本日2話目です。
余談ですが、僕は悪い顔してる時のアルちゃんが大好きです。
というわけで、僕は「
ふむふむ、なるほど……
まあ僕一人いる時点で戦力差に関しては無いようなもんだし、さっさと足止めに入ろうか。これ以上前進されると、後々絶対にめんどくせーことになるからね。
そう考えて僕は、風紀委員会の中でも一際目立った奴らの近くに移動した。一人はシャーレによくお手伝いしに来てくれるから知っているが、もう一人の方は見たことがないな。
「ど、どうしよう!? 無関係な生徒に砲撃かましちゃったけど……あーもう! 直前まであんな所に人いなかったのに……!!」
「いえ、
「はあ? 本人って言ったって、50mmを喰らって無事で済む奴がこんな所にいるわけ──」
「やっほー銀髪小悪魔ちゃん。この砲弾ってお返ししてもいいやつかな?
「うわあっ!!??」
おや、僕はただ「
おまけに裏拳まで放ってきたしね。まあそれはしゃがんで避けておいたが……いやしかし、中々動けるな、この子。今まで出会った中だと……機動力では三番手ってところか。
「……
「わっはっは、すまないね。しかしこれ──人の後ろに回り込むのはもう癖みたいなものだから、あまり目くじら立てずにお目溢ししてくれると助かるぜ」
そう言って僕は立ち上がり、小悪魔ちゃんの方を向いた。当然ながら警戒されているようで、僕に向けて銃を構えていた。
なんかあれみたいだな。
めっちゃ警戒心強い猫。
とりあえず小悪魔ちゃんに向けて、さっきの砲弾を見せつける。わはは、撃てるものなら撃ってみなさい。全員爆発に巻き込まれちまうがね。
……ふむ、あくまで銃は下ろさないのか。随分と仕事熱心だねえ、活気に溢れてて羨ましい限りだぜ。
「……お前が、チナツの言ってた
「僕の名前は
今だって周囲の風紀委員の子達に銃口を向けられているし、できれば撃たないでほしいんだけどな。戦闘になると流石に便利屋の連中に誤魔化せない。
「……まずその砲弾を置けよ。どこからどう見ても『対話しましょう』って雰囲気じゃない。だから──」
「ああ、なんだそんなこと? それならそうと言ってくれれば良かったのに……はい、チナツちゃん。
「……善処します」
ちょっとした牽制も込めて、僕はチナツちゃんにさっき掴んだ砲弾を手渡した。危ないから良い子は絶対に真似しちゃあいけないぜ。
「さて、銀髪小悪魔ちゃん。これで君の名前も教えてもらえるんだろうね? つーか、一方的に名乗らせないでほしかったなあ」
「いちいち一言多い奴だなお前……
「当然。これからも会うことがあると思うし、今後ともよろしく頼むよ。はい、ほら握手」
「調子狂うな……まあいいや、
イオリちゃんはそう言って、僕の手を握り返した。うんうん、最初はどうなるかと思ったが、いやはやしかし、中々いい落とし所に持っていけたんじゃないかな。
……ま、これで終わるとは微塵も思っちゃいないけどさ。
大方、便利屋が柴関の中にいることまで気付いてるんだろ。そして店から人が出てきたもんだから、それが
そうでなければ
「チナツちゃん、さっきからチラチラと柴関の方を見ているが、そこまであそこのラーメンが気になるのかい? だとしたら喜ばしいね、だけど
「……いえ、お断りします。
「全裸で歩いてるのとほとんど同義、だろう? それくらい知ってるさ、友達から散々教えられたからね。だからこうして、持ちたくもねえSMGなんか持ってるんだから」
「それなら分かってください、私はあなたとは違って、銃を持っていないと安心できないんです。もしかしたら、
まあ僕が本音で話すスキル「
「というか待ちなよチナツちゃん。そもそもここは
「……シャーレ所属の
「ああ、聞いておかなければいけないね。聞かなければならない。なんたって今の僕は、アビドスからの依頼でここに来ている身なんだから」
「ということは、
チナツちゃんはそう言って、柴関の戸から手を離した。いやー、危ない危ない。この状況で戦闘になると、説明が面倒臭えんだよな。
どうやらチナツちゃん達風紀委員会は引き返すことにしたようで、誰かと通信し始めた。恐らくはさらに上の立場の人間かな?
何はともあれ、おそらくチナツちゃんとイオリちゃんが率いているであろうこの中隊を、戦闘なしで追い返せそうなのは重畳だ──
「……えっ? はい、いえ、でも……あっ。あのっ……はあ、もう……!」
──前言撤回だ。ダメそうだね。
チナツちゃんは目に見えてうんざりしながら、僕に向かって話しかけてきた。
「
「うん、知ってるよ。彼女達、曲がりなりにも指名手配されているらしいしね、そりゃあ風紀委員会も来るだろうな、とは思っていたとも」
「ちなみに一応聞いておきたいのですが、シャーレは便利屋からなにか依頼を受けていますか? 『護衛してほしい』とか、『匿ってほしい』とか」
「いいや、僕とあの子達は友達だから一緒にいるってだけさ。個人の付き合いって奴だね……近くで見てると飽きねーよ、まったく」
「つまり
「……分からねーな、言ってることが抽象的すぎて。もう少し──」
「──イオリ、お願いします」
チナツちゃんがそう言うと同時に、僕の首に強い衝撃が三度──恐らくはイオリちゃんのスキルによるもの──が走り、脳が震え。
僕はその場に、倒れ伏した。
「……なあ、チナツ。本当にこれでいいのか? いくらアコちゃんからの指示とはいえ……」
「指示ではなく、
「へえ、そのアコちゃんとかいう行政官のせいで僕は攻撃されたってことか」
「ッ!?」
「たかだか不意打ちの銃弾三発ごときで僕が気絶すると思ったかい? そこまで僕はひ弱に見えるのかなあ、少し悲しくなってくるよ」
いやー、気絶したフリをしてチナツちゃん達の通信先を聞き出す作戦は大成功だ。アコちゃん……はまあ置いておくとして、しかし
そんな僕の懸念はどうやら杞憂では無かったらしく、柴関の戸を開いて、アルちゃんが出てきてしまった。
「ちょっと何事よ!! このラーメン屋を狙おうっていうなら、まずは私を倒してからにすることね!!」
どんだけ柴関がお気に入りなんだよ。後ろにはカヨコちゃん達もいて、僕達と目が合うと露骨に呆れていた。ため息をつくんじゃない。
「あ、便利屋……」
僕・チナツちゃん・イオリちゃんの三人がフリーズしていたというのに、風紀委員の誰かがそう言った。その声を聞いたイオリちゃんが、まず初めに動き出す。
しかし僕は「
「あのさー、ゲヘナ同士の揉め事はゲヘナでやってくれないかな。アビドスの中で戦闘を起こされると、始末は僕がしなきゃいけなくなるんだから」
「知ったことじゃない! そりゃあいきなり何も言わずに撃ったのは悪かったけど、こっちも命令されてるんだよ! だからうちの厄介者を庇うなら、
「イオリ!!」
「──ッ!? なんだよチナツ、そんなに大声出さなくても聞こえてるって!!」
イオリちゃんはチナツちゃんの声がした方を振り向いた。しかしチナツちゃんは
だって今の、
声変わりのスキル「
「違います!!
「は?」
チナツちゃんは既に僕の仕業だと気付き、今度こそ本当に大声をあげているが、しかしイオリちゃんがここから僕の方を振り向くまでは1秒ほど時間がある。
十分すぎるぜ。
「イオリちゃんさあ、君多分
僕はイオリちゃんの肩に手を乗せ、場所を入れ替えるスキル「
僕が思うにイオリちゃんは
カヨコちゃんをわざわざこちらに持ってきたのにも理由がある。他の3人だと
いや、流石にアルちゃんの方が強いとは思うんだが、念のためね。
「なっ……えっ!? なんで私、こっちに……」
「はいはーい! とりあえず落ち着きなよー! 暴れてもいいことないよー?」
「なっ、敵ですか!? アル様の敵ですか!!?? 敵ですよね風紀委員会ですよね敵です消します!!」
「なっ、おいやめろ!! 離せ!! あっ変なところ触るな!!」
……イオリちゃんの方は思った通り……だね。うん。しかし僕の目の前にいるカヨコちゃんは、チナツちゃんに拳銃──確か名前はサポートポインター──を向けられて手を挙げている。
「……そのまま動かないでください。妙な動きをすれば制圧します」
「……あのさ、
「いやー、すまないね。僕としても穏便に済ませたかったんだが、しかしアビドスから依頼を受けてここにいる以上、発砲は見過ごせなくてさ」
「もしかしたらなし崩し的に手伝ってもらおう、とか思ってるかもしれないけど、私達はあくまで便利屋。いくら恩人でも、
カヨコちゃんは両目を瞑りながら、僕に向かってそう言った。おいおいカヨコちゃん、それじゃあまるで
……こうなったら意地でも動かねーだろうな、この子は。しょうがねーし、アルちゃんに伝えるか。
「……アルちゃん、君達便利屋は確か、僕の記憶違いでなければ、アビドス高校襲撃の依頼に失敗し、大赤字を叩き出し、事務所の家賃を払うことも難しいんだったよね」
「──ええ、そうね。恥ずかしながら、私達は大枚叩いて傭兵を多数雇ったにも関わらず、依頼を達成できずに素寒貧になってしまったわね」
「そんな君達に依頼がある。対策委員会と先生が来るまで、風紀委員会を押し留めるのを手伝ってほしい。報酬は弾むぜ」
「……生半可なものじゃダメよ。私達にも生活があるし、慈善事業でやってるわけじゃないもの。それなりの対価を貰えれば、それなりの仕事はするけれど」
「そうだな、成功報酬として多少の金銭は当たり前として……そうだ、
僕はついさっき、イオリちゃんに感じた第一印象を思い出しながら、アルちゃんにそう提案した。当のアルちゃんはというと、目を瞑ってわざとらしく考え込んでいる。
「猫? 猫って、あの猫? 可愛らしくにゃーにゃー鳴いたりする? ふーん、猫、猫ねえ。猫、商売、といえば……
「はあ……そう言うと思った」
アルちゃんがヒフ──覆面水着団リーダーであるファウストのような笑みを浮かべ、交渉が成立した瞬間、わずかに頬が緩んだカヨコちゃんは
「なっ、いつの間に……煙!?」
スモークグレネード。どうやら
「猫、楽しみにしてるから。便利屋の人数に合わせて4匹とか送りつけないでよ?飼いきれなかったら意味ないからさ」
そう言ってカヨコちゃんは煙の中へと突入していった。チナツちゃんはどちらかというとサポート寄りの子だし、カヨコちゃんなら上手くやるだろう。
ちらっとイオリちゃんがどうなっているか確認すると、既に柴関の玄関口からは遠く離れた場所に移動しており、ムツキちゃんを始めとした便利屋3人で翻弄していた。
「……さてと。それじゃあ僕は
僕は一般風紀委員達の方を向きながら、そう独り言を呟く。全員の銃口が僕の方に向いていて、それでいて迫撃砲なんかも持ち出されていた。
モテモテで困っちまうぜ。わっはっは。
……こんなところで砲弾をバカスカ撃たれて、柴関が無くなったり、道路がボコボコになったりしたらかなり困る。セリカちゃんのバイト先も無くなるし、アビドスにとっても僕にとっても悪いことづくめだ。
本来ならこういうことはあんまりしてなかったんだろうけど、しかしこれも本来の僕の記録を取り戻すためだから、しょうがない。
なんとしても先生達が来るまで、
多分この状況で一番イオリを動揺させ、なおかつ沈静化させる方法は
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