この一週間、友達との旅行、家族との旅行、親の実家への帰省と忙しく書けませんでした。休み明けからテストがあるので次話も今回と同じくらい空くかもです。
「それじゃあ、始めようか!」
ボクがそう言うや否や、姿を現していたジヒターが再度姿を消した。それと同時にボクは魔力探知を発動して、ジヒターを見失わないようにする。
「この物量にどう対応するのかしら!」
「行くぜオラァ!」
べスティが魔物の軍勢を突撃させてくる。それに紛れてシャテンとジヒターもボクに向かってくる。
「攻撃手段が無いとは言ってないよ」
空中に無数の魔力弾を展開する。パチンと指を鳴らすと、魔物に向けて正確に飛んで行き着弾する。
ボクはこれまで、ほとんどの戦闘で魔力弾を使っていたからね。今や魔力弾を操る精度も、その威力も、前と比べて格段に上がっている。
魔物を倒しつつもシャテンとジヒターに対して魔力弾を飛ばして動きを牽制する。
「ちっ!魔力の塊を飛ばしてんのか!?だりいなぁ!」
シャテンが、自身の影を鋭く伸ばして攻撃してくる。ボクは無理に迎え撃つことはせずに、バックステップでそれを避ける。
一旦整理しよう。
ボクが勝つ為の条件は、街の人達を誰も死なせずに奴等の大きな隙を突いて
逆に、もしボクが隙を突かれて魔物の物量で囲まれたら、継続的に致命傷を負うことになる。そうなった場合、負けはしなくとも勝つことが限りなく厳しくなる。後手に回って
ゼーリエが来るまで耐えることが出来れば一番良いんだけどね。一応さっき布石は打っておいたけど、彼女が間に合うかは半々ってところかな。だからこいつ等はボク一人で倒すくらいの気持ちでいこう。その為にはどこかで奴等の動揺を誘う必要がある。
べスティが操る魔物を捌きながらそこまで考える。時々傷を負いながらも、何とか最低限藁人形に魔法で移していく。
「ふむ、厄介だな」
「癒すだか治すだか知らねぇが、面倒くせぇ魔法だぜ!」
ジヒターとシャテンが苦々しい顔でボヤく。まあジヒターの顔は見えないから何となくだけど。
よし、もっと焦れ。感情を乱せ。視野を狭めろ。そうすれば必ずどこかで致命的な隙が生まれる。
そんなことを考えている時、シャテンがニヤリと笑った。
「でもよぉ。一発で仕留めればどうよぉ!」
『
ボクに掌を向けてそう唱えたシャテンの魔法を警戒しようと思った時には、トスンッと身体に軽い衝撃が走っていた。自分の体を見下ろすと、背後から鋭い影が胸部と腹部を貫いていた。
「かはっ、こふ」
その影はボクの影から伸びている。まさか他人の影まで操れるのか!?そんな情報は無かった!意図して隠していたのか、これまでは使うまでも無かったのか。
いや、それはどっちでも良い。奴等からするとこれは間違いなく大きな隙だ。傷自体は藁人形に移せば問題ないけど、このまま畳み掛けられるとまずい。
狙ったようにボクを囲んでいる魔物が一斉に襲いかかってきた。
くっ、ここで傷を移すか?……いや、魔物程度なら!
全身に魔力を巡らせて襲ってくる魔物を素手で殴り倒す。次々と来る魔物を10体以上倒した所で、後ろに大きく退がってなんとか態勢を立て直す。
「ふぅ、やっぱり苦手だなぁ
シャテンは相当自信がある攻撃だったのか。唖然とした顔をしていた。それにしても、大魔族レベルの奴が扱う魔法が、聞いていたものだけな訳がないか。魔族は生涯をかけて一つの魔法を研究するらしいし、当然色々な解釈・使い方をしてくるよね。
幸いにもシャテンの魔法の起こりは魔力探知で分かる。後はジヒターとべスティの魔法にも気をつけよう。思わぬ使い方で隙を突かれるかもしれない。今のは偶然窮地を抜け出せたけど、もう一度うまく行くかは分からないから。
それからしばらくの間、戦況は膠着状態が続いた。何度か危うい場面もあったけど、一進一退の攻防が続いている。
「…信じられんな」
「お前、本当に人間かよ!」
今もボロボロになった傷を治し(たように見せ)たことで、ジヒターとシャテンが思わずというように口に出した。
「確かにそうね。今の貴女、
二人に続いてべスティはニヤニヤと嫌な笑みを浮かべながらそう言った。
「……ふふふ、そうかもね」
シャテンとジヒターはともかく、べスティは多分ボクを動揺させようとしているのだろう。まあ確かにボクは魔族の肉体を持っているけど、自分を完全な魔族だとは思っていない。かと言って人間の精神を持っている自分は人間だとは口が裂けても言えない。人間の精神を持つ魔族。人間になろうとしている半端者だ。
でも。
ボクは
この世界の魔族は人間にとって絶対悪だ。分かり合うことはあり得ない。
だからこそ。
前世の知識とこの身体。ボクの全てを賭して人間らしく、人間を助ける為に生きる。真実は誰にも知らせずに。
それが力を持って生まれた半端者の、この世界を知る僕の、そして、友人と約束を交わしたボクの意志だ。
……とは言え正直、人に傷を移すのは嫌いだ。自分本位で誰かに苦しみを押し付けるなんて本当に
だから。
「なら今だけは、ボクは君達を殺す
「っ!」
そう言って殺気を込めて笑い返せば、べスティは無意識に一歩下がった。
……そろそろ時間だし、丁度いいかな。仕上げだ!
ボクは自身に身体強化をかけて奴等に向かって走り出す。これまでずっと待ちの姿勢だったボクが向かってくるとは思っていなかったのか奴等は慌てて迎え撃ってくる。
「ちぃっ!」
魔物を魔力弾で蹴散らしながら、一番近くに居たシャテンに殴りかかる。が、その右手はシャテンの足元から伸びた影に貫かれる。続けて左手をシャテンに向けて魔力弾を放つ。それも影を物質化させた防壁で防がれる。
まあ、いくら不意をついたとは言え、センスのないボクじゃあこんなものだよね。
そして、背後からシャテンと挟んでボクを狙っているジヒターをあえてスルーする。すると当然、背後から剣で胸を貫かれる。あーあ、これは致命傷だよ。
でも、これで。
「捕まえた」
『
すぐに剣が引き抜かれた傷をシャテンに移す。
「は?な、にが」
彼は何が起きたのかも理解出来ずに核を破壊され、すでに身体の先から灰になってきている筈だ。
ジヒターを見ると余裕が無いのか魔力が無いのか透明化は解けていた。丁度ボクと、シャテンが作った影の壁に遮られてシャテンの様子が見えないジヒターは、抜いた剣を右手で大きく振りかぶっていた。まあそう来るよね。これまでのボクならあの程度の致命傷は治してくると読んで直ぐに次の攻撃を始めている。
今彼の視点ではボクはこれまで通り傷を治したように見えているはずだ。実際はシャテンに移したんだけど。
その攻撃に対してボクはあえて相打ちになるように、身体強化の貫手でジヒターの心臓部の核を狙う。これによって致命傷が同時に二つ出来る。ジヒターはボクの貫手で殺し、べスティはボクに出来る傷を移して殺す。
「……あれ?」
と思っていたボクの貫手の腕が斬り飛ばされた。それによってジヒターに一方的に胸部をバッサリと斬られた。
そこで違和感に気付いたボクは、ジヒターの左手をよく見る。どうやら左手にもう一本剣を持っていて透明化させているようだ。なるほど、最初から二刀流だったのか。
「やるね。なら作戦変更」
『
ボクは胸に負った致命傷をジヒターに移した。
「な、ぜ。私は、確か、に」
そう言って倒れた彼はシャテンと同様に、身体の端から灰になっていく。それを確かめてから最後の一人、べスティに目を向ける。
これまで常に冷静だった彼女は、今や呆然とした様子でその場に立っていた。
「な、何が起きたの?シャテンもジヒターもやられた?今の一瞬で?いやそれよりあの魔法は?どういうこと?」
かなり動揺してるね。それはそうか。原作でも知ってたけど魔族にとっては魔法を偽るなんてあり得ないことなんだし。
「貴女まさか!私達を騙したの!?魔法を偽るなんて、魔法使いとして最低の行為よ!」
「面白いことを言うね。ボクは魔族以上の化け物なんでしょ?化け物のボクには魔法使いの理屈なんて理解できないんだよ」
「ひっ」
……さてと。
「ま、待って!来ないで!それ以上近付いたら私の魔法で魔物の大群を街に向かわせるわよ!」
ボクがべスティに一歩近付くとそんなことを言い出した。意外と周りが見えてるね。確かにボク
「にしても、やっぱり戦いはダメだね。一人で頑張ってはみたけど詰めが甘いし」
「な、何を言ってるの?私は本当にやるわよ!魔物は私を殺したとしても止められないわ!」
「それに、どうしても人を傷付けるのが耐えられないや。たとえ相手が魔族だとしても、罪悪感を覚えちゃう」
「お前達!街を「だから」っ!」
「後は頼むよ。
ゼーリエ」