ドイツ語をもとに色々な名前を決めていたのが仇になりました。まさか一字一句被るとは……。原作のファルシュさん結構良い感じのポジションにいたので、もしかして気付いてる方いました?何かの伏線かとお思いの方がいたらすみません。作者のガバです。
農業の街イスアンを出てから一週間、そろそろ持っている保存食が底を尽きそうだ。村かどこかに寄って買い足したいところだね。
それに、目的の一つでもある魔法の研究もしないとなぁ。出来ればイスアンみたいな大きい街じゃなくて、森とかが近くにある村とかならひっそり研究しやすいんだけど。この辺りに村ってあるのかな?
「おっと、分かれ道だ」
そんなことを考えながら歩いていたら、目の前に二本に分かれた道があった。左に行くと道に面していた森の中に入っていくみたいだ。逆に右の道は、このまま広原を抜けていくらしい。
「うーん、どっちが良いかなぁ?」
「ちょっと待ちなぁ、嬢ちゃん」「そうだ!待てぃ!」
「ん?」
ボクがどっちに行くか悩んでいたら、いきなり横から声をかけられた。そちらに目をやると、いかにも小悪党ですって感じの顔をした背の高い男と、その子分ですって感じの小太りで背の低い男がいた。見た目も所々破れてボロボロだし、話し方もそれっぽい。
もしかして、いや間違いない!彼等は!この魔族が蔓延るフリーレン世界では激レアな人種!
盗賊だ!
「この森に続く道は村に繋がってるんだぜぇ。今この瞬間まではその村に行こうとしてたんだがよぉ、」
兄貴分の男がそんなことを言い出した。もしかしてその村を襲おうと!?
「こんなところに嬢ちゃんみたいな旅人さんが通りかかるたぁツイてるぜ」
まさかボクを標的に!?くっ、こうなったら仕方ない、本当は嫌だけど、戦うしか……。
「お願いします!どうか助けて下さい!!」「下さい!!」
「……は?」
ボクはてっきり襲いかかってくると思っていたので、二人並んで綺麗な土下座をかましてきたことに、思考が追いつかなかった。
どうやら詳しく話を聞いてみると、彼等、バンディとデイブ(兄貴分がバンディ)も道中で食料が切れたらしく、森の中の村で補給をしようとした。しかし、村に辿り着くまでの道のりで、魔物の群れに襲われてしまい、泣く泣く退散したらしい。森の入り口まで逃げてきた彼等は、途方に暮れていたところでボクが通りかかった、と。どうやらそういうことらしい。だから装備もボロかったのか。
色々言いたいことがあるけど、とりあえず、
「なんかごめん」
ボクは、人を見た目で判断するのは良くないと深く反省した。
結局、ボク自身も補給がしたいということで、一緒に村に向かうことにした。そういえば、何故ボクを頼ったのかを聞いてみた。自分で言うのもアレだけど、ボクはそこまで強そうな見た目じゃないと思うんだけど。
「そりゃあお前、こんなご時世に女の身で一人旅なんざ、よっぽど強くねぇと無理ってもんだ」
「魔物がいますもんね!兄貴!」
「おうよ、それに何より、嬢ちゃん、エルフだろ?エルフは見た目通りの歳じゃねぇからな。頼りになるって思ったのさ」
なるほど、意外とちゃんとした理由だった。
そんな感じで、村への道のりを三人で歩いていると、魔物の魔力を感じた。これは、多いね。
「二人とも、来るよ」
そう言うや否や、目の前に大きな猪のような魔物が姿を現した。
「へっ、出やがったな」
バンディはそう言って、腰に差してあった剣を抜き放った。その勢いのまま剣を振り回し始めた。威嚇かな?
「見てなデイブ、この俺の勇姿を!」「はいっす兄貴!」
ヒュンヒュンヒュンヒュヒュンヒュンガスッ!
あ。やけに大袈裟に振り回していた剣が、近くにあった木の幹に深く切り込んだ。
「……ふんっ!ぬう!うおおおお!」
必死に抜こうと引っ張っているが、どうやら抜けないらしい。
「…………は!テメェなんざ剣を使うまでもねぇってこった。この拳さえ有ればなぁ!殴り殺してやる!!」「流石っす兄貴!」
「えぇ……」
なんだか、凄い人たちだなぁ。
「デイブ、さんは戦わないの?」
「デイブで良いっすよ。オイラは弓を使うんすけど、さっき二人で入った時に魔物に壊されてしまったんすよ」
……こいつらやる気あるのかな。とか思いつつも、バンディは本当に一匹殴り殺せそうだし。
でも、流石に二人(一人)だけじゃ無理だね。数が多いし、実際バンディが囲まれそうだ。
「はぁぁ、もう、仕方ないなぁ」
ため息を吐いたボクは、手を前に突き出す。魔力を収束させて撃ち出すと、一気に複数体の大口猪を倒した。
ボクは、ラフィに身体強化を教える傍ら、自身の魔力操作の修行もしていたんだ!そのおかげで前よりも精密に魔力弾を扱えるようになったんだ。
ドスンッ!
「はぁ、はぁ、これで全部か」「流石っす兄貴!」
傷だらけになりながら大口猪を倒したバンディが、息を整えながら言った。
「ほとんどボクがやったんだけどねー」
ボクが、ジト目でそう言うと、彼等はボクに苦笑いを向けてきた。
「ああ、見てたよ。嬢ちゃん、やっぱりすげぇ強かったんだな。本当に助かったぜ、ありがとよ」「ありがとうっす!」
「まあついでだったから良いんだけどね。それじゃあ、村に行こうよ」
「そうだな」
そう言って先導し始めた彼等の後ろを、ボクは大人しくついていった。
「ようこそお越しくださいました。道中に魔物は居ませんでしたか?」
ボク達が村に着くと、村長らしき老婆が出迎えてくれた。
「魔物なら俺達が倒してきたぜ」
「それはそれは、誠にありがとうございます。その魔物の所為で物資の補給が滞っており、ちょうど困っていたのです」
バンディが説明すると、老婆は感謝の言葉を口にした。
「魔物を倒して頂いたお礼をさせて下され。何か欲しい物があれば出来る限り用意しましょう」
「なら、食糧を少しくれねぇか?その為にこの村に寄ったんでな」
「できれば長持ちする物が嬉しいっす!」
「ボクも彼等と同じかな」
「そういうことでしたら問題ありません。ご用意いたしましょう」
「あー、それと魔物との戦いで怪我しちまってよぉ。どこかに薬屋ってあるか?」
バンディは、少し申し訳なさそうにそう付け加えた。確かに彼はボロボロになっている。でも逆に、魔物と正面から殴り合ってその程度で済んでるのはすごいね。
「……申し訳ございません。先程申し上げた補給が滞っている物資というのが、実は薬の類でして。現在この村には薬が無いのです。今からイスアンに依頼すれば五日後には届くと思われますが」
「あちゃー、そうか。それは仕方ねぇなぁ。先を急ぎてぇ所だったが、この怪我で無理するわけにもいかねぇ。婆さん、ここで五日くらい世話んなるぜぇ」
「了解しました。宿にご案内します。ごゆっくりなさって下され」
三人で宿に向かっている中で、ボクは物思いに耽っていた。
怪我……傷、か。ボクの魔法なら、おそらく簡単に治すことが出来るのかも知れない。ただ、正確に言うと治すというより移す、だ。そうなると必然、別の誰かが傷付くことになる。それは嫌だ。
そうなると、ボク自身に移すしか選択肢がない。ボクが傷付けば人を助けられる、それはまだ良い。嫌だけど。普通に嫌だけど、まだ我慢出来る。
でもそれをした場合、他人にボクの魔法が傷を移すものだと知られる可能性がある。そうなると目立つし何より、普通の人は他人に傷を移してまで助かったとして嬉しいだろうか。嬉しくないことをして、本当に助けたと言えるのか。
いや、待てよ。そもそも、ボクはこれまで傷を移したのは、魔族に使ったあの一度しかない。その時も致命傷を移したから、負傷程度の傷を移したことはない。
それに、魔族の身体は人間の体より遥かに丈夫だ。その上でエルフに擬態している。実際に傷を移した場合、どうなるのか予想が付かない。もしかしたら、ボクに移したところで何の問題もないかも知れない。
どうしよう。どうしたら良いのだろう。
そんな風に悩んで視線を下げると、翡翠色が目に入った。
それは、ラフィからもらったネックレスだった。
『フェルシュちゃんは間違いなく、誰かのことを救える優しい人だ』
「……ラフィはずるいなぁ。友達にそんなこと言われたら期待に応えたい、って思っちゃうじゃん」
どっちにしろ、魔法の研究の為には、実際に使ってみるつもりだったしね!実践することでしか分からないこともある!
「ねぇ、バンディ。その傷、ボクが治してあげようか。ボクの魔法で」
そうしようと決めたボクは、宿に向けて前を歩く彼に、そう声をかけた。
思ったより文字多くなっちゃった。次回まだゼーリエ様出せないかも……。