黄昏の姫と緑の勇者   作:nocomimi

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猿たちのこと

夜明けとともにリンクは立ち上がり、首を回したり伸びをしたりして体をほぐした。

 

今日は森の神殿を探索しなければならない。武装を取り身支度をすると、リンクは巨木に近づいた。根を掘り込んだ通路を登り、ふもとの広場に行き着く。以前来たときは気にも留めなかったが、巨木の根元には洞があり、その入口には蜘蛛の巣が分厚く張られていた。リンクはカンテラに火を点けると、蜘蛛の巣を焼き払った。洞の内部をうかがうと、薄暗いが奥の方まで数十メートル続いているようだ。リンクは盾を左手に構え油断なく進んでいった。

 

奥に入ると幅十五メートルくらいの部屋に出た。驚くことに、入り口左右に燭台が置いてあり、そこにはまだ火がついていた。リンクはそれを見てカンテラを仕舞うと、部屋の中を見回してみた。奥行は五十メートルくらいで、翼のような装飾のついた木のポールが何本か置かれている。トアルでは見たことのないものだから、おそらく以前のフィローネの住人達の手によるものだろう。そこここにデクババが生えている。

 

猿の鳴き声が聞こえてきて、リンクは前方に注意を向けた。行き止まりに壁から張り出した五メートル四方ほどの高い舞台のようなものがあり、その下に木の檻が置かれている。中には猿が閉じ込められていた。リンクからカンテラを奪って霧を通らせてくれたあの猿だろうか?

 

しかしその横に立った影を見てリンクは警戒を固めた。ボコブリンだ。肩の上に鉈を担いでブラブラしていた。だがリンクの姿を見とがめると怒りの喚き声を上げ、武器を構え近寄ってきた。

 

リンクは剣を抜いた。盾を油断なく構える。悪鬼が呻きながら鉈を振り上げ、振り下ろしたところを受け止める。再び相手が武器を振り上げた瞬間に足を使って横飛びした。盾を鉈がかすめ、相手はつんのめる形になった。リンクは右上から袈裟斬りに斬り下ろし、次いで横に斬り払った。だが、鎧も身に着けず裸で、首元と胴に深手を負ってもまだボコブリンは死なないタフな奴だ。やや怯んだ顔をしたが怒りに燃えて喚き、再び鉈を振り上げてきた。リンクはすかさず真っすぐ剣を突いた。突き込んだ後、ぐるりと剣を捩じり、さらには引き斬るようにして腹を切断する。腹から大量の臓物を飛び出させながら悪鬼は崩れ落ちた。

 

息を鎮め、リンクは剣を拭おうとしたがあまり良い草も見当たらないので、よく振って血払いし鞘に納めた。次いで檻を見る。以前見たものと同じで粗雑だが頑丈そうな作りだ。

 

リンクは猿に伏せているよう声をかけ、剣の柄で格子の根元を叩いてみた。やや緩んだようだが、それでも外れない。こんなことで使うのは気が進まなかったが、仕方がないのでリンクは思い切り剣の刃で格子を叩いてみた。何度か繰り返すと格子に斬り跡がつくとともに次第に緩みが広がる。とうとう格子がグラグラになり、リンクがもう一撃加えると音を立てて外れた。

 

猿はすぐ檻から飛び出してきたかと思うと、突き当たりにある高い舞台からびっしりと生えている蔦をするすると登った。その上からキイキイとしきりに声をあげる。よく見てみると、その舞台の上の先には扉が見える。猿はしきりに手招きしているので、この先を案内するからついてこいと言っているようだ。

 

「なんだこいつ、カンテラ盗んだ猿だよな?」

 

ミドナがリンクの前に現れて言った。

 

「お前を誘ってるのかな?モテる男はつらいねぇ」

 

リンクは初めてメス猿だったと気づいた。とりあえずミドナの下世話な冗談は聞き流し先に進むことにする。リンクは蔦を登ろうと手をかけて上を見たが、上方一メートルほど、蔦の合間に何か動くものが見えた。蜘蛛だ。それも人の頭ほどもある大きさだ。毒々しい色で、噛まれると厄介だと直感したリンクはそいつを片付けてから登ることにした。リンクはパチンコを取り出して狙いをつけ、蜘蛛の頭部あたりに発射した。近距離で弾を喰らった蜘蛛はギイと声を上げるとポロリと蔦から落ちていった。慎重に蔦の全体を観察すると、もう一匹上方に潜んでいる。そいつも射殺し進路の安全を確保したリンクは蔦を登り始めた。

 

舞台の上に立つと、猿がすぐさま扉のほうに駆けていき、リンクの顔を見ながらしきりに鳴く。自分では扉を開けることができないようだ。扉に手をかけてみると、円盤のような岩でできており、横に転がすことによって開けるという、これまたトアルでは見たことのない仕組みだった。

 

リンクが扉を開けると、その先は同じくらいの広さの細長い部屋だ。やはり戸口に燭台があり火が点されている。リンクは猿を通してやると扉から手を離した。扉はゴロゴロと音を立てて自動的に閉まった。

 

リンクが居る場所からは階段で床に下るようになっていて、そのすぐ先にまた階段があり、部屋の中央にある小高い舞台に登るようになっている。その舞台の前方、右および左の壁に、前の部屋で見たのと同じような舞台が張り出しており、またその奥の壁にはそれぞれ扉がついている。

 

改めて部屋の中を見回す。この部屋では、この先の他の部屋に通じる扉のある小高い舞台から蔦も生えていないし、その他の足場となるようなものもない。先へ進むにはどうすればいいだろうか?リンクは思案しながら中央の小高い舞台への階段を上ってみた。その舞台の上の天井からは、箱が一つと、壺がいくつか蜘蛛の糸に絡めとられてぶら下がっている。

 

舞台の上には燭台が四つあったが、どれも火は消えていた。天井からはロープが東西の扉の上に向かって伸びており、ここに手が届けば東西いずれかへは移動できそうだったが、高さが三メートルほどあるので難しそうだった。そこでリンクが北のほうに進む方策を探していると、ミドナが突然叫んだ。

 

「リンク、上だ!上を見ろ!」

 

そう言われたリンクがふと天井を見上げる。

 

天井からとんでもなく巨大な蜘蛛が逆さにぶら下がっている。真上一メートルくらいの場所からこちらを見下ろして、前顎をカチカチ鳴らしている。リンクは思わず叫び声を上げて後ろに飛びのいた。

 

蜘蛛は素早く床に降りてきてリンクに向き直った。大きさは胴体だけでも手押し荷車ほどある。背中にはまるで髑髏の眼窩を思わせる大きな丸い文様が二つついていた。活きの良い獲物を奇襲しようとして気づかれたのが酷く不満なのか、キシキシと音をたてながらしきりに前顎を鳴らして威嚇してきた。それまでリンクに付き従ってきていた猿は悲鳴を上げて逃げ出した。

 

「リンク、早くそいつを倒せ!私そういうの無理なんだよ!」

 

ミドナが絶叫した。リンクとて同じだ。素早く剣を抜いた。盾を構え、蜘蛛との距離を見極め剣を握り直した。間合いに入った瞬間リンクは剣を振り下ろした。だが、剣は蜘蛛の頭部に当たると鈍い音をたてて弾き返された。もう一度渾身の力で剣を振り下ろしたが、やはり同じだ。刃が入らない。

 

蜘蛛がいきなり突進してきた。リンクは敵の前足で突き飛ばされ背後の階段を転げ落ちた。慌てて立ち上がったが、蜘蛛は素早い足取りでリンクに迫る。リンクが盾を構え直すと蜘蛛が再び攻撃してきた。盾を持つ左手に鈍い衝撃が走る。すると蜘蛛は驚くべき速さでリンクの右側に回り込んできた。向き直ろうとする前に右腕に激痛が走る。噛まれたのだ。リンクは横っ飛びして追撃を逃れると、どうにかして相手に盾を向け直した。

 

甲が厚くて剣が通じない。しかもボコブリンなどよりもはるかに賢いようだ。リンクの額に冷や汗が浮かんできた。退却するか?だがそのときリンクの心の中にあの骸骨剣士の言葉が浮かんできた。こんな不甲斐ないことでは、次にあの剣士に会ったときにどう言い開きをすればいいのか。リンクの胸に猛然たる闘志が湧いてきた。

 

リンクの隙の無い構えを見てとったのか、蜘蛛はやや攻めの手を休めていたが、やがて左右に動きながらリンクを追い込む作戦に出てきた。盾の上からでも襲いかかってきて牙を立てて来たかと思うと、次には違う方向から突進し頭部で打撃を与えて来る。リンクは必死で足を踏ん張って盾にかかる衝撃を受け止めた。防戦一方になりながらも、相手が隙を見せる瞬間をひたすら待ち続けた。

 

やがてリンクが部屋の隅に追い込まれると、蜘蛛は勝利を確信したのかシャーシャーと威嚇音を発して前顎を打ち鳴らした。リンクは自分からは仕掛けず辛抱強く待った。やがて蜘蛛は止めを刺すべく前足を高く上げてリンクの上にのしかかってきた。

 

その瞬間、リンクは裂帛の気合を発して回転斬りを放った。体重の乗り切った斬撃が甲のない蜘蛛の胸部の下側を直撃する。手ごたえがあった。ざっくりと身を斬られた蜘蛛は思わぬ痛手に悶絶し、動きを止めた。

 

その刹那リンクは剣を逆手に持ち宙に高く飛び上がった。蜘蛛の頭部目掛けて落下し思い切り切っ先を突き立てる。剣は蜘蛛の甲を貫き、地面にまで達した。致命傷を負った蜘蛛は足をバタバタとさせて暴れたが、リンクは渾身の力を込めて剣の柄を押さえつける。ピン止めされた虫のような状態となった蜘蛛は、やがて弱弱しく足を震わせ、そして動かなくなった。

 

リンクは激しい呼吸を鎮めながら考えた。あの剣士が教えてくれた技が自然に出てきた。やはりあれは夢ではなかったのだろうか。

 

「おいリンク、やったのか..?」

 

ミドナの声が聞こえる。姿は見えなかったが、顔を覆った両手を恐る恐る下げている様子が目に見えるようだ。

 

「ああ、やったよ」

 

ようやく荒い息が収まってきたリンクは答えた。

 

「ったく......しょっぱなからこんなことじゃ先が思いやられるぞ。もっとしっかりやってくれ」

 

ミドナがいつもの尊大な調子に戻ったのを聞いてリンクはなんだか可笑しくなってしまった。

 

「ミドナって蜘蛛が苦手なんだね。まあ女の子にはよくあることだから気にしなくていいよ」

 

「おい、下僕風情が調子に乗るなよ」

 

ミドナはカチンときた様子で言った。

 

「女の子、ではない。私はお前なんぞ及びもつかないような高い身分の出身だぞ。今の姿はこの世界で行動しやすいように仮の姿を取っているだけだ」

 

「わかったわかった」

 

「わかりました、ミドナ様だ。言い直せ」

 

自分が取り乱した様子を見られプライドが傷ついたこともあってか、ミドナは臍を曲げてしまったようだ。それを感づいたリンクは素直に言い直した。やっとミドナの機嫌が直ると、今度は服を脱いで怪我の具合を点検した。階段を転げ落ちたのは何ともなかったが、右腕は少し内出血している。鎖帷子を着ていなければ肉を食いちぎられていたかも知れない。だが行動に問題はないのを確認すると、リンクは再び身支度した。

 

蜘蛛は倒したが先に進む方法がないことには変わりない。リンクは手がかりを探すためにカンテラをつけた。中央の舞台の上をよく探してみたが、特に新しい発見はない。リンクが捜索をしていると、猿がようやく戻ってきた。

 

「なあ、お前どうやって先に進めばいいかわかるか?」

 

猿に尋ねてみたが、猿にも妙案はないようでキョトンと見つめてくるだけだ。リンクは首を振って溜息をついた。これではここで行き止まりも同然だ。カンテラの油を節約するため、リンクは舞台の上にあった燭台に火を移した。光量を増やすため、残り三つの燭台にも火を点ける。

 

その瞬間だった。北方の壁との間の床がせりあがってきて、扉に通じる舞台と同じ高さで止まった。燭台が引き金となる仕掛けが仕組まれていたのだ。

 

これで北のほうを探索できる。猿もキイっと声を上げると、せりあがってきた床を渡って北の壁の扉のほうに走った。リンクも後に続く。だがリンクはふと扉の左手に大きな箱があるのに気づいた。古く丈夫そうで金属の縁取りがしてある。蓋に手をかけて開けてみると、分厚い羊皮紙の上にインクで書かれた図面のようなものが入っている。

 

取り上げてみると、どうやらこの神殿全体の地図のように見えた。リンクは、この神殿は一本の巨木の中に存在しているものだと思っていたがどうやらそうではないらしい。神殿にはまだ多くの部屋があり、ここまで通ってきた二つの部屋は建物のごく一部だとわかってきた。

 

猿はキイキイ声をあげ、リンクに扉を開けるようせがんできた。リンクは図面をポーチに仕舞うと、岩の扉を開けた。扉の先は野外だった。扉の前に狭い床があり、そこから長い吊り橋が北のほうに伸びている。その先にはもう一本の巨木があり、その側面にも扉がしつらえてあった。

 

猿は迷わず吊り橋を渡っていった。どうやらこの先に仲間がいるらしい。

 

すると、向こう岸の扉から何かが出てきた。こちらも猿だ。だが同じ猿でも、その体格は格段に大きく、人間よりも大きいくらいだった。筋骨もたくましい。明らかに群れのボスのように見える。そのボス猿は、どこか様子がリンクの知っている猿と違って見えた。目がギラギラと光っており、しかも手にはブーメランを手にしている。猿がなぜ武器を持っている?リンクが怪訝に思った瞬間、ボス猿はブーメランを大きく振り上げて投げた。ブーメランは吊り橋の床板を縦に吊る綱を次々と切断していく。

 

こちらから渡っていったほうのメス猿はたまらず鳴き声を上げると、吊り橋を戻り始めたが、吊り橋はたちまち崩壊し、メス猿の姿が見えなくなったた。リンクは思わず岸から身を乗り出した。自分がいる岸からぶら下がった橋の残骸に、かろうじてメス猿がしがみついている。それを見て安堵したリンクだったが、今度はボス猿のほうが薄気味悪い鳴き声を上げた。見ると、侮蔑とも威嚇ともつかない叫び声をあげ、戻ってきたブーメランを手に持って振り回している。ひとしきり喚くと、ボス猿はやがて向こう岸の扉を開けて中に入ってしまった。

 

メス猿が橋の残骸を伝ってようやく戻ってくると、ミドナが姿を現した。

 

「あぁあ、先に行けると思ったのにあいつなんてことするんだよ」

 

「ミドナ、あの猿、様子がおかしいと思わないか?」

 

リンクが尋ねた。リンクは動物というものをよく知っていたから、あのボス猿の目つきや振舞いの不自然さが気になった。

 

「ああ、あれは魔法の影響だな。おそらく憑依系の魔法だよ」

 

ミドナが答える。

 

「憑依系?」

 

リンクには聞いたことのない言葉だった。

 

「人や動物の魂に取り憑いて思い通りに動かす技だ。趣味が悪いから私は使わないがな」

 

ミドナの答えを聞いたリンクは、人の弱みにつけ込んで下僕扱いするのは趣味がいいのか?と聞いてやろうと思ったがやめておいた。今は別の経路から先に進む方法を探さないといけない。

 

「ま、このメス猿、お前を案内してるつもりらしいし、ついていくしかないだろうな」

 

ミドナはそう結論するとまた姿を消した。確かにその通りだった。メス猿はまた背後の扉を開けるようせがんできた。リンクは扉を開けると、猿と一緒にもと来た部屋に戻った。すると彼女は中央の舞台に走るとリンクについてくるよう手招きした。リンクが近づくと、天井からぶら下がっている、西側の壁に行き着くロープに器用に飛びつき、その中央まで移動すると、両足でロープをつかんで逆さになり、リンクにしきりに鳴きかけてきた。

 

どうやら自分にぶら下がって向こう岸に渡れというらしい。リンクはよく距離を見極めると、猿の手に向かって飛びついた。辛うじて届き、猿の手をしっかりと握ると、体を前後に揺らして勢いをつけ、向こう岸に飛び移った。

 

猿はリンクに続いて降りてきた。リンクが目の前の扉を開けると、そこは暗い通路の中途になっていた。右手は岩壁に行き当たっており、左手には遠くに光が見える。リンクはカンテラを灯し、光の見える方向へ進んでいった。途中蜘蛛の巣で塞がれている箇所があったがそれを焼き払い、百メートルほど進むと、大きな部屋に出る。

 

その部屋は天井が高くかなりの広がりがあり、ところどころが深い沼になっていた。入口から二十メートル四方ほどは広場になっていて、真ん中にデクババが生えている。そこから北のほうに向けて、数か所床が脱落した小さな橋が沼の上にかかっており、その先には同じような広場があり、数段の階段の上に扉がある。また、そこから西方にも同じような壊れた橋が伸びており、その先にも同様の扉があったが、そこには鎖がかかっており錠前で閉じられていた。さらにその左側には沼を渡る吊り橋があって、その向こう岸には四本のやぐらが立っており、突き当たりには大きい木製の頑丈な門があった。門の向こう側は壁をえぐって作ったような空間があり、そこに大きな黒い箱がある。

 

どこへ進むべきだろう?リンクはやはり猿に先導させることにした。すると、まず橋を渡って、北方の広場につくと、今度は猿は西の扉に向かおうとした。だがそこでリンクは異常に気付いた。西の扉に向かう橋の手前まで来ると猿が怯えて引き返したのだ。リンクが天井を見ると蜘蛛がぶら下がっている。部屋の見通しがいいので今度は見落とさなかった。蜘蛛の大きさはさっき戦った奴よりはよほど小ぶりだったが、それでも胴体が一抱えの籠ほどもある。

 

リンクはパチンコを取り出すと蜘蛛の頭部に狙いをつけて放った。弾が当たると、ギイッと音を出して蜘蛛は苦しがった。もう一発種を打ち込むと、蜘蛛は天井から垂らした糸を手放して水の中に落下していった。リンクは慎重に距離を測ると壊れた橋の上を飛び越えて向こう岸の橋の残骸に飛びついた。どうにか這い上がると猿もついてくる。

 

猿は、西側の錠前のかけてある扉の前でしきりにリンクに手招きした。どうやらこの先に行きたいらしい。だが扉はこれでは開けられない。

 

リンクは以前ボコブリンたちからタロを取り戻したときのことを思い出した。錠前がこちら側についているということは、鍵はここから行くことのできる場所に隠してあるはずだ。そう考えたリンクは、まずは北方の扉から捜索することにした。

 

壊れた橋をもう一度飛び越え、向こう岸に到達すると、北側の扉を開ける。そこもやはり野外だった。木を彫り込んで作った幅二メートルほどの通路が北に続き、途中には長さ十メートルほどの橋がかかっていて、そこから北の突き当たりにある別の巨木の壁にしつらえた扉に向かうことができるようになっている。

 

途中の橋は壊れてはいなかったが、奇妙なつくりをしていた。橋の真ん中にやぐらのようなものがあって、その天辺に風車がついているのだ。リンクが橋を渡り始めると、吹いてきた風で風車が回転しはじめた。すると、リンクが進んでいるうちに橋そのものがゆっくりと動き始めた。慌てたリンクが走って橋を渡り切ってしまうと、橋が真ん中から回転して今度は今通った通路と直角の位置で止まった。冷や汗を拭いてリンクは再び歩き出した。橋が渡れなくなってしまったが、次に風が吹いたらもう一度橋が回転するのだろう。

 

向こう側の通路を前に進み、突き当たりの扉を開くと、そこも天井の高い広い部屋だった。入ってきた入口から少し階段を下って通路を進むと、さっき見たのと同様の橋があったが、今はこちらから伸びた通路と直角の位置で止まっていて渡れそうにない。だが、リンクが引き返して左手を見ると先ほど地図を見つけたのと同じような大きな箱があった。それを開けてみると、中には金属製の鍵が入っている。

 

おそらくこれだ。リンクはその鍵をしまうと扉を開けて来た道を引き返した。ちょうどよいことに、また風が吹いてきて目の前の橋が回転し始め、やがて再び通路と並行の位置で止まった。リンクは橋を渡ると猿が待つ部屋の扉を開けて中に入った。猿のいる西側の扉の場所まで戻ると、扉を塞いでいる鎖についた錠前に鍵を差し込む。やはりこの鍵だったようで、錠前はガチャリと音を立てて開き、錠前でまとめられていた鎖も地面に落ちた。

 

「この先に行きたいんだろ?一体何があるんだ?他にもお前の仲間が捕まってるのか?」

 

リンクは猿に話しかけながら扉を開けた。当然猿はキイキイ鳴くばかりだったが、喜びいさんで扉の中に入っていった。

 

その先の部屋は、天井が広く開いているようで、空からの光が差し込んで明るかった。入ってきた場所から通路と吊り橋が西に延びていて、そこから階段を下って数メートル下の床に降りるようになっている。猿はいきなり跳躍して床まで降りると、部屋の真ん中あたりにある太いポールに駈け寄った。見ると、ポールの上に檻が置いてあって、その中に猿が閉じ込められていた。

 

閉じ込められていた猿が仲間の姿を認めキイキイ騒ぎ出した。メス猿もまた、ポールの下に駈け寄って何度も飛び上がる。ポールの高さは五メートルほどもあり、どうすることもできないようだ。

 

「おい、今助け出してやるから待ってろ」

 

猿に向かってリンクは言った。するとミドナが姿を現した。

 

「残念だったな、リンク。あのメス猿、彼氏がいるみたいだぞ」

 

ミドナの冗談を笑って聞き流すと、リンクは橋の上に足を踏み入れた。だがかなりガタが来ているのか、一歩進むたび大きく揺れる。リンクが渡り切ると、綱が切れたのか床板のほとんどがいきなり脱落してしまった。

 

危ない危ない、と呟きながらリンクは通路を進んで階段を降り、猿たちのいるところに向かった。

 

ポールは太く丈夫なつくりだったが、地面にきちんと固定されてはいないようだ。檻に入った猿とメス猿は互いに鳴きかわしている。リンクがポールを両腕で押してみると、ゆらゆらと揺れるのがわかった。これはいけるかも知れない。リンクは少し離れて助走をつけると勢いよくポールに体当たりした。そして二度、三度。ポールは大きく揺れ、その上に乗せられていただけの檻はとうとう地面に落下し、格子が外れてバラバラに壊れた。閉じ込められていた猿の無事を確かめようとリンクが走り寄ると、猿は元気に鳴きながら飛び出してきた。

 

「感動の再会だな。お前には気の毒だったが」

 

ミドナがまた茶化す。だが、リンクが何か言い返そうとする前に、ボコブリンの喚き声が聞こえてきた。見ると、部屋の南側にある高台の上に悪鬼が二匹いた。どうやら自分たちの獲物を勝手に解放されて腹を立てているようだ。悪鬼どもは高台から飛び降りて無様に着地したが、手に手に鉈を持ってリンクのところに走り寄ってきた。

 

「おい、さっきみたいに手こずるなよ」

 

ミドナはそれだけ言うと消えてしまった。だが言われるまでもない。リンクは盾を背中から下ろして構え、剣を抜いた。二匹のボコブリンたちが横並びで同時に攻撃するつもりだと見て取るとリンクは後ろに下がって、ポールが敵と自分との間に来るよう位置どりした。右側のボコブリンは利き手側をポールに邪魔されていて、すぐには斬りかかってこないと踏んだリンクは左側の相手に仕掛けさせることにした。狙い通りだった。そいつは鉈を横に払ってきた。リンクが後ろに飛びのくと、悪鬼の鉈がポールに食い込む。リンクは悪鬼の伸びきった前腕に剣を振り下ろした。鮮血が走ってボコブリンの手首から先が吹っ飛ぶ。すかさずリンクは横斬りを放つ。首を深く斬られた悪鬼はたちまち力を失ってよろめいた。

 

だがその瞬間右側のボコブリンがポールの外を回り込んで鉈を振り下ろしてきた。リンクは前転して躱す。鉈の切っ先がかすめて帽子が吹っ飛んだ。リンクは態勢を立て直すと再び盾を相手に向けて剣を握り直した。ボコブリンが再び鉈を振り上げ迫る。リンクはとっさに、首から血を吹き出しながら倒れつつあったボコブリンの後ろ側に回り込んだ。無傷なほうの悪鬼が振り回した鉈がなかば死に体の仲間の体を薙ぎ払う。その瞬間リンクはまっすぐ突進して突きを放った。

 

一度、二度、三度。そして四度目は剣の根元まで突き入れんばかりに突き込み、相手を体ごと思い切り押し込んだ。胸と腹を穴だらけにされたボコブリンは、持ち前のタフさも続かず後ろに倒れた。

 

リンクは剣をよく血払いし、日の当たりのいいところに生えていた草で拭って鞘に納めると、帽子を拾ってかぶり直した。ミドナに散々こき下ろされた帽子だが、やはり意味があったのだ。分厚い生地のおかげでリンクの頭は無傷だった。

 

「さ、次の場所に案内してくれよ」

 

身支度を整え直したリンクは猿たちに声をかけながら階段を上った。だが吊り橋が壊れてしまっていることに気づいて立ち止まった。通路の高さは三メートルほどもありリンクでも下の床から登ることはできそうにない。

 

「おいおい、どうやって戻るんだ?失恋したからってこんなところで猿と心中するつもりか?」

 

再びミドナが現れてからかった。リンクは今度こそは困り果てて返す言葉もなかった。先に進めないだけならともかく、この部屋から出ることさえできない。

 

すると二匹の猿たちがリンクの足元に駈け寄ってきた。猿のうち一匹が吊り橋を吊っていたロープに飛びつくと、もう一匹も後に続いた。二匹が、二メートルほどの間隔を開け、足を使ってロープに逆さにぶらさがった。どうやらリンクが向こう岸に渡れるよう手を尽くしてくれるつもりのようだ。

 

リンクは手前にいる猿との距離を見計らうと、助走をつけて飛びついた。両手で猿の手を握り、思い切り体を前後に揺らして二匹目に飛びつく。二匹目にぶら下がってから、さらに向こう岸に飛んで、ようやく岸の縁に飛びついてよじ登ることができた。猿たちはこともなげにロープを伝って来て、リンクの傍らに降りてきた。

 

「ほう、こいつら少しは使えるようだな。お前の助手にお似合いじゃないのか?」

 

満足したのか、ミドナはまた消えていった。リンクはやれやれと安堵の溜息をつくと、扉を開けて沼の部屋に戻った。猿たちの導きに従って、壊れた橋を飛び越え、さらにもう一つの橋を通って、暗い通路に入り、最初から二番目の部屋に戻った。

 

だが、そこから北に行くことはもうできないと分かっている。リンクは猿たちを顧みた。すると猿たちは天井から真ん中の舞台に移るロープに飛びつくと、一匹はそこにぶら下がり、もう一匹は向こう岸に行き、さらにその東側の扉に通じるロープの真ん中にぶら下がった。キイキイ鳴いて促してくるのに応じて、リンクは真ん中の舞台に、次いで東側の扉の前へと、猿の助けを借りながら飛んで移動した。

 

扉の前にはさっきの巨大蜘蛛が張ったのか、濃い蜘蛛の巣がかかっていた。リンクはそれをカンテラで焼き払い、扉を開けて中に入った。こちらには猿たちはついてこなかった。リンクはこの先に何があるのかを調べるため地図を取り出した。見てみると、南と東にそれぞれひとつづつ部屋がある。北側にも出口があるようだが、その先は通路のしるしはない。支柱のようなものを示す点があるが、もしかすると先ほど見た回転する橋でつながっているのかも知れない。いずれにせよ北側にはあまりしっかりした通路はなさそうだ。

 

リンクは猿たちの賢さに内心舌を巻いていた。メス猿は当初、ボス猿のところに行こうとした。だがボス猿が何かに憑依されて狂ってしまっているのを見て取ったので、今度は仲間を救出することをリンクに頼んできた。

 

リンクは思った。おそらく彼らはこの森に昔から住んできた猿の群れなのだろう。だが、ボコブリンの活動が活発化して彼らは獲物として付け狙われるようになってしまった。何匹かは喰われてしまったのかも知れない。そして頼みの綱だったボス猿は何者かに憑依されてしまった。おそらく、そこでせめてリンクに頼んで他の囚われた仲間たちを助け出そうとしているのかも知れない。

 

そこまで推理すると、リンクはまず東と南の部屋を捜索することにした。入ってきた場所から少し斜面を下ると地面に降りる。部屋の四方には高い木道がしつらえられていたが、突き当たりに階段があって登れるようになっている。

 

足を踏み出したリンクは、目の前右手の地面にある、八方に広がった大きな植物の葉を見て立ち止まった。どうも不穏な雰囲気がする。リンクが盾を構えてそろそろと近づくと、予感が当たった。デクババだ。植物の葉の中央にあった巨大な花弁が、茎に支えられて頭をもたげ、リンクに狙いを定めてきた。だが、花弁がデクババに比べると明らかに大きくて人の胴体くらいなら軽く食べられそうなほど巨大だ。色も毒々しい赤。こんな種類は見たことがない。

 

リンクは剣を抜いた。ここを通るたびにこんな大きな敵に狙われたのではたまらない。盾を掲げて近づくと、敵は早速花弁を開いて噛み付いてきた。ガツンと音がして左手に衝撃が走る。リンクは踏み込むと素早く剣を横に払って茎を切断した。

 

だが次の瞬間リンクは仰天してしまった。地面から切り離された花弁とそこにくっついた茎が、ひとつの独立した生き物のようにう床をのたうち回り始めたかと思うと、方向転換してリンクに向かって飛びついてきたのだ。リンクは思い切り剣を打ち下ろして花弁に叩きつけ、さらに横切りを放った。床に落下した花弁はそれでも動いていた。リンクは突きを深く突き込んで止めを刺した。やっと呼吸が落ち着くと、リンクは改めてこの場所の危険さを思い知らされた。フィローネの森とは生き物の大きさが違う。これは神殿のもつ魔力だろうか、それとも神殿に隠された「黒き力」が悪影響を及ぼしているのだろうか?

 

気を取り直して、向かいの階段から木道に登った。木道を上ると北側への扉があるほか、壁沿いにもう一本の木道が東側に続いていた。だが肝心の木道の途中が脱落している。リンクはその扉に向かおうとしたが、今しがた登ってきた木道の端の手すりのそばに奇妙な巨大な果物のようなものがあることに気づいた。近づいて見てみると、球形で、緑色に赤い模様がいくつかついている。木道の床にできた穴のようなところから顔を覗かせていた。

 

何か役に立つものだろうか?リンクがそう思って覗き込むと、その「果物」が突然立ち上がってリンクに体当たりした。不意を突かれてリンクは尻餅をついた。よく見るとそれは細い脚が何本も生えており、果物ではなく虫だ。リンクは慌てて立ち上がった。本当にここはどうなっているのだろう?腹が立ってきたのでリンクは剣を抜き虫に近づくと思い切り振り下ろした。

 

固い感触がした。虫は丈夫な甲で覆われているらしく、刃は通らなかったが、動きを止めて大人しくなった。すると、何かが燃焼するような臭いと音がする。リンクの警戒本能が激しく騒ぎ出す。

 

まずい。くるりと向きを変えると走り出そうとした瞬間背中のほうで爆発が起き、リンクはたまらず前のめりに倒れ木道に叩きつけられた。爆発する虫?もはやリンクは悪夢の中にいるような気がした。もし数秒遅かったら爆風をもろに喰らって負傷していただろう。

 

リンクはしばらく座り込んで呼吸を整えた。これくらいで戦意を喪失していたらあの剣士に申し訳が立たない。リンクは自分の顔を叩いて立ち上がると、木道を進んで東に向かい始めた。木道の途中が脱落した部分の縁に立ち、向こう岸まで跳んで渡れるかを見計らう。行けそうだと思ったその時リンクの警戒本能がもう一度動いた。ふと下を見ると、三メートルほど下の床に風呂桶ほどもありそうな巨大な花が咲いている。だが花といったかわいらしい風情ではなく、異常なほど肉厚で、花弁の下部が壺のような形状になっている。どう考えても普通ではない。リンクはこの場所での立ち回り方がわかってきた。見慣れない植物はほぼすべて危険だ。

 

リンクがさっきの爆発虫のいたところを見ると、床下から新たにもう一匹がはい出てきていた。妙案が浮かんだリンクは剣を抜いてその虫に近づくと、切っ先で突きをくれた。虫が動きを止めた瞬間剣を置いてそれを両手で持ち上げて木道を東に進む。床が脱落したところで、下に咲いている花にむかって投げ落とした。

 

花は途端に信じられない動きをした。花弁が大きく四方に開いたかと思うと、リンクが投げ落とした爆弾虫を丸のみしたのだ。そしてまるで咀嚼し呑み込むかのような動きをしていたが、数秒が経過した途端鈍い爆発音がした。内側からの強烈な爆風で体組織を破壊されたのか、その奇怪な花は一旦膨らんだかと思うとたちまち萎んでしまった。

 

もし迂闊にあそこに落ちていたら、丸のみされていたのは自分だった。リンクは背筋が寒くなってしまった。気を取り直して目を上げると、東側の壁の、地図で示された扉があるはずの場所の前には、少し高い段差の上に大きな岩が置いてある。岩を取り除けなければ進めないようだ。だがリンクにはこういうときさっきの虫が役に立つと呑み込めてきた。都合の良いことに、虫がいた場所に戻るとさらにもう一匹が顔を覗かせている。どうやら多数の虫たちが床下に住んでいて、穴が開いた箇所から光に当たるために一匹づつが這い出てくるようだ。

 

リンクは剣を拾いあげると、虫に突きを入れた。素早くそいつを手で掬い上げ、木道を走って岩の方に向かう。木道が脱落した箇所を飛び越えると、思い切り岩に向かって投げつける。爆発音がし、リンクは思わずしゃがみ込んで顔を覆った。だが効果は狙い通りだったようだ。岩は真ん中から大きく割れ、四方に亀裂が伸びていた。リンクは戻って剣を拾ってくると、手で岩の残骸を取り除けた。やはり扉が先にあった。

 

リンクはその扉を開け中に入った。五十メートルほどの奥行のある部屋だ。床はリンクがいる場所から数メートル低く、中途には沼があるが、橋のような形で床が真ん中を通り先に渡れるようになっていた。リンクの立っているところから左右に階段があって床まで降りられる。部屋の突き当たりには高い位置に入口が広くて奥行が浅い洞窟があり、その奥に木製の格子が嵌った牢獄があった。その中に猿がいて、キイキイ泣き叫んでいた。やはりまだ囚われていたのだ。

 

目を凝らして見たところ格子には立派な錠前がついているようだ。どこかに鍵があるのだろう。リンクは部屋の中を見渡しながら階段を降りていった。ふと見ると、降りたところに太い例のポールが立ててあり、その上に箱が乗っている。以前鍵を見つけたのと同じような箱だ。リンクはすぐさまポールに近づくと、思い切り両腕で押して揺らした。やがて箱はポールの上から落ち、鈍い音を立てて地面に落下した。

 

蓋を開けるとやはり鍵が入っている。この分ならあの猿もすぐ救出できそうだ。

 

リンクは沼の中央を通る通路に向かった。その瞬間、かすかな音が聞こえて、タイル敷きになっている通路の床板の一つが動いたような気がした。一体何だろう?リンクは一瞬怪訝に思った。だが敵の姿は見当たらない。リンクは慎重に歩調を落としつつも通路に足を踏み入れた。

 

その瞬間だった。リンクは自分の体が空中に三メートルほど跳ね上げられたのを感じた。不意を突かれたので、落下の際着地に失敗し、背中をしたたかに地面に打ち付けてしまった。見ると、太さが人の太ももほどもありそうな巨大な百足のような虫が、リンクが足を踏み入れた通路の床板の一枚を持ち上げている。下に潜んでいたのだ。リンクが痛みをこらえやっとのことで立ち上がると、その大きな虫は再び顔を引っ込め床板の下に収まってしまった。

 

「おいおいどうした勇者さんよ?これまたずいぶんなていたらくだなぁ?」

 

ミドナがいつの間にか目の前に浮遊していた。リンクは顔を振ってどうにか気を取り直した。まさか床板の下に敵が潜んでいるとは思わなかったのだ。自分はこの神殿の探索を甘く見積もっていたことを思い知らされた。

 

「猿を助け出すのはいいが、本来の目的を忘れんなよ。あの精霊の言うところの『黒き力』を探し出すことだからな」

 

そう言ってミドナが消えると、リンクは再び思い起こした。精霊は、影の王と戦うなら「黒き力」を探せと言っていた。だが、イリアとコリン、タロ、マロ、ベスを探し出すことにそれが果たして役に立つのかいまだにわからない。その一方で、夢に現れた剣士は、この神殿での最初の苦しい戦いでまさに使うべきだった技を教えてくれたのだ。あの剣士は「ハイラルの危機を救う気骨があるなら」と言っていた。もしかすると、自分の冒険はもはや自分だけのものではないのか?

 

ともあれ、リンクは背中の痛みをこらえながら目の前の通路をもう一度観察してみた。通路の最初の部分に加えて、もしかすると他にも同じような虫が潜んでいるかも知れない。しばらくじっとしていると、またかすかな音がした。注視していると、床板が何か所か動いている。このようにして潜み、人間や動物を宙に跳ね飛ばして弱らせ、最後には襲って食べるつもりなのだろう。リンクは時間をかけてその場所を特定した。通路の手前、中頃、終端のあたりと全部で三か所だ。

 

リンクはそろそろと慎重に、巨大虫が潜んでいる場所を避けながら通路を進んだ。どうやら今度は跳ね飛ばされずに渡ることができて安堵の息をついた。渡った先の広場には四本の燭台がある。牢獄のある壁の洞窟の高さは五メートルほどだったが、リンクには行き方がすぐわかったた。というのも、洞窟の手前の床が一部上にせり出しており、先ほどの燭台をつかって床を上下させる仕組みと同じだと見当がついたからだ。

 

奥二本の燭台には火がついていたが、手前二本には灯っていない。リンクは火の消えた燭台のうち左手の一本に近づこうとしてふと足を止めた。床板の形が、先ほどの通路と全く同じだったのだ。リンクは音を立てずに少し後ろに下がって観察した。しばらくするとかすかな音がして、燭台の奥の床板が動いた。やはり同じ奴が潜んでいる。

 

リンクは床をよく見て、床板が嵌っていないそのままの地面の上を慎重に歩いて燭台に近づき、火を点した。同じように遠回りして、右手前の燭台にも点火する。

 

すると、洞窟の手前の床板が二枚ほどせり上がってきた。それらが停止すると、牢獄のある洞窟の入り口に通じる階段ができあがったことがわかった。リンクは再び、床板を踏まないよう注意しながら階段に辿り着いた。階段といっても一段が一メートルほどもあるが、人間に登れるようになったのは有難い。

 

リンクが階段を一段づつよじ登り、洞窟の入り口まで達したときだった。この神殿での冒険に慣れてきたリンクの本能がなせる業だったろうか、気配を感じて上を向く。

 

あの巨大蜘蛛がまた一匹天井から降りてくるところだった。

 

「リンク!リンク!またあいつだ!早くやっつけろ!」

 

パニックになったミドナが叫ぶ声が聞こえた。

 

「わかってる。今片付ける」

 

リンクは言うと、盾を構え剣を抜いた。蜘蛛は降り立ってくるなりリンクに飛び掛かり牙を立てようとした。盾にズシンと衝撃が走る。だがリンクはすかさず横斬りで相手の顔を払った。浅いが、刃が立ったようだ。巨大蜘蛛の片方の牙が折れた。さらに突きを放ったところで、相手が素早く頭を伏せ、刃は甲の上を空しく滑った。そこで巨大蜘蛛の突進を喰らい、リンクは後ろに吹き飛ばされた。だがリンクは幸いにうまく後ろに転がって負傷を免れ、なにくそと唸ると立ち上がった。

 

リンクが態勢を立て直すと、蜘蛛は最初に喰らった剣の一撃で警戒したのか、油断ない様子で前足をゆらゆらと揺らしながらリンクの隙を伺っていたが、やがて横に回り込む作戦に出た。

 

だがリンクは読んでいた。ついて行けない振りをして、相手が攻撃態勢をとった瞬間、自分の体の方向も変えずいきなり回転斬りを放つ。今度は蜘蛛の顔面に刃が深く入った。蜘蛛はギエッと音を立て、思わず体をのけぞらせた。それを見逃さず、リンクは思い切り突きを放った。切っ先が蜘蛛の胸に深々と刺さる。さらに二発目。剣を抜くと蜘蛛は戦意を喪失したのか、弱弱しい足取りで後退し始めた。だがリンクは容赦しなかった。剣を逆手に持つと、跳躍して上から思い切り突き立てる。胴を完全に刺し貫かれた巨大蜘蛛はとうとう息絶えた。

 

「終わりました。もう出てきて大丈夫ですよ、ミドナ姫」

 

リンクはおどけた調子でミドナに話しかけた。

 

「....ふ..ふん。少しは手際がよくなったみたいだな」

 

悔しそうな声でミドナが言う。リンクは笑いながら牢獄に近づき、鍵を開けた。格子も、岩の扉と同じような構造で横に転がすようになっている。格子を開けてやると中にいた猿は喜びの鳴き声を上げながら飛び出してきた。

 

「ミドナ、あと一か所の部屋も探してみるよ。猿の仲間を集めたら何かわかるかも知れない」

 

リンクが言うと、ミドナは平静を取り戻した声で答えた。

 

「まあ好きにしろ。お前も仲間が欲しいんだろう。なんならお仲間のかわりにこいつらを村に連れ帰ればいいんじゃないか?」

 

リンクは聞き流し、猿とともに階段を降りて沼を渡る通路を戻って部屋を出た。木道の部屋から今度は南側の部屋に向かうことにする。案の定、助け出された猿もリンクについてきた。どうやら近くに仲間がいると知っていて、助け出してほしい様子だ。部屋の扉から木道に降りて南側に向かうと、木道が切れた先は蔦がびっしりと生えた壁になっていた。壁に子蜘蛛--といっても人の頭くらいある奴らだが--がいたのでパチンコで片付けると、リンクはえいやと蔦に飛びついて登り始めた。

 

登り切ると、すぐ扉があった。猿を伴って、扉を開けて中に入るとそこはかなり広い円形の部屋だ。突き当たりに錠のかかった牢獄があり、また猿が閉じ込められて鳴いている。だが部屋の真ん中にはデクババが居座っていた。それも恐ろしく超特大のやつだ。頭、いや花弁だけを見ても、ほとんど食卓一個分くらいの大きさがある。こんなのに噛まれたら一たまりもないだろう。

 

リンクは再びの戦いに備えて盾と剣を構えた。猿は怯えて隅のほうで縮こまってしまった。リンクがじりじりと巨大食人植物に近づくと、植物の足元の床に光る金属物があるのを見つけた。鍵だ。すると、リンクの意図を察したかのようにデクババは花弁を伸ばしてその鍵を掬い上げた。よく見るとそいつの根元にはさっきの木道の部屋で見た待ち伏せ型の食人植物まで一緒に生えている。デクババが鍵を落とすと、鍵は根元の花弁に丸呑みされてしまった。

 

慎重に接近していくと、デクババはリンクの位置を見定めたのか、頭を大きく持ち上げたと思うといきなり振り下ろしてきた。リンクが反射的に後ろに飛びのくと、そいつの頭が目の前の地面に当たり地響きのような音がした。直撃を喰らったらひとたまりもない。

 

リンクは相手が再び頭をもたげる前に、気合を発してジャンプ斬りを叩きつけた。花弁に深い傷がついたが、なにぶん相手は巨大だ。リンクは次なる攻撃の機会を探して油断なく盾を構えた。巨大デクババはまた頭をもたげる。リンクが飛びのくと、やはりもとリンクがいた場所に振り下ろしてきた。どうやら噛み付きではなくこちらが攻撃方法のようだ。リンクは突進して、今度は突きをくれた。やはり深手を与えたが、それでも決定打にならない。

 

その瞬間、相手が頭を上下させたかと思うと、今度はいきなり下から突き上げる動きをしてきた。相手の初動に危険を感じたリンクが反射的に盾を構えたので、直撃は喰らわなかったが、盾が吹っ飛びそうになるほどの衝撃を感じ、後ろによろけてしまった。二種類も攻撃方法があるとは上等なやつだ。

 

だが相手の攻撃後の隙をリンクは見逃さなかった。再び気合を発してジャンプ斬りを叩きつけると、回転斬りで追い打ちをかける。二度も連続して深手を負い、相手は怯んだ様子を見せた。リンクは一気呵成に横切り、縦斬りと刻み付け、最後に深い突きを放った。ようやく超巨大デクババの花弁はぐったりと地面に落ち、次第に真っ黒に変色していった。

 

だが、あの待ち伏せ型の花弁が残っている。こいつを片付けないと鍵を手に入れられない。リンクが呼吸を落ち着かせながら周囲を見渡すと、ふとあの爆弾虫が部屋の隅に顔を出しているのを見つけた。

 

リンクは近づいて爆弾虫に剣の突きを入れると、そいつを抱えて素早く花弁に駈け寄り上から投げ込んだ。花弁は反射的な作用で大きく開き爆弾を丸呑みにする。しばらくすると爆発音がし、花弁はひとたまりもなく萎んでしまった。花弁の色が真っ黒になり、その体組織がボロボロ崩れ始めると、リンクはその残骸を足でかき分け、鍵を見つけ出した。これでようやくもう一匹を助け出せる。

 

鍵を持って牢獄に向かう。既に助け出したほうの猿もようやく危険が去ったのを理解したのか駈け寄ってきた。牢獄の格子を開けてやると、二匹の猿は嬉しそうに鳴きかわし始めた。

 

最初に救った二匹と合流させてやろうと思い、リンクは部屋を横切って扉を開けた。猿たちを通過させて扉を閉じ、木道から床に飛び降りて、部屋を横切り西側の扉を開ける。

 

予想したとおり、四匹の猿たちは再会を喜び合うかのように大騒ぎした。だがすぐにそれが収まり、一匹が真ん中の舞台に続くロープにぶら下がってリンクに鳴きかける。前やったとおりリンクが飛びついて向こう岸に飛び移ると、今度は四匹ともが北側の扉の前に集まってリンクにしきり手招きし始める。

 

「どういうことだろう?もう橋はなくなってるのに」

 

リンクは怪訝に思い独り言を言った。

 

「なるほどな、こいつらお前にあのボス猿を正気に戻してほしいんだろうな」

 

ミドナが現れて言った。

 

「正気に戻す?」

 

「そうさ、お前には結構な力があると見込んでくれたんだろう。頼みを受けてやったらどうだ?」

 

話の辻褄は合っていたが、それでもどうやって橋がない場所を渡るのかがわからなかった。だがとにかく猿たちの先導に従うことにした。リンクが北側の扉に近づいてこれを開けると、四匹の猿たちはこぞって先に進む。そしてまだ残っていた吊り橋を吊っていた綱に次々と飛びついたかと思うと、四匹が間隔を開けて足から逆さにぶら下がった。

 

猿たちの意図に気づいたリンクは仰天した。ここを猿たちの手を飛び移りながら渡れというのか?

 

距離は十メートル以上ある。そして今いる場所から身を乗り出してみると、巨木の高さは上が百メートル以上、下は霞がかかってほとんど見えないほどの高さだ。一つ手を滑らせれば果てしない谷底に真っ逆さまだろう。

 

だがミドナの推理が正しかったことがこれでわかった。あのボス猿を正気に戻すことができれば、こちらの側に立って魔物たちを追い出すのに協力してくれるかも知れない。

 

リンクは深呼吸して覚悟を決めると、綱にぶら下がった最初の猿への距離を見極め、助走して思い切り飛びついた。猿の手をしっかりとつかみ、体を前後に揺らして二匹目に飛び移る。さらに三匹目。だが三匹目で手の疲れがひどくなってきたのか、一瞬だが手が抜けそうになった。しかし猿のほうがしっかりとつかみ直してくれたので辛うじて落下を免れた。

 

四匹目に飛び移り、そこからようやく向こう岸に飛び移ることが出来たリンクは大きく安堵の溜息をついた。しばらく立ち尽くして呼吸を整える。こんな冒険はこの先も滅多にないだろう。

 

リンクは呼吸が落ち着くと、目の前の短い通路を先に進んで突き当たりの扉を転がして開けた。

 

中に入ると、そこは広い円形の部屋だった。あのポールが、十本ほど円形の配置で置いてある。向こうの天井には大きな穴が開いており、そこから太陽の光が差し込んでいる。

 

部屋の中央にもポールがあり、その上にあのボス猿が座っていた。ブーメランを手にしており、リンクに気づくと異様に光る眼でじろりと睨む。その途端、背後で何か重いものが落ちる音がした。見ると、入ってきた扉に頑丈な格子のようなものがかかっている。閉じ込められたのだ。

 

ボス猿は耳障りな声でせせら笑うような鳴き声を立てた。こいつを正気に戻す、と一口に言ってもどうするべきだろうか?リンクは盾と剣を構えながらも思案した。だがゆっくり考えている暇はないようだ。ボス猿は手にしたブーメランを投げる。リンクは反射的に盾を上げた。だがブーメランの軌道が高すぎる。自分を狙ったものではないことに気づいたリンクは怪訝に思った。

 

次の瞬間、天井から生えていたあの赤い、大きなヘビのように動くデクババが二匹、茎を切断されて落ちてきた。リンクを獲物と見定めたのか一斉に襲い掛かってくる。

 

リンクは二匹が間合いに入った瞬間回転斬りを放った。深手を負ったヘビババたちが後ろに吹き飛んだところを、それぞれに突きをくれてとどめを刺す。しかしその瞬間危険を感じたリンクは本能的に頭を下げた。だが頭部に衝撃が走り、おもわずがっくりと膝をついた。気を取り直して顔を上げると、ボス猿が戻ってきたブーメランを受け止めながらまたあの嫌な鳴き声を立てていた。今度はリンクに向けて放ったらしい。

 

リンクは左手で軽く頭を触ってみた。直撃でなかったのと、帽子で守られていたおかげで大きな負傷には至らなかったらしい。脇役のデクババたちが消えたからこれからが勝負だ。リンクは態勢を整えてポールが立っている場所に進んでいった。

 

ボス猿はポールの上に陣取って、リンクが近づこうとすると跳躍して別のポールに移った。行った先のポールに駈け寄っても同じことだ。リンクは必死で追いかけたが、相手は猿だ。追いつくことができない。

 

「おいリンク、のんびり追いかけっこしてる場合か?」

 

ミドナが出てきた。答えようとすると、猿がブーメランを放ってきたので、リンクは慌てて手近のポールの陰に退避した。

 

「あいつが跳ばなくなる瞬間を狙えばいいだろ、頭を使え頭を」

 

ミドナに言われてリンクは考えた。跳ばなくなる瞬間?リンクは時折飛んでくるブーメランを躱しながら相手を観察し、考えた。

 

そうだ。ブーメランを飛ばしている間はボス猿はポールの上に留まっている。戻ってくるブーメランを受け止めなければいけないからだ。

 

「わかった、ありがとうミドナ」

 

ミドナはリンクに言い直しを求めようしたが、もうリンクは行動を起こしていた。ポールの間に飛び出すと、突っ立って両手をだらんと下げる。これを好機と見たのか、ボス猿はまたブーメランを振り上げ放ってきた。リンクは途端に盾を頭上にかざし頭を低くして走る。ブーメランが盾をかすめ後方に飛んでいく。

 

ボス猿のいるポールまですぐだ。リンクはダッシュして跳び、思い切りポールに体当たりした。ポールがぐらりと揺れ、ボス猿が不意を突かれたような鳴き声を上げる。リンクが再びポールに思い切りぶち当たると、戻ってきたブーメランがボス猿の頭部を直撃した。

 

ボス猿はたまらずポールから落下した。攻撃のチャンスだ。目の前に、落下したボス猿の大きな、真っ赤な尻があった。だが敵もさる者、すぐに気を取り直し立ち上がろうとする。リンクはとっさに横斬りを放った。ボス猿の尻に真っすぐ傷ができ鮮血が迸った。

 

ギエーと大きな鳴き声を上げてボス猿が飛び上がる。だが彼の尻の皮は丈夫で筋肉も分厚いせいか、致命傷ではないようだ。

 

ボス猿はすぐに立ち直り、再びポールの上に跳躍して陣取った。目にらんらんと怒りを燃やしている。だがリンクはもう慌てなかった。相手が何度か飛び移るのを待ち構える。ボス猿がブーメランを構えた瞬間、また全力で突進した。ブーメランが顔に向かって飛んでくる。今度は反射的に剣を払ってその軌道を逸らすと、相手のいるポールに思い切り体当たりする。そのまま両腕で押すと、ボス猿はまたブーメランを喰らったうえ、ポールもろとも地面に倒れ伏した。

 

リンクはボス猿に殺到した。だが剣を振り上げた瞬間一瞬迷った。こいつを殺してしまったら猿たちの願いには反することになる。ボス猿がまたもぞもぞ動き始めた瞬間、リンクは瞬時の判断で手の角度を変え、剣のひらで相手の尻を思い切り打った。

 

一度、二度、三度。傷を負った赤い尻の上に痛恨のお仕置きが入る。

 

あまりの激痛のせいか、ボス猿はギャアと声を上げのけ反ると、うつ伏せに倒れて震え始めた。リンクは剣を納めた。これで正気に戻るだろうか。

 

だがボス猿の体を見ると、リンクはその後ろ首のあたりに何か奇妙なものがついているのを発見した。よく見ると、あの黄昏の領域で見た虫だ。両掌ほどの大きさで、甲冑のような背中に毒々しい色をしている。リンクは剣を放し手を伸ばすと、その虫を引きはがして地面に叩きつけ、思い切り踏みつけた。虫はグシャと音を立てて潰れ、足を震わせた後動かなくなった。

 

ボス猿はしばらく倒れていたが、やがて意識が戻ったのか顔を上げ左右を見回し始めた。次にボス猿は起き上がり、自分の尻を探った。手が触れた瞬間あまりの痛みにまたギャアと声を上げる。そして彼が後ろを向くと、リンクと目が合った。もはやボス猿の目はギラギラと光る血走った目ではない。だが、リンクにひどく痛めつけられたということだけは覚えているらしい。ボス猿は恐怖に悲鳴を上げ、ポールの上に飛び上がり、そこから天井に開いた穴に飛び移ってどこかに消えてしまった。

 

あれで正気に戻ったかどうか確信は持てなかったが、とりあえずできることはやった。リンクは剣の血を拭って鞘に納めた。ふと目の前の地面を見ると、ボス猿が落としていったブーメランがあった。何かに使えるかも知れないと思い手を伸ばしてみた。

 

するとブーメランは突然回転し空中に浮いた。リンクは驚いて飛び下がる。まさか、こいつが敵の本体だったのだろうか?

 

ブーメランからはつむじ風のように渦巻型の風が生じ始めた。リンクが盾と剣を構えると、ますます驚いたことにブーメランから声が聞こえた。

 

「勇者よ、私は悪しきものではありません」

 

声は深く、以前ラトアーヌやフィローネの泉で聞いた精霊の声と似ていた。リンクは驚きに目を見張りながらも武器を下ろした。声は続けて言った。

 

「勇者よ、あなたを傷つけたことを詫びたい。あなたは悪しきものの支配から私を解き放ってくれた」

 

「君は一体誰、いや、何なんだ?」

 

警戒を解きつつもリンクが困惑して尋ねると、声は答えた。

 

「私は風の精霊だ。勇者よ、あなたが影の王と戦うなら私が手助けしたい」

 

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