今回、フォンテーヌ伝説任務の重要なネタバレを含みます。それでもよろしい方はどうぞ。
今回、ちょっとアラと稚拙さが目立つかもしれません、ご容赦。
「その子を離せよ『召使』」
俺はその言葉と共に、目の前の“敵”に向けて弓を引く。きりきりと弦が引かれる音がするが、敵は全く怯まず口を開いた。
「おやおや、誰かと思えば『公子』殿…確か休暇中だったな。これは奇遇だ」
「そうだよな。…できれば、同僚の未成年略取未遂の現場なんて見たくなかったんだけど」
目の前でくつくつと笑いながら、傍らに知人の少年を抱きとめている女は、ファトゥス第四位『召使』…。先日の『淑女』の葬式の折、意中の相手に凄まじい執着を見せていた彼女の相手が彼だと気づいてから、決闘代理人との試合を休止してしばらく見守っていた甲斐があった。
召使は俺の言葉を受けて、密やかな笑みを浮かべながら続ける。
「未成年略取とは…何か誤解をしているようだな。私はただ、彼が酔い潰れてしまったから介抱をするつもりなだけだ」
「…そんな様子の子を抱えてよく言う。明らかに酒精が原因じゃないって、俺でもわかるよ」
彼は召使の胸の中で、薄らと目を開け頬を紅潮させ抱きとめられている。このやり取りに何も言ってこない、ということは意識も朦朧としているだろう。確かに酔い潰れているようにも見えるが、格式高いレストランで酔い潰れるほど飲むというのは些か考えにくかった。
「何を根拠に?…私は一刻も早く彼を介抱しなければいけないのだが…どいてはくれないか?」
「嫌だね。このままはいそうですか、と通して友人が乱暴されるのを見過ごせるほど外道に堕ちた覚えはないよ」
「ファデュイに居るだけで十分に外道だとは思うがね…」
召使は彼をさらに強く抱きしめる。彼は小さな呻き声をあげた。
「私がこの子に乱暴とは失礼だな。…まあ、もしそんな展開になったとしても、仕方のないことだ。私はこの子の劣情を受け止める覚悟はとうに済ませているからな…」
「劣情を向けているのはそっちだろうに」
「…まあ、それの否定はしないでおこう」
白々しい言葉に虫唾が走る。歯噛みする俺を笑みを浮かべながら見つめる召使は、また何かを話し始める。
「第一、こんなに可愛らしい子と蜜月を過ごしたい、というのは女として当然の欲求だろう?ほうら、彼ももうこんなにも蕩けて…」
召使は半開きになった彼の口へと、指を二本滑り込ませる。彼の口腔内を指でかき回し、舌を蹂躙している。
「あ…ぇ…」
力のない喘ぎ声を発する彼の口から、たっぷりと唾液を絡ませた指を引き抜き、指と口との間に銀の端をかけ、召使は頬を赤らめた。
「同意もなしにそんな事をするような奴だった?あんた、結構ひどい奴だったんだな」
「逆に考えるといい。こんなことをされても嫌がらないのだから、これは同意とみなしていいだろう?その証拠にこちらも、ほうら…」
召使はゆっくりと手を彼の身体に這わせる。鎖骨の辺りから胸板、腹と手を滑らせ、ついには彼の下腹部に手を…!
「させるか!」
俺は召使の頭目掛けて容赦なく矢を放つ。水元素を纏った矢はひゅらと音を立てて飛び…召使はそれを反射的に手で掴み、眼前で止めてみせた。
「…公子殿、これ以上は私も看過できない。私とここで戦って騒ぎを起こしたくなければ、そこをどいてはくれないだろうか」
「いいね。いつかあんたとやり合ってみたいと思ってたんだ…!」
俺は腕を胸の前で交差させ…邪眼の力を解放する。ほとばしる紫の雷光が身体に纏われ、凶悪な鎧を形作っていく…それの名は『魔王武装』。
「短期決戦だ…最初から飛ばしていこうか!!!!」
「…チッ」
魔王武装により禍々しい雷元素が吹き出し、轟音を立てて石畳を焦がす。
『な、なんだなんだ!?』『なんだありゃ、すげえ迫力だ…!』『映影の撮影かしら…?』
「…チッ!」
騒ぎを聞きつけ民衆が集まってくる。召使はすぐさま仮面を被り、魔王武装を纏った俺に向き直った。
「もう一度言う…その子を解放しろ!」
「拒否させていただこう!」
召使はオクタヴィアを抱え、炎元素の力を解放し跳躍する。逃すわけにはいかないと、俺も続いて跳び上がる。フォンテーヌ邸の街の屋根上を駆ける召使に矢を放つが、ひらりひらりと躱されてしまう。そして振り向きざまに火球を放つことによりこちらの進路妨害もこなしてくる。クソ、こんな闘いがしたいんじゃないんだけどな…!!
『警察隊、誘拐犯を捕えろっ!』『撃ちますか隊長?!』『今はやめろ!被害者に当たるぞ!』『ではどうすれば…?』『私に任せろ!』
下で誰かが呼んだのだろうか、警察隊の騒ぐ声が聞こえる。どうやら結構な騒ぎになってるようだ…!
「忌々しい…お前が騒ぎを起こさなければ、いまごろ閨の中だったのだがな!」
「戯言を…!!!」
俺は魔王武装の出力を上げ、爆発的に加速し召使の背に肉薄する。召使はそれを見切り、フォンテーヌ邸の屋根から跳躍し…
銃声。そして召使は体勢を崩し、オクタヴィア君は宙に投げ出された。
「…っア゛…!」
銃声のした方向を見れば、眼帯をした警察隊員が銃口から硝煙を立ち上らせている。指二本を立てて彼女に振ると、彼女もそれを返してきた。
俺は投げ出されたオクタヴィア君を抱きかかえ、地面に勢いよく着地し石畳を擦る。そして召使を撒くための逃げ道を考え始める。
走りながら辺りを見回していると、路地裏に小さな三つの影。見てみればそこにはフォンテーヌ特有の、小さな体躯に動物のような体毛、触角を生やしたメリュジーヌと呼ばれる種族が三人集まって何かを話している。
俺はそちらに駆け寄る。メリュジーヌ達はぎょっとした様子で俺たちを見た。
「急ですまないが、この子を匿ってやってくれ!追われてる!」
「えっあっ、あの、あなたは…?」
「見た目で好きにとるといい!じゃあ任せたよ!!」
俺はメリュジーヌ達にオクタヴィア君を押し付け、跳躍し先程の場所へと戻る。彼が隠れるまで時間稼ぎをしなくちゃな…!!!
「さあ、こっちだ誘拐犯!!!!」
ーーーーー
「ど、どうしよう…匿うって言ったって…」
「さっきの人何だったのかな…かっこいい仮面をしてたけど…」
「あ、二人とも。匿ってもらうあて、あるよ!」
「本当?」
「うん。お隣さんにすごく強い人がいるの。その人に頼もう!」
「じゃあ決まりだね!出発!」
ーーーーー
今日も忙しい一日が終わった。汗をかいた身体を流し、服を着替え、食事を作って食べ、歯を磨き…寝る前の紅茶を淹れていた。
ふわりと香るアールグレイにささやかな幸せを感じていたその時、玄関の呼び鈴が鳴った。こんな夜中に何事か、と、眉を顰めながら立ち上がり、玄関へと歩く。そしてドアについた覗き穴に目を近づけると…
三人のメリュジーヌに抱えられた、『彼』がいた。
「な、何事だ!?」
私は急いで扉を開ける。私の顔を見るなり、一人のメリュジーヌはほっとした表情でこちらを見やる。
「よかった、まだ起きてらっしゃったんですね、クロリンデさん」
「君は…メンタじゃないか。どうしたんだ?それに…彼は一体」
「実は…」
彼を運んできたメリュジーヌのひとり…私の隣人、メンタは困った様子で彼を見る。そして、彼を謎の仮面の人物に匿うよう言われたこと、何者かに追われていたことを教えてくれた。
「私達は力がないし…クロリンデさんなら、安全に匿ってくれるかと思って…もしよければ、あなたに預けてもよろしいでしょうか」
「断る理由がない。さあ、彼を中に運ぼう。他のお二人もご苦労様だ。お茶でもどうだ?」
「ああ、私達はメリュシー村に帰らなきゃなので、これで…」
私が彼を抱きかかえて部屋の中に運びそう言うと、二人はそう言って帰って行った。部屋の中に残ったのは、私とメンタ、そして彼…オクタヴィアだけになった。
ーーーーー
苦しそうな彼をベッドに乗せ、上着を脱がせてシャツの胸元も開ける。発熱していたおでこに濡れたタオルを乗せ冷やしてやると、呼吸は次第に落ち着いていった。
私たちはベッド横に置いたテーブルで、彼を見守りながら紅茶を飲んでいる。
「…落ち着いたみたいですね。よかったです、最初はどうなるかと…」
「ああ。…彼はどうしてこんな風に?」
「さあ…でも、何かに追われていたということは、助け出された所に何か飲まされたのかもしれません」
未だにぐったりとした彼を見ていると、不思議と焦燥感に駆られた。これは、明日然るべき医療機関に見せなければならないやも…。
「あの…クロリンデさん、質問なんですけれど」
ふと、メンタは紅茶をティースプーンでくるくるかき混ぜながら、そんな言葉を口にした。
「クロリンデさんは、オクタヴィアさんの方を見る時になんだか…特別な感情のこもった目をするのですけれど…なぜですか?」
「…そんな目をしていたか?」「はい。結構あからさまに」
少し顔が熱くなる。
「…まあ、心当たりならあるが…それを話すと長くなるぞ?いいのか?」
「ええ。どうせお隣ですし、わたし、興味あります!」
メンタはキラキラとした目をこちらに向けてくる。これは、話さないといけない流れか…
「…わかった。彼と私の初対面は、私が決闘代理人になってからだ」
ーーーーー
私がまだ、決闘代理人になってすぐのこと。彼は私たちの合同訓練の視察にやってきた。当時で最も強かった私の先輩が彼と話をしていた。その様子を剣を磨きながら伺っていると、先輩は私の方を指差した。二人はこちらに歩いてくる。
「この子がウチの期待の新人、クロリンデです。ほらクロリンデ、ご挨拶を」
「…お初にお目にかかります」
第一印象は『こんな子供がこの国のNo.2か?』というものだった。中性的な外見をしていて、私よりも背が低かった。私はもっと、ヌヴィレット様のように威厳のある男性を想像していたから、なんだか拍子抜けだった。
「どうもクロリンデさん。訓練中にすみませんね」
「いえ…仕事なのでしょう?別に気にしていません」
彼のソプラノボイスが鼓膜を揺らす。本当に、本当にただの子供にしか見えなかった。先輩は私の無愛想な態度に眉を顰める。
「こらクロリンデ。いくら手入れに忙しいからって…もっとちゃんとご挨拶しなさい」
「ああ、いいんですよレイクさん。邪魔をしてはいけないので、無理して話させなくても…手入れが行き届いてる。真面目な方なんですね」
「はい、こいつは真面目だし、凄いやつです!いつか私を追い越しますよ!」
「ふふふ、“常勝不敗“のレイクさんがそこまで言うなんて…期待しちゃいますね」
彼は私の剣を見て言った。…そうやって重い期待をかけるのは、正直よして貰いたかった。そして、どうしても目の前の少年がこの国のNo.2だとは思えなかった。…もしや、補佐官は代替わり制で、この子は最近跡を継いだのだろうか?
私の彼に対する印象は、勝手な主観で『親の七光り』に決まってしまった。少しだけ、彼のことが苦手だった。
ーーーーー
一年が経った。私はその頃、決闘代理人の中でメキメキと頭角を表していった。そしていつの間にか先輩の一個下ほどの序列になっていた。
実力をつけて、決闘に勝って…そうしていくうちに、どんどんと仕事や決闘は増えてゆく。そしてそれに比例して、ストレスもどんどん溜まっていった。
決闘には“寸止め”は存在しない。最悪の場合、命を奪ってしまうことさえある。…何度か、そういうことはあった。それをやってしまった日は、たとえ相手がどんな極悪人であっても眠ることができなかった。
そんな日々を過ごすうちに、ストレス発散のためのささやかな趣味として、紅茶を嗜むことが増えた。その日も行きつけの老舗喫茶店へ向かい、扉を開ける。すっかり常連として馴染んだ私を、マスターがにこやかな笑みで迎えてくれた。
だが。その日は少し違うことがあった。私がいつも座るカウンター席に、誰かが座っている。別にそれくらいは何とも思わないが、そこにいたのは意外な相手だった。
「…おや、あなたは…クロリンデさん、でしたか。お久しぶりです」
オクタヴィア。水神フリーナの補佐官、この国のNo.2。彼がマスターの紅茶を喫していた。彼はにこやかな笑みを浮かべこちらに挨拶をする。
「お久しぶりですオクタヴィア様。本日はお日柄もよく…」
「ああそんなに畏まらなくても…互いに休日でしょう?様付けも結構ですよ」
彼は手をひらひらと振りながらそんなことを言っている。そこには何の威厳も感じられず、ただのなよなよした優しげな少年がいた。私はやはり、この人は苦手だと思った。
「…では、オクタヴィアさん、で」
「ええ、構いませんよ。そういえば、ここにはよく来るんですか?」
「…まあ、休みの日は必ず」
彼は世間話を振ってくる。正直言って、面倒臭い。適当にあしらおう、と、とんでもなく失礼なことを考えながらマスターにいつもの注文をつけた。
「へえ、そうなんですか。私もたまに休憩に来るんですよ。まあ頻度は低いんですけれど…ここの紅茶はとても美味い」
どうやら彼もこの店の常連だったようだ。…次は被らないといいが。
「…そういえば、クロリンデさん。最近指名が増えてきましたね」
「ええ。日々の鍛練は欠かしていないので」
「でしょうね。いやはや、“常勝不敗”の名前が受け継がれるのが楽しみです」
まただ。またその言葉だ。私の先輩の異名、“常勝不敗”がいつも私に付き纏う。勝手に期待をかけられて、頑張れば頑張るほど期待は増し重圧も増す。
私は怖かった。いつか、積もりに積もったプレッシャーが瓦解して一気にダメになってしまうのが怖かった。皆の期待が落胆に変わるのが怖かった。
「そういえば、先日の決闘で…」
彼のその言葉で、一気に血の気が引く。先日の決闘で、私は被告人を殺してしまった。私は寸止めして気絶させるするつもりだったのだが、予想外の捨て身の踏み込みで私の剣が腹に突き刺さり、大量の血を流して絶命してしまった。
その日の夜は、彼の叫びが頭から離れなかった。私を責める声、痛みを訴える声、冤罪だと主張する声。証拠は決定的なもので彼は重犯罪で、一生をメロピデ要塞で過ごすほどの極悪人であったのに、私の心はこう言っていた。
“お前は人間を殺した”
「貴方に私の何がわかる」
気がつけば、そんな言葉が口をついて出た。彼は少し申し訳なさそうに目を背ける。
「貴方は気軽そうでいいな。貴方は殺した相手の夢を見る必要も、周りの期待に押し潰されながら必死で鍛錬をする必要もない」
「…私はそんなつもりで話題を振ったわけでは」
「私は貴方のことが嫌いだ。今、完全に嫌いになった」
子供の様に拒絶する。彼は悲しげに私の方を一瞥すると、カップに残った紅茶を煽ってから、マスターにモラを渡している。
「お釣りはクロリンデさんのお会計にあててください。…今日はすみませんでした」
彼はひどく申し訳なさそうな顔で店を出ていった。カランコロンとドアベルが鳴る音と一緒に、何かが落ちた音がした。見ると、ドアの前に手帳が落ちているではないか。
私はそれを拾い上げる。そして、補佐官なんて楽をしてそうだ、そうに違いない、と捻くれた考えのもと、中身を開いて見てみることにした。
私は絶句した。手帳についたカレンダーには、びっしりと書かれた仕事の予定。休みの数を確認すると、年に五回ほどしかなかった。私がこんなスケジュールで仕事をしたらきっと死んでしまうだろう。
彼への敵意はショックで消え失せたが、彼のことが別の意味で恐ろしくなった。
ーーーーー
また数年が経った。もう決闘代理人としての仕事にも慣れ、人を殺した責任にもきりがついた。彼に当たったことを謝ろう、と考えていても、中々会うことはできなかった。
そして、いつもの店で紅茶を喫していると、急にドアが開きドタドタと誰かが入ってくる。
振り向くと、そこには数人の警察隊員に、太った男がいる。太っている方は見覚えがある。いつかにこの店の土地を売り渡せと店主に凄んでいた人物だった。
「やあマスターさん、調子はどうだ?」
男はいやらしい笑みを浮かべて語りかける。
「なんだね…警察隊員まで呼んで。ここはウチの店だ。いくら金を積まれても脅されてもやらんと言ったでしょうに」
マスターはうんざりした様子でそう言うが、男はにやにやとした笑みを崩さない。そして、警察隊員が口を開いた。
「喫茶サヴァーヌの店主アルター、貴方に逮捕状が出ている。我々についてきて頂きたい」
「なっ…!」
マスターは心当たりがない、と言った様子で驚く。私も状況が飲み込めていなかった。
「容疑は殺人罪!しかも私の大事な大事な使用人を…エトワールをよくも殺してくれましたなあ?」
「エ、エトワールが!?う、うそだ、そんなことしていない!俺が彼女を殺すなんて、そんなはずは!」
エトワール。いつかに聴いたことがある名だった。マスターがたまに話してくれる、最愛の恋人の名だ。
「証拠も出ている。見苦しいですぞ?ほれ、早く連行しなさい」
「大人しくしろ!」
マスターが警察隊員に取り押さえられる。その間もマスターは「俺はやってない!」「彼女は俺の恋人だ!殺したりなんかするもんか!」と、容疑を否定する声を挙げていた。
我慢ならない、と私が異議を申し立てようとした、その時だった。ドアベルがカラカラと音を立てた。喫茶店にいた皆がそちらを向くと、そこには…
「私がマスターの弁護を致しましょう。アルターさん、貴方は殺しなんてしていない」
“水神補佐官”である、オクタヴィア様が立っていた。
ーーーーー
「…諭示裁定カーディナルの審判結果により…被告人アルター氏は、無罪とする」
ヌヴィレット様の荘厳な声が歌劇場に響く。あれからオクタヴィア様は鮮やかな手腕で証拠を集め、マスターの無罪を勝ち取った。それどころか、死んでしまったマスターの恋人、エトワールの死の真相までも解き明かしてしまった。
「では、続いて新たに容疑が発覚した…オサーク氏の審判へと移ろう」
オサーク。マスターを告発した、太った男は大量の脂汗をかきながら被告人の台へと登った。諭示裁定カーディナルの天秤は起動するや否や、がこんと告発者であるオクタヴィア様のほうへと振り切った。
そう、マスターの無実を証明する中で、真犯人はオサークであると判明したのだ。どうやら使用人である彼女をその下卑た欲望の標的にし、暴行を加えようとすると抵抗され、その拍子に殺したとのあらましだった。
「認めない!認めないぞ!ぜんぶ奴が、アルターがやったんだ!ほら、憎たらしい顔をしているだろう!絶対に奴が犯人だ!」
オサークは唾を飛ばしながら激昂し、幼稚な反論を並べるが、カーディナルは動かない。そして…
「諭示裁定カーディナルの審判結果により…被告人オサーク、有罪。」
ヌヴィレット様の口から判決が下された。オサークは手すりに拳を叩きつけながら怒り狂う。
「奴が!奴が悪いんだ!私のものにならないどころか、あまつさえアルターなんかに躁をたておってからに…!」
観客達はその様子を冷ややかに見つめていた。だが、オサークは引き下がらずこんな事を言い放った。
「決闘だ!決闘で無実を証明してやる!」
会場はざわついた。なぜか。それは、オサークの来歴に由来した。オサークはかつて警察隊の長官を務めており、当時は実力者として知られていた。明らかに有罪であったのだが、決闘の腕は確か。判決が覆ってしまうかもしれない。
「…被告人の申し立てを受理しよう。ではオクタヴィア殿、決闘代理人を指名してくれ」
ヌヴィレット様が一瞬押し黙った後、平たい声色でそうオクタヴィア様に告げた。
「ええ、分かりました。では…
クロリンデさん、頼めますか?」
ーーーーー
「…その日に私は先輩の記録を抜かして、“常勝不敗”になったんだ」
「す、すごい…まるで小説みたい…!」
事のあらましを話し終わると、メンタは目をキラキラと輝かせながら可愛らしい手を頬に当てた。
「あの時彼が私のことを信用して託してくれたのが嬉しくてな…最初は悪印象が多かったが、もうそんなものはなくなった」
やっと落ち着いたのか、スヤスヤと気持ち良さそうな寝息をたてる彼を見る。愛らしい彼の顔を眺めているといつの間にか夜を明かしてしまいそうだ。
「素敵です…その時好きになったんですか?」
「ああ、少し恥ずかしいが…」
「きゃー!応援しますー!」
メンタはもじもじとしながらそう言った。そして、彼の方を見てこう続ける。
「…そういえば最近、変わりましたよね、オクタヴィアさん」
「まあ、確かに服も変わったしな」
「あ、いえ、そうではなく」
彼女のそんな言葉に疑問符を浮かべていると、彼女は憂いを帯びた表情で言葉を紡ぐ。
「オクタヴィアさんは…貴方もわかると思いますけれど、数百年間は生きています。純粋な“人間”ではないんです」
「ああ…?人間ではないのはわかっていたが、“純粋な”とはどういう?」
「…貴方になら話してもいいかもしれませんね」
彼女は意を決したように口を開く。
「
「メリュジーヌに、似た…?」
「でも、この間から“わたしたちに似た気配“が濃ゆくなったような…そんな気がして、一部のメリュジーヌに心配されているんです」
「もし、いつか彼の“人間の気配“が無くなってしまっても、貴方は気にかけてあげていて…味方でいてあげてください。わたしたちメリュジーヌからのお願いです」
ーーーーー
自室に入り、ベッドに腰掛ける。肩に入った銃弾をピンセットで抉り出し、止血と応急処置をした。
あれだけの騒ぎを起こしてしまった。が、ダメージは軽い。なぜなら、あの中には記憶の混濁が起こる薬も入れてある。どうせ事が済めば目覚めた時に思い出すし、失敗すれば何があったのかも思い出せなくなるだろう。
…本当なら、今頃は彼と蕩けあう程幸せな時間を過ごせていたのに。あの『公子』への怨みがふつふつと湧いてくる。
ああ、だが、だが私はまだ諦めない。次に帰ってきた時には…
「絶対に、私のものにしてやるぞ…!!!!!!」
ーーーーー
窓から指す朝日で目を覚ました。眩しさの次に感じたのは、身体にずんとのしかかる倦怠感、そして
ああ、確か昨日飲みに行って…あれ、誰と飲みに行ったんだっけ。二日酔いの頭で考えながら状態を起こすと、上を着ていないことに気がついた。
…いや、上どころか下も着ていない。産まれたままの姿。あれ?
僕の他に、ベッドの上のシーツの膨らみが
「ん…おや、起きたのかオクタヴィア。おはよう」
「えっあ、っ、ぉ、く、くくくくくクロリンデさん!?!?!?!?!?」
バキィッ!*1「オクタヴィア!昨日襲われてここに運ばれたというのは本当…か…」
そちらを向けは、硬直したフリーナ様が立っている。彼女の目に映るのは、裸の僕と同衾するクロリンデさん*2。
「あ」「あ」
「うわァァァァァァア!!NTRだァァァァァァア!!!!!!!!!」
頭を抑えながら蹲るフリーナ様の誤解を解くのに、僕たちは半日をかけたのだった…
【To Be Continued…】
オクタヴィア:薬盛られてドナドナされかけて、助けられて誤解された。彼が起こした告訴は有罪を、弁護は無罪を100%勝ち取る。
クロリンデ:薬のせいで昂って勝手に“出て“しまったオクタヴィアの下着を脱がせた。手は出していない。手は出していない(大事なことなのでry)。え、なんで汚れてることに気が付いたかって?…(冷や汗)
フリーナ:脳が…脳が破壊される…っ!!!!!
タルタリヤ:翌日の号外の見出しは『被害者を救う仮面闘士!司法の敵か、それとも味方か!!』。
メリュジーヌたち:オクタヴィアのことが心配。
最後にちょっと不穏を香らせたのちギャグで台無しにしてしまう。これが私の流儀(殴)。
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水の都のクラーケンif〜夜の深境螺旋〜 見たい?
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稚拙でもいいから見たいでござる。
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稚拙なら書かなくてもいいぞ。
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エッチなのはダメ!岩喰いの刑!!!