FREEDOM WARSー英雄の翼   作:Luegner

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急襲

 

「ボランティアを開始してください」

 

「あいよ」

 

短いやり取りで意思の疎通を確認する。

諜報部とやらの報告通り人の影のない放置市街区。

砂塵が舞い上がる中、アタシは小さく一呼吸おいた。

 

小さく二度ほど跳び、着地すると同時にまずは軽く走り出した。

徐々にその速さを上げていく。

気持ち的にだが、やや前のものよりも後ろに引かれる感覚と、脚には多少強めに負担を感じる。

まぁあくまで小さい差しかない上、咎人にそんな小さい差を気にする繊細な奴はほとんどいない。

 

ー荊で飛ぶ前に武器の出し入れを確認しておくか。

 

あらかじめ出していたエクソダス7500を地面に突き刺し急ブレーキとターンを同時にこなす。

その一挙動で、アタシのしようとしていることを察したリスィはそのままアタシに近づくのではなく、迂回して近づいてくる。

それを確認したアタシはエクソダス7500を引き抜き自らの腕の延長にそのまま伸ばし、意識をプロンラヴィンにシフトする。

 

手になれた感覚を感じるとすぐに、それを目の前にいると仮定した敵に振るう。

一通り振り終わり、武器を残影迅雷に変える。

意識したのと同時にWill'oが発生し、その武器が現れる。

そこにアタシが違和感を感じるほどの誤差はない。

 

その繰り返しで、ある程度の組み合わせを何度かやってみたが、違和感はなくいつものWill'oドライブとなんら変わりがなかった。

 

「武器の装着に関してはこれくらいで大丈夫か?」

 

傍でずっと見守っていたリスィにそう聞く。

 

「えぇ、確認したところ作戦に不備の出る誤差は検出されていません」

 

それを確認してアタシは一呼吸つき、右手にある建物を睨む。

そして荊を放つ。

付いた。

 

これも改良の成果なのか、普段使っているものよりか気持ち速度が速く感じる。

 

ーさて、問題は…

 

勢いよく荊を回収し飛ぶ。

 

「っ!?」

 

その瞬間、慣れぬ不安に駆られる。

 

ーあぁそういうことか…

 

呑気にそんなことを考えながらも、冷静に判断するアタシもいた。

 

重さの変化で軌道が狂ってる。

いつもの荊での軌道なら、上半身が真っ先に引っ張られる。

そしてアタシ達はそれに合わせて力を抜いていた。

しかし、Will'oドライブの重さが変わり、アタシ達の重心はやや後ろに変わり、そしてその態勢を整えるために自然と前のめりに力が入っていたのだろう。

引っ張られる際、一瞬だが地面に足を引かれた。

それが原因となり、今の飛んでいる体勢がいつもと異なり不安定で、ここで慌てていたら報告にあったように壁にぶつかるのも納得できる。

 

ーだがっ!

 

「っ!」

 

荊を装着している腕を、振り下ろしの動作をかけることで足と足の間に持っていく。

というよりかは、その動きを無理やりとって下半身を進行方向に持って行ったというのが正しいだろう。

壁に張り付くと同時に荊を外し、軽く足で壁を蹴る。

空中で一回転をして、視界がその壁のさらに高い位置を捉えると、再度そこに目掛けて荊を発出し飛んだ。

空中では引っかかる地面も無いので、普段と同じ動きで壁に張り付けた。

 

それから、自然と前のめりに力が入っていることを認識した上で地面や空中から壁へ、また地面や空中から地面へとを繰り返しで体に新しいWill'oドライブでの荊移動を飲み込ませた。

 

ーーー

 

「これで一通りの動きは完了か?」

 

「えぇ、ボランティア終了です」

 

それを聞いてレイは肩の力を抜く。

使い慣れぬWill'oドライブの試験運転ということもあり、頭を力を使っていたらしい。

 

「とっとと帰っちまうか」

 

脳裏に残るナタリアの忠告を受け、レイは早々と護送車に向かった。

 

レイは知っていた。

物事がそれほどまで上手くいかないことを。

 

「所属不明の咎人の転送を感知しました」

 

遠くで響く爆音、それがレイの耳に届くと同時に目の前に青い光が浮かんだ。

 

ー護送車が爆破されたか。

廃棄市街地とはいえ、ここはPTから近いはずだが…

それに敵影はないんじゃねェのかよ!

 

「チッ、戦闘に入る。

PTとナタリアに連絡入れとけ」

 

レイはSR-42/Customを出し、まだ跡絶えぬ青い光に向けて構えた。

そして彼女はスコープの中に見た。

何時ぞやのセルガーデンで襲ってきた咎人と同じ兵装を。

 

「リスィ!

ナタリアにだけ伝えろ!

敵対勢力は無い!」

 

ブランクーPT上層部に飼われた咎人達の名称だったはずだ。

視界に入るのは4対の咎人とアクセサリのペア。

 

敵はうちに潜むとでも言うべきか、奴らの目的はレイの持つ棺に関する情報だろう。

殺しにかかってきはしないだろうが彼女はソロで来ている。

非常に部が悪い。

 

それにナタリアにそれを伝えるにしろブランクと言うと流石に通信を監視している上層部に丸分かりになってしまう。

この言葉で察してくれりゃいいんだが、と彼女は少し不安を抱える。

 

スコープに写った咎人を撃ち抜く。

2人程ヘッドショットで撃ち抜くと、相手側も長距離武器を構え、そして一部は近距離武器を構え、荊を放つ構えをとっている。

 

「遅ェ!」

 

レイはAAW-M3/EDを出し、一発を敵にもう一発は敵とレイとの中間に撃つ。

爆風と土埃の中を、ミサイル弾や銃弾が分け入る。

 

しかし、それらはレイを喰らうことはない。

レイは既にそこにいない。

 

爆風を晴らしたのは壁へ向かい弾丸の如く飛ぶレイの体であった。

それに気付き、遠距離武器の銃口を追わせるも、それも遅い。

壁に張り付くか張り付かないかのすんでのところで、彼女は壁を蹴りブランクの前方上空に舞い上がる。

 

ブランクの咎人とアクセサリの視界に入るのは奇形の銃口。

視界は白に染まる。

そしてその1人が蜘蛛の巣に絡め取られた。

 

レイはキスキス・バンバンをしまい、プロンラヴィンを構え、身動きの取れないアクセサリを荊で捉え、切り裂く。

近距離武器を構えた咎人がその得物を振るうが、それより先にレイのエクソダス7500の穂先がそれらを切り裂く。

残った遠距離武器を構え呆然としている咎人をレイは残影迅雷で切り倒す。

最後残ったアクセサリが持っていた遠距離武器の銃口をレイに向ける。

そのことをレイは感知していたが、何も行動を起こさなかった。

否、起こす必要がないと判断していた。

 

アクセサリが遠距離武器の引き金を引くよりも先に銃声が響き、アクセサリは倒れた。

 

「いい狙いだリスィ」

 

最初に居た位置でSR-42/LAを構えていたリスィが、そのスコープから顔を外す。

 

「増援を感知しました」

 

「チッ、位置は!?」

 

「レイの現在地及び向きから観測し、二時の方向三メートルに出現します」

 

レイが言われた方を向くと確かにWill'oでの転移の際に放たれる青い光が薄っすらとその存在を現してきた。

 

ーこの距離ならッ!

 

レイは構えを取り呼吸を整える。

残影迅雷を左腰に当て、光を帯び始める。

リスィもまた、無言でSR-42/LAを構え直す。

光が薄れ、その中から人の影が現れ、それが各々の得物を構えてレイの姿を認知するよりも速く、それらの中をかける一閃の斬撃が走る。

少し遅れて来る斬撃も合わせて計七発の斬撃は新しく現れた増援の半数を刈り取った。

 

そのままレイは武器を変えず振り返り、残影迅雷を振るう。

そのレイの死角を埋めるようにリスィの銃弾が突き抜ける。

あ銃弾を食らった者は死なずとも刹那の隙を生む、レイがその者の命を狩るにはそれだけで十分だった。

 

ーーー

 

被さって来る屍を蹴ってどかし、アタシはそこでようやく待っていた言葉を、遠くでずっと援護していたリスィから聞くことができた。

 

「敵増援の継戦力の枯渇を確認。

緊急ボランティアの終了を通告します」

 

結局ほとんど使っていた残影迅雷を振り下ろす。

あたりは敵が出るまでと比べ淡く青い光が漂っている。

残影迅雷をWill'o属性に極振りしていたせいだろう。

 

「付近のWill'o濃度が危険値を示しています。

早急の帰還を推奨します」

 

「…おう」

 

ーチッ!

流石にガタが来たな…

 

致命的とは言わないが怪我を受けすぎた。

時間が経つにつれ徐々に塞がっていく傷を眺めながら、リスィに言われた通りに護送車に向かって足を踏み出す。

 

「ッ!」

 

視界がブレる。

体こそ癒えてきたが、それ以上にこの戦場特有の緊張感に頭がやられたのか、アタシは倒れようとする体を残影迅雷を地面に刺してなんとか倒れぬよう支えた。

 

ズプッと柔らかいナニかを貫く感触がする。

どうやら倒れていた屍を貫いたらしい。

 

瞬間、雰囲気が一変する。

先に向かっていたであろうリスィが、こちらを勢いよく振り返って機械である彼女らしからぬ焦りを見せた。

 

「Will'o爆発の予兆を感知しました。

予測される爆発規模は甚大です!」

 

リスィの言ったように、残影迅雷が刺さった位置を中心として淡い光が渦を巻き集中しだす。

 

「リスィ!

全速力で退避しろ!

その後状況をナタリアに連絡しろ!」

 

アタシはここですでに確信していた。

二人とも無傷で済むのは不可能だと。

リスィの場合ならなるべく遠くへ退避した方が効果的だが、私の場合は体力を回復しWill'o爆発を耐え切った方が早い。

 

アタシはファストエイドを飲み干し、先にナタリアに連絡を取った。

と言っても、時間がないため返答を聞く前に一気に喋り切った。

 

「敵襲看破。

武器のWill'o属性の効果でWill'o濃度上昇。

Will'oによる大爆発の発生の予兆を確認。

爆発後の状況に関してはリスィより連絡を予定してー」

 

視界が青に染まった。

かなり遠くでリスィが振り返る。

 

ーフォロー頼むぞリスィ…

 

ーーー

 

「おいっ!

応答しろレイ・"白銀"・ダルク!

これは命令だ!」

 

PTの端で数機のアクセサリを引き連れたナタリアは周りから突き刺さる奇異の視線を無視して怒号をあげた。

しかし返ってくる言葉はない。

 

彼女は舌打ちを一つ鳴らしてから周りのアクセサリに問う。

 

「現状、放置市街区近辺でボランティア活動を行っているものは?」

 

レイが無事にしろ、ロストしていたにしろ、すぐに救援が必要なのは確かだった。

だが、アクセサリから返ってきた言葉は

 

「現時点での放置市街区近辺でのボランティアは上層部の指示により全て後日に繰越となっております」

 

ーきな臭い。

 

彼女がそう思ってしまうのも無理がないほどの、作り上げられた偶然ー否、用意周到とでも皮肉った方がより真実をつけるだろう。

PTとその秩序の為にその身を投じていた彼女だったが、あまりにもかこれは怪しすぎた。

しかし、それで取り乱すナタリアではない。

 

「マティアス・"レオ"・ブルーノに通達せよ。

緊急ボランティアとしてレイ・"白銀"・ダルクとそのアクセサリの回収ボランティアが発行されたと」

 

それを聞いたアクセサリの一体が端末で操作を始める。

ひとまずそちらに関しては問題は解決しただろう。

 

後はレイのアクセサリからの報告を待つだけー

 

「レイ・"白銀"・ダルクの所持するアクセサリより連絡が来ました」

 

「繋げ」

 

タイミングよく来た連絡を即座に繋げさせる。

繋がった連絡は最初、ノイズにまみれていたが、次第に鮮明になっていく。

そう、鮮明に絶望があらわになってゆく。

 

『Will'oばーーつは、予想よーとても小さー範囲にーーまりました。

しかし、その収縮とともに、レイ・"白銀"・ダルクのロストを確認。

死体は見つかっておりません』

 




Will'o爆発での転移って見方からしたらパクりっぽいんですのでかなり迷ったのですが、実際その方法かサイモンが飛ばしたとかそこらへんでないと異世界への転移ってあり得ないと思うので、大変申し訳なく思うのですが、そのように書かせていただきました。
申し訳ありません。

次話よりフリーダムウォーズと進撃とのクロスが始まると思うので乞うご期待ということで、この場は絞めさせていただきます。
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