人になりたかった魔族   作:フリーレンにハマった人

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お久しぶりです。
新年初投稿です。
楽しんでいただけたら幸いです


If√七崩賢『薔薇のシュネー』

北側諸国のグラナト伯爵領にて、フリーレンを解放するように伯爵へ直談判しようとしていたシュタルクとフェルンは脱獄したフリーレンと出会った。フリーレンは二人に出会うなり

 

「二人とも、今回は全部私がやるから、動かないでね」

 

と、フェルンとシュタルクに釘を刺した。

いつもは二人に何かしらをさせようとすることが多いフリーレンの突然の発言に、自分たちにもできることがないかと聞く二人。

しかし、フリーレンは

 

「ダメだ。今回のやつは魔族の中でもかなりタチが悪い。二人じゃ、死ぬよ」

「そんなになのか?」

 

シュタルクが訝しげに問いかける。

それにフリーレンは一つの植物を取り出して答える。

 

「……それは?」

「薔薇だよ。人の脊髄に取り付いて宿主を傀儡に作り変える、特別性のね」

「フリーレン様、そんなものがこの世にあるわけが──」

「あるんだよ。七崩賢、薔薇のシュネーが扱う『薔薇の魔法(ローゼン)』は、それを可能にする魔法だ。ただ薔薇を生やすだけの魔法、それを自身の研鑽で極限まで拡張性と威力を高めている。あれは、本当に恐ろしい魔法だ」

 

フリーレンをして恐ろしいと言わしめるその魔法に、二人は息を呑む。

しかし、それでも何か力になりたいと考えた二人。

そして、フェルンが食い下がるように

 

「なら、フリーレン様について行かせてください。自衛と少しの援護ならできます!」

 

と言うと、フリーレンは渋々首を縦に振った。

しかし、

 

「私から離れないこと、何を見ても周囲への警戒を怠らないこと。あと、薔薇には絶対触れないこと。それだけは守ってね」

 

そう言って、魔法で浮かび上がる。

フェルンがシュタルクを掴んでそれに続く。

 

そして、フリーレンが降り立ったのは城門の位置から二十キロほど先の森。

外見は何の変哲もない森だったが、奥に進むにつれて周囲の木が薔薇の絡まったものに変化する。

そして、さらに奥まで進むと……

 

「おいおい、なんだよこれ」

 

シュタルクが困惑と少しの怯えが混ざった声を出す。

木に絡みついた薔薇に包まれるようにして、幾つもの死体が吊り下げられていた。

中にはまだ新しいものも混じっており、突き刺さった棘から流れた血液が薔薇のつるを伝って何処か奥の方へと運ばれている。

 

「言ったでしょ、アイツの薔薇だよ。……にしても、随分と悪趣味になったね」

「フリーレン様、お知り合いなのですか?」

「うん、その通りだよ。彼女と私はしばらく共に旅をしていた。彼女は、人の心を得た魔族だからね。彼女なら、魔族が友人でも構わないって考えてた。……でも、彼女は知ってしまったんだ、悪意と憎悪を。そして狂ってしまった」

 

突然視界が開ける。

森の中心よりも少し後ろのあたりに作られた大きく開けたその空間の入り口とは反対側の端に置かれた玉座の如き派手な椅子に一人の魔族が座っているのが見える。しかし、太陽に雲がかかり、玉座の魔族の容貌は一切視認できない。

 

「……あれが、本当に人の心を持ってるのか…?」

 

シュタルクがそう溢した訳はその玉座にあった。

玉座は人の骨で形作られ、巻き付く薔薇によって固定されていた。

さらに、玉座の横には何人もの衰弱した人間が薔薇に巻き付かれて跪いている。

 

「ボクが狂ってるって?随分な挨拶じゃないかフリーレン。ハハハ、久しぶりだね」

「狂ってる。人を殺しながら、まだその剣を腰に帯びたお前にはピッタリな言葉だよ」

「─────ハハ、ハハハ!おかしなことを言うねフリーレン!ボクはただ、人間と同じようにしているだけだよ。自分より弱いものを、自分の愉悦のために殺す、同じじゃあないか?」

 

雲が晴れ、玉座に座る魔族──シュネーの全貌が日光の元に晒されて顕になる。

その角は天を衝くように長く先に向かって細まっている。

そして、誰かを殺して奪ったのだろうか、貴族のような華美な服装を身に纏っている。

玉座から立ち上がったシュネーは、手近にいた一人の人間の首を脊椎ごと引き抜き、滴る血を喜悦の表情と共に飲み干す。

よく見れば、あたりには同じように死んだのであろう人間の死体がいくつか転がっている。

その凄惨な光景にフェルンとシュタルクは息を呑む。

 

「『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』!」

「『薔薇の魔法(ローゼン)』」

 

フリーレンの『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』をシュネーの『薔薇の魔法(ローゼン)』によって溢れ出した薔薇のつるが阻む。

 

「魔力そのものを遮断する薔薇か、面倒だね」

「そうだろう?君を殺すために考えたんだ。あまり多用は出来ないけれどね。フフ、エルフの血、喉越しは良さそうだ。薔薇の肥料にするのもいい」

 

次の瞬間、フリーレンの死角から伸びた薔薇のつるをフェルンが『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』で迎撃する。

 

「どういうこと?その魔法は、お前の身体を起点にするはずだ」

「──そんな明らかな弱点、ナニカを殺すためには邪魔だろ?ボクはあの時の、魔族であることを恥じるボクじゃない。そんなものはとうの昔に克服したとも」

「……フェルン、シュタルク、構えて。どうやらこの森全てがシュネーそのものみたいだ」

「おや、そこまで見抜かれると面倒だな。君の弟子たちの片方……紫髪の方から行こうと思っていたのに。」

 

その表情にあからさまな不快感を浮かび上がらせてシュネーは言う。

その苛立った様子は、まるで人のように見えて、その発言とのギャップがフェルンを混乱させる。

 

「しかし、弟子にも『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』を教えるなんて、つくづく魔族への殺意が高いねぇ。何とかならない?ソレ」

「ならないよ。少なくとも、今ここでお前を殺すまではね」

「ハハハ、それは酷い──なぁっ!」

 

全方位から薔薇が殺到する。

撃ち落とされたそれは花弁を散らし、まるで血飛沫の如く赤い薔薇が舞い散る。大量の薔薇の中に混ざる、魔力を遮断する薔薇を、その薔薇が遮断できる以上の魔力で消し飛ばすが、これも長くは続かないだろう。

まさに窮地と言っていい状況だった。

 

「フ─────アハハハハハ!さぁ、君たちはいつまで持ち堪えていられる?耐えきれなくなったのなら杖を落とすといい、そうすればボクが好き勝手に嬲って殺ろしてあげるよ。紫のフリーレンの弟子が初めで、次はフリーレンだ」

 

愉快そうに笑い、無意識に腰に下げた剣の鞘を撫でながら言う。

しかし、無意識のうちにシュネーは忘れ、そして意識から外していた。

フリーレンと共にやってきた三人の残り、赤髪の『戦士』。

フリーレンは既にそれに気が付いていた、だからこそ

 

「シュタルク!彼女に引導を!」

「俺!?……あぁ!わかった!」

 

フリーレンとフェルンが殺到する薔薇を通常の倍以上の魔力の『魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)』で吹き飛ばし、道を作る。

シュタルクがその道を通ってシュネーへと肉薄する。

 

「……っ!」

 

しかし、シュタルクの斧をシュネーはその腰に帯びた剣を引き抜いて弾いた。

 

「ボクは薔薇だけで生きてるわけじゃないのさ」

 

そう言ったシュネーがシュタルクのニ撃目を弾こうとした時、フリーレンが叫ぶ。

それは、シュネーが狂い果てているからこそ有効な言葉。

 

「その剣の持ち主が見えないのか!」

 

ちょうどその時、シュネーの視界の中で、剣に飾られた古ぼけた宝石が瞬く。

その光で視界を遮られたシュネーに視界が戻った時、シュネーへと斧を振り下ろそうとしていたのは、あの日戦士として散った筈の少年だった。

 

「──────────あ、」

 

ずぶり、とシュネーの体に斧が突き刺さる。

彼女自身が生存率を上げるために体内に張り巡らせた薔薇達が、致命傷を受けた彼女を塵にさせず、この世界に留めている。

 

「……少年、立派になったねぇ。つい、この、間まで……こんなに小さかったのに、もう、ボクの背を追い越さんばかりじゃないか。……はは、羨ましいなぁ、魔族は、背が伸びないから」

 

もはやその目に映るのは、在りし日の思い出が創り出す幻影のみ。

シュタルクと、過去の戦士の少年を重ね合わせているのだ。

口から何度も血を吐きながらも、曇った瞳で笑うその表情は決して正気ではなかった。

しかし、その幻影を砕く事は憚られて、誰も何も言わずにそれを見守っている。

 

「──このボクに、その刃を届かせた君は、本当に……本当に立派な戦士だ。単独で魔族に勝てる戦士なんて、、そういないよ。だから…君にこれを返すよ」

 

シュネーは、腰から外した鞘と、自らが握っていたその剣をシュタルクに手渡した。

倒れんばかりだったシュネーを、シュタルクが抱き止める。

シュネーは嬉しそうに瞳を細める。

 

「薔薇は……昔にもらったからね。あとは、約束通り指輪を貰うだけだ。……別に豪華じゃなくていいとも、無理はしないで。でも、愛を込めて、私の指に、君がつけてね。……あぁ、楽しみだなぁ」

 

狂気の果て、血を啜り国を侵略した大魔族シュネー。

彼女は幻影の中、恋する乙女のような、満ち足りた笑顔で事切れた。

しかし、他の魔族と違いその体内で幾つもの薔薇によって魔力を生成していた彼女の体は、彼女自身が死のうとも薔薇によって魔力が供給され続け、その死体は形が残った。

 

「フリーレン、この剣とコイツ、ここに埋葬していっていいか?」

「うん。構わないよ」

「ありがとう。俺はコイツのことよく知らねぇけど、本当に心があって愛し合ってたなら、一緒に寝かしてやらねぇと」

 

そう言ってシュタルクはシュネーの遺体と剣を土に埋め、シュネーと少年がオレオールにて再会することを祈ってその場を去った。

その森は、その後数千年に亘って薔薇が枯れることはなかった。




実は、シュネーの主観だけで見ると一番ハッピーエンドです。
強くなった少年と再会して、その腕に抱かれて指輪をもらう約束してエンドですからね。
しかし、他人から見ると救いはない感じです。
村が滅びなかった場合の未来とか書こうか悩んでます。
アンケートに追加しときます。

番外編

  • 集落が滅びなかった未来を先に書く
  • 以前のアンケートの多い順の方が優先。
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