人になりたかった魔族   作:フリーレンにハマった人

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人間の感情ってプラスなものだけじゃないですからね。
人の感情を学び、知るとともに元から魔族にもギリギリあったような
負の感情も明確に人に近い強いものになるわけです。
今話は結構性格を改変したキャラが一人いるので後書きで
何故そうなったのかを書きます。


膨れ上がった心

北側諸国、グラナト伯爵領。

 

「傭兵が多いですね。何かあったのでしょうか?……フリーレン様?」

 

周囲を見渡して疑問を口に出したフェルンとは裏腹にフリーレンは周囲を見渡しては首を傾げている。

 

「おかしい……、北側諸国でアイツの用事がある場所といえばここともう一箇所くらいだし、居るはずなのに」

 

フリーレンの呟きを理解できずに顔を見合わせるフェルンとシュタルクに、フリーレンは思い出したように

 

「あっ、言い忘れてたね。二人が関所で出会った魔族、シュネーはきっとこの街にいるよ。」

 

その言葉に驚く二人にフリーレンはその根拠を述べる。

 

「アイツと最後に会った時、アイツは人を知るための旅をするって言ってた。」

 

フリーレンはきっとシュネーのことを思い出しているのだろう、遠くを見るような目で語る。

 

「そして、その旅の中で人らしい感情を学んで、それと一緒に元からあったアイツの住んでた集落を滅ぼした魔族への憎悪も増して行った。そしてアイツ曰く……その魔族が最後に見られたのがこの辺りらしい。」

 

つまり、彼女にとって怨敵に出会うための手がかりこそがこの街なのだと、そう語ったフリーレン。しかし、次の瞬間持っていたトランクを地面に落として杖を構える。

 

「フリーレン様、街中ですよ」

 

フェルンがそう言うが、フリーレンは目の前の曲がり角を見つめながら

 

「魔族だ。」

 

とだけ言って曲がり角から現れた騎士に囲まれた魔族に『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』を撃とうとするが、騎士に取り押さえられ屋敷の地下牢へと閉じ込められることとなった。

和睦の使者である魔族へと杖を向けた魔術師を数人の野次馬が見つめる中、騎士に囲まれた魔族の一人、少女の風貌をしたピンク髪の魔族を遠くから睨みつける者が一人。ボロボロのローブとフードで自身の容貌をできる限り隠したその魔族、シュネーは路地裏へと消えていった。

 

そこからしばらくして、

フェルンとシュタルクは食事をしながらこれからについて話していた。

 

「この場所に被害が及ぶのは時間の問題だと思います。グラナト伯爵に直訴してフリーレン様を釈放してもらって、魔族を倒してもらいましょう。」

 

そう言ったフェルンにシュタルクは同意する。

 

「……確かにそうするしかねぇか。俺たちが敵う相手じゃねぇしな。あのリュグナーってやつ、とんでもなく強い。それに……」

「それに?」

「あのピンク髪の魔族、何を考えてるかわからなかった。俺も、お前もフリーレンも、もちろん周りの騎士も……誰も見ちゃいなかった。見ろよ、まだ震えが止まらねえ。」

 

そして伯爵の屋敷に行くまでの道中で牢を出たフリーレンと出会い、魔族一人を撃退したこと、魔族は死ぬとチリになるため、魔族が殺した衛兵の罪を着せられれば極刑を免れないため牢を出たことを告げられる。

そして、二人で魔族を殺すこととなったフェルンとシュタルク。

シュタルクは夜中に屋敷へと忍び込み、魔族によって囚われていたグラナトを救出しようとするものの、リュグナーとリーニエに発見される。

 

「帰っていいぞ、小僧。」

 

リュグナーはシュタルクを眼中にすら入れない。

しかし、シュタルクはグラナトとリュグナーの間に立ち塞がる。

 

「どうした?そこをどけ、邪魔をするなら殺すぞ。」

 

と言い放つリュグナーにシュタルクは

 

「やってみろよ」

 

と、返し果敢に攻める。

その速度にリュグナーは一瞬たじろいだものの、

血を操る魔法(バルテーリエ)』によって即座に優勢を取り返す。

 

「急所を避けたか。反応速度もなかなかだ。とはいえ人も魔族も若い奴は短慮だな。無策で無謀だ。」

 

そう言った次の瞬間、背後にいたリーニエの目の色が変わる。

その変化は、シュタルクにはまるで探していたものを見つけたように見えた。

 

「リュグナー様!伏せて!」

「何を──!?」

 

轟音と共に壁が砕け、砕けた先から凄まじい量の薔薇のつるが壁のようにリュグナーたちから、グラナトとシュタルクを隔離する。

 

「……お前、あの時の」

 

リーニエの呟きが薔薇の壁の向こう側から聞こえた。

 

「その勇敢さは評価するけど無謀と勇猛は違うよ、戦士シュタルク。」

 

薔薇のつるが壊した壁から入ってきたのはシュネーだった。

シュネーは丁度外にフェルンがやってきた窓を示すと

 

「ボク個人はここで戦ってしまいたいが、優先すべきはそこの伯爵だろう。早く運ぼうか。」

 

と言って窓を蹴り破って開けた。

シュタルクが伯爵を担いで下に降り、続いて飛び降りようとしたシュネーはその間際に、薔薇の壁を破壊してこちらを捉えたリュグナーの脇腹を自身の左腕から鋭く硬い棘が生え揃う薔薇のつるを生やし、貫いた。

脇腹に刺さった薔薇の棘は内側で形状を変え、リュグナーに深く突き刺さる。

 

「今のうちだよ!」

 

シュネーの合図とともにシュタルクとフェルンも駆け出す。

シュネーはリュグナーたちを撹乱するために別方向へと離脱し、伯爵を医師の元へ届けたシュタルクとフェルン。

二人はこれからどう動くかを城壁にて話し合っていた。

しかしその時、フェルンが、『血を操る魔法(バルテーリエ)』の持ち主であるリュグナーの血がシュタルクの服に付着していることに気がつく。

それを伝えようとした瞬間、『血を操る魔法(バルテーリエ)』によって操られた血が後方から伸びてフェルンを貫く。

フェルンを助けようと斧を構えたシュタルクへリーニエが斧で襲いかかり、リーニエとシュタルクは城壁の下の森へと戦いの舞台を移した。

 

「……信じられねぇぜ、俺は夢でも見てんのか?そいつは師匠の技だ。」

模倣する魔法(エアファーゼン)』によってアイゼンの技を模倣したリーニエにそう呟くシュタルク。

リーニエの技はシュタルクの師匠であるアイゼンのそれであり、そしてアイゼンには及ばないまでも、その一撃は()()()()

しかし、リーニエはシュタルクなど眼中にないといった様子で

 

「お前じゃない。何処……?薔薇の魔族はどこ!」

 

と、切羽詰まったような様子でシュタルクに問いかける。

 

「薔薇の魔族……?シュネーなら俺たちとは別の場所に……」

 

シュタルクの言葉を遮るように森の暗闇の中から声が響く。

 

「ここにいるとも。」

 

暗闇の中でギラリと磨かれた鉄が月明かりを反射し、何者かがそこにいる事実を告げる。

ぐらりと光が揺らいだかと思えば、その持ち主が凄まじい勢いでリーニエへと迫る。

まず初めに影の中から現れたのは光を反射していた正体である剣。

リーニエはそれを視界に捉えると辛うじて斧を構えて防御する。

剣の持ち主であるシュネーは影から姿を表すや否やリーニエの胴を蹴り飛ばす。その勢いでシュネーのフードが外れ、彼女が自身で折った角の痛々しい痕と、雪のように白い髪が顕になる。

そして、呻き声をあげるリーニエへ、シュネーは右手か構えたその剣の鋒を向ける。

 

「待ち侘びたよ。どれほどお前を探したことか……、お前だけはこの手で殺す。この剣に誓ってだ!」

 

名剣とは言えず、それでもしっかりと鍛えられたその剣は、かつてとある集落で彼女を愛した少年の剣だった。

 

「探した、はこっちの台詞。」

 

リーニエは戦斧を構えると、シュネーへと目にも止まらない速さで接近する。三度、鉄と鉄が強く打ち合う音が響き、火花が散る。

三度の激突、そのいずれもリーニエはアイゼンには及ばずともそれに迫るほどの気迫と技を見せた。しかし、シュネーはその全てを剣で軽くいなしてみせた。

リーニエは瞠目し、叫ぶ。

 

「まだ、まだ足りないの……!?」

「その通り」

 

シュネーのローブの内側から薔薇のつるが勢いよく伸びてリーニエの足に絡みつく。リーニエは足に絡み付いたつるのうちでもシュネー本人と繋がっているものを切り落として後退する。

シュネーのローブの内側から先程とは比べ物にならない量の薔薇のつる、そして花がリーニエへと襲いかかる。

リーニエはそれを難なく切り落とすが、次の瞬間薔薇の花が小さく爆発した。

 

「──!?」

 

リーニエは即座にバラを切り落とすと同時にその場から離れるように動きを変える。

そして、少しずつシュネーへと近づき、その体へと戦斧を振るう。

しかし、ガキンと戦斧が固い何かにぶつかった音がして戦斧が止まる。

決して軽い一撃ではなく、人間三人分の胴を切り落として余りある全力の一撃だった。裂けたローブの隙間から内側が月明かりに照らされる。

彼女の体には余すところなく結晶を纏った薔薇が巻き付いていた。

 

「……そんな」

 

その次の言葉を発するよりも前に、リーニエの胸元を剣が貫く。

 

「フリーレンのようには行かないけどね。初見殺し、というやつだよ」

 

シュネーはリーニエから勢いよく剣を引き抜く。

リーニエはチリとなって消える。

ちょうど、リュグナーとフェルンの争いも終わったようで、フェルンがシュタルクの隣に降り立つ。

 

「……それじゃあね。ボクは少し別の場所に用事がある。フリーレンによろしく。」

 

そう言って二人に背を向けたシュネーは、去り際に

 

「シュタルク、前に言ったと思うけど、君は勇敢で……力のある立派な戦士だ。だけどね、何かを守ることと自身の命を等価にしてはいけないよ。残されるというのは、思ったよりもキツいからね」

 

 

そこから数日後のとある集落跡、墓が立ち並ぶその場所に一人の魔族がやって来る。

 

「……仇を打ったよ、これでやっと君達に顔向けできる。復讐なんて、なんの意味もないと思っていたが、人の心を知るほどに……してもいいと思った。まぁ、今回限りだけれどね。取り敢えずこれはもはやボクには無用だからね、君に返すよ。」

 

立ち並ぶ墓の中、一際多くの薔薇が咲き誇るその墓標の目前に、彼女は腰から取り外した剣を突き立てる。

 

「ボクはもう少し人を知りたいと思う。そうして心を知りたいと思う。そうして初めてボクは人になれる。だから、そっちに行くのはもう少し先だ。……待っていてくれたら嬉しいよ。そうしたらボクは、君を愛せるボクになって逢いに行くから。」

 

墓標に後ろ髪を引かれる思いがありながらも、背を向けて歩き出す。

そんな彼女を祝福するように追い風が吹く。

彼女の周りを薔薇の花弁が舞い散り、彼女の進む道に赤い絨毯を敷き詰める。

魔族である彼女が人になる事などできない。しかし、それでも少しでも近づこうともがく彼女の旅路はまだ続く。




書きたかった部分を大体書き切ったので本編はこれで一旦完結とさせていただきます。(番外編等は時間があれば書きます)
最後に色々詰め込みすぎたかも知れませんね。
読みづらかったらすいません。
前書きで言っていた改変したキャラですが、リーニエです。覚えてらっしゃるか分かりませんが、彼女は第一話の時点でシュネーが暮らしていた集落を滅ぼしておりまして、その時点で少しキャラが変わってました。
そこから今回のリーニエになった原因は、シュネーと出会った際に垣間見たシュネーの膨大な魔力を感じて初めて自分を指一本で消し飛ばしてしまえるような脅威というものを知り、シュネーの前から撤退した後の彼女はシュネーのような圧倒的な存在にも対抗できるようにと以前にも増して魔法を磨きました。そんな長い研鑽の中でリーニエにとってのシュネーはいつしか、脅威の筆頭から殺して乗り越えるべき壁であり命題へと変化を遂げました。そんなわけで、リーニエが眼中に捕らえたのはシュネーただ一人で、フリーレンもシュタルクも見ていなかったわけです。本編のリーニエより必死で研鑽したため、単純に強いし技も重かったわけですね。
それでは、今回も読了ありがとうございました!

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