ちょっと短め。
「極悪人……ええそう、そうよ、そうね、私達は極悪人なのよ。それこそ、あなたが連邦生徒会の人間だったとして……ほんの少しでも、躊躇すると思っているのかしら」
そう言いつつアルちゃんは、不敵な笑みを浮かべてこちらを見やった。その目には自信が宿っており、確固たる意思が感じられた。
「いーや別に。そもそもゲヘナの風紀委員会から目をつけられてるような奴らなんだ、僕をぶちのめすくらいの悪事は、それこそ悪事じゃないんだろうね」
もっとも、彼女ら──便利屋68の連中は、どちらかというと善人に近い存在だろーが。本当の悪人なら僕が目の前に飛んできた瞬間に、攻撃なり銃撃なりするはずだ。
なんならカヨコちゃんに至っては、連邦生徒会が突然目の前に現れたという混乱を飲み込んでまで、初手で対話を選んだのだ。便利屋68は戦闘能力もずば抜けていたはずだから、対話をするということはつまり、よほどの自信があって、なおかつ善良な心を持っているということになる。
だが、ゲヘナの風紀委員会にマークされている。
「──見逃す理由にはならねえな」
「……本当にやる気? 私達、結構強いのよ?」
「一応これでも
「シャーレ……最近稼働し始めた新しい部署か」
僕の目の前でアルちゃんとカヨコちゃんが銃を構える。アルちゃんは片手でスナイパーライフルを僕に向け、カヨコちゃんは上空にハンドガンを向けた。おいおい、この期に及んで威嚇射撃かよ、カヨコちゃん。
「うん、生憎だけど……これ、
カヨコちゃんはそう言ってから銃弾を打ち出し、「悪く思わないでね」と続け──次の瞬間、僕の体の自由が失われ、思わず振り向いてしまった。
一体どういうことだろう逃げなければ。
僕はカヨコちゃんに背を向けてしまったわけだが、振り向いただけで逃げ出さずには済んだ。いや、
いつのまにか僕の背後には、鬼気迫ったハルカちゃんが立っていたのだから。
「そ、それじゃあ……アル様のために死んでください、死んでください、死んでください……!」
ハルカちゃんは僕の体に
「死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください死んでください!!」
たっぷり九回そう口にし、律儀に九回も接射しやがった。僕は一応女の子なんだぜ? 酷いことするなあ。でもまあ、近づいて来てくれたのは素直にありがたい。そっちの方が一人ずつ狩れるからね。
ひとまず各個の攻撃に反撃しようとして、そこで初めて、足下に何かが設置されていることに気が付いた。何だこれは、なぜ今ここでカバン……いや、これはまさか──。
「──爆弾?」
「くふふ〜、だいせいか〜い!」
直後、僕を中心として三度の爆発が巻き起こった。攻撃範囲から考えて、ハルカちゃんも巻き込みかねない爆撃だが……やはりそこは熟練なのか、ハルカちゃんは即座に爆撃の範囲から退避していた。
ここまでやられると寧ろ気持ちが良くなってくるね。なんつーか、綺麗な連撃を見せつけられるのは面白い。
未だに爆煙の中でそんなことを考えていた僕の体に、というか胸のど真ん中に、寸分違わず銃弾が直撃した。が、弾が貫通していくようなことはなく、体表で留まり続けている。しかも多分これ、爆発するね。
なるほど、生徒の体が頑丈なことを逆手に取った攻撃か。中々クレバーな戦い方をするね、アルちゃん。
「これが便利屋68よ。覚えておきなさい、連邦生徒会」
アルちゃんがそう言った直後、やはり予想通りに銃弾が爆発した。いやー、よく出来た連携だった。柄にもなく感動しちまったぜ。
「ふふっ……あははっ! 今のは完全にアウトローだったんじゃないかしら! 真のアウトローそのものだったんじゃないかしら!」
「アルちゃんかっこよかったよ〜! あーあ、いっつもこれくらい決めてくれれば、もっとかっこいいのにな〜?」
「社長を付けなさいムツキ室長! それにしても……連邦生徒会に直接狙われるとは、私達も大分名が売れてきたわね!」
「さ、流石アル様です……! こ、このまま連邦生徒会も潰してしまうんですよね!?」
「えっ!? え、ええそうね!! どんな奴でも、何が来ても返り討ちにして見せるわよ!!」
「はあ……バカなこと言ってないでここから離れるよ。結構大騒ぎしちゃったし、人が集まってくるかも。連邦生徒会が一人でうろつくとも思えないし、一度引くのが得策」
よし決めた。カヨコちゃんから抑えるか。
「……それもそうね。仮に連邦生徒会が集まって来て、それを迎撃するにしたって、有利なポジションをいつでも取れるくらいの位置には移動しておきたいわ」
「僕も同感だね。こんな狭い路地裏よりも、大通りの方が君たちにとっては都合がよさそうだ」
「なッ──!?」
そう言いながら、僕はアルちゃんの肩の上に、何の前触れもなく「
僕が
「おいおいカヨコちゃん、それはちょっと芸がねえんじゃねーかな」
「
「おーこわ、まあ落ち着けよアルちゃん。僕は別に、君達に積極的に害を加えようってわけでここに来たわけじゃねえんだぜ」
さっきまでとはまるで銃弾に込められた神秘が違うね。ここからが本気ってわけだろうか。どちらにせよ、負ける気はしねーけどよ。
「信じろって言うのかしら。それは無理があるでしょう」
「まあ無理があるってのは分かるがね、本当に僕は偶然でここに来ただけなんだぜ」
カヨコちゃんの手を押さえながら、僕はそう返す。こうすればムツキちゃんもハルカちゃんも、お得意の乱射と爆撃はできないはずだ。
でもなー、本当に捕まえる気とか、戦う気とかはないんだが。どうすっかなー……あっ、そうだな、こうしよう。
「アルちゃん、君のスキルについて教えてくれれば、カヨコちゃんに銃を返してやらないこともない」
「なっ……アル、駄目だよ。こんなこと言ってるけど、その通りにする確証なんてない」
「……銃弾が爆発するスキル『
へえ、迷いもしねえのか。組織の上に立つ者としては、いささか甘すぎるとしか言えねーな。
「が、その甘さ……嫌いじゃあねーぜ。ほらよカヨコちゃん、君の銃だ。あんまり簡単に奪われないようにしておきなさい」
「……どういうつもり?」
「いやだからさ、どうもこうもねえんだってアルちゃん。僕は偶然でここに来ただけで、君達に害を加えたりするつもりはないんだよ」
「じ、じゃあ、最初に『見逃す理由はない』って言ったのは何だったのよ」
「ああ、それ? いやー、見れば分かるけど、アルちゃん達どうやら金欠らしいじゃないか。個人的には別に君達は嫌いじゃねーし、ラーメンでも奢ってやろうかと思ってね」
見れば分かるっつーか、これも「
いやー、なるほどね。いきなり攻撃された理由がいまいち分からなかったが、まさか勘違いで攻撃されちまってたとは。まあ僕が怪しいというのは否定しねーが。
「そもそも僕は、連邦生徒会は連邦生徒会でも、シャーレの者だしね。生徒の味方であることが第一優先だから、マジで捕まえに来たとかではないぜ」
「それじゃあ、私達……」
「ただただ親切な人に攻撃したってことになるね〜」
「えっあっ、えっと死んだ方がいいですか!?」
「ななななっ、なっ、何ですってーーーー!!!???」
いやマジで面白いなこいつら。アルちゃんに至ってはさっきまでの格好良さが台無しになるくらいの慌てようだ。
「何がアウトローよ何が真のアウトローよ親切な人に一方的に攻撃なんてこれじゃあアウトレイジじゃない!!」
「まあまあ、僕は怒ってねえからさ、あんま気にすんなよアルちゃん。それよりさっさとラーメン食いに行こうぜ。そろそろ混み始めるからさ」
「あそこまでやられて気にしてないって……」
「あははっ、結構ヤバい子かもね〜!」
「さ、行こうか。腹が減ってしょうがないしね」
本当にキヴォトスにいると退屈しねーな。どいつもこいつも面白くて仕方がねえし、案外僕にとってはちょうどいいところなのかもね。
カヨコが途中でアルに社長を付けてないのは、切羽詰まった状況だからです。
アルとカヨコとハルカはまだいいとして、ムツキの口調が難しすぎて爆発しそう。
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