FREEDOM WARSー英雄の翼   作:Luegner

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違和感

「午後は座学だね」

 

適正訓練と昼食の途中ーーもちろんアタシはサシャに押し付けたがーー対面に座るクリスタがそう切り出した。

 

「座学ね…

さぼるわけにもいかねーしな」

 

クリスタの隣でユミルが不機嫌そうに頬杖をついてそう愚痴る。

一方でアタシの隣のサシャは幸せそうに飯を頬張っている。

 

ー幸せそうな奴…

 

膨らんだサシャの頬を人差し指で突っつきながら、周りの視線が集まる方向を一瞥した。

どよんと淀みを錯覚するほどに暗い雰囲気の中心にいるのはエレンーー暗いというよりかは放心しているともとれるが。

 

「できねー奴はできねーもんだな」

 

「そ、そんな言い方は」

 

ボソッと毒吐くユミルを遠慮がちにクリスタが抑える。

周りの噂好きの小言に聞き耳を立てた感じでは、巨人には勝てるとそう豪語した上憲兵団志望のジャン・キルシュタインと揉めたらしい、それであのザマというわけか。

 

「…なーんか違和感あんだよなァ」

 

人間関係云々ではなくあの失敗の仕方にだ。

生憎とキースは最初もう一人の方に目を向けていたからか気づいていないのであろう。

エレンが一瞬ふらつきながらもバランスを保っていたことを。

 

「違和感?」

 

小首を傾げて聞いてくるクリスタにアタシは気にするなと首を振って応えた。

 

ちなみに昼を誘おうと思ったアニからは避けられた。

次は逃さない。

 

ーーー

 

座学の時間。

まだ最初の時間のためか常識的な部分での人類の歴史や現状に触れた授業となっていて、理解に苦しむことこそないが、それでも全くのゼロから知識を与えれ吸収する必要があるとなると相当に面倒だ。

 

ー規律と得物の振り方さえおぼえりゃなんとかなるだけあっちのがマシかもな。

 

記憶を失っても身に染みた体の動かし方や場の空気の読み方でなんとかこなせたが、こっちで覚えるべきことはたくさんありそうだ。

常識を持たないまま戦場に出て何が起きるかわからない。

確かにアタシの目的は元の世界に戻ることだが、そのためにこちらの世界の人間を殺すことはしない、したくない。

 

ーだからって、ここまで違うもんかよ…

 

技術や習慣までも異なる、読んで字が如く異世界の常識を身につけるのに多大な時間が必要そうだと、アタシは密かにため息を吐いた。

 

ーーー

 

座学と晩食を終えひとまずの自由時間となり、クリスタは自身の部屋着とタオルを持ったまま女子寮の部屋でキョロキョロの辺りを見回していた。

 

「どうかしましたか?」

 

「どうした?

風呂に行くならとっとと行こうぜ」

 

待ちかねているかのように同じく部屋着とタオルを持ったサシャとユミルがそう声をかけた。

 

「う、うん…そうだね。

他の人とも行きたかったんだけどな…」

 

「あいつらか?

チビ女は芋女に飯渡したらすぐどっか消えるし、あのアニとかいうやつも他人に興味ねーって感じなんだから無理だろ」

 

ユミルにそう諭されついに諦めたのかクリスタは二人と共に風呂場に向かった。

 

ーーー

 

ーあれは…ミカサ達か。

 

晩飯のあと外をぶらついていると、午前適正検査をした場所に三人組の姿を遠目に見つけた。

ミカサと共にいるのは確かエレンとアルミンだ。

大方、派手にひっくり返ったエレンの練習に付き合っているのだろう。

 

午前中に見たときの違和感の正体を知ろうと思い、アタシはそのまま木陰に隠れながらそちらを伺うことにした。

 

レバーが回され持ち上がるエレン。

最初こそ不安定ながらに体制を保つが少し経つと派手にひっくり返る。

頭を思いっきり打ったエレンに二人は駆け寄り起き上がらせている。

 

ー違和感の正体は最初の安定している状態か…

重心の取り方に少し慣れずにふらつきこそ見せるが、その途中で一気に崩れる。

 

想像するならば小さな穴がそこから少し離れたところにある、そこの丸い器だろうか。

そこに小球をいれれば、小球はそこに向かって落ちその勢いで反対側に登りまた落ちる。

それを繰り返しそこにたどり着くのが普通だが、ある一点--穴の開いた箇所を通ってしまうと器から出てしまう、そんな感じだ。

 

繊細な重心の取り方が重要だと言えばそこまでだが、そこまで繊細ならば成功する人数が極めて少なくなる。

しかしふらつきこそは見せても成功と判断される者は少なくなかった。

つまりエレンにのみ何かしらの原因がー

 

「…誰?」

 

小さく、しかし通る声に思考が中断される。

即座にその場から離れ遠くへと向かう。

わざわざ追いかける真似はしないだろう、敵意や害意を感じ取ったわけではないのだろうから。

やましいことがあるわけではないが、出て行ったところで話すことがない上三人のうち二人とは初対面だ、まだ接触しようとは思えない。

 

声の持ち主はミカサだった。

別に隠密行動に自信があるとは言わないがまさかあれほどの距離でアタシの気配を感じるとは…

 

「怖い怖い…ありャ敵に回さねェ方が良さそうだ。

あァっと、この違和感キースには伝えておくべきか」

 

アタシはそのまま足を教官室へ向けて進めた。

 

ー--

 

月の光だけを受けて静かに光る銀色は昨日と同じで高い。

 

薄く開けた視界の端でそれを捉えるが、やはりどうでもいいと私は壁の方に体を向けた。

 




おひさしぶりです、かなり久しぶりの投稿です。
そのくせ短いとか自分でも思います、はい。

恐らく短編集を除いて出している作品の中で一番人気の低い作品ですけど書くのは楽しいんですよね、どうせストーリーは早めに切るしというのもありますが完全オリ主なので新鮮味があって楽しかったりします。

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