黄昏の姫と緑の勇者   作:nocomimi

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歓迎されざる帰村のこと

リンクは夜道をひた走った。路傍の草や木が物凄い速さで後ろに通り過ぎていく。泉を出てしばらくしたところで前方に人影が見えた。だが何か様子がおかしい。ランプも掲げておらず、服装も村人とは異なるのが遠目にもわかった。リンクの研ぎ澄まされた野獣の感覚が即座に異変を察知した。速度を緩めず相手に走り寄る。そして緑色の顔と手にした棍棒、これを判別した瞬間リンクは相手に突進し体当たりした。

 

村へ通じる道をうろついていたのはブルブリンだった。子牛ほどもある狼に全速力で衝突され吹き飛ばされた悪鬼は地面に叩きつけられた。そいつが何が起こったのかを気づく前に、リンクは喉笛に噛みついて引き裂いた。首を振って悪鬼の血と肉片を口から吐き出すと、リンクはまた走り始めた。イリアとコリンを攫っただけではまだ飽き足らないというのか。リンクの心の中には悪鬼どもへの怒りが急激に燃え上がってきた。ますます速度を上げて走り、泉からの道の終端、リンクの家の前の広場に飛び込むと、そこにも緑色の悪鬼が二匹いた。家の周囲を物色しているようだ。

 

リンクは自分に背を向けていた一匹の背中に飛び掛かって押し倒し首筋に噛みついた。そいつが棍棒を放り出し喚き声を上げて逃れようとしている間、首と頭に滅茶苦茶に牙を立てる。その瞬間、もう一匹のブルブリンが近づいてきているのを感じ取ったリンクはいきなり体を空中で一回転させた。一撃をくらわそうと棍棒を振りかぶっていた悪鬼は、狼リンクの頭部と後ろ脚で武器を弾き飛ばされて尻餅をついた。リンクは今度は素早くそいつにのしかかると顔面に噛みつき、引きちぎらんばかりの勢いで左右に振り回した。

 

二匹の悪鬼が息絶えてしまうと、リンクは荒い息をついて周囲を見渡した。もう近くには悪鬼はいないようだ。だがふと家の軒先に何か動くものがいるのに気づいた。あの大きな虫だろうか?だがよく見るとそれは栗鼠だった。栗鼠は普段なら臆病で、近づいてもすぐ逃げてしまう。だがその栗鼠は何か言いたげに狼リンクをじっと見つめて動かなかった。

 

リンクはそっとそいつに近づいてみた。だがそれでも逃げない。家の軒下まで近づくと、リンクは狼の鋭敏な感覚でその栗鼠の息遣いを聴くことができた。怯えて動けないのだろうか?いやそうではなかった。何かをこちらに伝えようとしている。集中したリンクにはその栗鼠のちいさく鳴く声が聞こえた。

 

コドモタチ モウイナイ ミンナツレテイカレタ

 

リンクは息を呑んだ。今のは空耳だろうか?さらに近づいて耳を傾けたが、やはり同じことを言っている。自分は気がおかしくなってしまったのだろうか?栗鼠が物を言うはずがないと思われたが、今のリンクにはこの動物の嘆きの声がハッキリと聴きとれた。親しい者がいなくなったことを嘆く嘆きの声だ。

 

子供たちがいない?連れていかれた?

 

今しがた耳にしたことを反芻しつつも、リンクは中央集落への道を下っていった。魔物たちはタロやマロ、ベスまでも誘拐したのだろうか?しかしリンクは心が騒ぎ出すのを無理やり抑え、この栗鼠の声を空耳と片付けることにした。

 

中央集落に出ると、リンクは再び異変に気付いた。いくら日没後とはいえ村が静まり帰っている。夕餉とともに団らんを楽しむ家族たちの声も全く聞こえない。まるで葬式があった日のようだった。雑貨屋を右手に見て川沿いの道を下っていくと、川向うの水車小屋の前にある野外集会所に明りが灯っているのが見える。遠くから目を凝らすと、水車小屋の傍らに二人の人影があった。

 

リンクは音を立てないように忍び足で橋を渡って近づいていった。人影はボウとジャガーだ。何かを小さな声で話し合っているようだが、リンクからは聞こえない。リンクはさらに足音をひそめて近づいていった。イリアとコリンはリンクの目の前で攫われてしまったが、他の子供たちや村人は無事だったのだろうか?せめてそれだけでも知りたい。

 

「おう、あの盾か!」

 

ジャガーが言うのが聞こえた。

 

「シッ!声が大きいぞ」

 

ボウが注意する。二人がますます声をひそめるので、リンクは姿勢を低くし、集会所の前に立っている燭台の影に隠れるようにしてじりじりと接近していった。

 

「で、あの盾はお前の家だな?」

 

ボウが尋ねるのが聞こえる。

 

「ああそうだ、二階の物置だ」

 

ジャガーが答えた。

 

「じゃあ取ってきてくれ。俺がモイの代わりに子供たちを探しにいく」

 

ボウが言うとジャガーが口を挟んだ。

 

「待ってくれ、あのモイがやられたくらいなんだ。あんたも丸腰で行ったら危ねえぞ」

 

モイがやられた?リンクは耳をそばだてた。

 

「大丈夫だ。あの献上品の剣がまだモイの家にあるからそれを持っていく」

 

ボウが答えたところで、二人ともリンクの気配に気づいた。こちらを向くと二人とも小さく悲鳴を上げた。

 

「化け物だ、逃げるぞ!」

 

ボウとジャガーは転げるように走りながら水車小屋の向こう側に逃げて行った。

 

モイがやられた、と確かにリンクには聞こえた。また、子供たちを探しにいく、とも。だとすると、悪鬼どもは村の中にまで入ってきたのだろうか?リンクの考えでは、たとえ悪鬼が十匹いたとしてもモイにとってはほとんど問題にならないと思われた。ではイリアとコリンを誘拐した連中が去った後、もっと大きな悪鬼の群れが押し寄せたのだろうか?リンクはやはり心が騒ぎだすのを抑えられなかった。

 

「おい、良い話が聞けたな」

 

ミドナが半透明の姿でリンクの前に浮かび上がってきた。

 

「まったく間抜けな奴ばっかで助かるよ」

 

妖精は軽く笑うと、水車小屋を見上げた。リンクはこの妖精がいかに油断ならないかを思い知らされた。彼女は全てを聞いていたのだ。せめて剣と盾が隠されていたら自分も盗みを働かずに済むのでは、というわずかな希望もこれで潰えた。

 

「どっから攻めるかな。まあ、お前、軽く周囲を回ってみてくれよ。良い入口があるかも知れないからな」

 

リンクはそう言われると、なかばうなだれながら橋のほうに戻った。橋を渡り、雑貨屋の前の小さなカボチャ畑に足を踏み入れた。だが、そこで誰かが鷹草を吹く音が聞こえて顔を上げた。雑貨屋の隣の高い岩の上にハンジョーが立っている。

 

「化け物め、これでも喰らえ!」

 

恐怖と勇気のはざまで顔を引き攣らせたハンジョーが、腕に止まった鷹をリンクに向かって放つのが見えた。いつのまに鷹を操ることを覚えたのだろう?だがそれを考えている暇はなかった。鷹は一直線にリンクに向かって飛んできた。その鉤爪をすんでのところで横っ飛びして躱すと、リンクは雑貨屋の裏側まで走ってその屋根の下に隠れた。空から来られるのは戦いづらいし、あの鷹を傷つけたくはない。

 

「おい、ちょっとあのおっさんを驚かせてやろうか」

 

ミドナが話しかけてきた。リンクが見上げると、妖精がふわりと浮き上がり雑貨屋の屋根の上に乗って手招きした。ハンジョーに恨みはないが、屋根の下から出てまた鷹に襲われるのも不味い。リンクが跳ぶと、たちまち雑貨屋の上に出た。そこから、ハンジョーのいる岩がよく見えた。岩の上に燭台が立ててあり、その傍らで戻ってきた鷹にハンジョーが餌をやっているのが見える。次の攻撃に備えているのだろう。心の中でハンジョーに謝りながら、リンクは岩を伝って飛びその背後に立った。狼の足音に気づいたハンジョーは振り返るなり絶叫しながら川に飛び込んでいった。

 

「よし、ここから入れるぞ」

 

妖精はこう呟くとまた空中を浮遊し川の向こう側の水車小屋の屋根についた煙出しに取り付いた。リンクは跳躍して追随し煙出しをくぐって水車小屋に侵入した。

 

ジャガーの水車小屋は、村の中では一、二を争う大きな建物だ。煙出しから下の広い居住階を見下ろすと、リンクは妙なことに気づいた。タロとマロの姿が見当たらない。夜なのだからどこかで遊んでいるということは考えられない。子供たちを探しにいく、というボウの言葉がまた浮かんできた。悪い予感を無理やり心の中から追い出していたのに、リンクは再びひどい胸騒ぎを覚えた。やはり攫われたのはイリアとコリンだけではなかったのだろうか?

 

「ほら、ぼぉっとしてないで仕事だ仕事」

 

妖精の声でリンクは考え事を諦めた。目を上げると、二階の物置の壁に木製の盾が飾ってあるのが見える。リンクは煙出しの穴から飛び降り、一階の食卓の上に乗った。物置へは梯子で上り下りするようになっているが、今は梯子が取り外されている。だがミドナにとっては関係ないことだ。彼女は物置の上に浮遊していくとリンクに跳ぶよう促した。やや角度に比して距離が短かったらしく、リンクは高さが足りず一度失敗したが、二度目で前足を二階のヘリに引っ掛けてようやく這い登った。

 

盾は壁の高い場所に飾ってある。だが壁に何度か体当たりすると、盾はゴロンと大きな音を立てて落ちてきた。リンクは近づいて盾を咥え上げた。かなりの重さだが狼リンクの力なら運ぶのはわけもない。ミドナは近づいてきて盾に一瞥をくれるなり呟いた。

 

「なんか...安っぽいな」

 

リンクはため息をついた。村の自慢の品を苦労して盗んでもこの程度の評価なのか。もはやこの狡猾な妖精の支配下から逃げることは不可能と諦めかけてはいたが、それでもこんな使役のされ方ではやりきれない。

 

「ま、いいや。次は剣だ。早く手にいれろよ」

 

リンクは軽く首を振りながら物置の壁の窓から滑り出た。下は川だ。狼のリンクにとっては飛び込むのは造作もないことだったが、着水すると大きな音が出た。

 

次はモイの家だ。モイの家から物を盗むなどそれこそリンクには心が重かったが、それと同時に自分の師が「やられた」というジャガーの言葉がいまだに信じられなかった。彼の剣技を毎日のように見てきたリンクにとってはあのモイが、たとえ群れを成していようと悪鬼どもに負けるなど到底考えられなかった。

 

リンクは川を犬かきで渡り雑貨屋の裏手に出た。そこから身を低くして川沿いにモイの家を目指した。目を上げると松明の明りと人影が道の向こうに見える。見つからないよう、リンクは川の水の中に入り、半ば身を沈めながら慎重に進んでいった。モイの家の前から川岸は斜面になっている。リンクはその斜面を使って身を隠しつつ、時折様子を伺ってみた。家の前の道で松明を掲げているのはモイだった。やはり無事だったのか。リンクの心に安堵が広がったと同時に、モイが注意深い表情で左右を見回したのでリンクは慌てて体を水に沈めた。だがやはりあのモイがやられるわけはないのだ。リンクは自分に言い聞かせた。なら、狼の自分が村に戻れなくても彼が村人を守ってくれる。リンクは恩師の家から物を盗もうとしていることに心の痛みを覚えながらも一抹の慰めを覚えた。

 

川はモイの家の裏手の崖で行き止まりになっている。その割れ目から水が湧きだして水源となっているのだ。リンクは音を立てないようにしてそうっと岸に上がると、斜面を登って家に近づいていった。だが扉の前にはウーリが立っているのが見えた。夫の歩くほうを心配そうに見ていてまだこちらには気づいていないが、これでは正面から入ることはできない。ウーリからは死角になるよう、リンクは家の脇に積んである薪の山の影に隠れた。

 

どうやって家に侵入するかを考えあぐねていると、リンクは突然思い出した。モイは以前、この薪の積んである場所の脇の床下の穴から鼠が出入りしているとこぼしていたのだ。リンクは一旦盾を置き、辺りの土を感覚を研ぎ澄ましながら掘り返してみた。すると家の壁と接する場所の一か所に地面が脆くなっているところが見つかった。大きな音を立てないように気を付けながらも一心に掘っているとやがて穴の大きさが広がり狼リンクでも頭を突っ込めるくらいになった。さらに掘り進め、リンクはとうとう向こう側の床下に入り込み、床板を押しのけて家の中に侵入した。

 

家の中を見回すと、弱い明りの中、部屋の中央のソファの上に鞘に入った剣が置いてあるのが見えた。リンクが走り寄ると、ミドナが中空に表れ、人指し指を動して剣を宙に浮かせた。

 

「こっちはまあまあだな。よしこれで揃った」

 

妖精はそう言うと人指し指をくるりと回した。すると、剣がたちまちリンクの背に乗せられ、鞘についたストラップでその胴周りに固定された。

 

「やればできるじゃないか、ええ?」

 

ミドナは上機嫌に言うと、リンクを促した。

 

「さ、寄り道は終わりだ。あの黄昏の領域に戻るぞ。お前がこの狼の姿に変えられた森に帰りな」

 

妖精に促され、侵入口の穴に向かったリンクはふと壁に貼ってある絵に気づいて立ち止まった。コリンが書いた絵だ。珍しく城下町から紙が入荷したのをコリンが欲しがったのでモイが買い与えたのだ。コリンはそこに家族三人の絵を描いた。その拙い絵を見たリンクは思った。コリンを必ず連れ戻す。たとえ自分が呪われた野獣として一生野を彷徨うことになろうとも。

 

リンクはもと来た穴を再びくぐり抜けて外に出た。穴を掘るとき置いておいた盾を咥える。すると妖精が手を貸してくれたのか、背中の剣のストラップがひとりでに解けると同時に盾が背中に乗った。再びストラップが締められ、剣と盾がしっかりと背中に固定される。リンクは再び斜面を下り川沿いにその場を離れようとした。

 

その時、鋭い女の悲鳴が聞こえた。振り返ると、ウーリがこちらを見ながら両手で口を覆っている。気づかれたのだ。

 

「ウーリ!」

 

モイが叫ぶ声が聞こえた。松明を左手に掲げたモイが駆け寄ってくる。だがその姿を見たリンクは一瞬目を見張った。頭にはぐるぐる巻きに包帯が巻かれている。そのシャツには所々血がにじんでいた。足取りには普段の力強さが欠けていて心なしか片足を引きずっていた。

 

モイは右手に剣を抜き、リンクに向かって振り下ろした。リンクは横飛びしてかろうじてそれを避けた。

 

「この化け物め!」

 

激しい怒りに燃えたモイの目を見たリンクは一瞬だが凍り付いた。違う、そうじゃない、僕だ!わからないのか?リンクは心のなかで叫んだ。だがモイはもう一度剣を振りかぶった。リンクはモイの顔を見上げながら後ずさりした。モイの目に浮かんだ決死の覚悟がリンクを射すくめたのだ。唸り声を上げながらモイが再び剣を振り下ろす。リンクはまた飛びのいて躱した。

 

「あなた!気をつけて!」

 

ウーリの叫び声でリンクは我に返ると、素早く斜面を下って川に飛び込んだ。川下に向かって泳ぎ、橋のところで岸にあがって一目散に北に向かう。中央集落のゲートを抜けると、フィローネに向かう道をひた走りに走った。自分は化け物なのだ。頭で分かっていたとはいえ、武器を構えたモイと正面切って相対したとき、そのことが骨身に染みて感じられた。もし避けなかったら自分は確実にモイの剣の一撃で殺されていただろう。自分は化け物狼で、村で盗みを働いたのだ。もはや村に自分の居場所などないのだ。

 

夜道を走りながらもリンクは心の中で泣いていたが、ただ唸り声が口から洩れるだけで、狼の体では涙が出ないようになっているらしい。

 

そうこうしているうち、狼の足の速さで程なく泉に差し掛かった。だが泉の門が見えたところでリンクは誰かが呼びかける声を聞いたような気がして足を止めた。

 

悲鳴?いや、どんな言葉かうまく判別できない。だが、確かにその声は自分に呼びかけ自分を招き寄せているように感じられた。リンクは泉のほうを覗き込んでみたが、誰もいない。だが声はあきらかに泉からだった。ハイラル城で見たような人の魂があるのだろうか?いや、そのようなものも見当たらない。リンクにはその声が苦しんでいることが直観で分かった。その声はまるで何かの攻撃を受けているかのように時折ビクンと震え、そのたびごとに苦痛からくる呻きのようなものが続くのがリンクの耳には聞こえて来た。リンクは覚えずして泉の中に入っていった。泉はちょうど真上にのぼった月に照らされ、その水面が静かな光を放っていた。

 

獣の姿をした若者よ.....気をつけて......

 

途端にリンクの頭にはっきりとした言葉で声が聞こえてきた。リンクは戸惑った。また空耳か?だがその声は以前聞いた栗鼠の声のような弱弱しい鳴き声ではなく、まるで巨大な動物が人語でしゃべっているような深い、それでいて柔らかい声だった。

 

気をつけて.......影が......影の者が.......来る

 

ますますはっきりとした言葉が聞こえる。一体何が起こっているのか皆目見当がつかなかったが、その声の切迫した様子にリンクは自然と毛を逆立て感覚を研ぎ澄ませた。何かの危険が近づいているのだ。

 

すると突然、上から真っ黒く細長い石の柱のようなものがいくつも降ってきて泉の周囲を囲むように地面に突き刺さった。その柱には奇妙な文様が描かれておりそれが赤い光を妖しく放っている。

 

泉の上空で異様な音がした。巨大な管楽器を吹くような低く不気味な音。リンクが見上げると、空に黒い点が浮かんだと思うとみるみるうちにそれが広がって円形となり、やがて黒い渦巻のようなものが形成されていった。

 

大きさは百メートル以上もあるだろうか。その渦巻は水面にできる渦巻をちょうど逆さにしたような形だった。さらに見ていると、渦が深くなっていき、その奥から突然何か巨大な塊が押し出されるようにして現れた。まるで家畜の出産を思い起こさせる様子で、その大きな塊は渦から外に出ると真っすぐ下に落下してきた。

 

リンクは思わず泉の端まで跳びすさった。その黒い塊は泉の中心部に地響きを立てて落下した。岩のような物体ではなく、肉と骨を持つ生物のように見える。色が炭のように真っ黒だったうえ、形がごちゃごちゃしていてリンクには何の生き物か判別ができなかった。

 

だが次の瞬間、その塊がむくりと手をついて起き上がった。それでリンクにはそいつの姿形がはっきりとわかった。

 

長い髪の毛。異様に長い腕と鳥のような鉤爪のある巨大な手。顔には渦巻模様のついた奇妙な面をかぶり、背の高さは普通の人間の三倍もある巨大な体格。

 

あの悪鬼。そいつはあのリンクを黒雲の中に引きずり込んだあの黒い背の高い悪鬼だった。立ち上がった黒い悪鬼は耳を塞ぎたくなるような気味の悪い咆哮を上げたと思うと、リンクを獲物と見定めたのか、大きな足音を立てながら迫ってきた。

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