〜お前がパパになるんだよ〜大魔王世一討伐ルート 作:クロアブースト
斎藤 翔はギフテッドだった。
生後数ヶ月で二足歩行可能なレベルで成長し、僅か一歳で高校生レベルの知能を持つに至った。
だからこそ斎藤ミヤコは自分の夫である斎藤苺から所属事務所のアイドル、星野アイが産んだ子供達の世話をする際に二歳になった翔が手伝ってくれるのにも違和感があまりなかった。
「母さん……おむつの交換は僕がやっておくよ」
「ありがとう翔。翔が手伝ってくれてママ助かるわ」
「えへへどういたしまして」
通常赤子の世話は育児ノイローゼに成り得る上に、生後数ヶ月から二足歩行から意思疎通まで出来る赤子は気味悪く見えるものである。
しかし斎藤翔は聡明だったが故に意思疎通を出来るようになったら母親の役に立ちたいとアピールしつつ褒められると喜ぶ感情表現をきちんと出した。
それ故かミヤコとしてはお腹を痛めて産んだ我が子が自分に褒められたくて頑張ったり、甘える姿に母性本能を擽られることで育児の負担が少なかった。
「アクアのおむつ交換は大丈夫だね。次はルビーだけど」
「うぇぇぇん!」
「やっぱり僕が交換するのは嫌がるね。というか異性に触れられたくないって感じかな」
「ギクッ!?」
「うん。仕方ないね母さん。ルビーの方のおむつ交換お願いして良い?」
「良いわよ翔」
「ありがとう!」
パアッとミヤコの元に駆け寄って抱き着く翔。翔は世渡り上手であった。
「もう!翔ったら本当に良い子ね!本当なら私が全部やらなきゃいけないのに……」
「良いんだよ母さん。僕がしたくて手伝いしてるだけだし」
「でも……」
「じゃあ頑張ったら褒めて!僕は母さんや父さんに褒められたいし、いっぱい甘えたくて頑張りたいんだ」
「分かったわ。じゃあ翔が頑張ったらめいっぱい褒めちゃうんだから!」
親馬鹿になるミヤコ。
そしてそれを嬉しそうに受け入れる翔。
その光景を見せつけられて転生者であるアクアとルビーは驚愕せざるを得なかった。
「ねぇ翔。翔って転生者?」
「転生者って小説とかに出てくる前世の記憶を持つって意味だよね」
「そうだよ」
アクアとルビーの育児をミヤコが担当することになって数ヶ月。
おむつ交換をしている際にルビーが翔に尋ねる。
翔が生後数ヶ月で言葉を話せるようになった前例があったからかルビーとアクアが話しても問題なく受け入れられた。
アイからは「流石うちの子」とドヤられ、苺からは「うちの翔には負けるがな!」と我が子自慢による合戦が行われたのは置いておく。
「う〜ん。僕は前世の記憶はないかなぁ」
「じゃあどうして翔は喋れるの?」
「僕の場合は父さんや母さん、後はアイ姉が話してる言葉を聞いて学んだからかなぁ」
「ふ〜ん。じゃあ翔は転生者ってどう思う?」
「ちょっとルビー!?」
アクアはルビーの発言を咎める。何せ翔は転生者ではないと言ってたのにその発言は自分が転生者であると明かしているようなものだからだ。
「僕としては素敵なことだと思うな」
「どうして?」
「だって生まれ変わっても叶えたい願いがあるって事だから」
「「!?」」
その言葉にルビーとアクアは驚く。
「ルビーには叶えたい願いはあるの?」
「……うん。あるよ」
「アクアはどうだい?」
「僕はないかな……」
アクアは突発的な事故で転生したのだが、未練といえば推しの出産に立ち会うことが出来なかったことだが、それは既に終えており未練と呼べるものはなかった。
だがルビーは違った。
「私ね……ママみたいなアイドルになりたいの!私もなれるかなぁ」
ルビーは自分の夢を語った。
それは生前が病弱だったが故にどうしても叶えたい夢だったからだ。
「じゃあルビーは頑張らないとね。アイ姉を目指すなら世界一のアイドル目指すようなものだから」
「世界一!?いやママが世界一のアイドルだって私も思うけど!?」
「僕もアイは世界一だと信じてる」
「二人共アイ姉が大好きだよね」
「「大好きなママなので!」」
二人は異口同音で宣言する。その言葉に翔は嬉しそうに笑う。
「じゃあルビーに一つアドバイス。俺が読んでるトップアスリートの話だけど世界一になれる人は『なりたい』じゃなくて『なる』と鼓舞するらしいよ」
「えぇ~私はアスリートじゃなくてアイドル目指してるんだけど」
「まあ分野は違うけど世界一目指す人は皆飛び抜けて自信を持ってるのは事実だから。アイ姉もそういうタイプだろうし」
「そうかな。アイは確かに完璧で無敵なアイドルだけど自信家って感じじゃないけど……」
アクアは翔の言葉に疑問を持つ。長年推し活をしてきた身としてはアイから自信家な印象は見受けられなかったからだ。
「僕がアイ姉を自信家って思ったのはアイドルとして舞台に立つ姿じゃなくてレッスンの見学した時かな。その時に言ってた『嘘はとびきりの愛』って言葉に自信を感じられたから」
「何それズルい!私もママのレッスンみたい!」
「もう少し大きくなってからだよルビー」
ルビーの頭を撫でながら言う翔とそれを嬉しそうに受け入れるルビーを見てアクアは翔に懐いたなと感じる。
当初はアイの子供を世話出来る事は光栄に思うべきって傲慢不遜な態度だったのだが、二歳とはいえ赤子に近い翔が積極的に赤子の自分達の世話を手伝う姿に思うところがあったのだろう。
今ではルビーは翔からおむつ交換を始めとした介護も問題なく受け入れるのだから……
「ただいま~」
「「おかえり!」」
但しアイが帰ってくれば関心はそちらに向くのは当然なのだが……
「おかえりアイ姉。お茶入れようか?」
「ありがとう翔。けど二歳なのにお茶入れれるなんて本当に幼児なのかな?」
「むぅ~ママ私がお茶煎れる」
「アイ。僕がお茶煎れるよ」
「はいはい。二人はまだ小さいからおっきくなってからね」
「「むぅ~」」
「いや僕も0歳の赤子の頃はお茶煎れるの許可されてないからね」
ルビーとアクアから恨めしそうに目線を向けられたので思わず呟く。
しかしお茶と言っても電気ポッドの電源入れてコップに注ぐ程度なので大した手間は掛からない。
やってるのが二歳児でなければ誰でも出来ることである。
「本当は料理も本で読んだからチャレンジしたいけど包丁は流石に母さんから許可されなかったし……」
「翔って主夫力上げるつもりなの?」
「凝ったのはやらないけどフライパンで作れるのは一通り出来るようにはしたいかな。外食より安くて沢山食べれるし」
「うっ……二歳児に劣る私って……」
アイが二歳児の家事能力意識で劣ることにショックを受けている。
「大丈夫だよママ。料理が出来なくたってママは凄いアイドルだもん!」
「そうだよアイ。家事なんて誰でも出来るんだからアイにしか出来ないことを頑張れば良いんだよ」
「グハッ!?」
「「アイ!?」」
「二人共追い打ち掛けてるよ」
善意で舗装された悪意なき言葉の暴力でアイは打ちのめされたのであった。