前世で効率厨だった俺、神スキル『タイパ』を手に入れて面白いところは大体ダイジェストの成り上がり異世界生活へ   作:quiet

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第13話 【回想――効率的な人生を!編】~【回想――あの日には戻れない編】

 

【回想――効率的な人生を!編】

 

 

「――少年。少年。もうすぐ電車が着きますよ」

「んあ」

 

 揺さぶられて起きたのは、揺れる電車の中。

 目を開けると、すっかり見慣れた天使の顔がそこにある。

 

「フライトチケットは確認してますか? そんなに飛行機の時間まで余裕はありませんから――」

「あの、」

「はい」

「ギブアップ」

「はい?」

「腰が……終わりました……」

 

 降りるはずだった駅を遥かに乗り過ごして、乗り換えて。

 

 結局地元の駅で、少年はよたよたと電車から降りることになった。

 

「貧弱ですねえ、人間って。別に徒歩で日本縦断したわけでもないのに」

「いくら何でも……一ヶ月ずっと在来線乗りっぱなしはキツかったっす……」

 

 天使に肩を借りて、少年は見慣れた家路を辿る。

 

「でも、いいんですか。折角お年玉貯金を崩して『超格安、生死不問!海外周遊ツアー』なんて組んだのに、腰痛でキャンセルなんかしちゃって」

「背に腹は代えられないんで」

「それで未練は残らない?」

「…………いや、」

 

 言い淀んで、

 

「付き合ってもらって何なんですけど」

「気にせずどうぞ」

「なんか別に……俺、旅行とか好きじゃないんだなって思いました」

「観光地に着いた瞬間に『よし、クリア!』って次の目的地に走り出すタイプの旅行が好きな人は限られてると思います」

「思ってたなら言ってくださいよ」

「いや、限られた時間の中で何としても日本縦断と世界周遊を成し遂げるつもりで、効率を重視しているのかなと思って。天使は人間のすることにはあまり口を出さず、ただ見守るのみです」

「あ、でも口出しされまくった飯食うところだけはちょっと楽しかったかもしんないっす」

「ただ見守るのみです」

「いや、楽しかったって……」

「ただ見守るのみです。あんまりうるさいことを言っていると肩を貸すのもやめちゃいますよ」

 

 少年は口を噤むことにした。

 

「さて、次は何をしますか?」

 

 けれど、そうしてすぐに天使が訊ねてくる。

 

「次……次、すか」

「ええ。次」

「次は……」

 

「――――あれ?」

 

 聞き慣れた声がして、少年は前を見た。

 

 中学時代のジャージ姿だったから、まず間違えない。

 

「久しぶり。まだそれ着てんの」

「……あのさ、私の見間違えじゃなければなんだけど」

「うん」

「浮いてない? 身体が半分」

「パントマイム。上手いだろ」

「……一人で喋ってたのも?」

「パントマイム。上手いだろ」

 

 少女はすごい目をした。

 

「……なんか、最近学校行ってないって親経由で聞いたんだけど」

「ああ。自分探しの旅に行ってた」

「……へー。見つかった?」

「後は家に帰って青い鳥を見つけるだけだな」

「行く前に見つけておいた方がコーリツテキだったんじゃないの?」

 

 少年はその言葉に考え込んで、

 

「その手があったか」

「……ときどき、すっごい馬鹿なんじゃないかと思う」

「当たり」

 

 話もそこそこに別れれば、あっという間に家だった。

 

 ぼすん、と一も二もなく少年はベッドに倒れ込む。

 

「疲れたー……」

「やっぱり家が一番!」

「なんで勝手に言っちゃうんすか」

「少年は『効率的』という概念が好きらしいと学びましたから。あなたの言いそうなことを先取りして私が言ってあげることで、残り少ない時間を有効活用させてあげようという心遣いです」

「……今日、何日でしたっけ」

「七月二十日。残りは四十日。海外旅行がすっ飛んだので、夏休みがモロに残っている形ですね」

「そっすか」

 

 痛む腰を庇いながら、少年は寝返りを打つ。

 

 天井。

 最近は知らないところでばかり眠っていたから、何だかやけに懐かしい。

 

「ま、高校生にとっては夏休みなんて永遠みたいなものでしょう。何でもできますよ。何します? 虫取り? プール? ラジオ体操?」

「なんで小学生みたいなラインナップなんすか」

「天使は長生きなので、小学生も高校生も同じようなものに見えるんです。何なら十八歳と八十歳の区別も付きませんよ。英語習いたての中学生みたいでしょう」

「……俺、」

「はい」

「明日から、普通にします」

 

 き、と天使の座る椅子が軋んだ。

 

「平常授業はないけど、夏季講習やってる日はあるんで、とりあえずそれに顔出したりとか。部活に入ってるわけじゃないけど、友達は普通にいるから、学校でそいつらと顔合わせたり、遊ぶ約束……できるかな。あんまり休みの日って外に出ないんだけど」

「…………」

「それ以外の時間は普通に勉強したり、走って体力つけたり普通に……あ、でも。親孝行とかはちょっとしてもいいかも。いきなりそんなことしたら不審がられるかもしれないけど、今更だし」

 

 うん、と少年は仰向けのまま背を伸ばす。

 力を抜けば、何だか眠たくなって、

 

「そんな感じで、普通に過ごします」

「いいんですか。折角、死ぬ前にやりたいことをやるチャンスがあるのに」

「ないんだと思います。俺、たぶん好きなものとか、どうしてもしたいこととか、そういうのがなくて――」

「『効率的』って言葉を使って日々を送ることで、自分のアイデンティティを作り上げてた?」

 

 少年は笑った。

 

「すご」

「当たり?」

「当たり」

「一応、もう一度だけ訊きますね。未練はありませんか?」

「たぶん……あ、いや」

「前言撤回が早すぎると信頼を失いますよ」

「じゃあもう一度だけ訊かないでくださいよ。……やりたいことって言われると別にないんですけど、未練って言われると気になることがあって」

「何ですか」

「今は気力がないんで後で調べます」

「早く言いなさい。今なら私が代わりに調べてあげますから」

「俺よりせっかちな人初めて見た」

「すべてにおいて人より上。それが天使です」

「あ、それ今までで一番天使っぽい」

「天使のイメージ悪いな……」

 

 じゃあ、と少年は、

 

「昔、小学校の遠足に行ったときの話なんですけど」

「はいはい。じゃあアルバム出しますね」

「嫌だな……会って二ヶ月くらいでアルバムの保管場所把握されてるの……」

「天使ですから。さ、それで?」

 

 ばらららら、と天使がアルバムを捲る音を聞きながら、

 

「そのときの行先、動物園で」

「はい。写真を見つけたので、この動物園のWebページも出しちゃいますね」

「どうも。そこで……その、さっき会った奴となんですけど」

「はい」

「チーターを見ようとしたんです」

 

 タイピングの音。

 昔のことを、少年は思い出している。

 

「檻の前で立ってて、集合時間ギリギリで……なのに、肝心のチーターの姿が見えなくて。まだ回ってないところもあったんで、俺はさっさと他の動物のところに行きたかったんですけど」

「目に浮かびますね。全部の動物を指差し確認するつもりだったんでしょう」

「流石にそのときはまだそんなに切羽詰まってないです。……でもほんと、全然。結局最後まで、チーターが出てこなくて。で、思い返したら動物園って、それから行ったことがなくて」

 

 だから、と少年は、

 

「結局、チーターを見たことがないんですよ。それが何となく、心残りかな」

「……残念」

「何がすか」

「今はその動物園に、チーターはいません。お亡くなりになったみたいですね」

「……ああ。チーターって寿命短いんでしたっけ」

「平均して人間より短いことは確かですが、チーターにとって短いかは定かじゃありませんね。他の動物園でチーターがいるところを探してみますか?」

「……いや」

 

 目を瞑る。

 

「いいです。それはそれで、未練が消えました」

 

 

 それからは、あっという間の日々。

 少年は、ごく平凡な夏休みを送った。

 

 夏季講習のある日は、たまに学校に行く。

 帰りがけに友達と安いファミレスに寄ったり、カラオケに行ったり、財布の中に金もないのに駅ビルを回ってみたり。

 

 家に帰れば、いつものように効率的に勉強をする。

 走ったり、筋トレしたり。

 気が向いたら家事の手伝いをして不思議がられたり。

 

 右手右足左手左足をそれぞれ使って四つのゲームを同時に遊ぼうとして、天使に笑われたり。

 

 画面を四つに分割して四倍速で、名作映画を通常の十六倍の速度で上映して、何だかそれに釣られて天使とポップコーンの早食い競争をする羽目になったり。

 

 朝起きて、カーテンを開けたり。

 

 そこに映る青空も、いつまでも見られるものじゃなかったんだな、なんて今更気付いてみたり。

 

 ぴんぽん、なんてインターフォンの音がしてみれば。

 洗ったばかりの顔で、玄関の戸を開けてみたり。

 

「お、」

「で、でっ……」

「で?」

 

 知った顔を見て。

 今日が最後の日だったな、なんて思い出してみたり。

 

 

 

「――――デート、しよっ!」

 

 

 

 いきなりそんなことを言われたりして。

 何だかその気迫に、思わず頷いてしまったり。

 

 

【回想――効率的な人生を!編 完】

 

 

 

 

 

【回想――あの日には戻れない編】

 

 

 デートの誘いを受けたのも初めてだけれど、どちらかと言えば向こうの方が先に待ち合わせ場所に来ていたことの方が新鮮だった。

 

「雪が降る」

「……いいじゃん。今日暑いから、ちょうどよくて」

「暑いと雨になるな」

「……それは、ちょっと嫌かも」

 

 小学校の遠足で行くような場所だから、距離なんてたかが知れたものだった。

 少なくとも、在来線に乗って日本縦断なんて無茶な旅路よりはよっぽど。

 

 それでも、

 

「…………」

「さっきからすごい緊張してないか? どうした?」

「うっさい」

 

 何となく、気まずいような道中だった。

 

 入り口でチケットを二枚。

 少年は、少女に渡して、

 

「で、今日は何。カップル限定メニューの数合わせ?」

「……違う。とりあえず、ちょっと歩こ」

 

 以前に一度来たはずの場所なのだけれど、驚くくらい記憶に残っていなかった。

 

 パンフレットを片手に象を見る、キリンを見る、ライオンを見る。

 カピバラにどつかれる、蛇に絡まれる、羊に噛まれる。

 

 園内レストランで、遊園地と比べたり近年の物価高を踏まえれば、まあ比較的安いかと思わないでもないカレーだのハンバーガーだのうどんだのを食べる。

 

 カップル限定メニューはない。

 

 店を出れば、今度は夜の生き物展。

 

「……最近、何してた?」

 

 夜行性の生き物のために、その屋内は暗くなっていた。

 小さなリスがいるらしい場所をじっと少年が眺めていると、少女から口を開く。

 

「ふつー。夏季講習出たり、勉強したり、運動したり」

「いつものコーリツテキな日々?」

「そんな感じ。そっちは?」

「……夏休みだよ。遊ぶに決まってんじゃん。海行ってバーベキューして、山行ってバーベキューして、」

「夏祭り行ってバーベキューして市民プール行ってバーベキューな」

「出禁になるわ」

 

 ふ、と少女が笑う。

 けれど、それもすぐに引っ込んでしまって、

 

「……そういえばさ、自分探しの旅、どうだった?」

「見つけたわ。本当の僕はここにいたんだ……って」

「なんか今日、笑わせにきてない?」

「人生初デートで相手がにこりともしなかったら悲しい思い出になるだろ」

「え、」

 

 少女が目を見開く。

 

「初デート? 他に誰ともしたことないの?」

「ああ」

「どういう人生?」

「やめろ……人生初デートで相手をぶっ飛ばした思い出を作りたくない……」

 

 ふふ、と堪えきれなくなったように少女が笑う。

 

「ごめ、笑っちゃだめか」

「思う存分笑え。別に気にしてないから」

「めっちゃ気にしてるやつ?」

「いや、ほんとに興味なかったから。初デートとかもどうでもよくて、暗い顔してるからちょっと笑わせてやろうと思っただけ」

 

 少年は辺りを見回して、

 

「てか、別に暗い顔してるわけじゃなくて単純に照明が暗いだけか」

「…………うん。かもね」

 

 屋外に出れば、今度は少女が先を歩いた。

 行き着いた先は、

 

「お、」

 

 空っぽの檻だった。

 少年は唯一、この場所だけを覚えている。

 

 文字の掠れた看板。

 取り外されない理由がわからない――けれど、そこには確かに、こんなことが書かれていた形跡がある。

 

 チーター。

 

「――あのさ。ちょっとだけいい? 今日、話したいことがあったんだ」

 

 少女が言った。

 

「悩み相談?」

 

 少年が言った。

 

「……まあ、近いかも」

 

 このあたりは、もう使われなくなった一画なのだろうか。

 周りに人が、誰もいない。

 

 ふたりの声だけが、囁くように交わされる。

 

「あのさ、たとえばなんだけど。二ヶ月後にあなたは死にますって言われたら、どうする?」

 

 少年は驚いて、少女を見た。

 

 しかし少女の方は、真っ直ぐに檻の中を見るばかりだったから、

 

「どうって……」

「ちなみにね。私は遊ぶ。散々『なんで自分だけがこんなこと知らされたんだろう』って泣いた後に、やりたいことぜーんぶやる。思い残すこととか、一個もないように」

「……まあ、俺も同じかな」

「ほんと?」

「……嘘。やりたいこととか、別にないし。ちょっとだけ映画の真似事みたいに色々やって、結局上手くできなくて、いつもどおり普通に過ごすと思う」

 

 そっか、と少女は頷く。

 

「なんか、らしいね」

「そうか?」

「らしいよ。いっつもコーリツテキにやってるから、思い残すこととか何もないんでしょ。夏休みの宿題と一緒。最終日にいきなり全部慌ててやったりしないんだ」

「……まさか、二年ぶりに宿題手伝ってくれって話か?」

「実は一切手付けてない。学校が違っても、昔みたいに一緒に頑張ってくれる?」

「いいけど」

「いいんかい!」

 

 あはは、と少女は笑う。

 

「でも嘘。いや、嘘でもないけど。ほんとに話したかったのはそっちじゃなかったから。今のはただ、私が嬉しかっただけ」

「何だそりゃ」

「『絶滅期』って知ってる?」

 

 少年は、記憶を探る。

 

「いや、知らない。映画?」

「なんかね、世界には季節があるんだって。夏とか冬とかより、ずっと大きなスケールで。何かが生まれたり、死んだり。そういうの」

「……宇宙がビッグバンで生まれてビッグクランチで滅びるみたいな話か?」

「何それ」

「否定されてんだっけ。アインシュタインがどうとか、熱的死がどうとか……」

「SFの話? よくわかんないけど、たぶん違う」

「たぶん?」

「私もよくわかんない。聞いただけだから」

「んじゃ、少しファンタジーにしとくか。略してSF」

 

 少女が頷く。

 大してその部分にこだわりはないらしく、

 

「まあ、そういうのがあって。『絶滅期』に入ると人類も滅亡しちゃうんだって」

「恐竜みたいに?」

「そう。恐竜がなんで滅びたのか知らないけど」

「隕石衝突で気温が低下したからじゃないっけ」

「へー……じゃあ、人類もそういう感じで滅ぶのかもね」

 

 もう一度、少女が頷く。

 その部分にも、大してこだわりはなさそうで、

 

 

 

「その『絶滅期』って、天使様が決めるんだって」

 

 

 

 少年は。

 すごく、すごく驚いた。

 

「――は?」

「正確に言うと神様なんだけど、代わりに天使様が決めるんだ。誰かひとり、もうすぐ死ぬ人を見つけて、空から降りてくる。その人が死ぬまでの姿を見て、『絶滅期』を始めるかどうかを決める」

 

 少年は辺りを見回した。

 

 天使の姿はない。

 この二ヶ月、ほとんど一緒にいたのに。

 

「……へえ。それで?」

「それで終わり。『絶滅期』を始めるスイッチが押されなければ、もう一回天使様は同じことをして、押されればそれでおしまい。古い季節は終わって、また新しい季節の始まり始まり」

「スイッチ?」

「条件があるってこと」

「どんな」

 

 少女が振り向く。

 じっ、と少年を見つめた。

 

「――あのさ、チーターって見たことある?」

 

 真剣な顔だった。

 

「いや、ないけど――」

「そっか。だよね。見たことないと思った。覚えてる? ここ、昔遠足で来たことあるって」

「なあ、」

「私は覚えてるよ」

 

 少年は訊こうとした。

 けれど少女は遠い昔のことを思い出すようにして、また檻の方へと顔を逸らしてしまう。

 

「帰りのバスで何話したかも覚えてる。珍しくいつまでも言っててさ。自分で覚えてる? 『チーター見れなかったな』『見たかったな』って、ふたりでずっと。でもさ、あれ私、後で調べたんだ。もうあの頃、ここにいるチーターって老衰で弱ってたんだって」

 

 そして、もう一度少女が訊く。

 

「ね、覚えてる?」

「……まあ、覚えてる」

「そっか。よかった、ここまで来た甲斐があって」

 

 少女は笑っていた。

 

「満足しちゃ、ダメなんだって」

 

 こっちを、見なかった。

 

「未練がなくちゃダメなんだって。満ち足りてたら、もうこの世界は十分だなって思われちゃうんだって。死ぬときに何か――何か一個でも未練がなくちゃ、この世界って終わっちゃうんだって」

 

 ね、と。

 少女は、願いごとを口にするように言う。

 

「チーター、もう死んじゃったんだ」

 

 震える声。

 

「これでもう、一生見られない」

 

 震える手。

 

「残念だよね?」

 

 きっと、たっぷりの勇気を心の中に秘めて。

 

「せめて明日まで生きてたいって、そう思ったよね?」

 

 少女が振り向く。

 

 少年は、目を合わせる。

 

 

 

 

 一瞬、少女は呆気に取られて。

 

 それから、今まで見たことのないような悲しい顔を、した。

 

 

 

 

 少女の手が、バッグの中に滑り込んでいく。

 

 出てきたところを見ることができなかったのは、少女がそのまま、少年に飛び込んできたからだ。

 

「うあ゛」

 

 奇妙な感触だった。

 開いちゃいけない穴が開いて、どうしようもなくなった。

 

 髪の香りが鼻先に当たるような、すごく近い距離。

 穴に刺さった何かが抜ける感触がして、それからもう一度。

 

「ごめん、ごめ……」

 

 痛いというより、ただ不安だった。

 不安の中で、様々なことを少年は考えた。

 

 死ぬってこんな感じか、とか。

 刺されるってこんな感じか、とか。

 

 こいつずっと謝ってるな、とか。

 謝ってる割に念入りに何回も刺してくるのはこいつらしいな、とか。

 

 どうせ今日で終わりだったんだもんな、とか。

 そういう考えがダメだったのかな、とか。

 

 こいつは誰からそんな話を聞いたんだろう、とか。

 天使は何も話してくれなかったけど、俺の方でも訊きもしなかったもんな、とか。

 

「――――、」

「あ、うあ、」

 

 どしゃ、と崩れ落ちる。

 

 仰向け。

 空が見えて。

 

 

 

「私のこと、恨んで……」

 

 少年は初めて、少女がどんな顔で自分を刺していたのかを知る。

 

 

 

 それで。

 たったひとつだけ、未練ができた。

 

 

【回想――あの日には戻れない編 完】

 

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