主人公を庇って死ぬ友人ポジになることを強いられていたんだッ!!(白目)   作:音無 仁

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皆様、お久しゅうございます。

前回からおよそ半年、大変長らくお待たせ致しました。

いろいろと忙しく、投稿できていませんでした。

今は少し落ち着いてきましたので、できる限り早く投稿出来るように頑張ります。

それと題名についてですが、とりあえずこのまま進めていこうと思います。アンケートに答えて下さり本当にありがとうございます。

それでは長らくなるのもあれですので、本編へどうぞ

あ、けいかちゃんのパーフェクト異能教室(前編)のお時間です。
後編があるかはちょっとわからないですね。


陽炎は蛍火からは生まれない………だから?

 

「な、何を笑っている……?」

 

蛍華の笑みに不気味なものを感じ、少し後退りながらクラックは左腕を掴む右手を強くする。

 

「それ」

「あ…?」

「その右手さぁ、さっきからずっと左の腕を掴んでるよね、どうして?」

「はぁ?それがなんだって言うんだ」

「ふーん……なるほどね」

 

納得がいったとばかりに笑みを深くする蛍華をクラックは動揺を隠せずに狼狽え、そして恐怖する。

蛍華の笑み、そしてその際に見えた彼女の目がまるで深淵のように黒く見えてしまったからである。

 

「異能ってさ、面白いよね。人によって違いがあるし、出力が違うだけだったり仕様が違ったり、そもそも別物だったり過程が違ったり」

「な、何が言いたい」

「疑問に思ったこととかない?間違いなく弱いはずの異能で強者だと言われてる人とか知らない?最低一人くらいは知ってると思うんだけどなぁ。例えばさぁ、ほらイギリスの円卓騎士団を模した騎士隊。彼らって異能力者は円卓の13人が筆頭だけど、ランスロット担当の人の異能って知ってる?」

「…維持だろ、誰でも知ってる」

「お?話せるみたいだね、そうそう維持。でも、それって強い異能って言えるかな?あの異能って維持できる時間は長いけどそれだけなんだよね。なのになんでランスロット担当なんてなってると思う?」

 

分からない、知るわけが無い。そう言えばいいだけのはずなのに声が出ない。

その事に気付いているのか気付いていないのか、彼女はそのまま会話を続ける。

 

「あ、知らないんだ。なら教えてあげるよ。異能は特殊な条件や制限を掛けることで出力や特性を変えることが出来るんだよ、すっごいよね」

「な、なんだと?!そんなことが可能だと言うのか?!」

「できるからそう言ってるんだよ。まぁ、と言ってもこのことを知ってるのは基本的に専門学校に入学・卒業した人達や国の上層部、その上層部が認めた人達くらいでほとんどの人は知らないよ。と言っても、最近では色々と広まっちゃったみたいだけど」

 

クラックは狼狽え、そして心の底から歓喜した。

そう、まだ俺は強くなれる、まだ上に行ける、誰にもバカにされない存在に…!

そんなことを考える彼を冷めた目で蛍華はただ一言こう言った。

 

「それ以上、出力は上がらないんじゃないかなぁ」

「あ…?ど、どういう意味だ!?」

「言葉通りなんだけど……既に()()を行ってるなら無理だよ」

「宣誓、だと?なんだそれは」

「あれ?分からない?ほら、僕たちー私たちはーってやらなかった?要するにさ、私はこのように誓いを立てます、ってね。この誓いを破らない限り力は増すってこと」

「誓い…」

「私の場合は銃の形をしたものを媒介にしないと異能を一切使えなくなるって誓い。特定の行動でしか異能を発動できなくすればその分異能の出力をあげることが出来るの。もっと簡単に言うならば、ほら、蛇口に繋げたホースに水を流すことかな。通常通りなら蛇口を捻って水量をあげるしかないけどそれにも限界がある。でも、ホースの先をつまんで口を狭くすれば勢いが強くなるでしょ?それと一緒」

「な、なら俺の異能もまだまだ強くできるはずだろう?!」

「無理だよ」

 

蛍華の深淵のような目がクラックを見詰め、その目に恐怖を隠せなくなってきたクラック。

ただの会話が、クラックを追い詰める攻撃へと変わっていた。

 

「たしかに宣誓はいくらでも増やすことが出来る。ただ減らす事は出来ないし、一度でも宣誓を行うと一時的に無視することは出来ても生涯で外すことは出来ない。元となったケルト神話のゲッシュと同じ。けどね」

「けど…?」

「どんなものにも限界ってのはあるんだよ。異能は魂と直結してるからね、出力をあげるってことは魂を酷使してるってこと。摩耗してる魂に一時的にだったり、少しずつならまだしも一気に出力を上げた挙句にそれを常時維持なんてしたらどうなると思う?」

「………それ、は…」

「さっきホースの例えを出したけど、ホースの口を狭めれば勢いは増すけど逆流する水も多くなる。そしたらさ、蛇口側に付けてたホースが蛇口から勢い良く外れたりするよね。うん、もう言いたいことわかったかな?」

「…………魂が、破裂する……?」

「せいかーい、まぁ正確には廃人になるんだけどね。死にはしないよ、死には」

「だ、だが俺は一度も宣誓なんて行っていない!ならば──」

「いやしてるよね、思いっきり。ここまで言ってなんで気づかないわけ?」

 

クラックに対して呆れたような、哀れなものを見るようなそんな目をして蛍華ははっきりと告げる。

 

「その右手で左腕を掴む動作。それしないと異能が発動しないんじゃないの?」

「あ……そんな、こと……」

「はー、呆れた。つまりあなたの異能は死にかけた事で変化したんじゃなくて、宣誓によって強化されたものだったってことだ。最初はそんなに強くなかったから毒になるなんて思わなかったわけで、元々刺激臭のような臭いは発生させられたんじゃないの?危害を加えられなかっただけで」

「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!!オ、俺は覚醒したんだッ!物語の主人公のようにッ!俺の異能は俺の思いで覚醒したんだよッ!そうだ、そうに違いないんだッ!でたらめを言うなッ!!」

「…………ただの厨二病が最終的にテロリストに身を落としたわけね、哀れすぎて返す言葉もないよ」

「このテロは俺が主人公だからこそのものだッ!俺はテロ組織の1人として世界を変えてやるのさッ!あの時、俺を馬鹿にしたアイツらと同じようになッ!」

「はぁ…馬鹿馬鹿しい。結局自分は悪くない、悪いのは周りの奴らだ、って事でしょ?そう考える奴ほど自分が悪い事に気付こうともしないのよね」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れッ!どちらにせよお前は俺の異能で死ぬんだよッ!」

「ふーん、そう。そういえばこの部屋に入ってからどれくらい経ったっけ?」

「そうさッ!もうすぐッッ?!」

 

そして彼はようやくその事実に気付くことが出来た。

本来彼の異能は今いる部屋ならば5分と経たずに効果を発揮しだす。

いや、それ以前に蛍華がクラックと接触する前から異能自体は発動していたのだ。それから何分経った?既に48階全体に毒臭は行き渡っているはずなのに、普通ならば毒で動けもしないはずなのに

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

「そういえばさぁ、さっき私こう言ったよね。異能は特殊な条件や制限を掛けることで出力や特性を変えることができるって」

「……………」

「出力に関しては今話したけどさぁ、()()()()()()話してないよね」

「っ!」

 

特性、最初に宣誓の話をした為にクラックは忘れてしまっていたが、確かに彼女は言ってるのだ。

 

『あ、知らないんだ、なら教えてあげるよ。異能は特殊な条件や制限を掛けることで出力や特性を変えることが出来るんだよね。すっごいよね』

 

そう、彼女は確かに言っていた。出力ではなく異能の特性、つまりは性質すら変えることができることを。

 

「まぁ、そんなに難しくないんだけど盟約って言ってね。私はあれをするからその代わりこれをお願い、とかって友達とやり取りした事ない?」

「……………」

「あ、ごめん。友達とか居ないよね、いじめられっ子だし。まぁ、いわゆる口約束のようなものなんだけどね。何時でも使うことが出来る異能の根源たる魂と自身の精神で盟約を結んで本来出来ないような事や一時的に宣誓の条件を無視できるようにしたり、あと出力も一時的に上げることができるんだよね」

「そんなことが……」

「ありえるの、有り得ちゃうんだよ。盟約(こっち)は宣誓に比べて大分緩くてね、絶対に行わないといけない訳じゃないし、何時でも破棄する事も出来ちゃう。もちろん多少のペナルティはあるけどね、少しの間異能が使えなかったり、一時的に目が見えなくなったりとか。まあ、宣誓に比べればそんなに強く効果が出ないんだけどね。それでも出力を何時でも上げたり下げたり、特性を別のものに変えたり、宣誓に比べればかなり自由度が高いよね。さて、ここでクエスチョン!なんで私がこんな説明をあなたにしたのでしょうか?回答をどぞ!」

 

ここまで宣誓と盟約について蛍華が語った意味、そして最後に語った盟約について。ここまで来れば自ずと見えて来るものがある。つまりは──

 

「───情報開示による、出力と特性の上昇、もしくは変更、か!?」

「大せいかーい。呪怨会戦とか狩人&狩人とかにもあるやつと似てるよねー。まぁ、あれらとはよくよく考えると全然違うけど」

「お、お前がまだ立っていられるのもそういうことだと言うのかッ!?」

「それもせいかーい。正確には盟約によって昨日の午後6時から本日の午前6時までの計12時間一切異能が使えなくなる代わりに、次に私が異能を使う際に2時間だけ特性を少し変更…うーん、追加?まぁどっちでもいいか。ではでは、私の異能の情報開示もしちゃおっか!」

「くっ、そがッ!!」

 

恐らくこの女は何時でもこちらを殺せるのだ。だのに何故かこいつは俺に対して情報を与え、表面上笑っているのだ。

さも今の出来事が楽しいように、笑っている。

 

この女の本性は間違いなく狂人だろう。いつでも殺せる俺を嬲るように追い詰めていくことが楽しくて楽しくてたまらない狂人なのだ。

 

「私の異能の名称は『蛍火』って言ってね。熱源があればそこから発火することが可能なの。まぁ勿論制限もあるよ、というか制限がないと弱くて弱くて使い物にならなかったんだぁ。まず1つ目は発火する熱源は基本的に1℃以上の熱を持つこと。2つ目は能力を使う際は銃の形をした物を利用しなければ発動しないこと。3つ目、生物の発火を行う場合、対象が40℃以上の熱を所持していなければならないこと。ただし無機物の場合はその限りでは無い。まぁこんなところだね」

「そ、それの何処が制限になるんだ…?ほとんど障害にならないじゃないかッ!」

「呆れた……むしろなんで障害になるような制限つけるの?馬鹿なんじゃない?自分を強化するために制限を掛けるのに制限を掛けて弱くしたら本末転倒じゃんか」

「うっ……」

「はあ……そして私が盟約によってどんな特性を得たかだけど、まぁ簡単に言えば発火の対象を温度だけではなく毒に対して対応出来るようにしただけ。さっきからずっと私の周りだけ毒を燃やしてるせいか暑いんだよね、勘弁して欲しいよ。あ、燃えているところが見えないって思ってる?別に発火させたら絶対に炎が見える訳じゃないんだよ?エタノール火災と一緒の原理で見えにくくしてるだけだけど。あぁ、それとも酸素のことかな、残念!私の異能は酸素を消費しておりません!さてさて、とりあえず開示するだけしたし、そろそろ終わらせようかな」

 

そう言って蛍華は右手に持った拳銃を再度クラックに向ける。

何処までも余裕を持ち、何処までも楽しげに笑みを浮かべながら殺さない程度に火傷を負わせて──

 

「くそ、くそくそくそォ!!差別主義者の不知火風情がッ!この俺をッ!見下すなァっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───表情が、崩れる。

怒気の孕んだの声にクラックは唖然と蛍華を見つめ、先程までの余裕が嘘のような能面顔でクラックを見る蛍華。

 

余裕を崩した蛍華を見て精神的に揺さぶれると考えたクラックはそのまま不知火という家を貶し始める。

 

それが、彼女の逆鱗の一端とも知らずに。

 

 

「あぁ、そうさッ!その赤い髪に炎系統の異能ッ!不知火の家系の出身者の特徴だッ!あの差別主義者の家系のなッ!!他家を見下し、自分達こそが上に立つ者と考える最も嫌われた名家ッ!何よりも異能こそが至上と考え五大宗家を貶し、無能力者を家畜でも見るかのように扱うあのクソのような一族さァっ!」

「…………………」

「しかも数年前に恨み辛みが溜まりに溜まった奴らによって本家分家関係なく不知火関係者の子供達が誘拐されたんだっけなァ?!20人近くいた子供達は救出時には半数以上が殺されてわずか5人しか助からなかったとか!!本家筋の子供は全員死亡、生きている分家筋の5人は精神的に不安定になり表舞台にはほとんど出てこないんだっけ?あぁ!!もしかして年齢的にお前がそうなのか?!これは凄いなぁ、尊敬するよ!なぁ、どんな気分だったんだ?大勢の子供達が殺された中、自分達だけが助かった挙句に本家から助かったことを責められたのはさァっ?!教えてく───」

 

彼の言葉がそこから続くことは無かった。死んだ訳では無い、だがしかし、目の前にいる彼女が発した異能は確かに彼へと命中し───

 

 

 

「けひっ……?」

 

 

 

───左腕を吹き飛ばし、燃やす。

 

「…………ねぇ」

「あ…あ、あ、あぁぁぁぁぁ!?!痛痛い痛いたい痛いぃぃぃぃ!?!。!?、!。?!」

「私さっき言ったよね、別に人体発火を行えないわけじゃないって」

「うぅぅ!うぅ、うぅぅー!!どうし、どうして!?なんで、痛い痛あ、腕、俺の腕!ない、無い無い無い無い、腕、腕無い、どこ?どこォ?!」

「私の周りは毒を燃やし続けている結果温度がかなり高くなってるの。基本的に異能は使用者には危害がないからそうは思わなかったかもしれないけど、すごく高温なんだよ……?そんなところの近くに入れば自身の体温も上昇するし表面温度も高くなるに決まってるよね…?普通気付くよ…?」

「あ、が、腕、燃え、燃えて、ア、アア、アァァ……」

「だからさ、40℃なんて簡単に超えるんだよ…?ついイラッとして……腕に命中しちゃったよ。胴体部分狙おうと思ったのに、どうしてくれるの?」

 

表情に感情などはなく、歪な文言を発しながらもただ淡々と事実として殺害(それ)について話す蛍華。

確かにクラックの言う通り、彼女は狂って、否、壊れている。人を殺すというその行動に一切の迷いなく、淡々と行える彼女を誰が正常だと判断出来るのか。

そんな自分を隠し、自身に暗示を掛け、狂人(不知火蛍華)を演じる彼女は既に精神的に───

 

 

 

 

「ねぇ、死んでくれる?」

 

 

 

 

────死んでいる

 

 




蛍火にはわずかな火や、小さく残っている炭火などの意味がありますが、元々蛍が発光する状態を蛍が火を発していると捉えて生まれております。

つまり生物が火を発していると大昔の人は捉えたということ、彼女の異能はそこから派生して生まれました。

陽炎が出来ない?陽炎が出来るほどの火なんていらないんです。燃やす事に最初から強い火は必要ない。勝手に強くなるんだから。

燃やすための(燃料)はいらないのです。だって周りに沢山あるから。

ちなみに彼女の異能名は元々『引火』として登録しておりましたが、とある事件の後に自分で『蛍火』に変更登録しております。
異能名は役所に届ける事で変更が可能です。
ちなみに異能所有者本人すら異能の真名は分かりません。
もし真名を知っている人物がいるならばそれは神かはたまたイレギュラーだけでしょう。

不知火家の事件についてはいつかあるであろう不知火蛍華編にて詳細がわかると思うので期待せずに待とう!

それまでは闇堕ち寸前自己暗示系幼なじみメインヒロインの片鱗を味わいながらけいかちゃんの曇り始め(周り含め)を楽しみにしていていただければ幸いです!

まえがきでも書きましたが本当に遅くなって申し訳ございません!
次もできる限り早く出しますのでよろしくお願いします!

質問や疑問などがあれば活動報告までよろしくです!
感想でも構わないけど規約に引っかかる可能性があるので気をつけていただけると幸いです。

今回はここまでお読みいただきありがとうございました!
もしよろしければ感想・評価の程、よろしくお願い致します!
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