栄養ドリンク片手に頑張らなくても済んだのよね…皮肉だわー…)

冥衣(サープリス)を纏った状態にも拘らず、やってる事はそこらのサラリーマンと大差ないからねー)

(だからこそ、ハーデス様も地上の人間達を見習って冥闘士(スペクター)に有給休暇制度とか与えてるしね…)

(この間、パンドラが他勢力の女子達と一緒に旅行に行ったらしいよー)

(ウチの勢力…女っ気皆無だもんね…)

(傍から見てるとかなりムサいかも。その辺はポセイドンの所もそうだけど)

(あっちは少数精鋭だから、結果的にムサく見えないのよ。でも、ウチは違うでしょ?)

(三大勢力間では構成人数は最大だからなー…)

(聖闘士はトップの神がまず女性だから、その時点でむさ苦しさとは無縁だから…)

(あの謎の仮面制度も、あってないようなもんだしね…)

(実は、聖域(サンクチュアリ)ってリア充の巣窟なんじゃないの?)

(普通に活気もあるしねー。あそこで聖闘士の育成とかもやってる訳だし。ちょっとした街みたいになってるって話だよ)

(だからでしょうね…休日に地上に遊びに出かける冥闘士が多いのは…)

(冥界にはマジで何にもないしね)

(それを言っちゃお終いよ)

(そでした)

 

 途中から完全に話が逸れて、普通にどうでもいい話に発展。

 もしかしたら、これが神々の実態なのかもしれない。

 

「代表候補生…もしや、この私の存在に危惧して中国政府から送り込まれてきて…」

((んなわけねーだろ))

 

 自分の席でセシリアがなにやら見当違いの予想をしていたので、思わず二人揃って心の中で同じツッコミをしてしまった。

 

「えぇ…きっとそうに違いありませんわ。それならば、この時期に転入してくるという不可解さにも納得出来るというもの」

((んなわけねーだろ))

 

 本日二回目。

 

「全く…我ながら自分の才能が恐ろしいですわ。まさか、こうしてIS学園にいるだけで他国の代表候補生を動かしてしまうとは…」

((それは、ひょっとしてギャグで言ってるのか?))

 

 遂に言ってしまった禁断の一言。

 この瞬間だけ、タナトスとヒュプノスの画風が変わっていたに違いない。

 

(…あの子は放置しておきましょ)

(賛成。その方がなんか面白そう)

 

 セシリア・オルコット。

 知らず知らずの内にギャグ要因となる。

 

 そうして心の中でのツッコミをしている間に担任である千冬たちがやって来て、朝のHRが始まった。

 

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 お昼になり、双子神は一緒に食堂へと向かう。

 本来、神である彼女達には食事なんて必要ないし、排泄行為を初めとした生理現象も発生しない。

 だが、今は受肉をしている状態なので、その辺の身体的構造は通常の人間とほぼ同じになっている。

 それでも身体能力は常人のそれを圧倒的に上回っているが。

 

「今日のお昼は唐揚げカレー♪」

「またカレー? この間も食べてなかった?」

「チッチッチッ。この間のはカツカレーだから」

「トッピングが違うだけでしょうが…」

「そーゆーヒュプノスは何にしたのさー」

「煮魚定食だけど…」

「おー…和風だねー。ヒュプノスってお箸使えたっけ?」

「あんた…私を舐めてるでしょ…」

 

 幾ら他国の神話体系の神とは言え、流石にそれぐらいは出来る。

 仕事で日本に来た事なんて、今までに山ほどある。

 

「隣良いかしら?」

「「ん?」」

 

 これから食事を始めようとした瞬間、いきなり隣に聞き覚えのある声の人物がやってきた。

 当然のように声のした方に降り向くと、そこには現在進行形で噂になっている人物がラーメンの乗ったトレーを持って立っていた。

 

「やっほー。タナトス。ヒュプノス」

「「鈴?」」

 

 凰鈴音。

 中国代表候補生にして原作ヒロインの一人。

 そして、この双子と密接に接触してきた唯一の原作キャラでもある。

 

「やっぱり、アンタ等っていつも一緒なのね」

「双子だからねー」

「私は一人が良いけどね…」

「酷いなー。お姉ちゃん泣いちゃうぞー?」

「普通にキモいから、お姉ちゃん言うの止めれ」

 

 タナトスの隣に座りながら鈴が驚いた顔をする。

 

「え? ヒュプノスの方が姉なんじゃないの?」

「残念ながら違うわ。タナトスが姉で、私の方が妹なのよ」

「意外だわ…。結構ずけずけと言ってたから、てっきり…」

 

 鈴の反応は決して間違っていない。

 これまでにも、初対面の者には良く間違われてきたから。

 主にタナトスの性格が原因で。

 

「苦労してるのね…ヒュプノス…」

「その言葉を言って貰えるだけで、凄く報われるわ…マジで…」

 

 ヒュプノスの中で鈴の株が急上昇。

 一気に好感が持てた。

 

「ちょっと、よろしいかしら?」

「「「ん?」」」

 

 またもや誰かに話しかけられる。

 今度は誰だと思い振り向くと、そこには意外過ぎる人物が立っていた。

 

「タナトスさん。ヒュプノスさん。お隣よろしいかしら?」

「あ…うん。別にいいけど…」

「どーぞー」

「では、失礼して…」

 

 なんと、話しかけてきたのは、原作ヒロインの一人にしてイギリスの代表候補生にして、今は双子神のクラスメイトでもあるセシリア・オルコットだった。

 

(な…なんで? なんでまた原作ヒロインが向こうから近づいてくるのよッ!?)

(さー?)

 

 タナトス、考える気ゼロ。

 

「えーっと…私達に何か用かしら?」

「えぇ。実は私、お二人とずっとお話がしたいと思っておりましたの」

「「なんで?」」

 

 どうして自分達にそんな事を思うのか。

 本当に全く分からなかった。

 

「一目見た瞬間から、お二人からは只者では無い雰囲気を感じていました。ギリシャから態々来たという点も気になっておりましたし…」

((そりゃそーだ))

 

 只者どころか人間ですらない。

 どれだけ一般人のフリをしていても、その内から溢れ出る独特の雰囲気は誤魔化せないということか。

 もしくは、原作ヒロインであるが故の理由なのか。

 

「ちょっと。今はあたしが二人と話してるんですけど? つーか、アンタ誰よ?」

「私はイギリスの代表候補生にして一年一組のクラス代表を務めているセシリア・オルコットですわ。中国の代表候補生さん?」

「あんた…あたしのことを…」

「転入してきたことは知っていますわ。クラスで噂になってましたから」

「ふーん…」

 

 なんだか険悪なムード。

 どうしてこうなったのか本気で分からない。

 

「…一応名乗っておくわ。凰鈴音…中国の候補生よ。一組の代表って事は…今度のクラス対抗戦ってので対決する可能性があるのね」

「あら。ということは、貴方もクラス代表に?」

「代表って言うか…今度の対抗戦の時だけ代理で出場することになってるわ。他のクラスにも候補生がいるから特別にって」

「「「成る程…」」」

 

 セシリアと同時にタナトスとヒュプノスも同時に納得してしまった。

 確かに、他のクラスが候補生を出して来るのに、自分達は一般生徒と言うのも分が悪い。

 恐らくは全体のパワーバランスとかを考慮して特例として認めたのだろう。

 

「ところでお二人とも。放課後には何かご予定はありまして? よろしければ、この私がIS操縦の手解きなどをして差し上げて…」

「お生憎様。タナトスとヒュプノスは、放課後にアタシに校舎の案内とかをしてくれる予定になってるのよ」

(そんな約束なんてしたっけ?)

(してない…と思う)

 

 急に放課後の予定が埋まってしまい戸惑う双子神。

 そんなことなどつゆ知らず、鈴とセシリアは二人の前で火花を散らしていた。

 

 

 

 




タナトス  イメージCV:松本梨香

ヒュプノス イメージCV:高山みなみ
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