お気に入り809件ありがとうございます。もうすごくすごいです(語彙力)。
年末年始で立て込んでしまい、満足に筆の取れない状況にありました。
これから少し更新が遅れるかもしれませんが、ご了承ください。
気を取り直して、今回も不穏テーヌを香らせていきたい。
もしよろしければ感想・評価・お気に入り是非にお願いします。
「おや、珍しいですねフリーナ様。なにか良いことでもあったのですか?」
「キミい…僕だって早めに起きることはあるさ。それより、だ」
ある朝のことである。いつものようにフリーナ様を起こしに行くと、彼女は自力で起床しベッドの上で何かの紙を読んでいた。彼女は話を切り、紙をこちらに見せてくる。そこにはこう書いてあった。
『異郷ノ旅人、スメールヲ出立セリ。到着予想ハ○日ノ午後』
「異郷の旅人…ああ、新聞でけっこう大きく写ってたことがありましたっけ。確か各国を回って次々と問題解決をしていってるとか」
「そうさ!ずっと追いかけさせていた諜報員から連絡が来てね。ちょうど明日の午後には到着する予想なんだ!」
「…で、会いに行きたいと」「さすが僕の補佐官、話が早くて助かる」
ふふん、と胸を張って彼女は続ける。
「異郷の旅人は各国でも影響力があったからね。前もって顔を合わせておくことで、僕が彼女らを見定めようというわけさ!水神として、国に何かあると困るからね!」
「ふむ…まあ、彼女らがやってきたことはどれも少しばかり大きすぎる業績ですし、それだけの力を持つ相手に釘を刺しておける、というのは良いかもしれません」
「その通り!名案だろう。僕は用意周到だからね…っ!」
ふんすふんすと興奮冷めやらぬ様子のフリーナ様の様子を伺う。こういうことを言ってはいるが、彼女は旅人たちのことが結構好きな様子。一度会ってみたいんだろう。少女らしい可愛いところもあるフリーナ様は、僕としては好ましく思う。
「それでは、明日の予定は空けておきましょう。巡水船と護衛の手配もしておきます」
「ありがとうオクタヴィア!彼女らに僕の威厳ある姿を見せつけるのが楽しみで仕方がないよ…!」
とても楽しそうなフリーナ様に、僕も自然と笑顔になる。僕は手帳の予定表に書き込みをしながらふと、フリーナ様に聞きたいことがあったのを思い出した。
「そういえばフリーナ様…先日の…えっと、僕が攫われた?らしい事件についてなんですが…」
「えっ…お、思い出させないでくれ!の、脳みそが…!」
「あっあっごめんなさい、怖いからやめて耳から変な汁出さないで」
僕の問いにあの日起こった“事件”を思い出したのか、彼女は狼狽えて踞ってしまう。どうにか彼女を落ち着かせベッドに座らせた。
「ふう…すまない。…あっ、いやその、僕だって好き好んで部下のその…せ、性事情を知りたがっているわけではないんだよ?」
「やめてください…本当にやってないんですってば。クロリンデさんもそう言ってたでしょう」
「う…そ、そうか…本当に気をつけるんだよ!?何かあってからじゃ遅いんだからね!?!?!?」
僕の肩をわっしと掴みぐわんぐわんと揺らす彼女は、すごい剣幕でそう言ってくる。
「わ、かりましたよ…」
「…まあいいさ。で、事件についてだったね」
「はい。あの時僕を助けた『仮面闘士』についてなんですけれど」
「『仮面闘士』…ああ、あの日の朝刊に載ってたあれかい」
『仮面闘士』。紫の玉が嵌め込まれた赤い仮面に凶悪な武装と雷元素力を有する、僕を誘拐犯から助けた…らしい人である。彼の正体については世の中での議論のタネになりつつあり、“またファデュイかこわれるなぁ説”と“科学院の爆発事故により大量のプネウムシア対消滅エネルギーを浴びて力を手に入れた冴えない一般人説”が有力()である。
「仮面闘士、あれから姿を見せていないらしいんです。助けられた身ですから、一度お礼を言いたいんですけれど」
「ふーむ、正体もわからないし難しいだろうね。しかも、君はあの日誰とディナーに行ったのかも覚えていないときたんだから」
「診断によると、意識や記憶の混濁が起こる薬を飲まされていたようですしね…思い出そうとするとなんだか頭痛がするんですよ」
僕は記憶の断片に意識を集中させようとするも、頭痛のせいで長くは続かない。思い出せるのは風味豊かな、溶けた蝋のように舌の上を滑る葡萄酒の香り。そして鼻腔にこびりついた艶やかな香水の香りのみ。
「当分は一人で外を出歩けないかもですね…ハア、なんで立て続けにこういうことばっか…」
「まあそういう日もあるさ。安心したまえ、事務仕事をするときはヌヴィレットが近くにいるだろうし、僕の近くにいれば安全さ。なんたって神の膝下にいるんだ、手を出そうなんて輩はいないはずだ!」
フリーナ様は両手を広げ得意げな顔でそう言った。その笑顔を見ることで僕も自然と笑顔になる。
「では、本日も宜しく頼みます、フリーナ様」
「こちらこそだよオクタヴィア」
ーーーーー
かつ、かつ、と靴の踵が石畳を踏む。下にある民草はなんだなんだと上を見上げ、フリーナ様のお姿を見つけると感激の表情を浮かべた。手すりに立ち見下ろすフリーナ様の側につき、彼女が足を踏み外さぬよう警戒しながら共に下を見た。フリーナ様の視線の先には、人物がふたり。
一人はきらめく金髪に、所々が水色に光る見慣れない服を着た少女。もう一人…一人?は、彼女の傍らにふわふわと浮かんでこっちを見上げる、白髪の幼子。
この二人が、世間を騒がす“異郷の旅人”である事はすぐに察することができた。
「コホン…富める者も貧しき者も、グロs…グラスを持つ者も持たざる者も、杯を掲げよう!グラスのない者は代わりに腕を」
少しだけ噛みながらも、彼女は“神”らしく威厳を放ちながら歌劇風の言い回しで喋り出す。民はその言葉を受け喜んでいるようだが、旅人たち二人は怪訝な顔をしている。その様子にフリーナ様は少しだけショックを受けたようで、ちらっと僕の方を見た。僕がガッツポーズを送ると、彼女は安心した様子で続ける。
「君たち二人がいくつかの国を派手に荒らしてきたことは、もう耳にしているよ。だがそれでも歓迎しよう。いや、それどころか、この僕が!直々に出迎えてあげようじゃないか!」
フリーナ様は得意げに腕を組みさらに続ける。
「此度の謁見は僕の力と権力を仰ぎ、尊んでもらうためのものだ。賢きものは、常に正しき旗の下へ集う。これ以上に英明なことなどないだろう?…ようこそ、水の国へ!君たちの旅の価値と意義を、このフォカロルスが認めよう!さあ、思う存分、快哉を叫ぶといい!」
そんな言葉で締めたフリーナ様に歓声が上がる。彼女はそれを浴びて少し機嫌が良さそうだ。だが、旅人たちは何故か困惑した様子でこちらを見ており、何やら話し合っている。それが終わると、浮かんでいる白い方がこちらに話しかけてきた。質問の命題は、『なぜ自分たちのことを知っているのか』。
フリーナ様はそれに尊大な様子で答える。僕から見える位置にいた諜報員は得意げな顔をしているが、旅人二人はまだ表情が渋い。…フリーナ様の後ろ姿から困惑が見て取れる。神を畏れない相手とは珍しい…。
フリーナ様と旅人たちの様子を観察しながら、僕は最近の出来事に思いを馳せる。蛸足が生えてからは色々あった。公爵とのスパー、誘拐事件…クロリンデさんはあの日からいっそう距離が近くなった気がする。
そして直近では父の墓で『ダインスレイヴ』さんに会ったこと。あの人について調べてもらうよう部下に頼んでみたはいいものの、未だ成果は芳しくない。あの気品のある佇まい、どこぞの貴族か何かと考えた方が自然だけど…。
あの人は僕の父を知っているらしい。だが父に僕という息子がいたとは知らないようで少し動揺していそうだった。…じゃあ、
そう、僕は母親の顔を見たことがない。父も母親については話してくれなかったので、未だ謎のままである。父が定命であるなら、母の方が長命の種族であるのだろうか…?
そんな考えをぼうっと続けていると、にわかに民衆が沸き立つのを感じ取った。歓声に紛れる言葉を聞くに、『旅人と水神の劇的な対決』を望む空気になってきているようで、フリーナ様はそれに乗ることにしたようだ。
「いかにも。僕はこの旅人と…歴史的な対決をするつもりだ!」
その言葉を聞いた途端、旅人は片手剣に手をかける。…神に挑むを恐れぬ所業、まさしく各国を救ってきた英雄だ。
「い、いきなりやり合うのかよ…!なんか展開が早すぎるような…」
「…やってみよう。」
旅人二人はそんな掛け合いをしている。…民の前で、水神に挑む、ねえ…あまり感心しない。
「すみませんフリーナ様、少しこちらに」
「オ、オクタヴィア…!ぼ、僕は今ちょっと考えてるんだ!後にし…て…」
「当初の予定に対決は入ってませんものね…まあ大丈夫です。こちらに降りてください。あとは私がなんとかしましょう」
僕の顔を見てなぜか固まったフリーナ様をお立ち台から下ろすと、僕は欄干に手をかけ…
「ひえっ!あいつ飛び降りたぞ!!」
白い子や民衆の悲鳴が聞こえてきたが関係ない。風を感じながら自由落下し、触腕で着地の衝撃を和らげる。着地点の損傷もなし…だいぶ触腕の扱いが上手くなってきた。
僕は背中に背負っていた大剣をゆっくりと抜き、先に出ていた警察隊の間を抜けて旅人達の方へと一歩一歩踏みしめて近づいてゆく。その度に、腹の底で何かがぐつぐつと煮えているような、心臓が熱を持つような感覚がする。旅人はこちらを見据え、剣を握る力を強めたようだ。僕は彼女に向けて口を開く。
「民衆の前で神に剣を向ける…流石は噂の旅人さん達だ。実力に相当な自信があるようですね」
「お、おまえは誰だ?なんで飛び降りてきたんだよ!」
「水神補佐官の名前を調べればすぐに出ます。…そんなことよりも、貴女はその剣を下ろすつもりはないのですか?」
この問いに彼女は、“神との対決は私にとって価値のあるもの”と返してくる。
「はあ、正真正銘の闘士なんですね、貴女。では、少し強めに言いますね。…民衆の目の前で、我が主であるフリーナ様を愚弄するか」
背中から触腕を生やし、元素力を充填する。金属装甲の隙間から青い焔がゆるゆると吹き出し、僕の背中越しに光と熱を伝えている。彼女らは驚いた様子で僕の背中をまじまじと見ているが、今は説明の暇などない。
「もし神に挑まんとするのなら…まずは僕から倒していk「もういい!そこまでにしろ、オクタヴィア!」…フリーナ様?」
フリーナ様は再度欄干に立ち、こちらに静止を呼びかける。僕が振り向くと、フリーナ様は腕を組み咳払いをし、演説を始めた。
「じつは、先ほどから考えていたんだ…この時代の人々は常に新しい刺激を求める。単なる武力衝突では、飢えた魂を満たすことはできないと」
「…つまり?」
「であれば、だ…“正義の神”であるボクが、この異郷の旅人と
「…なるほど」
流石はフリーナ様だ。上手く血の流れない方向へと取りなすとは…先走ってしまった自分が恥ずかしい。腹の熱が一気に鎮まった。
「失礼しました旅人様。先程の非礼をお許しください…」
「こっ、こいついきなり落ち着いたぞ…」
困惑した様子の白い子を他所に、僕は旅人に名刺を手渡す。
「こちらは私の名刺です。以後お見知り置きを…」
踵を返し、こちらをじっと見ている警察隊員達に一言謝ってから階段へと向かう。下に控えていたクロリンデさんと目が合った。彼女は僕を怪訝な目で見つめている。返す言葉もなく、僕はフリーナ様達の言い合いを聞きながら、定位置へと戻るため歩き出した。
ーーーーー
「…な、なんだったんだ?」
私の隣でふわふわと浮かんでいる白い生き物…パイモンが心の底からの困惑を表した。
「フォンテーヌにやっと着いたと思ったらいきなり水神が出てきて、しかも側近を怒らせて…ぅう、思い出しただけで震えが止まらないぞ…」
パイモンの言葉を他所に、私は彼に…私たちに今にも斬りかからんとした、あの少年に渡された名刺を見る。
『フォンテーヌ邸 パレ・メルモニア 水神補佐官 オクタヴィア・ドゥテーヌ』
大きな文字でそう書いてあった。他には細々とした連絡先や仕事場の住所が記載されている。用ができた時はこれを頼りに尋ねればよさそうだ。
名刺を眺めながら考えていると、ふと、自分たちと一緒にいる魔術師兄妹の兄…リネも顎に手を当て何かを考えているようだ。パイモンもそれに気がついたようで、そちらを向いて声をかける。
「ん?どうしたんだリネ、考えごとか?」
「うん?あ、ああ、そんなところ」
「どうしたんだよ…何か変なことでもあったのか?」
パイモンは腰に手を当て、話を掘り下げるつもりで聞く。
「変、というより、珍しいなって思っただけ」
「珍しい?確かに、神がいきなり人前に出てくるなんてのは珍しいだろうけど…」
「いや、僕が珍しいなと思ったのはオクタヴィアさんの様子のほうだよ。彼があんなに凄んでくるなんて、とっても珍しいことだよ」
“オクタヴィア…さん?”
“会ったことがあるの?”
私はリネがオクタヴィアとやらに敬称を付けて呼んでいることに気がつく。気になった私は少し会話に入ってみることにした。リネは私の問いに腕を組みながら答える。
「うん、僕たちの家の用事で何回かね…。その時も優しく話してくれるし、怒ったところなんて見たことないよ」
「…私達にもフレミネにも、他の子達にもよくしてくれてる。フレミネや一部の子はお父様よりもあの人が好きだって言うこともあるの」
「ハハ…それは子供ながらの無邪気なものだと思うけどね」
リネの隣に立っていた魔術師兄妹の妹、リネットも会話に入ってくる。彼らの話を聞く限り、いつもあんなに怖い人物では無さそうだ。
「そ、そうなのか…でも、そんなヤツを怒らせちゃったってことは、オイラたちとんでもないことをしちまったんじゃないか…!?」
“会話の中で、何か…”
“彼の『地雷』を踏んでしまったのかも”
「そ、そうかもな…次は気をつけないと…まるで胃袋をギュ〜〜ッ、って掴まれてるみたいな気分だったぞ…」
パイモンはお腹をさすりながらそう呟く。…確かに、あの子と相対した時のプレッシャーは尋常ではなかった。こちらを冷たく覗く、爛々と輝く8の字の瞳に背中から立ちのぼる青い炎の触手。一度捕まれば灰になるまで離さない、そんな意志を滲ませて蠢いていた。次会った時は、もうあのようなプレッシャーは出さない…と、信じたい。
「ところでリネ、お前ってすっごいマジシャンだったんだな!歌劇場でパフォーマンスとかやるのか?」
パイモンが興奮した様子で話を切り替えた。リネは少し照れくさそうに、今度歌劇場でパフォーマンスをすること、そしてそこに私たちを招待してくれる旨を伝えてくれた。私たちは歌劇場にも赴くつもりだったのでちょうどいい、と厚意に甘えることにした。
だが、ただ甘えるだけでは申し訳ないので、リネ達の用事を手伝うことにした。彼らは『マジックポケット』という道具を人々に配って欲しいと言った。
「えっ、こんなマジック道具で何をするんだよ?
「うーん…前に『予言』について聞いてきたでしょ?まずはそれについて詳しく説明しようか…」
リネは少し背筋を伸ばして、フォンテーヌに伝わると言う『予言』について語り出した…。
「いつからかフォンテーヌに、こんな予言が囁かれるようになった…
ーーーーー
フォンテーヌ人は皆、生まれた時から罪を抱えている。正義の国フォンテーヌがどれだけの審判を行おうとも、それが消えることはない。
フォンテーヌの海面が上昇し、罪を背負いし人々が海水に飲み込まれるまで…
人々はみな海の中に溶け、全ての罪は雪がれる。そして自らの神座で涙を流す水神にも、
継承者は悉くを薙ぎ払い、文明の跡は残らない。いつしかフォンテーヌと言う名も忘れ去られ、海は永遠に凪ぐことだろう…。
ーーーーー
翌日、エピクレシス歌劇場にて。楽しげなマジックの舞台は、一瞬にして殺人容疑の審判の場へと変わってしまった。
被害者はマジックのアシスタントであるコーウェル。そして、マジックの協力者に選ばれた観客の少女すら行方不明になったのは、かの有名な『連続少女失踪事件』を想起させるには十分であった。
「もちろん、君のアリバイを崩すだけでなく、別の武器も用意してある。僕達はもうとっくに準備万全だよ。世の中に根拠のない自信なんて存在しないのさ」
僕の隣に立つフリーナ様が、腰に手を当て、自らの優位を示すように容疑者……リネとリネットを追い詰めていく。
「キミとリネット君は………“
フリーナ様の口から、僕が危惧していた言葉が放たれた。リネ君は一瞬驚いたように目を見開いて…僕を睨む。僕は、彼らがファデュイ系列の孤児院出身なのを知っていて、尚且つ水神に一番近い人間だ。フリーナ様がそのことを知ったのは僕経由、というのが一番手っ取り早い結論だったのだろう。
「“壁炉の家”だって!?」
“二人は…ファデュイだったの!?”
彼らと仲を深めたのだろう、弁護人を名乗り出ていた旅人達は驚いた様子で彼らを一瞥した。彼女らはこれまでの旅路でファデュイには悪印象しかないだろう。その反応も当然のものだ。
『どうりでそんな事を…』『例の失踪事件はファデュイの仕業だったのか…』『じゃあ、舞台上の予期せぬことも事故とは…』
観客達のざわめきに合わせて、諭示裁定カーディナルが音を立てて傾く。
…ああ、嘆かわしい。出自で善悪が決まってたまるものか。これでは…これでは
「フリーナ様、発言の許可を頂きたく」
「なんだいオクタヴィア…言ってみなよ」
自分の方へ世論が傾いていくのを愉悦の表情で感じていたフリーナ様は、勝ち誇った顔のまま僕の方を見る。
「貴方様の意見を否定するような形になってしまうことをお許しください。…あの子達の身分が、この件と関係があるのかが不確定です。その系列の孤児院出身だから組織の一員、というのは早計では…?」
「ふーん…優しいんだねオクタヴィア。だったらリネ君、皆の前であの一分間の出来事を、思う存分最初から最後まで説明するといい。今のキミにとっては疑いを晴らすことが最優先、言えないことなんてないはず…」
僕の言葉を流して、フリーナ様はリネに向き直る。
「まあ、脚本がすでに矛盾しているのなら…話は別だけれどね」
フリーナ様のその言葉は、苦い空気の流れる旅人達の間の亀裂へと染み込んでいくようであった。リネ君がヌヴィレットの質問を…カウントダウンの最中に地下道にいなかったこと、そして自分たちが壁炉の家出身である旨を認めると、観客達はにわかに沸き立った。
『やっぱり!』『ここまで来たらもう判決を下しても…』
口々にそんな事を言う。カーディナルはまた傾いてしまいそうだ。
そんな時、旅人達が“依頼人とのすれ違いがあった為、休廷し話し合う必要がある”とヌヴィレットに要求すると、観客の一部は少し苛立った様子でそれを否定した。が、ヌヴィレットはそれを諫め、一時間の休廷を認めた。
「そんな事実を知ってもなおリネ君の弁護を続けると言うのか…どうやら、僕のお相手の“プロ意識”は想像を絶するようだ」
「僕のいとしい観衆たちよ…勝利の喜びは、もう少し心の奥に沈めておこうじゃないか。ハハハッ………!!行こうかオクタヴィア。あとで君の意見も聞かせておくれ」
フリーナ様はそう締めくくり、僕を連れてその場を後にする。ざわめく観衆は、リネ君たちを犯人だと決めつけている。状況証拠的にそう考えざるを得ないし、身分を隠して旅人達と接しただろう二人にも落ち度はあるが…やはり、人間の心理は恐ろしい。
あの家がただの孤児院でないことなんてとっくに知っていたはずなのに、僕はそれを直視できずにいる。
この国の法廷は、常に喧騒の中にあった。熱情、嘲笑、激憤、恐慌…ここ五百年で、飽きるほどこの空気に晒されてきた。だけれど…だけれど。
やはり、この国の審判は嫌いだ。
【To Be Continued…】
オクタヴィア:壁炉の家の子達は信じてあげたい。…ヌヴィレットは人間の醜さを垣間見ながらも審判官としての役目を全うしている。だが、同じだけ醜さを浴びていても、彼のようにいられはしなかった。精神が未熟。
リネ:“あの人が僕らの出自をバラしたのか”と憤慨したが、その後のオクタヴィアの言葉で疑いは薄れた。「…僕が召使になる時に、彼はどうなっているんだろうね」
リネット:リネと心境は概ね同じであるが、オクタヴィアを疑う気持ちは強い。「お父様は、あんな人に懸想されているの…?」
フレミネ:話中では不在だが、壁炉の家では二番目にオクタヴィアに好感を持っている。「一度、海の中で彼を見かけたんだ。神の目もないのに、とっても優雅で軽やかな泳ぎで…憧れちゃうよ。その…お父様には内緒にしてね?」
フリーナ:信頼する補佐官と意見が割れたと思ってビクビクしていた。
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アンケート結果を踏まえ、R18版を試しに執筆してみることにします。完成したらこちらにお知らせをしますので、見たい方は自己責任で…。
では、さらば。
水の都のクラーケンif〜夜の深境螺旋〜 見たい?
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稚拙でもいいから見たいでござる。
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稚拙なら書かなくてもいいぞ。
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エッチなのはダメ!岩喰いの刑!!!