転生大魔族は生き残りたい   作:Yk7

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4話

 

私達は、ニーエちゃんからの話を聞いてすぐに宿を出ると、村の中央にある広場に向かった。

 

何故その魔族は、問答無用で村を襲わなかったのだろうか。何か目的でもあるのか、はたまたただの気まぐれか。どちらにせよ好都合だ。

 

急いで広場にたどり着くと、そこには村の人が全員集まっていた。みんな一ヶ所に固まって、ある方向を険しい顔で見つめていた。

 

その視線を辿ると、十メートルほど離れた場所に一つの人影があった。

 

「これで全員かしら?たまたま見つけた村にこんなに人間がいるなんてラッキーだわ」

 

その女は頭の角以外は、人にそっくりな容姿をしていた。不気味なほどに動かない表情とは不釣り合いな声でそう言った。

 

これが、本物の()()か。

 

ボクが持つ魔族の眼が、奴の魔力から様々な情報を読み取っていく。

 

魔力量的には生まれて200年程度。ただ、その態度とは裏腹に勤勉に研鑽を積んだのだろう。非常に洗練されている。

 

でも、その目に浮かんでいるのは人間に対する驕りと油断。自分の実力に絶対の自信を持っている魔族の特性。

 

 

今なら、

 

 

多分殺せる。

 

 

 

ただ、この状況だと好きに動けない。周りに村のみんながいると巻き込んでしまうかも知れない。

 

擬態する魔法の開発に時間をかけたボクの攻撃手段は限られている。傷病を移す魔法か、単純に魔力弾を撃つかの二つしかない。傷病を移す魔法は使い慣れてないから、魔力弾でやるしかないんだけど。

 

どうやって、一対一の状況を作るか……。

 

そうだ。確か魔族とは一生をかけて魔法の研鑽を行うものだ。だから、相手が魔法使いだと分かると、自身の研鑽を証明する為に正面から向かってくる。みたいな生態だったはず。

 

その生態を利用すれば、何とかなるか?

 

そうと決まれば……

 

ボクは、覚悟を決めてゆっくりと歩いて人だかりを出る。

 

「──だと思うのよね。やっぱり子どもから食べるべきかしらぁ。ん?」

 

さっきから頭のおかしいことを言っていた奴は、自身の前に立つボクに気付いたのか言葉を止める。

 

「……フェルシュちゃん」「……お姉ちゃん」

 

村のみんなの動揺した声や、ニーエちゃんとエインちゃんの心配した声が耳に入る。

 

「ふーん、貴女、もしかして魔法使い?」

 

「そうだよ」

 

そう返すと、目を細めて観察するような視線を向けてくる。おそらくボクの制限した魔力を見ているのだろう。

 

「ごめんなさいねぇ。魔法使いにしては魔力が少な過ぎて、気付かなかったわ」

 

一通り舐めるように見てから、奴は心底嘲るように口を歪めてそう言った。どうやら魔力制限はしっかり作用しているようだ。舐めてくれる分には問題ない。

 

間合いに入りさえすれば、魔力弾で消し飛ばせる!

 

そう考えるや否や、ボクは奴に向かって走り出す。

 

 

 

 

ボクに負けるわけがないと思っている奴は、余裕の表情で何かの魔法を発動しようとしている。

 

 

 

大丈夫、魔法を使われるよりボクが撃つ方が早い!

 

 

 

魔力弾を練り上げた瞬間、奴の表情が変わる。

 

 

 

奴の余裕の笑みが崩れて怯えたような表情だ。

 

 

 

おそらくボクの魔力制限が解除されたのだろう。ボクの魔力制限はまだ練度が足りないから、余裕が無くなると解けてしまう。

 

 

 

でも、

 

 

これで、

 

 

殺った!!

 

 

 

ボクの右の掌から魔力弾が撃ち出される。

 

 

 

 

その瞬間。

 

 

 

 

 

偶然、怯えた彼女(やつ)と目が合った。

 

 

 

 

彼女は、音にならない声でこう言った。

 

 

 

 

「助けて、死にたくない」と。

 

 

 

 

それを見たボクの身体は、反射的に魔力弾を撃つのを止めていた。

 

次の瞬間、彼女の魔法が発動する。

 

空間を移動する魔法(ラウムウィゲン)

 

ボクの目の前から彼女が消える。

 

「クソ!」

 

行方を探すため、慌てて周りを見渡す。

 

「動くな!」「ひっ!」

 

彼女の鋭い警告が、村のみんなの人だかりから響いた。驚いてみんなが散り散りになると、そこにはエインちゃんを後ろから抱えた状態で、その小さい首に手を掛けている奴の姿があった。

 

「エイン!!」「お、お母さぁん!」

 

ニーエちゃんとエインちゃんの悲痛な叫び声が響く。

 

「他の人間も動くな!この娘がどうなっても良いのか!!」

 

やらかした!ボクがあの一瞬躊躇わなければ……!分かっていたはずだろ!この世界の魔族は、人を騙すために言葉を使うって!

 

「貴女っ、魔力を制限していたというの!?魔法使いの風上にもおけないヤツ!」

 

どうするどうするどうするどうする!

 

傷病を移す魔法を使う?いや、奴はもはやボクの魔法使いとしての実力は疑わないだろう!何か魔法を使う素振りを見せた時に、エインちゃんを傷付けない保証は無い!

 

何か、何か手は無いのか!?せめて少しでも動揺してくれれば!

 

「……ふふ、にしても、やっぱりこうすれば人間は手を出せなくなるのね。魔族の私には理解できないけれど」

 

………………魔族?そうだ、こうすればコイツを動揺させられる。でも、それをすると、ボクは……。

 

「うぐ、ひっぐ、お姉ちゃんっ」

 

迷っているボクの耳に、エインちゃんの泣いている声が聞こえた。

 

 

……もとよりこの状況はボクの所為だ。なら、ボクが責任を取るべきだ。それに何より、

 

 

ボクの大好きな勇者達(かれら)なら迷わずそうする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くくく、くはははははは!!!」

 

ボクの笑い声が、広場に響き渡る。

 

「何?いきなり笑い出して。気でも狂ったの?」

 

「いいやすまない。君の姿があまりに滑稽でね」

 

「何だって?」

 

「折角のボク、いや私の計画が台無しだ!」

 

そう言ってボクは、人類に擬態する魔法(マニミメーゼ)を解除した。

 

「なっ!」「え?」「おねえ、ちゃん?」

 

露わになったボクの本当の姿に、奴を含めた全員が言葉を失った。

 

「貴女、同族だったの?!それにこの魔力、一体どれだけ長い時を生きて…」

 

「私が長い時をかけて懐に潜り込み、大切に育てた人間に一人ずつネタバラシをして、絶望に染まったところを食おうと思っていたのだが…。こうなっては仕方ない!今ここで食うとしよう!特別に貴様にも分けてやろうか?」

 

ボクの言葉を聞くにつれて、村のみんなから怯えた視線を向けられる。小さい頃よく遊んでやった隣の兄ちゃんにも、よく一緒に畑仕事をした農家のおばさんにも。

 

……ははは、結構辛いなぁ、これ。でも、人間に優しい魔族が居ると思われると、後で取り返しのつかないことになるかも知れない。

 

「え、ええ。そうね!頂こうかしら!」

 

奴は、強敵が味方だったという安堵からか、その手に抱いていたエインちゃんを離して嬉しそうに答えた。

 

 

 

 

 

油断したな?

 

ボクは、魔力を込めた腕で自身の胸部を思いっきり貫く。魔力の核がある魔族の急所だ。肉体が霧散する前に魔法を使う。

 

傷病を移す魔法(モーデハイト)

 

気が付くと、ボクの胸の傷は綺麗さっぱり無くなっていた。代わりに、

 

「え?なん、で。わ、たし、が」

 

奴が心臓のあたりに穴を空けて崩れ落ちていた。何が起きたのか理解できない、というように目を白黒させながら、魔力となって朽ち果てていった。

 

完全に消え去ったのを確認したボクは、エインちゃんのもとに歩いていく。怪我はないか、怖い思いさせてごめんね、と今すぐ抱きしめたい気持ちを我慢する。

 

エインちゃんの頭を一度だけ撫でて、村のみんなを見回してから、言う。

 

「先程も言った通り、全員食ってやろうと思った。が、あの魔族の所為で興が削がれた。見逃してやる」

 

ゴクリ、と誰かが唾を呑む音が聞こえる。本当に信じて良いのか警戒しているのだろう。みんな遠巻きにボクのことを見ている。

 

少しでも気を抜けば泣き喚きそうだ。でも、彼等の為にも最後までやり通さないと。

 

「お姉ちゃん?」

 

事態をあまり分かっていなさそうなエインちゃんが声をかけてくる。

 

ボクはそれを無視して、飛行魔法を使って村から飛び出した。

 

最後まで、ニーエちゃんの顔を直視することが出来なかった。彼女から恐怖の感情を向けられたら、我慢できる気がしなかったから。

 




もしいきなり、人と似たような容姿をした言葉を理解する生物を殺してくださいと言われて、それが絶対悪だと知っていたとして、僅かな躊躇いもなく殺せますか。ってことです。
そう考えるとフリーレン世界の人類、メンタルバケモンやな。
いや、そもそもあっちの世界ではそれが普通なのか?ヒンメル達も魔族のヤバさを理解してからは躊躇なくなってたし。仮にも似た姿なのに。

主人公は戦闘技能の練度が足りない。作者は戦闘描写の練度が足りない。
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