Eternal Providence ~死と眠りの神々の異世界珍道中~   作:とんこつラーメン

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CHAPTER Ⅵ 変わる日常

 本人達が全く知らない所で、何故かセシリア・オルコットの興味対象となり、凰鈴音の友人になっていたタナトスとヒュプノス。

 イギリスと中国の代表候補生と知り合いになったことで、双子の生活が変化していった。

 

「今日も午前の授業がおーわりーっと。お昼は何にしようかにゃ~」

「そうねー…偶には丼物とかもしれないわねー」

 

 二人揃って背中や腕を伸ばして体を解していると、そこにいきなり『彼女』がやってきた。

 

「タナトスさん。ヒュプノスさん。もしよろしかったら、お昼をご一緒しませんこと?」

「「え?」」

 

 完全に双子と友人になったと思い込んでいるセシリア。

 普通に昼食に誘いに来た。

 これには流石の双子も一瞬だけ目が点になる。

 

(ど…どうする?)

(どうするって…行くしかないんじゃない? ここで断るのも悪いし…)

(だよねー…)

 

 本来ならば、裏方として原作キャラ達をバックアップしていく筈だったのに、予想外の接触によって完全に自分達も物語の一部になりつつある。

 もしくは、本当はいる筈の『主人公』が、この場にいない事によって『修正力』が発揮され、双子を『主人公の位置』に押し込もうとしているのか。

 別に織斑一夏は排除された訳でもなければ、アンチ行為によって追い込まれた訳でもない。

 彼は彼が本来望んだ学校にて普通に学生生活を、今この瞬間も満喫しているだけだ。

 ある意味、これこそが正しい構図なのであって、原作のような展開は少なくとも織斑一夏本人は全く望んでいない事なのだ。

 

「そ…そうね。偶にはタナトス以外と一緒にってのも悪くは無いかもね」

「ならば、早く参りましょう。この時間帯は凄く混み合いますから」

「席の取り合いは御免だからねー」

 

 双子とセシリアが話していると、教室のドアの所に二組から彼女もやって来る。

 

「タナトス! ヒュプノス! 一緒にお昼に行くわよ!」

「「来たか…」」

 

 凰鈴音。

 中国の代表候補生。

 そして、何故かタナトスとヒュプノスに妙に懐いている少女。

 その理由は不明。本人達も分かってない。

 

「鈴さん…あなたもいらしたのですわね…」

「別にいいじゃない。教室には入ってないんだし。それに、あたしが誰をお昼に誘おうと、こっちの勝手でしょ?」

「「むむむ…!」」

 

 教室の入り口と中とで火花を散らすヒロイン二人。

 別に火花を散らすのは一向に構わない。

 問題なのは、その間に半ば強引に入れられている双子だった。

 

「あれって…二組の子…だよね。中国の代表候補生の」

「うん…いつの間にかオルコットさんと仲良くなってたことにも驚いたけど…」

「代表候補生二人に取り合いをされるなんて…入学早々に百合の花が咲いてるっ!?」

「うん。アリだわ。ギリシャから来た双子の美少女達を巡って、これまた別々の国の美少女が争う…これなんて少女漫画?」

 

 気が付けば、すっかりクラスメイトの話のネタに。

 このまま行けば、話のネタだけに留まらず、同人誌のネタにもされかねない。

 

「と…とにかく、まずは食堂に行きましょうよ。ね?」

「そ…そうですわね。えぇ、行くとしましょう」

「し…仕方ないわね。ヒュプノスがそこまで言うなら…まぁ…行ってあげなくはないけど?」

 

 なんとか、この場を収める事には成功した。

 あんまり目立つような事はしたくない双子にとって、クラスの話題になるのは中々に拙いのだ。

 

(今…ほんの少しだけ原作主人公の苦労が分かった気がするわ…)

(俺も…。ラノベの主人公も楽じゃないね…)

 

 これでも一応は神なのだが、精神的にげっそりしたタナトスとヒュプノスであった。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 結局、昨日と同じ四人で食堂に行くことに。

 その途中で彼女達は『ある物』を見つけた。

 

「あれ? これって…」

「タナトス? 何を見つけたのよ?」

「あそこにある電光掲示板…トーナメント表っぽいのが映ってない?」

「「「トーナメント表?」」」

 

 タナトスが指さす場所を見てみると、そこには確かにトーナメント表のような物が表示されていて、色んな生徒達が立ち止まってソレを見ていた。

 

「もしや…今度のクラス対抗戦のトーナメント表では?」

「もう出てるの? あれってもう少し先じゃなかったっけ?」

「先生達も忙しいから、せめてトーナメント表だけでも早く作って公開しようってことなんじゃないのかな?」

「かもしれないわね。IS学園のイベントともなれば、かなりの規模になるでしょうし。今から東奔西走していても不思議じゃないわ」

 

 生徒達がばらけたタイミングで四人もトーナメント表を近くで確認してみる事に。

 そこには、原作知識を有している双子にとって驚くべき事が書かれてあった。

 

(え? ちょ…タナトス?)

(なぁ~にぃ~?)

(なんで一年生の一回戦の第一試合が一組と二組じゃないの? 原作じゃ、ここは…)

(うーん…これもまた原作主人公がこの場にいない影響なんじゃないの?)

(バタフライエフェクトってこと?)

(多分ねー)

(そこまで大きな変化じゃないとはいえ…これから先はもう原作の知識は余り当てにしない方が良いかもしれないわね)

(だねー。あくまで参考程度に留めておいた方がいいんじゃないかなー。変に気にし過ぎると、逆に仕事に支障が出てくる危険性もあるし)

(確かにね。先の事やキャラの性格が分かっているアドバンテージは非常に大きいけど、それはそれって事にしておかないと)

(そーゆーこと。でも、この分だとクラス対抗戦本番もどうなるか分からないね)

(原作じゃ篠ノ之束特製の無人機が襲来してきたけど、あれはIS学園に織斑一夏がいたからであって、少なくとも『この世界』じゃ、それをする理由は存在しない。けど…)

(相手はIS世界屈指の精神破綻者。どんな行動をしてくるのか想像も出来ない。警戒し過ぎて損は無いと思うな)

(同感ね。いざとなれば、私達の内のどっちかが直に動く必要があるかも)

(念の為の準備ぐらいはしておいた方が良さそうだねー)

 

 双子が念話で今後の事に付いて話し合っている最中、セシリアと鈴は再び火花を散らしていた。

 

「ふーん…このトーナメント表によると、一組が第一試合で、二組が第三試合みたいね」

「とはいえ、一組と二組はそれぞれ専用機を持った代表候補生が出場するのですから、結果は明白ですわ」

「決して油断は出来ないし、する気も無いけどね。獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすもんなのよ」

「あら。奇遇ですわね。私も同じ考えですわ」

「へぇー…なら、アンタとは決勝戦で会うかもしれないわね」

「その時が今から楽しみですわ」

「うふふふふ…!」

「おほほほほ…!」

 

 双子を挟んで睨み合う候補生達。

 完全に巻き込まれた側の双子は、それを見て思わず大きな溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

 クラス対抗戦当日。

 タナトスとヒュプノスは、ぞれぞれに分かれてセシリアと鈴に会いに行っていた。

 このトーナメント、出場選手は基本的に更衣室にて待機しながら、モニターで試合の様子を見るのが通例となっていた。

 セシリアは一回戦の第一試合なので、もう既にピットにて待機していて、鈴は第二更衣室にてISスーツを着たままジッと試合の時を待っている。

 

 セシリアの方に行ったのはタナトスで、ついさっき開会式が終了し、ほんの少しだけではあるが時間があったので、その隙を狙って会いに行っていた。

 

「やっほー。来ちゃったー」

「タナトスさん!」

 

 ついさっきまで緊張した面持ちだったのに、タナトスが来た瞬間に笑顔に変わる。

 一体どれだけ双子に懐いているのか。

 

「もうすぐ試合開始だけど、緊張とかしてなーい?」

「してない…と言えば嘘になりますわ。というか、試合前に緊張しなかった事なんて、今までに一度もございません。それが大舞台の真剣勝負ともなれば尚更」

「へー…」

 

 原作の情報が先行していたせいで、タナトスの中ではセシリアは『相手を見下す高飛車なお嬢様』なイメージが強かったのだが、どうやら実際にはそうではないらしい。

 高飛車な感じは単に自分を奮い立たせるためのポーズであり、実際には見た目以上にスポーツマンシップを大事にしている少女だった。

 

(ま…仮にも、あのイギリスのお貴族様の子…だからね。流石にノブレス・オブリージュぐらいは持ち合わせてるか)

 

 少しだけセシリアに対する評価を上方修正。

 もしかしたら、この世界線じゃ原作以上に大化けするかもしれない。

 

「緊張することはいいことだって思うよ? それだけ真剣だって証拠なんだし。その緊張感を楽しめるようになれば一人前だね」

「緊張感を楽しむ…ですか。そうですわね。先輩の候補生や、我が国の代表も仰っていました。『この肌がピりつくような感覚を楽しめるようになれば一人前だ』…と」

「ほへー…」

 

 やっぱり、どの国にも一人ぐらいはいるものだ。

 『本当の意味での強者』という者が。

 

「そーだねー…。こーゆー時に『頑張れ』って言うのは違う気がするからー…うん。そうだ」

「??」

 

 タナトスの言葉に小首を傾げていると、急に真剣な声でエールを送られる。

 

「健闘を祈る」

「…っ! は…はい! このセシリア・オルコットにお任せくださいませ!」

 

 良い感じに肩の力が抜けたと判断し、タナトスは不意に視線を虚空へと向けた。

 

(さーて…ヒュプノスはどんな感じなのかなー…?)

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 更衣室付近にある廊下。

 ヒュプノスと鈴は、そこで会って話をしていた。

 

「ったく…幾ら専用の待機場所が無いからって、更衣室は無いと思うんだけど? 今回はまだそこまでの人数じゃないから大丈夫だけど、もっと大規模なイベントとかになったら確実に狭くなるわよ」

「その辺は仕方がないわね。ま、要望出せば普通に通りそうだけど。この学園、至る所に無駄に金使ってるから」

「あー…普通に有り得そうだわー…」

 

 常識枠な二人の普通(?)の会話。

 タナトスとセシリアがいないだけで、ここまで大人しくなるのか。

 

「にしても、まさかヒュプノスが来てくれるとは思わなかったわ」

「流石に、応援ぐらいは来ないとって思ってね」

「そうなんだ…。ところでタナトスは?」

「セシリアの所に行ってるわ。本当は二人でそれぞれに会いに行きたかったんだけど、時間がね…」

「試合前って事で、出場選手と他の生徒が接触できる時間は限定してるものね。その辺だけは無駄に本格的だから困るわ」

「同感。だからこその緊張感もあるんでしょうけど」

「まだ試合は先だから、そこまでじゃないけど」

「でしょうね。あなたって、緊張してブルってしまうようなタイプには見えないし」

「へぇー…良く見てるじゃない」

 

 自分の事を知って貰って、ちょっとだけ上機嫌な鈴。

 そんなことを知ってか知らずか、ヒュプノスも友人としてのエールを送る。

 

「ま…あなたなら、余程の事でもない限りは大丈夫よ。リラックス…は流石に難しいかもだけど、いつも通りにやってれば、いつも通りに勝てるわよ」

「言ってくれるじゃないの。でも…ありがと。いつも通りに…ね」

 

 ヒュプノスなりに言葉を選んだ応援に、鈴の頬が少しだけ赤くなる。

 

「それじゃ、もうそろそろ観客席に戻らせて貰うわ」

「うん。また後でね」

 

 手を振りながら去っていくヒュプノスの背中を見ながら、鈴は密かに拳を握りしめる。

 

「ったく…最初はどうでもいいとかって思ってたけど…勝つ理由が…勝ちたい理由が出来ちゃったじゃないのよ…!」

 

 

 

 

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