部屋の中を見回しても、ゼルダ姫の姿はどこにも見えなかった。
さっきまでミドナとリンクの傍らにいたのだ。一体どこに消えたのだろう?リンクはミドナの顔を見た。生気を失っていたその肌の色は元に戻り、目には以前のように強い光が宿っている。
ゼルダ姫はミドナを救ってくれた。だが、それと引き換えるように姿を消してしまった。姫はいったいどうなったのだろう。
リンクが思いを巡らしていると、ミドナもまた断ち切りがたい思いをこの部屋に残しているかのように目を伏せていた。だがやがて彼女は顔を上げると言った。
「リンク、行こう。フィローネの森だ」
ミドナは空中に浮かび上がるとリンクの背中に飛び乗った。以前は背中に乗られるのが不快だったが、今は全く気にならなかった。
ゼルダ姫の行方は気がかりだったが、ここは敵地だ。いつまでも時間を無駄にするわけにはいかない。リンクは居室の扉から外に出た。螺旋階段を下り、途中の高窓から尖塔の外に出る。
大屋根の上に降り立つとリンクはミドナの顔を見上げた。ミドナは以前のように魔法が使えるだろうか?するとミドナはリンクの心を読んだように言った。
「私はもう大丈夫だ。完全に元通りだ」
そう言いながら、彼女はしばし自分の右手を見つめていた。ゼルダ姫が握り、その力を授けた手だ。
「ゼルダ....あの姫さんがどうなったか気になってるんだろう?」
ミドナはまた呟いた。それも図星だ。リンクは頷いた。
「それは私だって同じさ。だが私の勘では姫さんはまだ死んじゃあいない」
リンクは再びミドナを見上げた。どういう意味だろう?
「大した女だ。自分の命の力を丸ごと私に与えるなんてな。最後の最後まで私を光の世界のために働かせようってわけか」
皮肉っぽい笑みを浮かべてそう呟くとミドナはリンクの背中を叩いた。
「行こう。ぼんやりしていると敵に気づかれて逃げられなくなる」
ミドナは文字通り完全に力を取り戻したらしい。彼女の助けで地面まで飛び降り、城壁をすり抜けて城外に忍び出る。入ったときに比べ、それほど苦労せず外に出ることができた。リンクたちはハイラル城正面の扉の脇の城壁から城下町に出た。町の騒ぎが落ち着きかかったところでリンクたちが噴水広場に姿を現すと、再びパニックが再燃した。だがもうあとは立ち去るだけだ。リンクは東通りに入り、門まで駆け抜け城下町から出た。既に夜明けが近い。
跳ね橋を渡っていると、背後で異様な音がしてリンクたちは振り返った。
リンク、そしてミドナも、ハイラル城の姿を見て思わず息を呑んだ。巨大な正八面体のような半透明の壁で城全体がすっかり覆われている。その壁から発する薄黄色い光が、まだ薄暗い空に不気味に浮かび上がっている。
「ザントの奴....!」
ミドナが拳を握ると言った。これは魔法に詳しくないリンクにも明らかにわかるような魔法結界だった。侵入したことを気取られたのだ。リンクはゼルダ姫の身の上を心配した。どこに消えたのだろうという懸念もさることながら、もしも彼女がミドナに手を貸したことが敵に知られたら彼女が酷い目に遭わせられるかも知れないということがリンクには気がかりだった。
「行こう。まずお前を元に戻す。そしてザントの奴を倒す方法を見つけよう」
ミドナはリンクに言った。
「フィローネの森の北に飛ぶぞ」
そう告げると、ミドナはワープを開始した。ミドナの身体が浮かび上がり回転する。リンクの周囲が真っ暗になると、しばらくしてフィローネの森の北の広場に降り立った。
空は少しづつ明るくなってきている。森の奥と言えば神殿の方角だ。だがそこから先に行く方法はあるのだろうか。リンクはとりあえず進むことにした。広場を囲む崖の切れた箇所を抜け、神殿に至る回廊に出た。
神殿へ進む小道の左右は切り立った崖だ。リンクは右側の崖の際まで進んでみた。
正面にある巨木の右手に、途方もなく年を経た幹が折れて残った根元の残骸や、崖に大きく横に突き出して途中で切れた太い根などが見える。ミドナの力を借りれば渡っていくことができるかも知れない。
その時、猿の鋭い鳴き声が聞こえてリンクは顔を上げた。
巨木の幹を伝って、見覚えのある猿がこちらにやってくる。猿はみるみるうちにこちらに近づいてくると、大きく跳躍してリンクの近くの地面に降り立った。
猿が、何かに追われているような様子で後ろを振り返った。その瞬間、頭上の木から降りてきた奇妙な物体が目に映り、リンクは驚いた。
大きな木の実でできた頭を持つ案山子のような人形だ。頭上から糸で吊られたような不気味な動きで木の枝でできた両腕両脚を動かし、案山子どもは猿に近づいて取り囲んだ。猿はたちまち怯えて両手で頭を抱えたうずくまる。
リンクは邪悪な雰囲気を感じた。吠えてダッシュすると、案山子どもに襲い掛かった。手近にいた一匹を押し倒し、首筋に噛み付いて頭をもぎ取る。残った三匹ほどがリンクに向かって襲ってきた。腕を振り上げて殴りつけようとしてくる。リンクは身体を一回転させた。前顎と後ろ脚で案山子どもの腕を弾き飛ばす。リンクは一匹に向き直り、体当たりして跳ね飛ばした。その体当たりの激しさで、その案山子は身体のパーツの関節が外れバラバラに崩壊してしまった。
リンクは横にいたもう一匹の胴体の骨となっている太い枝に噛み付いて強引に振り回した。こちらを襲おうとした一匹も跳ね飛ばされて後ろに吹き飛んだ。リンクは捕まえていた一匹を地面に叩きつけて打ち壊した。猿が我に返ってたちまち逃げ去った。それでも最後の一匹が腕を振り上げ攻撃してきた。リンクは頭を下げてそれを躱すと、敵の腕に噛み付いて噛みちぎった。片腕だけになった敵が背を向けて逃げ出す。リンクはその背中に飛びついて強引に引き倒し、首筋を破壊して止めを刺した。
リンクは荒い息をついた。さっきの猿は無事に逃げ延びただろうか。おそらく森の神殿を探索していたときに出会った猿のうちの一匹だろう。森の神殿を魔窟に変えたあの魔物は退治したはずなのに、また別の魔物が現れたのだろうか。リンクは心配になってきた。
「モシカシテタスケテクレタノ?」
後ろから声がして振り向くと、あの猿が戻ってきていた。リンクは安堵した。相手に微笑みかけようとしたが、狼の顔の微笑みが相手にとってどう見えるかが心配になったのですぐにやめた。あの案山子の化け物どもはいったい何者なんだ?仲間は元気なのか?猿に尋ねてみたかったが言葉が出ない。
「フシギネ。アナタオオカミナノニチットモコワクナイ。ドウシテ?」
どうやら警戒はされていないようだ。リンクは敵意がないことを示すため猿の前で座った。すると猿もようやく落ち着いたようだ。リラックスした様子でリンクの毛をつくろい始めた。
「アタシ、ガケノムコウデトッテモキレイナモリミツケタノ」
リンクの毛を繕いながら猿は問わず語りに話し始めた。リンクは耳を傾けた。
「デモ、オクニイコウトシタラアイツラニオソワレテ...」
森の奥。秘められた領域。ゼルダ姫の言葉が蘇る。リンクは首を曲げてミドナの顔を見上げた。
「リンク、こいつは何て言ってるんだ?」
ミドナが尋ねる。リンクは崖の向こう側に顎を向けたあと軽く吠えた。
「あの奥に何かがある..ってことだな?」
ミドナが言う。リンクは頷いた。身体を起こすと、お礼がわりに猿の手を舐めた。
「キレイナモリ。アソコカラガケヲワタッタサキナンダケド。デモアナタイクナラキヲツケテ」
猿が言う。リンクは巨木の脇の崖の様子を見るため、手近にある太い切り株に登った。
「ゼルダの言っていた隠された森ってやつか」
ミドナが呟く。
「行こう。私が先導する。やり方は覚えてるな?」
リンクは軽く吠えた。ミドナはそこから浮遊し、十メートルほど先にあった。巨木の脇にある幹の残骸に取りつき、そこから手招きした。リンクはミドナ目掛けて跳躍した。ミドナの魔法に助けられ空中を矢のように飛ぶ。リンクが幹の残骸に飛び乗ると、ミドナはまた浮遊してその先にあった巨大な根の上に乗った。同じ要領で再び跳躍し、飛び移る。
その根から東の方を見ると、明らかに人の手で岩壁に掘られた通路があった。石が崩れ、ミドナの力がなければ到達できなくなっているが、昔は道が整備されていたらしい。通路はすぐに短いトンネルとなっていて、その先には森の神殿で見たような風の動力で動く橋が二本見えた。
リンクはミドナに導かれて通路に飛び移った。トンネルを進むと、吸血蝙蝠が二羽ほど飛んでいる。リンクは跳躍して蝙蝠どもを叩き落すと、前進してトンネルを抜け、通路の途切れている地点に立った。
その先にある二本一組の橋は絶え間なく吹く風により周期的に回転していた。橋の右手には岩棚がある。リンクは二本の橋が真っすぐ一直線になった瞬間に飛び乗り、二本目の端の終端まで駆け抜けた。再び風が吹いて橋が回転し、直角にまで動いて停止する。リンクはその間に右手の岩棚に渡った。
進行方向を見るとその岩棚はほどなく途切れていたが、途中小さな岩の足場を経由して、再び通路が再開している。岩棚と足場との間、そして足場と向こう岸の通路との間はロープで結ばれている。そのロープの箇所それぞれの頭上からは巨大な木材が吊るされていた。誰かがこの通路を再建しようとしたあと諦めて放置したのだろう。木材は風に煽られて左右に揺れていた。ロープがあるのは有難いが、不注意に渡ったら木材に跳ね飛ばされそうだ。
リンクはそろそろとロープを渡り始めた。風に吹かれて揺られる木材がロープの上を通り過ぎた瞬間を狙って速度を上げ、どうにか足場まで渡り切った。同じように次のロープも渡り、向こう岸に到達した。
既に夜はすっかり明けたはずなのに、空を覆う深い森の枝葉のせいか、周囲はまだ薄暗い。崩壊せずに残存している通路に薄っすらと生えた草の上を歩いていたリンクの耳に聞き覚えのある音が飛び込んできた。
風の力により生ずる、狼の遠吠えの声に似たメロディ。顔を上げると、通路前方の右側に石碑が立ててあるのが見えた。石碑の中央に開いた穴を風が通るたびにメロディが鳴るのだ。リンクは石碑の前で足を止め、その音に耳を傾けた。
あの剣士が呼んでいるのだ。リンクは狼へと変えられた自分の姿を思い、忸怩たる思いに焦がされた。彼はそれでも自分に何かを教えてくれるだろうか?それは確信が持てなかった。だが一つだけ、リンクは骸骨剣士に与えられた課題を乗り越えた気がしていた。もはやリンクの心には以前のような迷いはなかった。城下町の町民がどうであろうが、味方が一人もいなかろうが、勇者の務めを最後まで果たすことを心に決めていた。
リンクは石碑の前に座り、遠吠えした。骸骨剣士に向けた精一杯の返答だ。自分はまだ諦めてはいない。まだ戦うつもりだ。だから教えてくれ。勇者の道を先に進むために何が必要なのかを。
ミドナは邪魔せずに黙ってリンクを見ていたが、リンクが吼え終わってしばらくすると言った。
「狼には狼にだけ通じる言葉があるってことだな」
リンクは首を曲げてミドナを見上げた。リンクの遠吠えについて彼女が何かを言ったのは初めてだった。
「お前以前にも狼の魂を持つ者がいた....」
そこまで言うと、ミドナは首を振った。
「いや、大した意味はないんだ。そろそろ行こうか」
リンクは頷いた。通路を前進すると、前方には高い岩壁に開いた大きな洞窟があった。リンクは迷わず洞窟に入っていった。
暗い洞窟をしばらく走ると、やがて目の前が開けた。崖に囲まれた五十メートル四方ほどの広場だ。そこここに年を経た高木が生えている。森はますます深いらしく、既に高く昇ったはずの太陽の光もほとんど差し込んでこない。
進んできた小道は正面の岩壁にぶつかって途絶えている。奇妙なことに、岩壁には本来あるべきと思われた洞窟の形にぴったりと重なるように、色の異なる丸い岩が嵌っていて、その岩肌はよく見ると木の年輪のようなものが刻まれていた。
「魔法壁か?」
ミドナが呟いた。
「呪文や何かで解除しないと通れない壁だ。リンク、どこかに手がかりがあるはずだ。探そう」
リンクは広場中を注意深く探し回った。ふと見ると、左手の壁際に、さきほど見たものと同じような石碑があった。だが、少し形が違って、中心に三角形を三つ重ねた図形が書かれている。
リンクが近寄るとメロディが聞こえた。これも骸骨剣士の呼びかけなのだろうか?
「おいリンク!」
ミドナがただならぬ声で叫んだ。リンクは思わず顔を上げて彼女を見た。
「この紋章だ。思い出したぞ....」
リンクはミドナを見ながら軽く唸った。この紋章が何か重要な手がかりを表しているのだろうか?
「リンク、このメロディで吼えてみろ。こいつが聖域への鍵なんだ」
リンクが戸惑ってミドナを見上げると、彼女は重ねて言った。
「退魔の剣がこの奥にあるのは間違いない。理由はあとで話す。吠えてみろ」
リンクは頷いた。まず目を閉じてメロディに耳を傾ける。次いで、首筋を高く反らしてそのメロディを模倣して吠え始めた。メロディは単純なものだった。それを何度か繰り返す。
リンクは吠え終わったあと、周囲の物音に耳を傾け、広場の中を見回した。
やはりミドナの看破した通りだった。行く手を阻んでいた岩壁に、いつの間にか洞窟がぽっかり口を開けている。
だがそれと同時にリンクは異様な笑い声が聞こえてきたのに気づいた。
リンクが頭上を見ると、木々の間を通って奇妙な案山子が一体降りてくる。先刻猿を襲っていた案山子どもとは少し様相が違う。糸で吊られておらず、自立している。体格は小さめで子供のようだ。片手にカンテラ、もう片方の手にブリキ製の小さなラッパを携えていた。
大きな木の実でできた案山子小僧の頭には骸骨を思わせるような形の眼窩と口が彫られており、その上には藁で編んだ尖り帽子が乗っている。まるで、ジョバンニの部屋で遭遇した幽霊と案山子を掛け合わせたみたいな奴だ。
幽霊案山子小僧はラッパのマウスピースを口に当てると音を吹き鳴らした。それと同時に頭上の木々の枝から次々と新手の案山子たちが降下してくる。こちらは猿を襲っていた奴らと同じだった。
ラッパを吹いた帽子姿の幽霊案山子が化け物案山どもの頭目なのだろうか?リンクは見当をつけた。幽霊案山子は小馬鹿にするような笑い声を上げると踵を返し、今しがた出現した洞窟の中に走り込み向こう側に行ってしまった。リンクはダッシュして後を追う。しかし、その後から化け物案山子どもが追いすがってきた。
洞窟は短く、すぐに目の前が開けた。同じくらいの大きさの広場だ。向こう側半分は浅い泉になっている。右手に、先に通じる短い洞窟があった。正面、そして左手には、最初の広場で見たようなのと同じ形で、岩壁に開いた洞窟とおぼしき形にぴったりと色の異なる岩が嵌まっている。
その時背後から三匹の案山子どもが迫ってきた。リンクは振り返るなり思い切り跳躍して体当たりした。二匹の案山子が衝撃でバラバラになる。残った一匹が身体を回転させ腕を叩きつけてきた。横腹に痛撃を受けてリンクは転がったが、素早く立ち上がり、追い打ちをかけようと接近してきた相手に飛び掛かって首をもぎ取り返り討ちにした。
「リンク、この奥に例の剣があるのは確実だ。だけどちょっとたちの悪い魔物にからまれちまったみたいだな」
少し立ち止まって息を鎮めていたリンクにミドナが話しかけた。
「多分ここは魔法迷路だ。決められた手順で通らないと永遠に中を堂々巡りさせられるタイプのやつだ」
リンクは思わすミドナを見上げた。そんな罠に嵌められたらザントと再び戦う前に年老いてしまう。
「そう不安そうな顔をするな。お前には私がついているんだぞ?」
ミドナは笑った。
「よし、まず右手から行ってみよう。定石どおりだ」
リンクは頷くと駆け出した。右手の洞窟は浅い泉の手前にある。洞窟を駆け抜けると、向こう側はところどころ大きな茸が生え、苔むした岩が目立つ広場だった。
リンクが周辺を調べようとすると、また案山子どもが頭上から降りてきて襲ってきた。素早く振り向き、先頭の奴に襲い掛かって破壊した。だがまだ残りが三体いて、リンクを取り囲んできた。
「リンク!まともにやってたらキリがない。影の結界で一網打尽にしろ!」
ミドナが叫んだ。リンクは頷くと、近くにいた一体を突き飛ばして囲みを破り、少し走って急停止しミドナに合図した。
たちまちミドナから結界が広がる。追いすがってきた案山子どもは見事に結界の中にすっぽりと収まり、その体を赤い雷が覆った。リンクが跳躍する。案山子どもは動くことができないまま、狼の一撃で次々に木っ端微塵になった。
リンクは地面に降り立つと、改めて広場を見回した。奥のほうにまで小道が続いているが、岩壁で行き止まっている。右手にはやや高い岩棚があり、その上に高木が一本植わっている。
岩棚はリンクでも這い上がれそうだ。そう思い目をやると、あの幽霊案山子が高木の根本で踊っているのが見えた。
逃すものか。リンクはダッシュして岩棚に向かった。だが、よじ登ろうとした途端新手の案山子どもが降りてきた。リンクは構わずに岩棚に前足を掛け登ってしまうと、ここを先途とばかりに幽霊案山子小僧に突進し体当たりを喰らわせた。
相手がギャアと悲鳴を上げ後ろによろめき、その途端にいましもリンクを襲おうとしてきた案山子どもがバラバラに崩れ霧散してしまった。
やはり小僧が親玉だったのだ。だが、案山子小僧はまだ死んではいなかった。驚くほどの早さでリンクの脇をすり抜けると、リンクが入ってきた洞窟を走り抜けて向こうに行ってしまった。まさしく幽霊だ。
「戻ろう」
ミドナが言った。
「恐らく迷路の鍵を握ってるのはあいつだ」
リンクは岩棚を降り、来た道を戻って走り始めた。だがまた後ろから四匹ほどの案山子どもが追ってくる。リンクは洞窟を出るまで走ると立ち止まり、接近してきた敵を身体を一回転させて弾き飛ばした。素早くミドナに合図する。態勢を立て直した案山子どもが結界に入った瞬間飛び掛かり一網打尽にした。
リンクは周囲を見回した。一つ前に通ったばかりなのに、さっきと様相が変わっている。浅い泉の向こうにある二つの塞がれた洞窟のうち右手の一つが開いているのだ。それと対照的に、最初の広場から入ってきたときに通ったはずの洞窟は閉ざされていた。
リンクは泉に足を踏み入れ、開いた洞窟の中に進んだ。洞窟を抜けた先は木の少ないガランとした広場だ。左手の壁には洞窟の入り口があるが今は塞がれている。右手には先に続く洞窟が見えるほか、奥には粗い石段があって、それが五メートルほど高い場所に設置された横向きの通路に続いている。近づいて見てみるとその通路は巨大な木の幹を横倒しにして削り出したようだ。
リンクが石段に登ろうとするとまた案山子どもが降りてくる。リンクは石段を蹴って跳躍し攻撃した。激しい体当たりを喰らわせると案山子どもはバラバラに崩壊すると知ったリンクはもはや奴らが来ても慌てることはなかった。片端から一撃を与えて一掃すると、改めて石段を登り高い通路の上に立った。
だが通路を先に進んでも岩壁に塞がれ行き止まりになっている。引き返そうとするリンクの周囲に案山子どもが降ってくる。リンクは通路の脇に彫り残されて作られた手すりの低くなった部分をひょいと飛び越えて下の地面に降りると、ダッシュしてさっき来た道を戻り敵を引き離した。
「通るたびに洞窟の構造が変わるんだ。そりゃ迷うさ」
ミドナは笑った。
「だがこのミドナ様を騙そうったってそうはいかないぞ。リンク、最初にあの小僧に一撃喰らわせた場所に行ってみろ」
リンクは浅い泉の広場まで戻ると、今度は泉と接していないほうの洞窟に入ってその先に抜けた。驚くことに、最初は塞がっていた突き当りの壁に今は洞窟がぽっかり口を開けている。リンクは迷わず洞窟に駆け込みその先に抜けた。
次の広場は、右手にやや深い池がある。池の対岸には高台があり、そこに人影があった。あの幽霊案山子小僧だ。水面から高台への高低差は大きく、こちらからでは到達できそうにない。だが、池の左手奥に洞窟がぽっかり空いており、向こう側に行けそうに見えた。リンクは池に飛び込むと洞窟を目指した。しかし、四匹ほどの案山子の化け物どもが次々とリンクの周囲に降りてきた。
まずい。水中では戦えない。リンクは死に物狂いで犬かきして前進した。数メートル先にあった岸に到達し、前足をかけて這い登ろうとすると、案山子どもが周囲に殺到して腕を振り下ろしてきた。頭部に痛撃を受けてリンクはたまらず岸の縁から水面に落ちた。それでも這い上がろうとすると再び立て続けの打撃を受ける。歯を食いしばって痛みをこらえ、水中に顔を沈めると渾身の力で水を掻いて横に移動した。一瞬だが敵の群れから離れ攻撃が止んだ隙にリンクは水面に顔を出して岸に上半身を押し上げた。またも案山子どもが迫ってきた瞬間、岸に這い上がって体を一回転させた。案山子どもの攻撃が弾き飛ばされる。リンクは態勢を立て直すと怒りを込めた牙の一撃で案山子どもを次々撃破していった。
敵が全滅すると、リンクは岸から続く石段を登った。やはりだ。さきほど見えた高台の裏手に通じている。高台の端では幽霊案山子小僧が気持ちよくラッパを吹きながら踊っている。リンクはここを先途と殺到すると必殺の一撃を喰らわせた。
案山子小僧はまたも悲鳴を上げて吹き飛んだ。だが、何事もなかったかのように立ち上がると、薄気味の悪い笑い声を立てて高台から飛び降り、リンクが入ってきた洞窟のほうに走り抜けていった。
リンクも後を追って高台から飛び降りた。洞窟を抜けて、最初に案山子小僧を攻撃した場所に戻る。周囲にまたお化け案山子どもが降りてくる。リンクは前進しながらミドナに合図した。結界が出現し、追いすがってきた案山子どもをすっぽりと包む。リンクが跳躍した瞬間敵は凍り付いたようになり、狼の牙を受けて木っ端みじんになった。
二番目に入った広場に戻った。見ると、浅い泉の向こうにある左側の洞窟が開いている。右側のもう一つは閉じていた。
リンクは開いているほうに入っていった。洞窟を抜けると今までとは様子の違う広場に出た。広々としているだけでなく、突き当りには明らかに人工物と思われるアーチ状の出口がある。だが、今はレンガが積まれて塞がれている。右手には洞窟があり、その上には岩とも木ともつかぬ材質でできた張り出しがあった。
張り出しの上に動くものがあった。案山子小僧だ。その時また案山子どもが四匹降ってきた。リンクは横っ飛びして包囲から逃げると、ミドナに合図して結界を出し、相手が接近してきたところで飛び掛かり全滅させた。敵を倒してしまうとリンクは迷わず右手の洞窟に入っていった。
「うまいぞリンク。一撃喰らわせるたびにあいつはお前を森の奥に誘導しているんだ」
ミドナは続けた。
「ゲームのつもりなんだろう。邪魔されるのは腹が立つが今は仕方ない。最後まで付き合ってやれ」
洞窟を抜けると、そこは見たことのある広場だった。奥に粗い石段があり、高所にしつらえられた通路に至るようになっている。リンクは既視感に戸惑って一瞬足を止めた。
「リンク、進め。間違いない」
ミドナが言った。リンクは頷くと、再び前進を開始した。石段に駆け寄ると前足をかけて這い登っていく。だがそうしているうちに案山子どもが三匹降り立ってきた。リンクは心の中で舌打ちし、くるりと向きを変え石段を降りると手近にあった木の幹の後ろに走り込んだ。そこでミドナに合図し、後じさりして追尾してきた案山子どもを結界に入れると跳躍して全員を一撃で粉砕した。
改めて石段を這い登り、通路に上がった。通路を進むと、以前同様の地形では塞がれていた岩壁に穴が開いて先に進めるようになっている。間違いない。ミドナの言ったとおりだった。
だが、案山子どもがまたも周囲に降り立ってきた。リンクは強引に速度を上げて押し通った。洞窟に飛び込んで走り抜けると、前方では案山子小僧が張り出しの終端で踊っている。リンクは追いすがる案山子どもを無視して、目標に飛び掛かった。
案山子小僧がまたも悲鳴を上げて倒れた。だが即座に起き上がり、笑い声をたてると跳躍して張り出しの下の地面に飛び降り、右手の壁にあるアーチ状の出口に向かった。驚いたことに出口を塞いでいたレンガが消失し、案山子小僧は出口を通り抜け向こう側に走っていった。
「いよいよ大詰めだ。もう教えなくてもわかるな?」
ミドナが言った。リンクは頷き、敵を追って跳躍し地面に降り立つとアーチ状の出口をくぐった。その先も同様の雰囲気の広場で、木の根や苔で覆われた壁のところどころに直線的に切った石を積んだ石壁が露わになっていた。大昔には壮麗な建物があったのかも知れない。広場の左手にまた洞窟があるのを見つけリンクはそこに向かった。
その洞窟を抜けると、ひときわ広い円形の広場を見下ろす場所に出た。直径は二百メートルはありそうだ。かつては美麗であったであろうが、今は苔むした石壁で囲まれ、各所に大きな岩や、昔は演説台として使われていたと思しき平らな台が置かれている。中央には高い円柱が立っていた。幽霊案山子小僧はその上にいた。
リンクが広場に降り立つと、案山子小僧は悔しそうに地団太を踏んだ。そして跳躍して奥の床の上にあった平たい岩の上に立つと、ラッパを口に当てて吹き鳴らした。
すると四匹ほどのお化け案山子小どもがまたぞろ湧いて出てきた。リンクはミドナに合図すると結界を出し、敵が近寄ってくるのを待った。だが二匹ほどが真っ直ぐ向かってきたが、残りは裏から回り込もうと迂回してきた。リンクは最初の二匹を撃破すると、そのままダッシュして案山子小僧のほうに突進した。
だが、相手が乗っている岩に近づき射程圏内にとらえた瞬間、案山子小僧はかき消すようにいなくなった。笑い声がして振り返ると、今いる場所からちょうど正対する箇所にある岩の上に乗ってラッパを吹き鳴らしている。
リンクは向きを変えると、襲ってくる案山子どもを一匹づつ撃破しながら案山子小僧に向かっていった。だが増援が来たのか敵の数が増えている。リンクは進路上にいる案山子を強引に突き飛ばしながら相手に肉薄する。だが、案山子小僧はリンクが目の前に迫った瞬間に消え、違う岩の上に姿を現す。
案山子どもがリンクを取り囲む。リンク身体を一回転させてその包囲を吹き飛ばし、手あたり次第に敵を撃破した。だがそうしているうちにラッパが吹き鳴らされまた増援が来る。
「落ち着けリンク」
ミドナが言った。
「あいつはお前をからかってるんだ。頭を使え。あいつが逃げられない瞬間を襲うんだ」
頭を使う?リンクはふと冷静になった。そうだった。リンクはいつもミドナからそう教えられてきた。リンクは広場の中を走り始めた。案山子どもが後を追ってくるが、いまいる広場は逃げるスペースが十分にある。リンクは五匹ほどの敵をまとめて引き寄せたあと、案山子小僧がいる岩の近くで足を止めた。だが、本命には目もくれず、目の前の一匹に襲い掛かって首をもぎ取り破壊した。残りが腕を振り上げて襲ってくるのを回転攻撃で弾き、それでも立ち上がってくる個体に片端から体当たりする。そうしながらもリンクは待った。
敵の大部分が倒れた瞬間、案山子小僧が大きく息を吸ってラッパを吹き鳴らした。リンクはその刹那、案山子小僧のほうに向きを変えて、相手がいる岩の上に飛び乗った。案山子小僧は慌てて逃げようとしたがリンクが一瞬早かった。狼の一撃を受けた相手は悲鳴を上げて岩の上に転がった。だがすぐ立ち上がると、飛び上がって別の岩の上に立った。
だが、いまやリンクには敵の行動様式が完全に読み取れていた。ラッパを吹いている間は逃げられないのだ。案山子どもがまた降りてきてリンクに襲い掛かる。数を増やしており、一度に六匹降りてきた。リンクは意図的に遅い速度で逃げる。増援を呼ばれないよう、案山子どもの攻撃を避けながらこちらからは仕掛けずに広場を走り回った。案山子小僧のいる岩を特定すると、近づきつつも意図的に標的を無視し、案山子たちを相手にした。
六匹を引き寄せたあと、振り返って縦に並んだ二体を強烈な体当たりで撃破した。さらに右手にいた個体の首筋を嚙みちぎる。残り三体が襲い掛かってきたところでバックホップして回避した。体当たりして一匹を破壊し、もう一匹に飛び掛かって押し倒す。その瞬間案山子小僧が息を吸った。
リンクはまたも方向転換し案山子小僧に向かった。床から一気に飛び上がり岩の上の相手に襲い掛かる。鋭い一撃で案山子小僧はギャアと喚いた。だが立ち上がると跳躍して別の岩の上に降り立つ。
案山子小僧はラッパを吹いて増援を呼んだ。一度に呼ぶ数がますます増えている。だがリンクは決心していた。もうすぐこのゲームを終わらせる。次々と突進してくる案山子お化けの脇をすり抜け、まっすぐ親玉に向かった。挑発するように案山子小僧が踊るその岩の前で、リンクはミドナに合図して結界を出した。追いすがってきた案山子どもが次々結界に入る。手近にいた個体がリンクを狙って腕を振り上げる。ギリギリまで待ったあとリンクは力を解放した。
魔法の力で跳躍し、リンクは七、八匹の案山子どもを一気に殲滅した。地面に降り立つと、案山子小僧が大きく息を吸う音が聞こえる。リンクは相手に向き直り力を溜め、そして飛び掛かった。案山子小僧が打撃を喰らって悲鳴を上げ、倒れた。
案山子小僧はむくりと起き上がると跳躍した。だが、周囲を見回してももはや他の岩の上には降り立っていない。かき消すようにいなくなってしまったのだ。あれほどいた案山子どもも消えている。ただ、薄気味悪い笑い声だけが聞こえる。それもやがて遠ざかり、聞こえなくなっていった。
「どうやら終わったみたいだな」
ミドナが呟いた。ふと見ると、広場の壁のひと隅にあった、さっきまでレンガで塞がれていたアーチ状の出口が開いている。リンクは出口に入り、先に進んでみた。
石積みの壁に挟まれた小道を抜けると、すぐ別の広場に出た。一辺三百メートルはありそうな四角い広場で、三方を石細工の壁で囲まれている。右手の壁は大理石のファサードになっていて、その下にある扉を守護するがごとく大槌を持った高さ五メートルほどの巨大な石像が二体立っている。
その正面には崩れ果てた階段がある。何もかもが苔むしているが、彫刻の精巧さや建造物の巨大さから、大昔にはさぞかし壮麗な神殿がここにあったのだろうと想像させた。
リンクは石像のほうに近寄ってみた。すると、ミドナが声を発した。
「足元を見ろ、リンク」
リンクが床を見ると、またあの紋章だ。三角形を重ねたものだ。二メートル四方ほどの床板いっぱいに彫り付けてある。
「この紋章が鍵なのさ。おい、さっき吠えたメロディ覚えているか?」
リンクは頷いた。紋章の上に立つと、大きく首を反らして遠吠えをした。同じメロディを二度繰り返したあと様子を見る。
すると足元の紋章が光を発した。次に、リンクのいる場所から石像の鎮座しているところまで並んだ同じ大きさの床板が光を発する。気が付くと光る床板以外の場所の床は消失し、深い奈落になっていた。
一体なんだこれは?リンクは思わず周囲を見回した。リンクのいる紋章の床板と、その左右一枚づつ、計三枚の床板が一行をなし、リンクの背後側にももう一行同じ枚数が並んでいる。そのさらに後ろには中央に一枚床板がある。
リンクの前方には、さらに左右一枚づつを加えた計五枚の床板が一行となり、その同じ枚数がもう一行向こう側にも配置され、その端から数えて二番目と四番目の床板に石像が乗っていた。その後ろには、五枚一組の真ん中が欠けた四枚の床板が並んで終端となっている。
すると、像がまるで命を得たように動き始めた。体に彫り付けられた文様が青い光を発し始めている。手にした大槌の石突きで床を打ち鳴らすと、跳躍してリンクのいる列の二つ前と二つ後ろの床板にそれぞれ降り立った。重い像の着地で地響きがした。
「慌てるなリンク」
身構えて唸り声をあげたリンクにミドナが言った。
「よく出来た人形だがこいつらは戦闘用じゃあない。話を聞いてみろ」
すると前後の石像がそれぞれ言葉を発した。
「我ラハコノ地ヲ守護スルモノナリ」
「我ラヲモトイタ場所二導イテミヨ」
リンクは即座に理解した。これは謎かけなのだ。
「サスレバ森ノ聖域ハ汝ヲ迎エ入レヨウ」
それだけを語ると石像たちは沈黙した。ミドナはリンクに言った。
「最終試験ってやつだな。私が手伝ってやってもいいが、お前が自分でやったほうが良さそうだ。勇者としての機知を試されているんだからな」
ミドナはリンクの背中を叩くと尋ねた。
「リンク、それでいいな?」
リンクは頷いた。いつまでも誰かに頼っていてはあの骸骨剣士にも笑われてしまう。リンクは床板の配置をじっくり観察すると、まず右に動いた。すると前方にいた像が追随するように全くの逆方向に動く。一方で後方の像はそのままだ。
そこでリンクは一つ後ろに下がってみた。前方の像は一つ向こう側に行く。後方の像はやはり動かない。リンクは一つ左に行った。二つの像はともに動かない。前方の像はリンクと逆方向に動こうにも行く手を阻まれているようだ。
リンクは一つ前方に飛び、もといた床板に戻った。すると後方にいた像がリンクに追随した。こちらの像はリンクと同じ方向に動くのだ。前方の像はリンクと逆に、こちら側に一つ動く。
リンクは頭を働かせた。もう一度右に飛ぶ。前方の像は一つ左に、後方の像は同じ右手に移動する。今度は前に一つ動くと、前方の像は一つこちら側、後方の像は後ろからついてくる。
前方の像は、五枚一組の行の手前側の左端にいる。リンクはもう一つ前進した。前方の像は動かないが、後方の像が追随してくる。
とうとう二つの像が同じ行に位置した。リンクは頭をフル回転させた。像がリンクにつられて動かないようにするには、端に置いておくしか方法はないのだろうか。いや、像どうしが鉢合わせるようにしたらどうだろう?リンクは左に一つ進んだ。すると左右の像がそれぞれ内側に動いた。もはや二体が隣りあわせだ。リンクがさらに左に動くと、どちらの像も動かない。やはり推理したとおりだ。
リンクは今度は向きを変え正反対に一つ動いた。左右の像はたちまち分かれる。片方は左端、もう片方は右から二番目の床板だ。リンクはもう一つ右手に動いた。右の像のみが同じ方向に追随する。二つの像は、五枚一組の行の手前側の両端にそれぞれ配置された。
ミドナは黙って見ている。リンクはあと少しと感触を得ていた。二つ一気に手前側に移動すると、今度は右手の像は動かないまま、左手の像が一番向こう側の列の左端に降り立った。
説明できない勘がリンクの頭の中に弾けた。もうすぐだ。リンクは左に一つ、前方に一つ飛んだ。右手の像はリンクに追随し、左手の像はリンクと鏡像の動きを行って、見事元いた床板に降り立った。
途端に石像たちは深い唸り声を発すると動かなくなった。謎が解けたのだ。
石像たちに守護されていた扉が消失した。その向こうには新たな広場が見える。リンクは迷わず前進して出口をくぐった。短い階段を上り、向こう側に出ると、そこは石垣とその上に林立する高木に囲まれた円形の広間だった。
広間の中央には、四角い台座の上に剣が一本刺されて立っている。リンクは剣に近づいた。柄と鍔に美しい装飾が施された長剣だ。だがミドナが途端にリンクの背中から転げるように飛び降りた。
「おい!..........冗談だろ!」
ミドナが震え声で呟いた。リンクは背後に立つミドナの顔を見た。その顔には驚きとも怯えともつかない表情が浮かび、目が大きく開かれている。
「マジかよ.....本当にこんなことってあるのか!」
再び剣のほうを向いたリンクは、しかし、やにわにその刀身から発した強烈な光に思わず顔をしかめた。ミドナは悲鳴を上げて顔を覆い、慌てて後ろに飛びのいた。光と同時に、物凄い風圧がリンクを襲う。リンクは必死で四つの脚を踏ん張りその場に踏みとどまった。
剣から発する力がリンクの身体から何かを引き剥がしている。リンクは倒されないよう耐えた。まるで、寸法の小さすぎる服を誤って着てしまったあと、誰かがそれを力づくで脱がそうとしているかのようだ。次々襲い来る光と風が自分の皮膚まで削り取ってしまうのではないかとリンクは思った。
だが突然それは終わった。剣は光を発するのをやめ、風は収まった。
リンクは二本の脚で立っている自分に気づいた。人間に戻されたのだ。