しおりが更新されているので見られているのは分かるんですが、感想が少なくて人が離れたかとビクビクしていました。どんな意見でも大歓迎ですので、気が向いたら感想評価よろしくお願いします…。
オクタヴィアは、ただの純朴ショタではないよ。
「まさかあんなことまで掘り出されちゃうとはね…いやあ、困っちゃったよ。…ごめんね、旅人、パイモン」
「…………ごめん」
休廷が言い渡されてからすぐ、歌劇場のとある場所でのこと。弁護人である私達に対して身分を隠していたことを謝罪したのは、魔術師兄妹のリネとリネット。
彼らは申し訳なさそうに、すこし俯いている。そんなに謝るなら、最初から言っておいてくれれば…いや、それは無理だったのだろう。ファデュイの執行官のうち3名を下した私に名乗り出るのは、それ相応の不信感を煽り自らの危険を誘発するものだ。だが、それとこれとは話が別なのだ。
「あれだけお前らを信じてたのに!調査する時、オイラたちの推理はぜんぶ、お前らが犯人じゃないって前提の上に成り立ってたんだぞ!」
私の相棒も、こうして本気で怒っている。この件のお陰で、私達は友人を簡単に信用できなくなってしまった。裏切られたのだ、仕方のないことだろう。
リネは追って謝罪し、弁明を始めた。ファデュイは一枚岩ではないこと、自分たちは人助けをしたいということ、この国の問題に対して感情的には同じ立場であるから、身分さえ明かさなければいい友達になれると思った、と。
…だが、相手は“壁炉の家”の人間だ。引き取られてからファデュイのエージェントとしての教育をされてきた人間。簡単に信用することなどできるはずがない。
「真実は確かに重要だよ…でも、全ての真実をいつも明らかにしてしまえば、僕たちは多くの力を無駄に使うことになる」
“それが嘘じゃないって、誰が証明できる?”
私はそう、にべもなく突き放した。
「そうだね…だから君に…」
リネが何かを言おうとしたその時だった。リネが私の方を…いや、私の肩越しに何かを見ている。見れば、リネットまで同じ方向を、珍しく目を大きくして見ていた。
「うん?二人ともどうしたんだよ。こんな大事な話の途中によそ見するなんて信じられないぞ。オイラたちの後ろに何…か…」
そう言ってパイモンが振り返ると、彼女も何かを見て言葉を止めた。私も続いて振り向くと、そこには人が立っていた。烏羽色の髪に青い瞳の、私たちが今闘っている最中の相手…水神フリーナの補佐官、オクタヴィアがそこに立っていた。
「…私が証明しましょう」
彼はゆっくりと私たちの側に歩いてきた。先日の剣幕が嘘のように穏やかな声色だ。だが、彼はリネ達の有罪を主張する水神の側近だ。
“信用できるとでも?”
「…すみません、あの時の事をまだ…いや、確かに当然ですね。私は原告側ですから…」
「そ、そうだぞ!いきなり歩いてきてなんだよ!オイラたちを貶めようったって、そうはいかないんだぞ!」
パイモンは手足をばたばたと振りながらオクタヴィアを威嚇する。オクタヴィアは終始困り顔で私たちの方を見つめていた。
「私は…私はこの任についてからずっと、フリーナ様の方針で“慈善活動の支援”をするように、と仰せつかっておりますゆえ。壁炉の家の支援もそのうちに入っております」
「ええっ!?じゃ、じゃあフォンテーヌはファデュイの味方をしてるってことなのかよ!!」
「ファデュイの味方などしているつもりはありません。ただ“孤児院の支援”をしているだけですから」
オクタヴィアは毅然とした態度でそう言い放った。なんと白々しい…言葉にどこか含みがある。こいつはファデュイの仲間かもしれない。
「…立場や生まれ、所属のみで人が差別されることなどあってはならない。これは私の心情でもあります。…私が誓いましょう。壁炉の家の“子供達”はファデュイに協力などさせられていません。
“貴方が…そうさせた?”
神妙な面持ちのオクタヴィアが気になることを言った。私が素直に疑問を口にすると、オクタヴィアは腕を組みながら答えてくれる。
「もちろん、かつての壁炉の家は孤児をファデュイ構成員に育て上げる場所だった、という事は承知していました」
「ですが…25年前、私は壁炉の家の館長と“取引”をしましてね。その時に『孤児達は、孤児院を出たらファデュイとは関わらせず自由にさせる』と契約させました」
「じゃあ今の壁炉の家は、少なくともフォンテーヌではただの孤児院ってことなのか…」
“…私たちはどうやら…”
“重大な誤解をしていたみたい”
「まあ、弁護人に嘘をついていたのは褒められたことではありませんけれど」
肩から力が抜けてゆく。これまで壁炉の家の関係者と関わる中で悪い噂も数え切れないほど聞いたが、それならば話も変わってくるというもの。謝罪をしようとリネ達の方を振り向くと、彼らは未だオクタヴィアを睨んでいる。何か、様子がおかしい。
「…貴方がどんな人間か、僕は知っていますよ。オクタヴィアさん」
リネは突然、オクタヴィアにそんな言葉をかけた。怪訝な顔をするオクタヴィアに、リネは続ける。
「ああ、もし私が原告側にいることが不満なら大丈夫。私は君たちのことを信じていますから、きっと容疑を晴らして…」
「貴方が壁炉の家の院長…前の“召使”と契約を結んだのは知っています。ですが、まだ話していないことがある」
「…話していない事?」
「心当たりがないんですか?…貴方はその契約を取り付けるにあたって、
リネは眉間に皺を寄せ、怒気を強めてそう言った。パイモンと私は意味がわからず戸惑うばかりだが、オクタヴィアは少し反応を返した。
「…まさか、あの時の話ですか」
「ま、待てよ…いきなり何の話だよ。せっかく誤解が解けたってのに…オイラわかんないぞ…?」
「旅人、パイモン、よく聞いて。こいつはフォンテーヌのNo.2の立場を恣にしておきながら、残りの幸せのために1人を切り捨てたんだ…!!」
リネットはどんどん加熱していくリネに戸惑いを見せながらも、まだ止めには入らない。その間もリネはオクタヴィアを睨み続ける。
「貴方は契約を取り付けるにあたって、1人の有望な孤児が“前のお父様”と共にスネージナヤへ行く事を交換材料として承諾した…貴方なら彼女も救うことができたはずなのに!!」
「…ッ」
オクタヴィアは腕組みを解きあからさまに狼狽える。…彼なら救えた?孤児を犠牲に…?
「…貴方は私の事を買い被りすぎです。当時の院長は政治的にも物理的にも高い実力を誇っていた…非力だった私では、完璧に押さえ込むことができなかったんです」
「じゃあ水神様は?最高審判官様も頼ればよかったじゃないか!」
「それでは各国の重役同士の外交問題に発展してしまいかねません。“取引”で済んだだけで穏当だったんですよ」
「…っ、情けない奴…」
「政治もわからない子供に言われたくありません」
オクタヴィアは背筋を再度伸ばし、淡々と答えてゆく。リネはだんだん苦しそうな顔に変わっていき、口論に終わりが見えてきた。
「…私との口論に時間を割く余裕があるならいいですが…。孤児院のこともありますし、私は貴方達がこんな事をしでかしたとは思いたくない。きちんと無実を証明してくださいね」
オクタヴィアは最後に私たちにそう声をかけ、その場を後にしようとした…その時。
「…伝言があるの、オクタヴィアさん」
「ど、どうしたんだいリネット?」
急に今まで黙っていたリネットが、珍しく強い口調でオクタヴィアに言う。リネは戸惑いを隠せない様子で問うが、リネットは構わず続けた。
「…『いつか貴方の全てを奪う』彼女はそう言っていたわ」
オクタヴィアは一瞬こちらに振り返り…また元通りに歩き出した。
「ええ。奪われる覚悟はとうに済ませておりますとも…」
ーーーーー
殺人事件の第二審。結論から言えば、この事件は旅人達の勝利に終わった。事件の真相はこうだ。
被害者であるコーウェルは、違法薬物の密売組織に所属していた。その違法薬物は、『原始胎海の水』を使用しており…フォンテーヌ人のみを跡形もなく溶かしてしまう劇薬だった。彼はリネとリネットのマジックショーを利用し、実験台の少女を選び、ボックスの中の風船に原始胎海の水を仕込み、溶かし…罪を2人に被せようとした。
だが、ここで誤算が起きた。抽選機に細工をしてまで選んだ実験台の女性は、モンド人のスリである別の女性にすり替わっていた。彼女はボックスに入れられ、上から水をかけられ、下に降りたと思えばカーウェルに襲われ…彼を返り討ちにし、ボックスに押し込んだのだ。彼女は服を着替えて隠れ、コーウェルは証拠隠滅のための水槽の下敷きに…という顛末であった。
戸惑うフリーナ様の目の前で、諭示裁定カーディナルがリネ達の無罪側に大きく傾いた。
「被告人の主張に対して異議はあるかね、フリーナ殿、オクタヴィア殿」
「ぼ、僕は…お、オクタヴィア、何かある!かい!?」
「いいえ。何も言うことはありません、最高審判官」
裏切られたような表情で僕を見るフリーナ様を尻目に、僕は最高審判官にそう答えた。
「…フリーナ様、貴方はきちんと理にかなった推理をしていましたよ。ですが、その…イレギュラーが多すぎました。なにも恥じることはありませんよ」
「その慰めがさらに痛いよ…ハア、異議はない。僕の負けだよ…。全く、わざわざ聞かなくたっていいだろう?僕にだって面子ってものがあるんだぞ…」
しぼんでゆくフリーナ様を支えながら、ヌヴィレット様が事件の顛末を振り返るのを聞く。リネ達の行為や、スリの少女の行為に関しては別途審議がなされるそうだが、まあ、大事にならなくて良かったと思う。
諭示裁定カーディナルが大衆の“正義への信仰”を受け取り、判決をヌヴィレットに提示する。彼はそれをはっきりと読み上げた。
「よって、これにて判決を言い渡す。
被告人リネ、並びにリネットを無罪とする‼︎」
その言葉を皮切りに、向こう側の台は一気にお祝いムードに変わった。だが、判決はまだ早い。まだ重要な問題が残っている。
「では警察隊員ボーン殿、説明してもらおうか。君はどうやってリネ君の鞄から『原始胎海の水』を見つけたのだ?」
そう。この事件で重要証拠物として扱われていた、原始胎海の水。それはコーウェルからだけでなく、リネ君の鞄からも発見されていた。が、リネは無実のはずである。と言うことは、必然的に“リネ君の方は警察隊員がでっち上げた”ということになってしまう。
「そ、そうだそうだ!そのせいで僕は間違った判断をしたんだからな。ここで嘘の証言をしたって言うのなら…いい度胸だな」
フリーナ様は高圧的に、嘘の証言をしたと思われる警察隊員を貶す。
「法廷での嘘の証言も立派な罪です。…刑を軽くしたいか、罪の意識があるならば、正直に答えた方が身のためですよ」
僕は警察隊員に声をかける。フリーナ様の、“正義の神”の言葉によって動揺し、錯乱してしまうのを防止する目的だ。これで落ち着いてくれるといいが…。
僕の言葉が終わってから、ヌヴィレット様は警察隊員に尋問を始める。彼の自白を促す言葉と、フリーナ様の責める言葉に、彼はたまらず喋り始めた。
「わ、私はただ言われた通りにしただけなんだ…!リネに例の事件の濡れ衣を着せ、ファデュイに容疑をなすりつける絶好の機会だ、と…そう上から言われたんだ!!!」
彼は必死にそう訴える。…なんだ?何かがおかしい。普通なら怒気を滲ませながら言うところだったりするのだが…彼からは怯えの感情が感じ取れる。…情報をしゃべるとまずいのだろう。
「そちらのトップはもう、君のことをリスクの一部として見始めているだろう。最も賢明な判断は、警察隊の保護を得るためにも、包み隠さずすべて白状することだ」
ヌヴィレットは彼を見下ろしながらそう告げる。彼はそれを受け、「すべて話す」と彼に答えを返し、ゆっくりと話し始めた。
「原始胎海の水に人を溶かす効果があると知ったのは、うちの
…違法薬物の売買。人の欲望に漬け込んだ、誰も幸せにならない商売。彼らの組織はそれに手を染めている…?
「私たちは随分と儲けさせて貰ったよ…失踪事件も首領が計画したもので、その、首領ってのは…あっ…!?」
つらつらと自白していく最中、彼は何かに気づいたように声を上げた。僕はその声に違和感を感じ…彼の言動の理由に気がついた。
舞台袖に誰かが立っている。そいつは舞台で罪を告白する警察隊員に、何か黒いものを向けて…まさか!!!!
「危ないっ!!!!!!」
僕は瞬時に触腕を生やし、勢いをつけて証言台から舞台へ…彼と舞台袖の何者かの間に滑り込もうとする。
「ッ…ァァァァァァアッッッ!!」
あと数メートルと言うところで、警察隊員は苦悶の声を上げ、身体が泡立ち…跡形もなく溶けてしまった。クソ、遅かったか…!!!
「ひ、ひいっ………!」
“水に…なった”
上の舞台から旅人達の声も聴こえる。が、今は目の前にいる…彼を始末したこいつを捕まえなければ!!
僕は着地と同時に触腕を滑らせ受け身を取り、そのまま発条の要領で刺客の方へと飛び込む。それに反応した彼は懐から瓶を取り出し、僕目掛けて投げつけてきた。放物線を描くそれに僕は反応できず、頭にそれを喰らってしまう。
バリン、と瓶が割れ、僕の身体に瓶の破片と…『原始胎海の水』が浴びせられる。視界が塞がれ、僕はあらぬ方向に顔面から着地してしまう。
「…ッ、オクタヴィア!!!!!!!!」
フリーナ様の叫びが背中から聴こえるが、今は構っていられない。追撃のために強引に顔を拭い、舞台袖を見ると…そこにはもう誰もいなかった。クソ、逃したか…!!!
「うえっ、ペッペッ…ああ、もう少し早く気づいていれば…!」
振り返れば、ステージの水溜まりに浮かぶ警察隊員の服が見える。もう少し早く気がついていればこんなことには…!
「オ、オクタヴィア…大丈夫なのかい?」
気がつけば、旅人達やフリーナ様、ヌヴィレットまで下に降りてきていた。僕に触れようとするフリーナ様を触腕で制してから、僕は行動の理由を説明する。
「彼の様子がおかしくなった時、舞台袖に誰かが立っていたんです。…そいつが“口封じ”をしたんでしょう。あと少しで間に滑り込めたんですが間に合わず、せめて刺客を取り押さえようとしたらこのザマですよ」
びしゃびしゃに濡れたフードを外し、少し舐めてみる。…やはりしょっぱい。胎海の水で間違い無いだろう。そういえば、額もすこしズキズキする。瓶の破片で切ったようだ。
「これも胎海の水ですね。瓶ごと投げつけてきたみたいです」
「な、舐めて確認するなよ!…でも、なんでお前は溶けないんだ…?」
「ああ、僕は一応人間では無いっぽいので…まあ、水神の眷属にも効く‼︎とかだったら僕も死んでたかもしれませんが」
「…そういえば、おまえって500年くらい生きてるんだっけな…パンフレットで見たぞ…」
パイモンがツッコミを入れてくる。ああ、確かに生で確認したのは無神経か…ダメだな、自分でも処理が追いついていない。
「オクタヴィア殿、本当に体調に変わりはないのだな?」
「ええ。まあ、多分額を切っていますが、これは手当すればすぐでしょう。そんな事よりも、警察隊員の彼が…」
僕の言葉に、ヌヴィレット様は警察隊員だった水溜まりを見た。貴重な証言をしてくれるはずだった彼は、今やもう何も話してはくれない。
「事後処理もありますし…着替えて手当てをしたら私も手伝いますよ」
「いや、オクタヴィア殿は一度検査を受けた方が…」
「いえいえ、私はこの通り…溶けてませんよ。身体に変わりもないので大丈夫です」
「…そうか。では、体調に変化を感じたらすぐ報告してくれ」
ヌヴィレットはそう言って、周りの警察隊員に号令をかけ始める。僕は着替えるためにロッカールームへと向かう。フリーナ様はその後ろをついてきた。
ーーーーー
「オクタヴィア…なんであんな事をしたんだい?」
しばらく歩いて人気が無くなってきた廊下で、フリーナ様は悲しそうな表情でそう聞いてきた。一縷の申し訳なさを感じながら、僕は答える。
「私は1人でも多くの人を救いたいのです。彼から情報が聞けなければ、彼だけでなく大勢の犠牲者が出てしまうかもしれなかった」
「でも、結局彼は死んでしまった!もし君がただの人間だったら、君だって死んでたんだぞ!」
フリーナ様は悲痛な声をあげる。
「君は僕の大切な部下で、頼もしい補佐官だ。…君が自己犠牲の末に死んでしまったりなんかしたら、僕は耐えられない…!」
「…それは、申し訳なく思っています」
「…僕は君のことがわからないよ。なんでそんなに簡単に自分の命さえ投げ出せる?」
フリーナ様は俯いて、寂しげに呟いた。いたたまれなくなって、僕は少しだけ答えることにした。
「僕はもう、失いたくないんです。自分の力が及ばず色んなものを失ってしまう。…それがたまらなく嫌なんです」
「…そんな経験をしたのかい?」
「ええ。私も、ただ平坦に五百年間仕事だけをしていたわけではありませんから」
フリーナ様は顔を上げ、僕の目を見つめる。少しだけ目尻に涙を蓄えていて…それを自分の指で拭い、また俯いてしまった。
「…今度、また理由を話してくれ。僕は疲れた…先に帰っているとするよ」
「そうですか。…お気をつけてお帰りください、フリーナ様」
悲しげな背中が遠くへ消えてゆくのを、僕は立ち止まって見送った。…彼女の苦悩の理由が未だ知れないのは…僕の方が、
僕は自らの行動を振り返りながら、新しい服に着替えるべく歩みを進めた…。
「五百年も一緒じゃないか…なあ、オクタヴィア…」
ーーーーー
「旅人!パイモン!ちょっと待って!」
事件も一旦幕を閉じ、歌劇場を後にしようとすると…背後から声がした。声の主はリネとリネット。私たちは振り返り、彼女達に笑顔を向けた。
「ようリネ、リネット!冤罪が晴れてよかったな」
「君たちのお陰だよ…本当にありがとう」
“あなたからの借りを返しただけだよ”
私かそう答えると、リネは改まった表情で胸に手を当てた。
「僕たちがファデュイに近いと知りながらも最後まで弁護してくれたんだ…改めて、リネという一人の人間としてお礼をさせて欲しい」
“…どういたしまして。あなたが無実でよかった”
「おう!また今度、何か美味いもんでも一緒に食べようぜ!」
「あっ、待って!」
私たちはそう返し、そのまま歌劇場を去ろうとすると…また呼び止められた。ジト目で振り返るパイモンにつられて自分も目を細めてしまうと、リネは申し訳なさそうに頭を掻いた。
「ごめん…実は、まだ伝えたいことがあるんだ」
「なんだよ。どこか美味い店でも教えてくれるのか?」
「それはまた今度…。僕が教えたいことは、水神補佐官、オクタヴィアのことだよ」
彼の声色が少し低くなる。
「オクタヴィアがどうかしたか?あいつ、身を挺してまで刺客を捕らえようとしてたけど…」
「…単刀直入に言おうか。オクタヴィア、
リネは眉間に皺を寄せながらそう言った。…先程はオクタヴィアには少し態度が悪かったが、まだ引き摺ってたの…?
「むっ、いちおう庇ってくれてた相手にそんな言い草はないんじゃないか?第一、最初にあいつについて話してた時は別になんとも思ってなさそうだったじゃないか」
パイモンが膨れっ面で腕を組み、リネを叱る。が、リネはそのまま言葉を続けた。
「あの時は話す必要もないと思ってたから…。とにかく、彼奴はとんでもない嘘つきなんだ。だから簡単に心を許さないで」
“…それは、君たちの『お父様』に関係してるの?”
私は少し声を落として言う。彼等の『お父様』…つまり、ファデュイ執行官『召使』は、リネ達とは違い歴とした敵対関係にある。できれば、情報を引き出したいが…。
「ああ、勘違いしないで。僕たちがファデュイに身を置いているのは、僕達みたいな孤児と壁炉の家の利害が一致したからに過ぎない…」
そこから、私たちはリネとリネットの身の上話を聞いた。リネットが売られてしまい、追いかけた先に召使がいて拾われたことも。
「そして、僕たちがお父様に拾われた時、こんな事を言われたんだ…『君と私達の利害は一致しているはずだ。壁炉の家は君を歓迎しよう。君は、ここで裏切られる事もないし、裏切りも一才容認しない…。裏切りとは、された側に最低の苦痛を与える行為だ』ってね」
“…この話が、オクタヴィアを信用してはいけない理由になるの?”
話の結論を急いでしまい、ついこんな事を口に出してしまう。だがリネは不機嫌になる事なくゆっくりと頷き、話を締め括りに入る。
「僕はその時、なぜだか聞きたくなったんだ。お父様がその言葉を、とても悲しそうに言うものだから。…『あなたも裏切られたことがあるのか』ってね。お父様ははこう答えたよ。
『オクタヴィアという男に…一度だけ』ってね。」
【To Be Continued…】
オクタヴィア:一を切り捨て十を救うタイプ。一の中に自分も入る。できる補佐官には敵も多いよ。
リネ:エージェント教育をしっかり受けている。実はオクタヴィアを信用していなかった。あいつは嘘吐きだ…!
リネット:エージェント教育をしっかり受けている。リネほどオクタヴィアが嫌いではないが、やはり不信感は強い。
旅人's:オクタヴィア…いったい何者なんだ?
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よければ感想・評価よろしくお願いします。リクエストのR18版も少しずつ書いてます…!
水の都のクラーケンif〜夜の深境螺旋〜 見たい?
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稚拙でもいいから見たいでござる。
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稚拙なら書かなくてもいいぞ。
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エッチなのはダメ!岩喰いの刑!!!