なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 ブルアカアニメの熱に当てられたので、まだ書き溜めは終わっていないのですが、2章完結まで毎日朝の8時と夜の20時に更新します。

 頑張るのでよろしくね。






2章:小鳥遊ホシノの独善的救済
第20箱「友達なんかじゃない」


 

 

 

 

 

 独善も独走も、君の独断で決めればいい。

 身勝手も好き勝手も、君の勝手にすればいい。

 

 ただし、君を孤独にはさせない。

 たたし、君に勝手なことはさせない。

 

 だって、そうだろう。

 君は独りじゃ立てないし。

 君は独りじゃ勝てないぜ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──腹が減っては戦は出来ぬ。

 

 そういう言葉があることは誰だって知っているだろうが、しかし僕が思うに、これって戦に限った話じゃねーと思うんだよな。

 

 例えば仕事……いや、これだと例えが悪いかもな。サラリーマンのことを企業戦士と呼んだりするし、あれはあれで立派に戦っていると言える。

 

 先生なんて、最早自分自身の限界と戦っているような状態だしね。睡魔と戦っていたりもする。なんだよ、社会生活って立派な戦闘行為じゃねーか。

 

 ……えっと、何の話をしていたんだったっけ? まあいいや、とにかく僕が言いたいのは、つまり腹が減ってると生活がままならないってことだ。

 

 ただ、腹が減っているとは一口に言っても、その現象には必ず理由があるわけで。

 

 ダイエットとか、医者から食事制限を受けているとか、シンプルに食べた量が少ないとか──あとは、()()()()()()()()()()()()()とか。

 

 そういう奴がこのキヴォトスにいるとは思え──いや、いるかもしれねーけど、しかし僕が観測した限りでは見つからなかった。

 

 ついこの前までは。

 

 あの子達──便利屋68(シックスティーエイト)の連中。どうやらこの前のアビドス高校襲撃の際に、傭兵を雇いすぎたせいで素寒貧らしい。可哀想にね。

 

 そんな彼女達が哀れで哀れで仕方なくて、お腹を空かして必死に生きているのがいたたまれなくなって、僕はもうどうにかなっちまいそうだったぜ。

 

 ……それに。()()()()()()()とはいえ、僕は悪平等(ノットイコール)を名乗っている人外であることに代わりはないわけだから、アビドスだけに肩入れするのもなんだか落ち着かない。

 

 だから──。

 

「──今こうして君達にラーメンを奢ってやってるのも、決して僕の善意からとかではねーことは、努努(ゆめゆめ)忘れねーように」

 

安心院(あんしんいん)さーん、今更そんなこと言われてもさー」

 

「うん、説得力全然ないけど……それは分かってるでしょ?」

 

「君達なかなか言うじゃないか。もう少しアルちゃんとハルカちゃんを見習ってほしいものだけれど」

 

 僕達が二人のほうを見ると、アルちゃんもハルカちゃんも随分と美味しそうにラーメンを啜っていた。いやー、奢りがいがあるぜ。

 

 それにしても……流石に麺の量が多すぎやしないか? 記録を喪失したついでに僕の目までおかしくなったのかな。

 

「大将。差し出がましいのは重々承知の上で言わせてもらうが、これは流石に──」

 

「ん? ああ、ラーメンの量が多すぎるって話だろう? いやー、近頃めっきり客足が遠のいちまってね、久しぶりに麺を茹でたら随分と多く茹でちまってな」

 

「……大将、まだ提供されていない僕の分は、是非とも量を少なめにしてくれたまえ。僕みたいなひねくれ者は、その大将の善意だけでもうお腹いっぱいに──」

 

「おっと、だとしたら申し訳ねえことしちまったな。もう大盛りで用意しちまったから、もしお腹いっぱいだったんならしょうがない。食いきれなかったら残しちゃっても問題ないからな」

 

「──いや、もったいないし、折角だからいただくとしよう。そういえば僕は、他人の善意だけで腹が膨れるような生きやすい奴じゃなかったってのを、ちょうどたった今思い出したぜ」

 

「そうかい、そりゃあよかった。それじゃ、冷めきって麺が伸びる前に食べてくれな」

 

 このお人好し(犬だけど)に僕が何言っても無駄か。とりあえず早いうちにいただこう……少し硬めに茹でてあるな。

 

 どうせ大将のことだから、麺の量が多い分食べきるのに時間がかかると踏んで、新しく少し硬めに茹でなおしたんだろう。だからまあ、さっきの「麺を茹ですぎた」とかいう言葉はまったくの嘘ってことだ。

 

 僕は少々の非難を込めて大将を見る──しかし大将はにやりと笑うだけで、これっぽっちも怯みやしなかった。

 

「……はあ。結局ここ(キヴォトス)では、僕も【子供】に過ぎないってことなのかな。嫌んなるぜまったく」

 

「はっは、子供とか大人以前に、あんたは()()()()なんだ。()()()も沢山連れて来てくれんだから、こっちとしてはサービスしねえ理由がないってわけよ」

 

「やっぱりサービスしてるじゃないか」

 

「応とも。こちとら飲食サービス業ひとすじだよ」

 

 そういうことじゃねーんだが……ああもう、()()()()()()()()()()()()()()()()()()のにモヤモヤするなあ。

 

 3兆年生きてるのに、ここまで子供みたいになっちまうと参っちまうね。いやまあ、生きるのに不自由はしていないけれどもさ。

 

「…………じゃない」

 

 おや、いつの間にかアルちゃん、ラーメンを食べ終わっていたらしい。いや、それよりも()()()()は……もしかして叫ぶかな?

 

友達なんかじゃないわよおお!!

 

 アルちゃんはそう叫びながら、机をダンッ! と強めに叩き、おもむろに立ち上がった。当然ながら白目も剥いている。この子は本当に予想通りのリアクションを取ってくれるねえ。

 

「机叩いてごめんなさい! だけど分かっちゃったのよ、一体何が引っかかっているのか! ()()()よ! 問題はこの店だったの!

 

「なんだ、どうしたんだいお嬢ちゃん……もしかして、何かまずいことやっちまったか!? そうだったんなら申し訳──」

 

「いえ違うのよ! その、だから……私達ってあくまで仕事でここに来ているわけじゃない? ハードボイルドに、アウトローな感じで」

 

 机を叩いて立ち上がったことをわざわざ謝罪するような奴がアウトローとは、僕には到底思えねーけどな。

 

「なのに何よこの店は! ()()()()()()()()()()()()()()()!お腹いっぱい食べられるし和気藹々(あいあい)でほんわかしてて! ここにいると()()()()()()()()()()()()気がするのよ!!

 

「えーっと……アルちゃーん、それって何か問題ある?」

 

「問題大アリよ! 私に必要なのは冷酷さと無慈悲さと非情さなの! こんな暖かくて心優しくて人情に溢れたお店じゃない!! ってか今自分で言ってて気づいたけどこの店私が求めてるものと正反対じゃない!!

 

 大将の方を見ると、褒められてるのか貶されてるのかいまいち分からないといった様子で「まあそう思ってくれてんならありがたいけどなあ」と呟いていた。

 

 いやー、しかしアルちゃん……()()()()()()()()

 

 君のことを心底慕っているハルカちゃんがいるのに、そんな()()()()()()()()()()を言っちゃダメじゃないか。

 

「……アル様、それって──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ってことですよね?

 

「……? ハルカちゃん、一体何を取り出して……って、それ、起爆装置?

 

「ッ!? ハ、ハルカ。ちょっと待って──」

 

 あーあ、言わんこっちゃない。ここからカヨコちゃんの制止が間に合うか……いや、無理だなこれは。ハルカちゃんは既に起爆ボタンに触れているから、このままだと柴関ラーメンが店ごと吹き飛ぶね。

 

 冗談じゃない。まだカヨコちゃんとムツキちゃん、そして僕もまた、ラーメンを食べ終わってないんだから。

 

 というわけで、僕は即座に奪い取るスキル没収穫祭(コンフィスケーション)を使い、ハルカちゃんの手から起爆装置を取り上げた。

 

「……ふう、危ない危ない。ここ最近の僕の楽しみは柴関のラーメンなんだから、それを台無しにされちゃあ──」

 

「じ、邪魔しないでくれませんか……!?」

 

「──おっと、()()()()か。アルちゃん、この子止めてくれない? 流石の僕といえど、()()()()()()()()()()なんか撃たれたら、それなりの対応に出ないといけない」

 

 いやはやしかし、まさかアルちゃんのからの命令である(と思っている)店の爆破を遮ったせいで、即座に攻撃態勢に入るとは。

 

 指令を達成できなかったことで、アルちゃんから見捨てられるのを恐れている……それもまああるだろうけど、しかしこの場合はやや違う気がするな。

 

 アルちゃんのために()()()()()()()()()()()()ってとこだろ、完全に推測だが。

 

 ──だったら、()()()()()

 

「……まあとりあえずさ、落ち着きなよハルカちゃん。ほら、後ろでアルちゃんが何か言いたげにしているぜ。僕を吹っ飛ばすのはその後でもいいだろう?」

 

 そう言うと、一瞬だけハルカちゃんの意識が僕から離れた。その隙を狙って、僕はアルちゃんに対して思考を繋ぐスキル一心伝心(シングルシンパシー)を使って、脳内で話しかけた。

 

(というわけで、はい。アルちゃんならハルカちゃん止められるでしょ? 頼んだぜ)

 

(えっ、直接脳内に!? じゃなくて、任せてちょうだい!その、流石にお店を吹き飛ばしちゃうのは、私が望むアウトローじゃないし……)

 

 そこまで聞いて、僕はスキルを使うのをやめた。

 

 理由は単純、何者かが接近してくるのを、侵入を察知するスキル「周知侵(ノウアンノウン)」で感知したからだ。

 

 あーもう、何なんだよ今日は。厄日か? 今ハルカちゃんを刺激するとまずいから、便利屋に対応させるわけにはいかねーし、先生も対策委員の連中もいないし。

 

 ……しょーがねー、さっさと対処するか。よくよく考えたら、大抵の相手は僕一人でなんとかなるしな。

 

 アルちゃんがハルカちゃんに「いい店を爆破するのはアウトローっぽくないのでダメ」と話し始め、ハルカちゃんも段々と──どんどん顔が青くなっているが──落ち着いてきたようなので、カヨコちゃんに一言声をかけてから対処するとしようか。

 

「カヨコちゃん、ちょっと用事ができちまったからさ、僕の分のラーメンまで食べといてくれない? ほら、勿体無いし」

 

「用事……? 用事って言われても──まあ、言いたくないなら聞かないけどさ……」

 

 何かあったってバレてら。そこまで僕って分かりやすいかな。

 

「まあいいや、じゃあそういうことでよろしく頼むぜ。代金はもう払ってるから気にしないでおくれ」

 

 と、そんな風に捨て台詞的な言葉を吐いてから、遠くまで行ったと見せかけるためにわざわざ腑罪証明(アリバイブロック)を使って店の前に出た瞬間。

 

 ──右上の方から、()()()()が聞こえた。

 

 ああ、なるほど、便利屋を捕まえるために尾けていたのか──と考えながら、音のした方を見やる。

 

 ああ、やっぱりそうだね。ちょうど僕の頭目掛けて、目測50mmの砲弾が飛んできているのが見えた。

 

  記録喪失 くんの不運が移ったかなあ、これは。

 

 なんてことを考えているうちに、砲弾はみるみる僕の頭へと近づいてきて、そして直撃し──()()()()()()()()()()()()()()

 

 固定するスキル固定感念(サイコパスキネシス)()()()()()()()()()()()。初見のスキルならまだしも、ただの砲弾を喰らう趣味はねーんだよな。

 

 僕にかかれば、この程度は雀の涙よりも──痛っ。

 

 ……また頭痛か。前回はたしか、敵対者と遭遇しないスキル敵勢外(イントレランス)を使った時に頭痛が出たんだっけ。いまいち条件が分からないな。

 

 とりあえず、アビドスの連中に確認でも取るか。どうやら侵攻してきた彼女達、()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 えーっと、アヤネちゃん辺りでいいかな。

 

『……もしもし。どうかしましたか、安心院(あんしんいん)さん?』

 

「一応聞いておきたいんだけどさ、今日ってアビドス自治区内で()()()()使()()()()()()()()()()()()ってある?」

 

『いえ、特にはないですけど……って、まさか安心院(あんしんいん)さん……そういうことですか!?

 

「うん、そういうこと。それじゃあ柴関の前で食い止めとくから、出来るだけ早めに来てくれたまえ。僕一人で制圧すると、後々問題になるからね」

 

『いや、ちょっ、待っ──』

 

 電話口の向こうで騒いでたが、伝えることは伝えたしいいだろ。それよりもまずは800m先のあいつら──ゲヘナ学園風紀委員会をどうにかしなくちゃあな。

 

 風紀委員会ということは服装を見れば分かる。それに、知り合いのチナツちゃんの姿も見えるしね。つーかあの子、前線出るタイプなのか。

 

 ……何はともあれ、記録喪失してからは初陣なわけだが、果たして僕はどこまでやれるかな。衰えてないといいけど。

 

 そう願いながら、僕は「腑罪証明(アリバイブロック)」を使った。

 

 






 アルちゃんが勝手にどんどんいい人になってく。
 あと言い忘れてたんですけど、序章の章題を変更して、1章の初めにも575のあらすじを追加しておきました。
 ちなみに、物語シリーズリスペクトの演出です。

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