転生大魔族は生き残りたい   作:Yk7

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お待たせしました。
大学のテストが一月半ばから末にあるので、更新頻度が落ちます。
おそらく週一くらい。


11話

 

ゼーリエと別れてから数日間、ボクは足場の悪い森の中を一人で進んでいた。

 

確か前の街の人から聞いた情報では、この森を抜けたところに、最近出来たばかりの大きめの街があるんだったかな。

 

襲ってきた魔物を倒し終えて、先へ進もうとしたボクの視界に、一つの木の小屋が入った。その小屋は、もうずっと使われていないのだろう、腐って朽ち果てており、辛うじて小屋だったと分かるものだった。

 

「中には当然誰も居ない、か。ずっと昔に誰か暮らしてたのかな?」

 

こんな森の奥深くで暮らしていたなんて、相当な人嫌いだったに違いない。

 

気にしても仕方ないし、街に向かおう。

 

その小屋から更に一週間程度歩くと、高い外壁に囲まれた街に到着した。この街でも聖女フェルシュの名前は知られているらしく、ボクが名乗ると手厚い歓迎を受けた。恥ずかしいな……。

 

ボクの訪れで盛り上がる人々の様子を見ると、どこか強張った表情をしている人がいることに気付いた。話を聞いてみると、この街、ウィステンは大陸中央部の西側にある街で、更に西にいくと、ある魔物の住処があるらしい。

 

その魔物が名のある強大な魔物であり、100年以上前から定期的に人々を襲っていた為に、その対策として元々あった村を城塞都市として作り替えたのがこのウィステンだそうだ。その魔物は言葉を話すそうだから、おそらくは魔族だろうね。

 

最近はその魔族達の動きが活発になっているらしい。道理でこの街には武器を持っている人が多いのか。

 

ウィステンを治めている初老の男性から、魔族との戦いで傷付いた人の治療を頼まれた。ボクはもとよりそのつもりだったから、特に問題なくその申し出を受け入れた。

 

ボクは早速、教会に隣接している治療院で安静にしている負傷者を治してあげた。

 

治療を済ませたボクは、お礼ということで街一番のご飯をご馳走になった。そこは大きめの宿屋を兼業していて、街一番の人気というのも嘘ではなく、とても繁盛していた。

 

「女将さん!いつもので!」

「俺も同じのを!」

「はいよ」

 

ご飯を食べ終えたボク達は、この宿に泊まっているであろう戦士や魔法使いの喧騒を耳にしながら、この街の現状について話し合っていた。

 

「この街を襲っている魔族は三体。『絶影』のシャテン、『不可視』のジヒター、そして、『軍勢』のべスティです」

 

どいつも二つ名が付くくらい強いのか。

 

「何となく二つ名から想像つくけど、どんな魔法を使うの?」

 

「『絶影』のシャテンは影を操る魔法を使います。基本的には奴自身の影を物質化させて攻撃してくるのです。それと、影の中を移動してくるのも厄介です。しかも、奴に影を触れられると身体を操られてしまいます。魔力を持つ者なら抵抗出来るようなので、おそらくはシャテンよりも魔力が多ければ効かないと思われますが……魔族よりも魔力が多い者など、この街にはおりません」

 

なるほど、聞いた話だけでも厄介な魔法だ。ただ、長くとも生まれて200年程度なら、ボクの方が魔力量は圧倒的に多い。ボクが操られる心配はしなくて良いのは幸いだね。

 

「『不可視』のジヒターは文字通り、姿を消す魔法を使います。姿を消した状態で、持っている見えない剣で斬りかかってくるのです。魔法使いであれば魔力によって大体の居場所が分かるらしいのですが、姿が見えないのでいつ攻撃が来るのか、次に誰を狙っているのかが分かりません」

 

戦士からすると、動きが読めないからまともに打ち合えず、魔法使いからすると、前衛と連携が取れないから簡単に近付かれる。単純だからこそ強力な魔法だ。攻撃手段が剣なのが救いかな。飛び道具を使われたら手に負えないからね。

 

「最後に、『軍勢』のベスティは知性のない魔物を操る魔法を使います。いつも人喰狼(ヴォルフ)大口猪(エイバー)などの獣型の魔物の群れを率いています。これが最も厄介です。シャテンもジヒターも強力な魔法を使いますが、相手が本当に3体だけなら数の有利によって、もっと良い勝負が出来ていた筈です。しかし、ベスティの魔法によって数は同数に、いやこちらが不利にまでされているのです」

 

なるほど、やっぱり魔族の魔法は厄介だね。奴等の魔法は、人類では及ばない域に達しているものばかりだ。

 

「それほどの奴等を相手によくこれまで持ち堪えたね」

 

それだけこの街に強力な戦力があったのだろうか。

 

「いえ、違うのです。奴等にとって、これは遊びなのです。自分の魔法を試すついでに、誰が最も多くの人間を殺せるかを競っているのです。だから、ある程度殺すと勝手に退がっていく。次また遊べるように。」

 

そう話す彼の顔は、耐え難い屈辱と怒りで歪んでいた。

 

……やっぱり魔族はクズだ。ボクはそんな奴等とは違う。

 

「これまでは被害を最小限に抑えられていました。どちらでも構わないと言わんばかりに見逃されていました。しかし、それももはや限界です。だから我々は先日、近くを訪れたらしい大魔法使いゼーリエ様に、秘密裏に依頼を出すことにしました。油断している魔物共を一掃する為に」

 

おや、別れて間もないのに、もう彼女の名前を耳にするとは。確かに、この状況もゼーリエが居れば全て解決する。

 

あれ?でも、

 

「ボク、この街に来る前に彼女に会ったけど、この街とは反対の方に歩いて行ったよ?」

 

「依頼を出しに行ったのは、つい一週間ほど前ですから。その時はまだ探していたのでしょう。今頃見つけ出して依頼をしているとして、この街に着くのは早くとも一週間後でしょうな」

 

「なるほど、つまり、最短で一週間、襲撃を耐え切れば勝ちってことだね」

 

「そうなります。最近の奴等が来る頻度は週に一度程度。前回が昨日です。あと一度耐えることが出来れば、ゼーリエ様が来てくださる筈です」

 

ふーむ、魔族の情報を聞いた感じ、例え1対3になったとしても多分ボクが勝てると思う。ただそれは、傷病を移す魔法(モーデハイト)を十全に使った場合だ。流石に相手の魔族は、被弾ゼロかつ魔力弾だけで倒せるほど弱くない。

 

本当の魔法について知られたくないボクとしては、ゼーリエに倒してもらった方がありがたい。それに多分、

 

「ゼーリエが来るまで、良ければボクも手伝うよ」

 

ボクの魔法は、仲間が居る耐久戦にとてつもなく相性が良い。

 

人を癒す(ように見える)ボクの魔法は、負傷したとしても直ぐに治すことが出来る。致命傷に関しても、この200年の研究によって、とある方法で克服することに成功した。流石に負傷と同じように無条件とはいかなかったけど。

 

その方法というのが、ボクの秘密兵器!藁人形だ!

 

……別にふざけてないよ?魔法はイメージが大事だ。イメージ出来ないことは実現できない。前世で藁人形は人を呪うもの、もしくは身代わりや呪い避けとして使われていた。だからボクにもイメージがしやすかったのだ。

 

ボク自身が魔力を込めて手作りしたものでしか発動出来ないけど、その代わり距離は関係ない。呪いに距離は関係ないからね。藁人形のことに気付いて以来、暇があったら作りまくっては森の中や道端の陰に放置を繰り返して100年近く、今のボクは致命傷を数百回移しても死ぬことはない。

 

つまり、ボクの仲間は実質的なゾンビ戦法が出来るのだ。これによって、ゼーリエが来るまで、誰一人死なせることなく一週間後の襲撃を耐え切る。

 

そうと決まればこの街の戦士の人達に作戦を説明しないと。藁人形には一応限りがあるからね。




藁人形は頂いた感想を参考にしました。少し急だったかもなので前話に若干それっぽい描写を増やしました。
というか、最初の方に頂いた感想だったから、今思えばもう少し自然に入れれたなぁ。
プロットなしで書いてるからこういう事になるんですね〜。
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