「リンク...そなたの名はリンク...」
夢を見ていたのだろうか、それとも目覚めていたのだろうか。はっきりしないまま、リンクは遠くから呼びかける声を聞いた。
「勇猛なる若者リンクよ....」
そうだ、僕の名前はリンク。養父のボウがつけてくれた名だ。勇者みたいに強く生きられるようにって。
「影の領域に吞み込まれたわが森でそなたは野獣の姿となりました....」
そうだ、僕は狼になったんだ。本当に酷い経験だった。あんな目には二度と会いたくない。それにしても、しゃべっているのは誰だろう?あのフィローネの泉で会った精霊だろうか。
「それは兆しだったのです.....」
兆し?なんの話だ?
「それはそなたの真の力がその身に表れるための兆しだったのです..神に選ばれし勇者よ....」
勇者?僕は確かに勇者と同じ名前だけど、僕自身はただの田舎の農村の若者だ。
「リンクよ...勇者の衣を着なさい....それはわが泉のほとりの木の根元にあります.....」
勇者の服?服をくれるのはありがたいけど、それを着たからって僕が勇者になれるってわけじゃないんだが。
「もしそなたがあの影の王と戦わんと欲するならば....わが森の奥にある神殿に隠された黒き力を探すがよい....」
影の王?ああ、ゼルダ姫が言ってたっけ。可哀そうなお姫様。あんなに悲しそうな顔をして、誰もいない部屋に一日中閉じ込められている。できれば助け出してあげたい。でも今の僕にはイリアとコリンを探すほうが先だ。
「その力は本来光の世界に住むものが触れてはならないもの....しかしそなたとそなたの傍らにいる者が力を合わせたとき....」
精霊の声は次第に遠くなっていった。それと同時に、リンクは次第に自分がどこにいるのか気づき始めた。目が覚めたのだ。彼は柔らかい下草の生えた地面にうつ伏せに横たわっていた。もうすっかり日が上り、空は青く澄み切っている。小鳥がさえずる声が周囲の木立から聞こえてきた。
リンクは体を起こして座り込み、しばらくぼうっとしていた。だが何気なく自分の手を見てみると、それはちゃんと指があり、肌がつるつるしている。リンクは何度も自分の手を裏返してその甲を見てみたり、また手のひらを見つめたりしていたが、やがて急に立ち上がった。
自分は今、二本の脚で立っている。リンクは今度は両手で自分の頬を触ってみた。やはりつるつるしている。手を上に上げていくと初めてそこに長い毛があったが、それは野獣のごわごわした毛皮ではなく、人間の髪の毛だった。彼は自分の鼻面を撫でてみた。狼の長い顎はそこにはなく、少年の小さな鼻が手に触れた。
口から自然に驚きの声が出てきた。声は唸り声ではなく、人間の声だ。
「わあ...っ...わあっ..わあぁっ」
リンクは両手を天に突きあげると、叫び声を上げた。人間だ。人間に戻ったのだ。
彼は自分の両脚を見てみた。ちゃんと足には五本づつの指がついている。脛も、腿も、わずかに薄い毛が生えているのみで、ごわごわした毛皮は消えている。続いて腹や胸も触ってみた。人間だ。人間の体だ。
口から漏れる歓喜の叫びとともに、リンクの目からうれし涙があふれてきた。やっと人間に戻れた。これで村に帰っても化け物扱いされずに済む。
きっと精霊が戻してくれたんだ。ありがとう、ありがとう。
「おぉい、狼男さんよ」
呼びかける声が聞こえてリンクは振り向いた。見ると、少し離れたところにフィローネの泉があり、泉を囲むゴツゴツした岩の一つの上にミドナが自分の両腕を枕にして寝そべっていた。リンクは少しだけがっかりした。あの性悪の妖精との縁はまだ切れていないのだ。
だがリンクの心の中の喜びはまだ消え去らなかった。人間に戻れたということに、この妖精も少しは貢献してくれたことも忘れてはいなかった。リンクは礼を言おうとしてミドナに近づいた。するとミドナが咳払いする。
「えぇ....オホン。あの...何ていうかさぁ」
ミドナが続けた。
「レディの前でその恰好はいくら何でもNGじゃないかねぇ?」
そう言われて、ふとリンクは下を向いた。
全裸だった。まったくの一糸まとわぬ裸だ。
「あっ..いやっ...そのっ...」
リンクは慌てて両手で前を隠した。まさか、人間に戻れるとはいっても全裸で戻されるとは思ってもいなかった。彼は顔を真っ赤にしてミドナに背を向けた。
「お前、狼に変身したとき服がビリビリに破けちゃったみたいだぞ。なあどうすんだこれから?」
妖精が意地悪い調子で続ける。どうするもこうするも、村に帰って自分の替えの服を取ってくるしかない。だがそれまで村人に会わないといいんだが....
ミドナはため息をついて言った。
「おい、手を出せ」
リンクは戸惑った。どういう意味だろう?だがミドナが いいから手を出せ と促すので、リンクは左手で前を押さえながら彼女に向き直り、右手を差し出した。すると中空からいきなり布切れが出現しリンクの手の上に落ちた。リンクの下着だ。ボロボロにはなっていたが確かに彼のものだった。リンクは慌ててそれを履いた。
「まあ人間に戻ったときスッポンポンじゃいくらなんでも可哀そうだと思ってな。拾っといてやったんだ。ありがたく思えよ」
意外の念に打たれてリンクは目を丸くした。この性悪妖精がそんな気遣いをしてくれるなんて。
「あ..ありがとう」
「ありがとうございます、ミドナ様、だ」
リンクが礼を言うと彼女は厳しい調子で訂正した。
「んでだ。あの精霊が言ってた服ってのを探すんだろ?下着一丁でお仲間を探すつもりじゃないんだったらな」
言われてみれば、夢の中で精霊がそんなことを言っていたのを思い出した。いや、この妖精も聞いていたということはあれは夢ではなかったのだろうか。それにしても「勇者の服」なんてものがこの辺に埋まっているのだろうか?
半信半疑でリンクはあたりを見回した。泉は大きな岩で周囲を囲まれているが、右手には低く平らな岩の上に背の高い木が立っている。リンクが歩み寄ると、その平らな岩の中心部には落ち葉からできた腐葉土が溜まっていることがわかった。ひざまづいてかき分けてみると、素手でも掘ることができる柔らかさだった。リンクが掘り進めていくと、ほどなく何か固いものに行き当たった。
リンクはしばらく時間をかけてその固いものの周りを掘ってしまうと、それは丈夫な木に金属の縁取りをした古い箱だということがわかった。両手を穴に差し入れ、掛け声をかけて引き上げようやく岩の上に置く。
鍵はかかっていなかった。留め金を外し蓋を上げると、油紙に包まれた衣類が入っていた。
リンクは目を見開いた。厚い布地でできた丈夫そうな帽子。清潔な白いシャツに、緑のチュニック。さらに探っていくと、ズボン、ブーツに鎖帷子まで入っている。底の方には、皮と金属でできた頑丈な籠手。さらには革製のポーチまであった。
リンクはシャツを着、ズボンとブーツを履いて鎖帷子を身に着け、その上からチュニックを着た。帽子をかぶり、籠手をつけ、ポーチを腰に巻くと、すっかり冒険の旅に出る準備が完了した気分だ。
もうみっともない顔をしなくていい。リンクは少し上気した顔でミドナがいる高い岩の前に行った。
「...ダサいな。特にその帽子なんだ?まるで田舎者丸出しじゃないか」
興味のない顔をしたミドナはぼそっと呟いた。リンクはまた少しがっかりしてしまった。
「ま...いいや。ところでだ」
ミドナは右手の人差指を上げた。すると不思議なことにその少し上の中空に、次々と物体が出現するのが見えた。
剣、盾、さらにパチンコや種袋、カンテラ、リンクの財布、いつか買った干し肉の包み、おまけに釣り竿や山羊ミルクの瓶まである。これらの品物が円形を描くようにぐるぐると回っていた。
「お前の荷物、確かこれで全部だったよな?これからお前にやらせる仕事で役立つかと思って拾っといてやった」
リンクは再び意外の念を感じた。本当はこの妖精は思ったよりいい奴なのだろうか?
「ありがとうミドナ。助かるよ」
「おい、違うだろ。あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す・ミ・ド・ナ・さ・ま。繰り返してみろ」
「ありがとうございます、ミドナ様」
そう正しく繰り返すと、ようやく妖精は満足したようだ。品物がリンクの前に飛んでくると、ドサドサ音を立てその足元に落ちてきた。
リンクが剣をストラップで背中に固定し、盾をそこにかけ、その他の品物をポーチにしまっていると、ミドナは空中を浮遊しながら近づいてきた。よく見るとその体はまた以前のように半透明になっている。
「まったく光の領域のどこがいいのかねぇ。前のほうが過ごしやすかったのに」
そうぼやくと、彼女はリンクの前の中空に留まった。
「お前、あの精霊が言ってた神殿ってところに行くんだろ?ちょうどいいや、私もそこに用があるんだ」
リンクは精霊の話を思い出した。黒き力ってものがそこにあると。でもそれはイリアとコリンを助け出すことに何か役立つんだろうか?
それに、精霊はリンクに対して「傍らにいる者と力を合わせる」なんてことも言っていた。確かに今まで力を合わせる場面もあったけど、じゃあこの意地悪妖精は精霊たちにとっても味方なのだろうか?リンクはだんだんわけがわからなくなってきた。
「ま、お前のお仲間もしかするとその神殿に閉じ込められてるのかもな。早く助けにいったほうがいいんじゃない?」
それだけ言ってしまうと、ミドナはふいっとどこかに消えてしまった。リンクは静かな泉のそばにただ一人取り残された。そして思い出した。人の姿に戻ったとはいえ、自分が昨夜村で盗みを働いたという事実は変わらないのだ。背中に背負った剣と盾の心地よく頼もしい重さが急に厭わしいものに感じられた。リンクはまず村に戻ってこれらの盗品を返すことにした。どうやって言い訳しようか?自分が狼の姿になり、仲間を探したければ言うことを聞けと奇妙な妖精に命令された、などと言っても信じる者は誰もいないだろう。
村に向かいつつも、リンクの足取りはやや重かった。フィローネの草地を抜け、吊り橋を渡り、ラトアーヌの泉の脇を通る。以前この道を通ったときは馬に乗っていたり、狼の姿だったりしていたのであっと言う間だったが、今回は時間がかかり自分の家の近くに着いたときにはもう昼になっていた。
リンクはそのまま中央集落に向かった。まずはモイに剣を返さないといけない。それにモイが怪我をしているように見えたのも心配だった。集落のゲートをくぐると、雑貨屋の横の川に沿って南に下る。良い天気だったが、それでも村人の姿は見当たらない。人が家の中で生活している気配も感じられず、村の異常はまだ昨日から続いていることがわかった。
しかしリンクはその原因を調べるのは後回しにしてモイの家に急いだ。ボウの家に至る橋を渡らず左に折れ川沿いに坂を登っていく。崖を背にしたモイの丸い家が視界に入った。昨日はここでモイに斬りかかられたのだ。リンクは頭を振ってその記憶を追い出すと、モイの家に近づいて、その扉に手をかけた。だが扉には鍵がかかっていた。
(筆者注:この当時、トアル村では村内の人間なら誰でも他人の家の扉を勝手にあけて出入りしてもいいというしきたりがあった。これは家の住人が留守の場合でも同じであったそうだ。そんなのどかな時代もあったのかと驚くばかりである。)
モイはともかく、身籠っているウーリは家にいるはずだ、とリンクは思った。リンクは以前、モイから「都会風の作法」として、家の扉を拳で二、三度叩いて名を名乗る、というやりかたを教わったのを思い出して、その通りにしてみた。
扉の向こうに人の気配がする。扉についた覗き窓が開いて、誰かがこちらを見たと思うと扉が開いた。
「リンク.....本当にリンクなの?」
ウーリが両目を見開いて立っていた。
「無事で帰ってきたのね...良かった..良かった」
目に涙を溜めながら、ウーリはリンクの両肩に手を置いて確かめるようにその顔を覗き込んだ。リンクはウーリを気遣いながら家に入らせ自分も後に続いた。
だが、ベッドに横たわっているモイを見てリンクは凍りついてしまった。昨夜見た通りその頭は包帯でぐるぐる巻きで、眠ってはいるようだったが、その顔は生気がなく頬もこけていた。
「昨日鬼が村に来たからうちの人追い出しに行ったの。そうしたら相手が沢山いたらしくて....」
リンクは覚えずしてモイに近づいた。寝息を立てているのを確認して少しほっとしたが、こんな昼間にも休んでいるということは相当程度重体なのが見てとれた。リンクは悲しく、また悔しかった。自分も一緒にいたらこんなことにはなっていなかっただろうに。
「ウーリ...」
リンクは向き直って剣のことを切り出そうとしたが、彼女もまたリンクの背中の剣に気づいたようだった。
「その剣...魔物に盗まれたのよ!あなたが取り戻してくれたのね?よかった...」
ウーリは少し微笑んだ。彼女はリンクの手を取り椅子に座らせ、竈から薬缶をとって茶を入れてくれた。ウーリの誤解をそのままにしておこうか、それとも何か別の言い訳を考えようかとリンクが思案しているうちに彼女はまた話し始めた。
「コリンがいなくなってしまったの。イリアも。それにタロも、マロも、ベスもよ。魔物の群れが来たからきっと攫われてしまったんだと思う。そのうえうちの人もこんな風に....」
やはり他の子供たちも攫われたのか。リンクは昨日から心に引っ掛かっていた心配事が現実であったことを知り、内心また魔物たちへの怒りが湧き上がってきた。いっぽう、ウーリは、自分も椅子に座ったがやがて両手で顔を覆って嗚咽し始めてしまった。リンクはそれを見て思わず立ち上がり、彼女の手をとった。ウーリが泣き止んでリンクの顔を見ると、彼は言った。
「ウーリ、コリンは僕が必ず連れ戻す。約束するよ」
「でも..リンク」
「大丈夫。ウーリ。僕が絶対にコリンを探し出して助け出すから。僕を信じて」
リンクは泣きぬれたウーリの目を見つめながら力強く言い切った。やがてウーリは手で涙を拭くとまた少し微笑んだ。
「ありがとうリンク。じゃああなたにお願いするわ。それにあなたが無事に帰ってきたんですもの、きっと私の子も、ほかの子供たちもみんな帰ってくるって、信じなきゃね..」
ウーリには自分に言い聞かせるように言うと、また続けた。
「でもリンク、もしあなたがそうしてくれるんなら、その剣はそのままあなたが持っていたほうがいいんじゃない?」
思わぬ申し出にリンクは戸惑った。本当は「魔物から取り戻した」んじゃなくて自分がその「魔物」だったのに.....
「まだ若いあなたにこんな大仕事をやらせるのは気が引けるわ。だからせめてあなたの助けになるものを持たせてあげたい。うちの人には私から言っておくから。ね?」
リンクはしばらく茶を飲み、またウーリと話して慰めた。手伝うことはないかと尋ねたが、雑貨屋のセーラと水車小屋のキュリーがかわるがわる様子を見に来てくれるから大丈夫だという。ウーリのもとを辞すると、リンクは今度はボウの家に向かった。ボウにどれだけの真実を話せばいいかまだ心を決めかねていたが、とにかく村に来て会わないわけにいかない。
坂を下り切って橋を渡り、ボウの家の軒先に上がった。だが扉に手をかけてもこちらも鍵がかかっている。先ほどしたように、扉を何度か叩いてみたが、何の返事もない。仕方がないので、ジャガーの家に行ってみることにした。川沿いの道を下って、野外集会所に通じる橋を渡った。集会所はガランとして誰もいなかったが、水車小屋の傍らに人影があった。ジャガーだ。農具の手入れをしているようだった。
「リンク!」
ジャガーはリンクの姿に気づくと叫んだ。
「リンク!本当におめえか!」
彼は駆け寄ってくると、リンクの両肩をつかんで揺さぶった。
「良かった‥‥良かった‥‥おめえだけでも無事に帰ってきて‥本当になんともないのか?」
岩石のようないかつい顔をしたこの男の目に涙が浮かんだのを見て、リンクも思わずもらい泣きしてしまった。
「大丈夫。僕は大丈夫だよ」
「おぉい、お前、リンクが帰ってきたぞ!」
ジャガーは家のほうに向かって大声で叫んだ。しばらくすると妻のキュリーが扉を開けて顔を出した。
「おやまぁ!本当にリンクかえ?よく無事で帰ってきたもんだね!」
キュリーはリンクを家のなかに招き入れた。腹は減っていないかと尋ねられ。リンクは急に思い出した。もう何日も何も口にしていないというほど空腹だったのだ。キュリーは急いで台所に走ると、カボチャスープを温め、チーズとパンを添えて持ってきた。ジャガーと話しながらリンクは久しぶりの食事にありついた。
「昨夜子供たちがいなくなったってんでボウが探しに出かけたってわけよ。だけどあのひとももう歳だから俺も心配でなぁ」
リンクは頷いた。タロとマロのいない家は静かでガランとしていた。いつもはうるさいほど精力的なジャガーが明らかに元気をなくしているのがリンクにもわかった。
「そういやぁおめえ、その盾持っててくれたんだな。俺ぁてっきり魔物に盗まれたもんだと勘違いしてたんだ。良かった良かった。なあキュリー?」
ジャガーの勘違いはウーリのそれより激しかった。結局リンクが何も言い出せないうちに、ジャガーはリンクの腕をつかんで懇願してきた。
「なあ、リンク。頼む。タロとマロを探してくれ。な?その盾はもうおめえのものにしていい。お願いだから子供たちを探して欲しいんだ。頼む。この通りだ」
キュリーまでも頭を下げてくる。結局リンクは盾を盗み出した経緯を言えずじまいだった。
だが、リンクとしてはもうイリア、コリンに加えてタロ、マロ、ベスも探しだす心づもりでいた。リンクが請け合うと、ジャガーとキュリーは地に頭を擦り付けんばかりにして感謝した。二人は、リンクが腹一杯食べてしまうと、今度は固く焼いたパンと皮袋でできた水筒を持たせてくれた。
リンクは水車小屋を出ると、自分の家に一度立ち寄ることにした。これからの冒険に役立つものが何かあるかも知れないと思ったからだ。中央集落の北出口を抜け、小道を上って家の前の広場に出て、軒下の梯子を登って我が家の扉を開けた。
だが、その瞬間リンクは異常に気づいた。棚という棚が荒らされ、食器からなにからありとあらゆる物が床に散らばっている。調べてみると、おおよそ食べ物と言えるものは全て食い荒らされている。おまけに床のあちこちには糞便が撒き散らされていた。
リンクにはすぐわかった。あの悪鬼どもだ。泉で襲われた時に感じた悪鬼どもの臭いと同じ臭いが漂っている。ふと思い立って、リンクは家の奥に進んで地下室への梯子を降りた。カンテラを取り出し火を点すと、かざしながら地下室の突き当たりを探す。
そこにはリンクの宝箱があった。宝箱といっても思い出の品をいろいろ詰め込んであるだけだが、幸いにも地下室は暗すぎたのか、荒らされていないようだ。宝箱を開け、底を探ると、油紙に包んだヘソクリの五十ルピーはちゃんとそこにあった。
リンクはルピーを財布にしまうと、カンテラを消して梯子を上った。家の中を改めて見渡したが、この惨状をもとに戻すには丸一日かかるだろう。
最初リンクは冒険に出る前にここで一泊しようかとも思っていたが、もはや到底そんな気になれない。家から出ると、あの精霊が言っていた神殿という場所に向かうことにした。家の前から泉への小道に入る。北にむかってだいぶ歩くと、やがて泉に差し掛かった。その門はリンクとイリアが襲われた日のままバラバラに壊れていた。
リンクは突然思い出した。エポナはどうなったのだろう?緑の悪鬼どもが襲ってきたとき、エポナがどうなったかは見えなかったのだ。無事に逃げおおせただろうか?出来ればそうあってほしかったが、忠実な彼女のことだから逃げなかったかも知れない。もしブルブリンたちに捕まっていたら、と思うとたちまち嫌な想像が頭に浮かんだ。もしかして、奴らに食べられてしまったかも?リンクはあわててその考えを打ち消した。
泉には、以前イリアが摘んでくれたあの草がまだ生えていた。リンクはそれを一つ摘み取ると、口にあてて例のメロディを吹いてみた。イリアとエポナに聞かせた素朴なメロディだ。もしエポナがこの周辺にいたら、聞きつけて戻ってくるかも知れない。だがしばらく待っても何も起きなかった。
リンクはやがて諦めると、泉を出て吊り橋を渡り、フィローネの森の入り口に入った。二つの広場を通り抜け、泉を通り過ぎ、洞窟を一つくぐった。だが、森の奥に通じる狭い洞窟の前の門はまだ閉ざされている。狼のときみたいに穴をほってくぐり抜けることも出来ないのでリンクは立ち往生してしまった。
あの油売りの青年なら何か知っているかもと思い、リンクは小屋に立ち寄ることにした。小屋のほうに向かって歩いていくと、果たして青年は以前のように焚き火の後ろに座っていた。
「あれ?‥‥トアルの兄さんっすよね?」
リンクが近づいて声をかけると、青年は一瞬戸惑ったようだった。
「ああ、やっぱりそうだ。服が違うから最初わかんなかったっすよ」
青年は人懐こく笑った。リンクが改めて名乗ると、青年はキコルと自己紹介した。リンクは洞窟の門について尋ねてみた。
「ああそうそう。最近ここら辺も魔物がうろつくようになったんでね。物騒だから一旦門を閉じちゃったんすよ」
リンクが奥にいく用事がある旨を告げると、キコルは鍵を渡してくれた。
「ま、兄さんくらい準備してたら大丈夫っすね。あ、それとカンテラの油足りてます?今なら特別価格でビン入りが百ルピーっすけど、どうすか?」
それを聞いてリンクは仰天してしまった。いくらなんでも百ルピーなんて持ってない。もっと安いのはないのか聞くと、カンテラに直接補充するなら二十ルピーだという。リンクはそっちにしてもらうことにした。五十ルピーを出すと、キコルはお釣りを渡したうえで足元に置いた壺を取り上げ、カンテラの油入れを満杯にしてくれた。
「へへっ毎度あり。この調子でジャンジャン油使ってくださいよ」
青年の上機嫌な声に見送られリンクは洞窟に向かった。やはりカンテラを無償でくれたのにはちゃんと訳があったということだ。ともあれ、洞窟には所々燭台があるとはいえ、真っ暗な箇所も多いから、背に腹は代えられない。
洞窟の入り口にかかった門の錠前を開くと、以前生えていたデクババはなくなっていた。だが暗くて不気味なことは変わりない。リンクはカンテラをかざすと奥に進んだ。
とはいえ、ここを通るのはもう三回目だから、地形はだいぶ頭に入ってきていたし、燭台もまだ火が灯っていたので迷わず進むことができた。頭上を通る蝙蝠に気を付けながら進んでいくと、以前鼠を見た箇所でまた同じような鼠がいた。リンクは剣を汚すのも嫌だったのでパチンコを取り出し、そいつが餌探しに夢中になっている間に狙って撃った。威力てきめん、そいつはギュッと声を上げてひっくり返ってしまった。リンクがふと右を見ると、以前は気づかなかった分岐があることに気づいた。注意深く入ってみると、すぐに行き止まっていたが、そこの床に箱があることに気づいた。リンクが開けてみると、十ルピーが入っている。これはいわゆる埋蔵ルピーなのだろうか?リンクは疑問に思ったが、いずれにせよこんな場所に住んでいる人間などいるはずがないので、彼はこれを埋蔵ルピーに準ずるものとして自分の財布に入れることにした。
本道に戻り、進んでいく。以前蜘蛛の巣を焼き払った場所には、新しい巣は張られていない。蜘蛛はもう移動してしまったのだろう。やがて洞窟の出口が見えてきた。
リンクが洞窟から出ると、妙に周囲が暗いことに気づいた。確かにもうすぐ夕暮れどきだが、それにしては目の前の盆地は夜みたいに光がない。しかもよく見ると、狼だったときに見たあの毒々しい霧がまだ盆地の中を漂っている。
リンクは、盆地に張り出して途中で崩壊している木道の先端に立って眺めてみたが、霧は盆地一杯を満たしている。霧に入らずに徒歩で通れそうな箇所はどこにもなかった。リンクはミドナに呼びかけてみたが返事がない。これでは先に進むことができない。
思案していると、突然後ろから近づいてカンテラをひったくるものがあった。驚いたリンクが振り向くと、あの猿だ。
「おい、何をするんだ。それを返せ」
リンクは声を荒げて言った。だが猿は気にも留めないようで、地面に落ちている長い枝を拾うと、その先端にカンテラを引っ掛けて振り回しはじめた。
「こら。遊び道具じゃないんだぞ。返せったら」
追いかけようとすると、猿はカンテラのついた枝を振り回したまま盆地のほうに降りていってしまった。
「バカ、お前がボウっとしてるから取られちゃったじゃないか。取り返して来い」
ミドナがリンクの前に半透明の姿で現れて叱咤したかと思うとまた消えてしまった。リンクはため息をついて猿の後を追い、斜面を降りた。だがあることに気づいて驚いた。猿がカンテラを振り回すたび、その周囲は霧が引いていくのだ。
この霧は魔法の霧なのか何なのかわからなかったが、どうやら光によって中和できるらしい。猿はキーキー声を上げたかと思うと、今度はリンクに片手で手招きし始めた。どうやらついてこいと言っているらしい。
リンクは猿が通過したあとをなぞりながら進んでいった。どうやら霧の影響は受けなくて済みそうだ。猿の後ろに追いついて前方を見ると、猿はリンクの行先を分かっているようで、ちゃんと北東の洞窟のほうに進んでいた。また猿がカンテラを振り回すと、周囲の霧が引いていく。だが、中央の岩舞台の近くに来ると地面に生えたデクババが頭をもたげて猿を狙い始めた。猿は途端に怯えてリンクの後ろに隠れる。リンクはその植物の茎を素早く剣で切断し、頭のような花弁を串刺しにして黙らせた。やっと脅威が過ぎると、猿は気を取り直して前進を再開した。
途中で、吸血蝙蝠や別のデクババなどに遭遇したが、リンクが全てそれらを片付けてやると、猿はちゃんと目的の場所まで連れていってくれた。盆地を完全に横切り、北東の洞窟の前の斜面に上がると、猿はカンテラを放り出してどこかに行ってしまった。
リンクはカンテラを拾った。霧を渡れたのはありがたかったが、ゆっくりとした前進だったので補充したばかりのカンテラの油が切れかかっている。カンテラを仕舞うと、リンクは門の開いた洞窟をくぐり、丸い広場に出た。
だが、広場の中にボコブリンの姿を見たリンクはすぐ気を引き締めた。二体いる。以前いた奴らの生き残りだろうか?リンクは背中から盾を下ろして左手に持つと、剣を抜いた。慎重な足取りで近づいていく。悪鬼どもはやがてリンクに気づき、互いに顔を見合わせ何かしゃべっていたが、それぞれ鉈を手に構えて走り寄ってきた。
リンクは近くにいた一体が間合いに入った途端、そいつが攻撃態勢をとる前に突進し突きをくれた。研ぎ澄まされた鉄の剣の先端が敵の胸に突き刺さる。そこから身を沈め回転斬りを放つと敵はたちまち崩れ落ちた。ほとんど上半身と下半身が分離しかかっている。生き残ったほうは、獲物と見定めた若者の思わぬ手ごわさに一瞬怯んだが、それでも逃げないのがボコブリンだ。鉈を構え直すとリンクに向けて振り下ろしてきた。リンクは足を踏ん張って盾をかざす。鈍い音がして盾を持った手に衝撃が走る。だが相手が二発目の攻撃を放つ前にリンクは横切りで相手の腕を払った。返す刀でもう一度横斬りを放つ。鮮血が迸った。深手を負った悪鬼はタジタジと後じさりしたが、それでも武器を手放さない。だがリンクは裂帛の気合を放ってジャンプ斬りをそいつの頭部に叩きつけた。ぱっくりと頭を割られた悪鬼は白目を剥いて膝から崩れ落ちた。
戦いが終わった瞬間、リンクは以前自分が経験した最初の戦いとの様相の違いに驚き、刃のついた鉄の剣の威力の凄まじさに少し身震いした。これが本物なのだ。リンクはふと、剣が血で汚れたら拭くようにとモイから教わっていたのを思い出した。さしあたり、広場に生えた下草でよく血を拭い、その後ジャガーからもらった手ぬぐいで丹念に拭いた。
ようやく剣の手入れを終えたリンクがそこから巨木の前の回廊に入ると、すでに日は暮れかかっていた。
暗くなってから例の神殿を探検するのも具合が悪いと感じられたので、リンクはここで夜を明かすことにした。周囲にボコブリンの姿は見当たらない。東側にある、柵で囲われ壺が置いてある場所を調べてみると、リンクにはそれが何かの販売所であるということがやっとわかった。右側の壺には油、左側の壺には赤みがかった何かの液体が入っている。柵の左端には、足を紐で繋がれた鳥が止まっていた。
リンクはカンテラの油入れを開けると、右側の壺に沈めて油を補充した。壺の上には落ち葉が何枚か落ちていたが、油自体は上質のようだ。油壺の後ろに立ててある立札には二十ルピーとあった。鳥の前に置いてある料金箱に近づいてルピーを放り込むと、鳥が甲高い声で鳴き始めた。
「マイドアリガトー!マタカイモノシテネ!」
どうやら店番として繋がれているらしい。リンクは不本意な仕事に従事させられているそいつが可哀そうになってきてしまった。リンクはあたりを探して、野葡萄や木の実を集めた。また鳥のいる場所に戻ると、止まり木の上に皿のようなものがしつらえてあるのを見つけ、そこに取ってきた土産を入れてやった。
鳥は、客からの思わぬ差し入れに顔を近づけ、何度か嘴でつついていたが、やがて柔らかくて甘い果物から食べ始めた。
リンクはふと思い立った。ここで野宿しようにもボコブリンが来るかもしれないという心配があったが、こいつに番をしてもらうと良いかも知れない。少なくとも魔物が近づけば騒ぎ出すはずだ。
リンクはもう一度周囲を回って木の実を集めると、止まり木についた皿に盛ってやった。
「頼むぞ。鬼どもが来たら起こしてくれよ」
鳥はわかったのかわからないのか、しばらく皿をつついていたがやがて腹一杯になったらしい。先ほどと同じセリフを何度か繰り返したあと静かになった。リンクは剣と盾を背から下ろして脇に置くと、柵の傍にあった叢に座った。ジャガーからもらったパンを少し食べ、水を飲んで腹ごしらえすると横になる。
森の神殿、と精霊は言っていた。ということはあの大木の中にその神殿があるのだろう。太陽が上ったら探索を開始しよう。リンクは自分が狼の姿で経験したことや、人間に戻してくれたあの精霊が言っていたことなどの不思議を思い返した。こんなことは人に言っても信じてはもらえないだろう。だが、イリアとコリン、タロ、マロ、ベスを探すには、この奇妙な運命の流れに身を任すしかないとリンクは気づきはじめていた。
イリアを取り戻す。そしてコリンも、他の子供たちも。リンクはそう自分に言い聞かせながら、少しづつ眠りに入っていった。
夜中だっただろうか。突然、狼の遠吠えが聞こえた。
狼?狼が近くにいるのになぜ鳥は騒がないのだろう?目が覚めたリンクは剣と盾を手にして素早く身支度して立ち上がった。
周囲を見回したリンクは驚いた。寝る前にはフィローネの森にいたはずなのに。リンクは白く薄い霧の立ち込めた平原にいて、フィローネの巨木や岩壁は見当たらない。遠くにはあのハイラル城のシルエットが見えた。
もう一度狼の遠吠えが聞こえた。背後からだ。リンクは野生の狼が人間を襲うのは珍しいと知っていたが、それでも山羊が喰われる事例もある。盾を持ち直し剣を右手に抜いて振り返る。すると、牛ほどの大きさはあろうかという金色の毛をした狼が十メートルほどの距離に座っている。
リンクは目を疑った。なぜなら、もう一度瞬きして狼を見たときには既にその姿は変わっていたからだ。狼はいつの間にか、背が高く、左手に円盾、右手に剣を持ち、兜と甲冑で身を固めた剣士になっていた。
これは夢だろうか?リンクは戸惑った。だが目の前にいる剣士はそれほど友好的には見えない。やがて眼をこらしてその剣士の顔が見えると、リンクはぎょっとした。
それは骸骨だった。顔だけでなく、胸当ての下にあるはずの腹は肋骨と背骨だけだった。腰回りの太い帯についた草摺りの下と脛当ての間も骨だった。
骸骨剣士は盾を前に構え、リンクに向かってきた。左手の重そうな盾を掲げ右手の剣を高々と上げる独特の構えだ。両脚でリズムをとるように体を上下させている。戦おうというのか?リンクは本能的に相手が手練れであることを察した。同じ魔物にしても、ボコブリンなどとは比較にならない強敵だろう。だが、これまでの戦いで大きな自信がついてもいた。なんとなれば、狼の姿だったとはいえ、目の前の骸骨剣士よりはるかに背の高い悪鬼さえも倒してきたのだ。
面白い。リンクの心の中に闘志が湧いた。左手の盾を前に出し、じりじりと相手に接近していった。彼我の距離が縮まる。剣が届く間合いに入った瞬間、リンクは思い切って踏み込み、剣を振り下ろした。その瞬間骸骨剣士は盾を跳ね上げた。リンクの剣はあっさりと弾き返され、相手の剣が振り下ろされる。左肩に激しい衝撃が走りリンクはたまらず吹き飛ばされた。
リンクはどうにか手をついて立ち上がった。骸骨剣士は追い打ちをしてこない。剣を下ろしてリンクの前に立った。
「勇無き者が剣を持ったとてそこに力は生まれぬ」
骸骨剣士は低い声を発した。
人間の言葉をしゃべった?ではこいつは魔物ではないのか?リンクはますます驚いた。今の一撃はリンクを試そうとしていただけなのだろうか?
「確かにそなたは運命に翻弄され勇者となった身。さらばとてそのような不甲斐ない有様ではその緑の衣が泣くわ」
昔話でしか読んだことのないような古風なしゃべり方だった。だが、不甲斐ないと言われてリンクは猛烈に腹が立ってきた。ならばもう一度だ。リンクが盾と剣を構えると剣士は手を上げて制した。
「真の勇者になりたくば蛮勇により遮二無二戦っても始まらぬ」
剣士は首を振ると、続けた。
「勇を為し力を得るは即ち力を得勇を為すこと。そなたにもしハイラルの危機を救わんとする気骨と孤独な剣の道を追い求める覚悟があるのなら我が奥義を授けよう。あとはそなたの心次第だ」
リンクはようやく相手の意図が呑み込めてきた。剣の奥義?自分としてはモイからかなりの程度まで剣技を教わってきた自信があった。だが、これからの冒険でどんな相手に会うかわからない。だから誰も知らないような技があるというのなら身に着けておきたいと思った。
リンクが頷くと、骸骨剣士は盾を横に下げ、右手の剣を前に掲げた。リンクは言われたわけではないが同じ姿勢をとった。二人の剣が触れ合い、金属音を立てる。これがこの剣士の時代の挨拶なのだろうとリンクは直感でわかった。
「活力溢れる敵はたとえ倒してもまた意識を取り戻し立ち向かってくる。そのような相手が意識を失っている間に息の根を止める。それが『止め』だ」
挨拶が済むと剣士は説明した。相手が倒れている間に剣を逆手に持ち、高く跳躍してその急所に深く剣を突き立てる。一通り言葉で描写すると、剣士はリンクに自分を練習台にしてやってみろと促した。
二人の剣士は再び剣を抜いて向き合った。リンクは盾を引きつけ剣を油断なく構えながら相手に接近した。思い切って距離を詰め、横斬りで相手の盾を跳ねのけ、回転斬りを放った。骸骨剣士がよろめき倒れる。リンクは逆手に剣を握り飛び上がって骸骨剣士の胸当ての下に刃を突き刺した。
「うむ、良い動きだ」
リンクが剣を抜くと、剣士はもとより骸骨だからか、何事もなかったかのように立ち上がりながら言った。
「奥義『止め』確かに伝えた。そなたに伝えるべき奥義はあと六つ。だがそれは誇り高い獣の魂を持つ勇者の血族にのみ伝えられる」
骸骨剣士の姿が次第にぼやけてくる。その声もまた次第に遠くなってきた。
「そなたに準備ができたら獣の魂を呼び覚ます風の音を起こす石像を探しそこで私を呼ぶがよい。それまでの間...」
そこまで聞いた瞬間、リンクはハッと目を覚ました。上半身を起こし周囲を見回す。森の中は静かで、わずかな風が草を揺らしているのみだ。止まり木の上の鳥も、眠っているのか、羽の中に首を突っ込んで動かない。
今の夢は一体何だったのだろう?あの骸骨騎士は何者だったのだろう?だが自分が今しがた稽古した「止め」の動きは明確に体が覚えていた。何という恐ろしい技だろう、とリンクは思った。モイでさえこんな技は教えてはくれなかった。古代のハイラルでは、魔物たちと人間たちとの凄まじい戦争がたびたび起こったことがある、と聞いたことがあった。あの剣士はそのような戦争を戦った名高い戦士だったのだろうか?そのような激しい戦いが、即座に相手の息の根を止めるこの危険な技を必要とせしめたのだろうか?
「勇者の血族」と骸骨剣士は言っていた。自分には勇者の血が流れているのだろうか?リンクという名がついたのは偶然ではなかったのだろうか?リンクにはますます不可思議なこと、分からないことが出てきた。だが心はもう固まっていた。この先、どんな強敵が現れようと、何がこの身に起ころうと、前に進むしかない。
もう夜は明けかかっていた。