大学が忙しすぎて遅刻しました(言い訳)
──陸八魔アルという少女は、
彼女は便利屋
従えている、というよりは、
何故なら、彼女たちは素寒貧。どうやらここ最近は、拠点としていた賃貸を追い出されてしまいそうなくらい、懐事情が火の車らしい。
しかし、流石に朝ごはんとお昼ご飯を毎日抜かねばならないらしく。現に、陸八魔アル以外の社員は、溜まりに溜まった疲れが出たのか、全員揃って眠りこけている。
そんな風に命懸け
しかし
大人びているように見えても、陸八魔アルは
融資をしてくれないのなら、銀行強盗でもしようかと考えたが……流石の便利屋68といえど、ブラックマーケット全域を敵に回せば、勝ちの目など万に一つもない。
酸いも甘いも、辛いも苦いも噛み締めて──人は、大人へと近づいていくのだ。陸八魔アルはそう考えて、甘い幻想を抱くのをやめて、目の前に広がる苦々しい現実を受け入れ、目を瞑った。
──瞼を開く。しかし周りは真っ暗だった。はて、どうしたのだろう。私の上瞼と下瞼は、接着されてしまったのだろうか。
しかし何度確かめても、確かにその両目は開かれていた。周りが暗いだけ、周りが暗いだけ──つまるところ、
陸八魔アルは即座に、つい先ほどまで眠っていた部下……鬼方カヨコ、浅黄ムツキ、伊草ハルカを
──一瞬だけ、ある一点が
(
陸八魔アルがそう考えている間にも、周りからは銀行警備員の叫び声と倒れる音が聞こえてくる。
(銀行の電源を一時的に落とし、その間に銃撃で出来る限り警備員の数を減らす……これは突発的な犯行なんかじゃなくて、かなり
先ほどの
(この規模の銀行の電源を把握して、数秒間電気を落とせる掌握能力、この暗闇の中、的確に警備員たちを処理できる射撃能力……銃声の数から考えて、射撃しているのは
ふと自分の腕をさすると、鳥肌が立っているのが分かった。いざという時に上手く部下を逃がせるかの緊張か、それとも未知の存在に対する恐怖か、はたまた自分よりも格上と思われる
自分の気持ちに整理をつけられないまま、その時は訪れた。銀行の予備電源が復旧し、突発的に銀行全体が明るさを取り戻す。
陸八魔アルは背後の部下たちが隠れたことを確認してから、物陰に隠れて息を潜め、強盗の行動を見守った。
──陸八魔アルの視線の先には、"1"と書かれたピンク色の覆面、"2"と書かれた青色の覆面、"3"と書かれた緑色の覆面、"4"と書かれた赤色の覆面、そして。
"5"と書かれた紙袋を頭から被っている、明らかにリーダーらしき人物と、"≠"と背中に大きく書かれた巫女服を身に纏った、明らかに異質な人物がいた。
「全員その場に武器を捨てて今すぐ伏せて!! 逆らえば撃つ!!」
青色の覆面を被った2番の強盗が、やけに通った声でそう言いながら三度銃弾を放った。
明確に
「皆さん、逆らおうなんて思わないでくださいね〜? きっと怪我しちゃいますから☆」
緑色の覆面を被った3番の強盗が、その細腕に見合わぬガトリングガンをちらつかせながら、優しく宣言する。
その優しさが逆に恐怖に繋がり、その場にいるほとんどの者が反抗心を失った。
「ああ、そういえばなんだけど、ここの緊急通報システムはもう私たちが完全に掌握してるから動かないよ〜。無駄なことはしないでね〜」
ピンク色の覆面を被った1番の強盗が、気だるげにそう言い放った。外部に助けを求めようとしていた銀行員はその一言で絶望し、無駄に足掻くのをやめた。
「そこっ、逃げようとしないで!! 一歩でも動いたらあの世行きだよ!!」
赤色の覆面を被った4番の強盗がそう叫ぶ。恐らく一番引き金が軽いのは彼女であろう、とその場にいた多くの者が悟り、未だに心が折れていないものも、ひとまず動きを止めた。
ここまでで動きがあったのは、その四人だけ。必然的に視線は、明らかに異質な二人組──紙袋を被った5番の強盗と、こちらに背中を向けた≠印の巫女服の強盗へと向けられた。
いつの間にか用意されていた椅子に、紙袋の強盗が座る。それに合わせて巫女服の強盗も移動したが、
紙袋の強盗は、後ろに巫女服の強盗が立ったのを確認してから──一言だけ、たった一言だけ口にした。
そこまで大きな声を出したわけではない。無駄に強気に威圧したわけでもない。何なら下手に出ているし、声色は可愛らしいものだった。
しかし。なぜだかその言葉を聞いた瞬間、全員の首筋に、何か鋭利な刃物を突き付けられているかのような──悍ましい感覚が駆け巡った。
「うんうん、ファウストさんは怒るととっても怖いんですからね☆皆さん分かっていただけたようで嬉しいです!」
「私達覆面水着団にかかれば、ざっとこんなもんだよね〜。さ、ブルーちゃん、早いとこ済ませちゃって」
「ん、了解」
ブルーと呼ばれた2番の強盗は短くそう言うと、銀行の受付窓口に突っ立っていた銀行員へと駆け寄り、脅し始めた。しかし、どうやら彼女たちの目当ては集金記録の書類だけのようである。
ん?
なんとか出来るし、なんとでもなるけど、おもしれーからそっちの方がガチの銀行強盗感が出るから我慢しておくれ。
それにほら、見てみなよ。あんな所に君の迫力を目の当たりにして、目をキラキラと輝かせている
そうそう。ほら、このままだと敵だと思われて、死角から撃たれちまうかもしれないぜ。だから「敵じゃないですよ」って意味も込めて、微笑んでみなさい。
ファウストは突然陸八魔アルの方を向いて、小首を傾げ、宥和な笑みを浮かべてみせた。
(なっ……見てたのはバレてるってわけね……! それなのに、この状況であの笑みを浮かべるなんて……カッコ良すぎるわよ! 完璧なアウトロー仕草じゃない!)
「アル様が涙を流して……きっとアイツのせいですよね、殺しますか!!??」
「いや……落ち着いて、ハルカ。ほら、爆弾しまって。多分あれは、そういうのじゃなくて……」
「うん、アルちゃんってば、アビ……覆面水着団のあまりのアウトローっぷりに感動してるんだよ。だから心配いらないんじゃないかな?」
陸八魔アルの部下三人がそんな風に気を揉んでいたというのに、当の本人といえば、ファウストのアウトロー仕草に興奮しっぱなしだった。
(余裕溢れた態度、謎めいた風貌、それに加えて明らかに
……僕は彼女のことがかなり心配だよ。
ともかく、そうしているうちにブルーがダッフルバッグ一杯に書類を詰め終わったらしく、覆面水着団の方へと駆け寄ってきた。
「よし、終わったなら長居は無用! というわけで、さっさと退散しよっか!」
「了解。ほら、ファウストも行くよ」
民間人には一切手を出さず、銀行の警備員だけを狙って、迅速に目的を達成して帰っていくその姿は、まるで嵐のようで、陸八魔アルが憧れた
だから彼女は、
「……カヨコ、ムツキ、ハルカ。着いてきなさい──あの人達から
そう言って飛び出した陸八魔アルに対して、異を唱えるものはいなかった。それもそうだろう、愛する社長が
カイザーコーポレーションから依頼された、アビドス高等学校の襲撃任務の失敗。大量の資金を注ぎ込み、それでも失敗し、家賃が払えなくなり、愛する社員たちを路頭に迷わせかけているせいで、陸八魔アルの自尊心は砕ける寸前だったのだ。
すっかり消沈しきっていた社長に、再び火を付けてくれたのだ。覆面水着団──もとい、アビドス対策委員会たちには感謝しかない。
便利屋68の社員は、陸八魔アルのことが大好きなのだ。彼女が好きなことをのびのびとやれるようになるならば、それに異を唱えるなどするはずがなかった。
陸八魔アルの隣が、彼女たちの居場所なのだから。
便利屋68みたいなあったかい関係性が好きです。
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