ちょい長め。
旅を始めてから大体200年。その日もいつもと同じで、多少の苦労はあれど、なんの変哲もない一日のはずだった。
もはや慣れたように人々の傷病をボクに移して、いまだに慣れない聖女という呼び名で人々から見送られて、森の中を進んでいた。
少し深い所まで来ると、街を出た時に目を付けていたのか、目の前に二人の魔族が現れた。別にそこまで驚きはなかった。魔力探知で気付いていたし、200年も旅をしていれば、魔族に襲われることなんて数え切れないほどあった。
ボクは、いつも通り驕りと油断を目に浮かばせた彼等に、懲りないなぁと溜息を吐いた。
いつまで経っても慣れることはない命を奪う感覚を思い出しつつ、嫌々ながら戦闘態勢を取ろうとしたその時。
魔力探知にとんでもない魔力が引っかかったと思いきや、魔族が横から放たれた魔法らしき光の奔流に飲み込まれ、跡形もなく消滅していた。魔法が飛んできた方向を見ると、遠い記憶にてとてつもなく見覚えのあるエルフがいた。
「……お前が聖女とか呼ばれてる
アイエエエエェェェェゼーリエさん!?ゼーリエさんナンデェェ!!?
「ん?お前、魔力を制限してるのか。近付くまで気付かなかった。良い魔力制御だな。それなら余計な世話だったかもな」
そう言ってニヤリと不敵な笑顔を向けてきた。あ、可愛い。
じゃなくて!まずいまずいまずい!一目で魔力制限が見破られた!擬態までバレたら終わる!お願いします!バレないで!
「おい、なんで何も言わない?」
あ、緊張しすぎて黙っちゃってた。とりあえず、バレてはいない、のか?
「どうも、ゼーリエさん」
「私の事を知っているのか」
あ、ああああああ!!しまった!ナチュラルに前世知識で言ってしまった!
「まあ、私の名は有名か。言葉を話す魔物共を、あちこちで殺しまくっているからな」
た、助かったぁ。そういえば彼女はこの時代、魔族から恐れられるくらい殺しまくってたんだよね。……それってバレたら確定で死ぬってことじゃん!
「そういう意味ではお前も有名人だがな、聖女フェルシュ。訪れた先の人々の傷を、無償で癒しているのだろう?」
「ボクからそう名乗ったことは無いよ」
ゼーリエにまで知られてるのか……。恥ずかしい。
「そんな意味の無いことをするのはどんな奴なのか気になってな。顔でも一目見ようかと思ったんだが、なかなかどうして、フェルシュお前、強いな」
「君程じゃないよ」
勘弁して下さい。
「謙遜するな。なぜ制限しているのか分からんが、その魔力量、制御技術、どちらも申し分ない。良い魔法使いだな」
「いやー、それほどでもー、ははは」
いや本当に勘弁して下さい。ボクなんてただの雑魚ですから。長生きなおかげで魔力量が多くて、常に擬態と魔力制限してるから制御が得意なだけだから!
「フェルシュ、お前の好きな魔法はなんだ?魔法にはそいつの性格が出るからな」
「え、急に言われても難しいなぁ。……でも、強いて言うなら……民間魔法全般、かなぁ」
ボクがそう答えると、ゼーリエは分かりやすく顔を顰めた。
「……前言撤回だ。お前本当に魔法使いか?魔物とやり合うこのご時世に、民間魔法が好きな魔法使いだと?正気とは思えない。魔法使いなら強さを求めるべきだ」
………───。
確かに、この時代にわざわざ魔法使いになる人なんて、戦う為が大半なんだろうね。それこそ民間魔法が好きで魔法使いになる者は少数だろう。でも、
「そうかな。逆にこんな世の中だからこそ、ボクは民間魔法が好きなんだよ。民間魔法は生活を便利にする魔法。確かに強さはない。でも、平和で良いじゃないか。誰も傷付けない魔法なんて、とても素敵だとボクは思うな」
「だが、魔物共は人々を襲う。人を傷付ける魔法でな」
「そうだね。だからボクは魔法使いになったんだ。平和に生きる人々が少しでも傷付かないように。その傷を少しでも癒せるように」
「なら、やはり原因を消した方が効率が良いじゃないか。人を助けるなら魔物を殺した方が手っ取り早い。つまりそれは、ただお前が甘いだけだ」
まあ、それを言われるとそうなんだよね。
「そこはまあ、ボクのわがままかな。ボク、あんまり戦うの好きじゃないんだよね。……それに、こんなボクの事を、人を救える優しい奴だ、って言ってくれた友達がいてね。だからボクはそれ以来、自分の甘さを誇りに思うようにしているんだ」
そう、これがボクが約200年間、旅をしてきて考えたことだ。あの時ラフィに言われた事を嘘にしない為にも、ボクはこれから先も誰かを助け続ける。
憧れた
「平行線だな。私には分からん感覚だ。人間を助けたところで、どうせすぐに死ぬというのに」
「それはいずれ君にも分かるさ」
「だと良いがな」
原作では、全ての弟子の性格と好きな魔法を覚えてたり、弟子に都合の良い任務任せたり、なんだかんだ面倒見良かったからね。
というか、途中から普通に会話してたけど、これはバレてないって事でよろしい?……よし!セーフ!セ────フ!
このまま自然な流れでフェードアウトしよう。いつまでも一緒に居たら、心臓(核)が持たない。
「それじゃあボクはこの辺で」
「まあ待て、フェルシュ。確かにお前の考えは理解できないが、人を癒すその魔法は素晴らしい。……次の街まで少し話さないか。どうせ私達には時間はいくらでもある。ここで別れても次の街で別れてもそこまで大差ないだろう」
く、なんて魅力的な提案なんだ!でも、流石にリスクがありすぎる。ボクが魔族だとバレたら、冗談抜きでそのまま終わりだ。
「一緒に来るならいくつか民間魔法について話してやる。私は民間魔法も使えるからな。これほど優しい私は珍しいぞ」
ボクが乗り気ではない事を読み取ったのか、彼女はそう付け足した。
なにぃ!民間魔法だって!?ぐぐぐ……確かに、彼女がこんなに素直に優しいのは珍しいかも。原作の描写を見る限り、すごく不器用だったから。
うーん、次いつ会えるのかも分からないし、最悪秘密兵器もあるし逃げるだけならなんとかなる、かな。よし、ここは仕方なくゼーリエの提案に乗ってあげよう。あくまで仕方なくだから!決して原作キャラとの交流に釣られたわけじゃないから!
「そこまで言うなら分かったよ」
結局、一緒に行動する事にしたボクは、次の街へと向かう道中で色々な魔法の話を聞いた。
原作に登場した服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法を見せてもらったが、普通に感動した。長い間、旅をしたボクには分かる。これは確かに超便利な魔法だ。逆に、文字を上下逆に書く魔法や、爪を切る時に深爪にならない魔法とかのくだらないけど面白い魔法もあった。彼女は、口ではくだらないと言いつつも、やっぱり魔法が好きらしい。ボクに魔法を見せる時は、目に見えて楽しそうだった。それはそれとして、ボクの興奮具合に引いていたけど。
人の言葉の真偽を判別する魔法の話を聞いた時は、ボクに使われたらやばいなと気が気でなかったけどね。
「私はな、フェルシュ。魔法が好きだ。そして、魔法の発展には魔物との戦いが最も効率が良い。だから私は、魔物を殺している」
「それはそうかもね。命がかかっている状況では発展せざるを得ない。戦う為の魔法に限ればね」
「そうだ。そしてお前の魔法は、まだ発展途上だ」
ボクの魔法の詳しい内容は教えてないはずなんだけどな。ボクの性格や言動から読み取ったのだろうか。
「だから、私と一緒に魔物を殺さないか?そうでなくともお前の魔法は、戦う者にとっては喉から手が出るほど欲しい物だ」
「……ボクはやめとくよ。最初に言った通り、誰かを傷付けるのは極力したくないんだ。それが例え魔物でもね」
「そうか、残念だ」
ゼーリエは、ボクの答えが分かっていたようにさっぱりと言った。
どうしてこんなに気に入られてるんだろう。ボクってどちらかと言うとフリーレンタイプの魔法使いだと思うんだよね。才能は無いけど。
「それじゃあそろそろボクは行くよ」
「ああ、また何百年後かにな」
「うん」
自然と返事出来てしまうくらいには、ボクの時間感覚も長命種になってきてるなぁ。
「無いとは思うけど怪我でもしたら気軽に頼りに来てね。ボク達はもう友達だから」
まあボクが勝手にそうなりたいと思ってるだけなんだけど。せっかくの原作キャラ、友達になりたいと思うのも仕方ない!バレたらその時はその時だ!
「……ふん」
そう言って、彼女はボクとは逆方向に歩いて行った。
まだ若いからかな?なんだか原作よりもちょっと素直で可愛いなぁ。ボクよりも背が低いし。
最初はどうなる事かと思ったけど、最終的に友達になれた?から結果オーライだね!リスクに目を瞑ればファンとしては垂涎ものだし!
よし、ボクもそろそろ行こうかな。
彼女を見えなくなるまで見送ってから、自身もゆっくりと森の中を歩いていった。
期待されてたバトル展開に出来なくて申し訳ない。どうしてもこの接触からバトルに持ってくと不自然になっちゃいそうで。
ぶっちゃけると、バレたら5秒でバトル開始しますが、普通に殺されて終わります。笑
チート持ちオリ主でも勝てる気がしないゼーリエ様流石っす。
あっさり別れましたが、多分割とすぐ出ます。この時代原作キャラが全然いないので。というか普通に好き。不器用だから分からないけど実は弟子のこと大好きなゼーリエ様良いよね。
それはそれとして、どうやって魔族のことバラそうかなぁニヤニヤ(既定路線)