今回、魔力による身体強化について、独自設定・独自解釈があります。
次の日、ボクはラフィの買い物に付き合っていた。彼女にとっては慣れた場所だろうに、まるで初めて来たと言わんばかりにはしゃいでいる。
ラボルトさんが、一緒に来ないか誘ったときに苦笑いで断ったのはそういう事だったのか。
結局ボクは、雑貨や魔導書に料理まで、あちこちを見て回る彼女に一日中振り回された。
日が暮れ始めた頃、ボクが道の端にあるベンチに腰掛けて休んでいると、いつの間にかどこかに行っていたラフィが、満面の笑顔で戻ってきた。
「フェルシュちゃん!これあげる!」
そう言って、彼女が手渡してきたのは、綺麗な翡翠色の水晶のネックレスだった。
「これは?」
「むふふ、私の瞳の色のネックレス、綺麗でしょ。友達の証だよ。エルフのフェルシュちゃんには、何か形に残るものがあった方が良いと思って」
「え、流石に悪いよ」
「大丈夫だって、そんなに高い物じゃないから」
「でも……」
言い淀むボクに、ラフィはニヤリと笑って言った。
「じゃあさ、私に魔法教えてよ!」
「え、……うーん、魔法、魔法か」
魔法……魔法…………魔力、そう言えばラフィ、魔法一発放つと魔力切れになるって言ってたな。
「なーんてね、流石に冗談だよ!……あれ?」
改めて、魔族であるボクの目で、ラフィのことを見てみる。確かに、彼女、魔力量が少ない。でもそれなら、
「おーい、フェルシュちゃん?聞こえてる〜?もしもーし」
「……よし、良いよ、ラフィ」
「え?マジ?」
「魔法っていうか、どっちかというと魔力操作の技能の一種だけど。それで良いなら教えてあげる」
「やった!それでも良いよ!お願い!!」
ボク達は、早く早くと急かすラフィにその技能を教えるために、宿の部屋に戻ってきた。
「ボクが教えるのは、魔力操作による身体強化だよ」
「身体強化?なんか凄そう!!」
ボクが500年間、魔法の開発をしていた時に気付いた、一つのこと。おそらく、魔法使いではない人間も無意識的に魔力操作を行なっている。特に、戦いを生業にしているものは。
このことに気付いたのは、原作に登場した魔族、リーニエの発言によるものだ。リーニエの魔法、
それと、フリーレンの言葉で、将軍という魔族の戦士は、魔力で身体能力を強化して武術を操るとあった。
これらのことから、ボクは魔力による身体強化ができると考え、実際に試した結果、可能だと分かった。まあ、ボクには向かなかったのか、あまり得意じゃないのだけれど。
「ラフィは魔法が使えるから、魔力の感覚は分かるよね?」
「うん、何となくだけど」
「その魔力を操作して全身を強化する。これが身体強化」
「おお!なんかぐわっ!って来てるよ」
実際にラフィの前でやってみせると、認識できているのかできていないのかよく分からないことを言っている。
「これ自体はラフィも普段、無意識で出来ていると思う。でも今回は、これを意識してするんだ。それが出来れば、攻撃の時に威力を上げたり、逆に相手の攻撃を受ける時に防御力を上げたり出来る。そして何より……魔力の消費がほとんどない!」
「おおおおお!!やってみる!!…………むむむむむ、こう!せい!やあ!はあ!」
「声は出さなくて良いよ……」
とは言ったものの、すごいな。ラフィ、たったあれだけの説明で、微かにだけど魔力を動かせている。
それから1時間ほど、ああでもないこうでもないと言いながら練習したラフィは、
「はぁ、はぁ、出来た!!はぁ、はぁ」
汗だくで疲弊していながらも、彼女の全身を滑らかに魔力が巡っている。本当に出来てる……。もしやラフィ、天才なのでは?
そんなことを考えていると、部屋のドアがノックされた。
「おーい、お二人さん起きてるか?そろそろ下で夕飯でも食わないか?」
どうやらラボルトさんのようだ。
「そうだ!自慢してくる!!」
そう言ったラフィは、ドアを開けようと一歩踏み出す。
「あ、ちょっとまっt」バゴン!「ぐえっ」ドンガッシャーン!
そのままドアに突っ込んで破壊し、ラボルトさんを巻き込みながら廊下に出ていった。遅かったか。意識的に強化すると加減が難しいんだよね……。
壊したドアはラフィが弁償した。
──1ヶ月後──
そんなこんなで、イスアンに来てから一ヶ月が経っていた。この一ヶ月、ラフィに身体強化の特訓をしたり、一緒に運搬依頼の護衛をしたり、様々なことがあった。
今ではラフィは、身体強化を色々試行錯誤して自分で試すようになった。何やら熱心にノートにメモを取っていたが、聞いてみると忘れないように気付いたことや、コツについて書いているらしい。
そういえば、ラフィに教えるついでに、ラボルトにも身体強化を教えたんだけど、「魔力を、動かす?感覚が分からん」ってな感じで諦めていた。
基本ずっとラフィに振り回されていたけれど、そのおかげ?でラボルトとカフトとも仲良くなれたし、本当にあっという間だったな。
ラフィに身体強化を教えるのもひと段落した頃、ボクはそろそろ旅を続けることにした。
「うう、フェルシュちゃん!離れ離れでも私達は友達だから!」
見送りに来たラフィは、そう言ってボクを抱きしめる。ずいぶんと大袈裟だなぁ。
……いや、そうでも無いのか、もう会えないかも知れないんだし。そう思うと少し泣けてきた。ボクも彼女の背に腕を回して抱きしめ返す。
「私のこと忘れそうになっても、ネックレスを見て思い出してね!」
「ははは、ラフィみたいな子、忘れたくても忘れられないよ」
ボクとラフィはしばらくの間、抱きしめ合っていた。
「あの二人ってなんだかんだめちゃくちゃ仲良いよな」
「ラフィニアと仲良くなれないやつの方が珍しいだろ」
「そういう事じゃなくて!特にって事だよ!特に!」
ラボルトとカフトが少し離れた場所で何か話していた。思えば二人にもかなりお世話になった。
「二人も!この一ヶ月ありがとう!」
「おう!」「達者でな」
「じゃあ、そろそろ行くね」
ゆっくりと身体を離してラフィに言う。
「うん」
「それじゃあ、ばいばい」
ボクは、そう言って彼女に背を向けて歩き出した。
これから先、どんな旅になるのかな。
ちなみにラフィニアさんですが、時代が時代なら勇者と呼ばれるくらいには天才です()
次回は間話にするかも