独房に戻り、アタシは独房で待たせていた協汎者(アクセサリ)に声をかける。
「よぉ待たせたなリスィ」
「お待ちしていましたレイ」
ー無機質なもんだないつ聞いても。
今回の記憶喪失の時には同時にアクセサリも大破させたらしく、第一情報位として再出発した際に新たにつけられたアクセなので、最初の頃はそれこそ酷い対応だった。
ーそれに比べりゃまだマシか。
それに多少は表情も分かる様になったしな。
そう思い直してから、独房内の硬いベッドに座る。
硬いとは思うものの不満は一切ないが。
「ユリアンが発行したボランティアの概要を」
そう言うのと合わせて現れるディスプレイを手に取り特別ボランティアの項目を調べる。
『シ000第弐型Will'oドライブ試用運転実験』
ボランティアが多く障害物の多い放置市街区でのボランティア。
諜報部とやらによると敵影は無いらしい。
そこでアタシは第弐型Will'oドライブの試用運転をすればいいらしい。
一通りの動きをこなし、その感想を随時アクセサリに報告し、一定の情報が集まれば終了。
ボランティア内容に目を通したアタシは次にそのWill'oドライブの概要に目を通した。
と、言っても咎人ーいや今は二級市民かーなんかに構造を教えるわけはなく、ただの変更点を大雑把に書かれているだけだった。
いままで二本だったWill'oドライブを三本にし、Will'oの蓄積量と変換効率の向上に成功。
一本あたりの重さは従来の八割の重さとなったため、大きく重量がましたわけでは無いが、三本となったため重心が不安定となった模様。
対策としてはWill'oドライブの着脱可能とさせたこと。
本来外れた時に襲ってくる激痛は大きく軽減はされているらしい。
三本とも着脱後の管理は徹底的に行う様厳重注意がなされていた。
そして目玉の武器及び戦闘用アイテムの保管料についても記載されて居る。
武器は各種類につき一つという制限下でのみ六つの携帯が可能、しかし回収した武器は即座に他の資源と同じ様に転送される。
戦闘用アイテムは持ち運べる種類は変わらないが数は二倍になるらしい。
「強すぎねーかこれ」
思わず零したアタシの声はどうやら聞き逃さなかった様で、律儀にリスィが答えた。
「馴れない重点の移動が原因で、実験に参加した咎人の大半は荊での移動中にバランスを崩し、不時着などでの損傷が見られます」
ーそら、不採用食らうわな。
どれだけ多彩な作戦を立てられようと、どれだけ予備の道具が持てようと、それを使う咎人の機動力を大きく削いでは意味が無い。
MG-M7などのガトリングなどを持つ援護目的の機動力に重きを置かない戦い方ならば、それこそ全種類一つずつと言うハンデ付きのものは使わない。
ならばーこれを使うならどのような戦い方をアタシならする?
相手の距離で変えるべきか、遠距離のまま攻めるのならガトリングなりランチャーなりをぶっ放す。
距離を詰めるなら個人携帯火器で威嚇射撃しながらーいや小剣をもって回避行動しながらってのもありか、それなら近づいた後そのまま斬りかかることも出来るしな。
槍はー投げる?いやいや普通のじゃなくてエクソダスなら振り回しやすいし、槍なら飛べるしなほんの少し。
そのまま真下に落ちるのも背後を取るのもありだしな。
作戦を練りつつも武器を次々と決めていく。
結果として、小剣は威力アップのモジュラーが上手くついたダマスカス派生のブロンラヴィン。
槍はエクソダス派生のエクソダス7500。
大剣は残影派生の残影迅雷ー見た目で気に入ってしまい、Will'o極振りで作り上げてしまったのをそのまま入れただけだが。
個人携帯火器はSR-42/LA派生のSR-42/Customーバーバラで近接射撃やカッツェで距離を縮めながらもありだとは感じたが、全体のバランスを考えてこちらにしておいた。
多目的火器はAAW-M2の派生のAAW-M3/ED。
そして分隊支援火器はクリーミー・スクリーミーJrの派生のキスキス・バンバン、氷に極振りしてある。
「んだよ文句あっか?」
どことなく冷やかな視線を送ってくるリスィに吐く。
それをリスィは話しかけられたと認知したらしく、言葉を返してきた。
「平常時のレイであらば趣味で作った残影ならびにキスキス・バンバンをボランティアに持ち込むことは少ないと認知しております」
ーつまり、なんで持っていくのか聞きたいわけだ、言い方の回りくどい奴。
「敵影がねぇってんならこーいうの持っていって実射訓練を兼ねた方が効率がいい。
それに基本的にはソロなら近接とバーバラ、他のPTと一緒ならヘイト稼ぎと前衛で近接二つが多いからな。
そーなっと使う機会はすくねーわけだ」
「把握しました」
そう言うとリスィは黙る。
おおかたわざわざ記録しているのだろう。
その間に今度は戦闘用アイテムをぱっぱと決めていく。
ファストエイドをラージと普通のをそれぞれ入れラージAMMOパックをいれる。
いつもならここでアドレナリンかサプレッサーを入れるのだが、敵影がないのならファストエイドの保険としての持ち込みはともかく、その二つ入らないと思い、代わりにスラスターボードをいれる。
あとは荊をいつも前衛として使っている捕縛のものから治療のものに変え、全ての準備を終えた。
「行くぞリスィ」
「はい」
傍に佇む協汎者に声をかけ、それが返って来るのを確認したアタシは、独房の扉に手をかけた。
ーッ!?
瞬間、体を襲う違和感にアタシはなんの声も出せなかった、それどころではなく体もピクリとも動かない。
唯一動かせた目でリスィの方を見やるが、おそらく同じ状況だ。
そうーまるで時間が止まったかのように。
それを確認したアタシは、ドッと安心した。
頬を柔らかい感触が襲う。
それと同時にアタシだけ時間が動き始めた。
アタシはすぐさま柔らかい感触を与えてきた方を見ると、予想していた人物が立っていた。
「やぁ、元気にしてるかナ」
「何時もにまして唐突だなアリエス」
アタシの呆れた声を聞いて少し申し訳なさそうに笑ったこの少女ーアリエス・Mは生死の狭間の幽界とかいう世界でのみ会えるらしい少女。
普通はそれを認識出来ないらしいが、記憶喪失することになった瀕死まで追い込まれたあの一撃を食らった際に、どうもアタシにはそれが認識できるようになったらしく、彼女に目をかけられることになった。
未だ正体は不明だが、助けられた恩もありアタシとしては信じている。
「今回はネ、ちょっと緊急の用事があるんダヨ」
「緊急?」
「そウ、とても重要な用件がネ」
「いまからサイモンのところに行けばいいのか?」
緊急で重要とあらばサイモンが呼んでいるとかそんなところだろうと思い、そう聞くがアリエスは首を振って否定した。
「ううん、違うヨ。
今回は警告をしに来たノ」
警告をわざわざしてくるような事案を頭に思い浮かべ、それを口に出す。
「柩関連か天獄か?」
またもアリエスは首を振る。
「サイモンが言うにはネ。
世界の境界が曖昧になっているって言ってたヨ。
たまにあるらしいンだけど、今回はそれが強いらしいヨ」
いつもなら何か含みのある言い方ー答えを知っているかのような言い方ってのが言い得てんなーそんな言い方をするアリエスにしては、本当にわからないかのような言い方だった。
「とりあえず気をつけろってこったろ?」
よくわからないが、警告をしてくるならば気をつけるに越したことはないはずだ。
何に対してかすらよくわからないが。
「うん、そんーかんーでーーしくー
」
突然視界がぼやけ、アリエスの体が波打つ、声も途切れ途切れにしか聞こえなくなるが、すぐにそのぼやけは焦点を合わせて元に戻る。
「あはは、やっパ起きてる時に無理やりやると回線が悪いみたいだネ。
次会うときは寝てる時にしようかナ」
と、一方的に言うだけ言ってアリエスは最後に、アタシをこの世界に引っ張ったのと同じ行動を、今度はアタシの口にする。
「大丈夫ですか、レイ」
「ん、あぁ…」
生返事を返すと、リスィはアタシの顔を覗き込んだ。
「多少の意識の混濁が見受けられます。
適切な食事が健康的な体でのボランティアに繋がります。
ガソリンでの食事は控えることを推奨します」
機械じみたーまぁ実際機械なのだが、そんなリスィの言葉に苦笑いで返す。
確かにアタシとしてもあの食事の濃さは少しくるものがある。
アタシは薄い薄いと言われがちだが、PT内で配給される食事に満足しているのだ。
「このボランティア終わった後にマティアスと飲む約束してんだよ。
それ以降は控える」
「わかりました」
短く約束を取り付け、アタシはボランティアを行う放置市街区へ向かった。
こ、今回も進撃に触れていない…
な、なるべく早く進撃との絡みを出そうと思ってますので、どうかご辛抱を…