人になりたかった魔族 作:フリーレンにハマった人
もし、シュネーが勇者パーティーと共に旅をしたら……。
というIFです。
「──よし、決めた。シュネー、僕たちと旅をしよう。」
シュネーと名乗った魔族に本当に心があるのかを観察するためにシュネーが暮らしていた集落跡に滞在して三日目の昼食の最中、勇者ヒンメルは突然そんなことを言い放った。これには共に旅をして共に魔王を倒した仲間たちも硬直し、言われた張本人であるシュネーすら空いた口が塞がらなかった。
「正気か?ヒンメル、コイツは魔族だ」
そう言ったアイゼンにヒンメルは笑って
「それでもシュネーには人らしい喜怒哀楽と価値観がある。それなら、角以外は人間と同じじゃないか。」
そう言ったヒンメルはシュネーの方を見るとさらに
「それに、シュネーは人になりたいんだろ?なら、僕たちと一緒に旅をして人らしさを学ぶついでにどの街に住みたいか考えるといい。悪くないだろ?」
と、続ける。シュネーはしばらく悩んだ後。
「可能なら、ボクを連れて行ってほしい。ヒンメルの言うように共に旅をして、いろんな街を見てみたい。」
と返答した。そこからの勇者パーティ内での議論は長かったが、結局はシュネーがただ嘘が上手かっただけだとしても、四対一で勝てるなんてことはないだろうと、未だシュネーを警戒する姿勢は消えなかったものの旅に同行することは許された。
そうして数ヶ月間共に旅をしていれば、シュネーへの疑念を持つものは勇者パーティにはいなくなった。
そして、寝坊をしないように努力しているため時々ではあるものの、寝坊をしてハイターに舌打ちされる人物が一人増えることとなった。
そして疑念が消えたからこそ、彼女の『薔薇の魔法』を見て嫌悪するような者もおらず、勇者パーティはシュネーという魔族を仲間に加えて王都への帰路を寄り道を交えながら順調に歩んでいた。
そんなある日、ヒンメル達はグランツ海峡にある村で海岸の清掃をして路銀を稼ぎつつ、新年祭に参加することになった。
海岸の清掃は無事も無事に終わり、日の出の三十分ほど前、シュネーはフリーレンの部屋にいた。
「ほら、起きなよフリーレン。皆が悲しむよ」
「……んむぅ、なに?まだ夜だよ」
「そろそろ日の出だ。今日はこの村の新年祭だろう?」
「……ねる。」
「あっ、せっかく瞼を開けたのだから起きて!日の出を見に行こう?」
シュネーは迫る日の出に若干焦りつつも根気強くフリーレンを揺すっていた。しかし、フリーレンは心地よく寝ていたところを起こされて少し不機嫌なのか、頑なに起きようとしない。
そして、日の出の三分前になってようやく、シュネーはフリーレンを連れてヒンメル達が待つ海岸に到着する。
「遅れてごめん。なんとしても一緒に見たくって。」
と、シュネーは眠い目を擦るフリーレンを指差す。
フリーレンは寝ぼけつつもとりあえず日の出を見に出てきたようだ。
「いえ、来たのなら大丈夫ですよ。ほら、まもなくです。」
ハイターがそう言うと、海岸線の先から美しい日の出が姿を見せる。
その姿を見て、フリーレンは擦っていた目を見開いた。
「ほら、見てよかっただろう?フリーレン。」
フリーレンは、
「そうだね……悪くないかも」
と、朝日に照らされるヒンメルを見つめてふふっと笑った。
日の出が終わった後、フリーレンと二人きりになったシュネーはフリーレンに結晶で出来た薔薇を差し出した。
「ボクは長命だが、きっと君より先に死んでしまうだろう。だから、これをボクだと思ってこれから先の君の旅路の供にしてくれると嬉しい。これを見て、たまには人になろうとした魔族がいたことも思い出してくれよ。」
「わかった。きっと、忘れないよ。」
そう言って、フリーレンは結晶の薔薇を受け取った。
そしてその頃、二人の後方ではフリーレンに話があると言って呼び出したシュネーを他のパーティの三人が見守っていた。
シュネーがこうして一人を呼び出すなど初めてのことだったので一応の警戒だった。そうしてシュネーを見守っていると、なんということだろう、シュネーはフリーレンに結晶の薔薇を差し出したではないか。
この場からではどうなっているかは見えても二人の会話はわからない。
次の瞬間、ヒンメルが面白いほどに口をあんぐりと開け、嫉妬のこもった言葉を呟く。
「……花を送るなんて…、僕もやりたいのに……っ!」
シュネーがフリーレンへと何かしらを話しかけて二人の距離が縮まるたびに、ヒンメルの表情がころころと変わってゆく。しかし、シュネーの用件が真面目であることもわかっているからこそ止めずに物陰から見ている。
「……ヒンメル、そんな表情できたんですね」
ハイターがヒンメルのそんな表情を少し引き気味で観察している。
アイゼンはシュネーがフリーレンを害すような雰囲気がないことに安堵してほっとため息を吐いた。その日のヒンメル達は、その後にもまだ続いていた新年祭でとことん騒いだ。
騒ぎ疲れてパーティメンバーのほとんどが眠ろうとする中、ヒンメルはシュネーを呼び出し、至って真面目な顔で思い悩んだ末に聞くんだという仕草で口を開く。
「シュネー、君もフリーレンのことが好きなのか?」
そんな、ヒンメルの問いにシュネーは数秒ポカンとした後
「ボクは彼女を友人として好ましく思っているよ。彼女はきっと千年の時が過ぎてもボク達のことを覚えていてくれる。……それより、ボク
シュネーの鈍感な指摘にヒンメルは顔を赤くしつつも
「ただの言い間違いだ。気にしなくて良い」
とシュネーの言葉を否定する。
シュネーはその言葉だけで察したのか
「そう、ボクは今のところライバルになる気はないから頑張りたまえよ」
と言って部屋に帰って行った。
翌日、フリーレンとシュネーは二人揃って寝坊した。
四人と一体の賑やかな旅は、もう少しだけ続く。
読了ありがとうございます!
書きたくなったものを衝動で書きました。
シュネーが第一話の「人になりたかった魔族」後にヒンメル達と旅に出ていたというIFルートです。
もしかしたら続きも書くかも……?
思いついたら書きます。
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シュネー復讐鬼√(書きたい場所のみ)
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ヒンメル生存ifの続き
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フリーレンとシュネーの旅の話
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フリーレンとシュネーが共に旅を続けたif
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アウラじゃなくてシュネーが七崩賢だったら