人になりたかった魔族 作:フリーレンにハマった人
とある集落の外れにある林の中、開けたその場所にて、二人の男女が打ち合っていた。
双方、その手に握るのは木剣。
ただの模擬試合だが、お互いに本気の目で戦っていた。
「─────ふっ!やぁ!」
「……っ!甘い!」
男の連撃を、女が最小の動きで弾く。
「……はぁはぁ、やっぱり強いな、シュネーは」
「──当たり前だろ?残念だけど、ボクと君は根本から違うんだからね」
「落胆するのはまだ早いよ──!」
男は再び木剣を持って肉薄する。
男の一撃目を先ほどよりも強く弾く女。
大きく体勢を崩した彼に、女が木剣を振りかぶる。
しかし、男はまるで用意していたようにすぐさま体勢を立て直し、女の木剣をその手から弾き飛ばし、女の首に木剣を添える。
女はその目を見開き、固まる。
「………………、驚いたよ。まさか本当に、僕に勝てるほどになるだなんて」
「約束しただろ、僕はあなたを超えて、あなたを娶るって」
「ふふふ、そうだったね。それで式はいつ挙げる?……いつ挙げるにしても、まずは君の名前を聞かせてもらわないとね?」
それを聞くと、男は鎧の胸元から大事そうに一本の薔薇を取り出した。
そして、それを女──シュネーへと差し出しながら言う。
「僕の名前はハーヴィ。この通り、貴女への気持ちは変わらなかった。だから、雪のような貴女よ、どうか……」
シュネーは一瞬パチリと目を見開き、そして
「っははは、そこまで畏まらなくても良いのに。でも、そうだね。末長くよろしく頼むよ。旦那様」
そう言って、ハーヴィの頭を抱きしめた。
すると、周囲から歓声が沸き立つ。
そして、木々の背後から他の村人が寄ってくる。
「やっとかよ!」
「良かったなハーヴィ!」
「おめでとう、二人とも!」
「えっ?皆……?なんでこんなところに?」
心の底から困惑した様子のシュネーに、他の村人が言う
「そりゃあ、アンタら2人の恋路を見守ってたんだよ」
「そうそう!シュネーさんは、『ボクに勝てるくらい強くなったら』とか言うし、ハーヴィは名前も教えないし!二人とも相思相愛なのに!」
そう言われて、ハーヴィとシュネーの二人はどちらも顔を赤くしてみあわせる。
そうしてしばらくその場で話し、村人たちが帰った後は二人きりで過ごした。
──────────
そして、次の日
「新婦シュネーは、いついかなる時も夫を愛し続けると違いますか?」
「──はい」
「では、指輪の交換と誓いのキスを」
結婚式は村の広場で行われた。
ハーヴィの手で、指輪が入れ替わる。
いつのまにかシュネーと同じほどまで身長が伸びていたハーヴィのその顔が、シュネーに少しずつ近づき、その距離がゼロになった時、参列した村人たちから拍手が巻き起こった。
「……これからよろしくね。ハーヴィ」
「こっちこそ、よろしく」
二人の約束は、ここに果たされた。