なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 本日2話目です。
 またまた会議。
 ただし、辛気臭さマシマシで。




第27箱「それでいいだろ?」

 

 

「"みんな、本当にごめん。私の失策だ。『最悪』の想定が甘かった"」

 

 対策委員会室について一息つくなり、先生はそう言って腰を90度に曲げた。つまり、頭を下げた。

 

「僕からも謝罪させてもらうよ、すまなかった。僕の怠慢だ」

 

 所属組織の長だけに頭を下げさせるっつーのも平等じゃねーし、今回の件には僕にも非がある。そういうわけで、僕も頭を下げた。

 

「ちょっ、ちょっと二人とも! 別に二人だけのせいってわけじゃないよ〜! 私たちだって、考えなしに砂漠に行っちゃったわけだし!!」

 

「"ホシノ……でも、私は先生なんだから……"」

 

「先生だからって何でもかんでも先回りできるわけじゃないでしょ? だからさ、そんなに思い詰めないでよ。というわけで、解決策をおじさん達と一緒に考えよ?」

 

「そうです!! カイザーなんかに負けてられません!! 私たちはアビドス高校を何としても守るんですから!!」

 

「……ほら、アヤネちゃんもああ言ってるし。ね?」

 

「"……そうだね。くよくよしている暇はない、なんとか返済の方法を考えなきゃね!"」

 

 一周回って変なテンションになっているアヤネちゃんのおかげで、幸い対策委員の間に深刻な空気感はない。

 

 空元気と言うべきか、火事場の馬鹿力と言うべきか……どちらにせよ、あまり空気感が湿っぽくないのは朗報だぜ。

 

 ただ、からっとした空気というのは……()()()()だ。

 

「とりあえず気になったのは、カイザーの探し物ですね……あんな砂漠地帯で、一体何を?」

 

「念のため調べてみましたが、化石燃料や石油資源のようなものは、あの辺り一帯では一切採れないらしいです……なので、カイザーの目的は他にあると見るのが妥当なのでは……?」

 

 ノノミちゃんとアヤネちゃんは、借金のことよりもこちら──カイザーの探し物について着目したらしい。カイザーの目的を明かし、そこから借金返済の目処を立てるつもりなのだろう。

 

「ちょっとちょっと! 今はそんなことより借金のことでしょ! 3000%……利子が今までの30倍なんだよ!? それに保証金の3億円だってある!!」

 

「……みんな。借金はもう、まともな方法じゃ返せないよ。やっぱり、銀行強盗とか、犯罪に手を染めるしかない」

 

 反対にセリカちゃんとシロコちゃんは、借金のことを優先した。一週間で3億用意しろという無茶振りを達成するには、相応のことをしなければいけないだろうからね。

 

「ちょっ、ちょっと待ってください! 銀行強盗は、だって、あの時……!」

 

「だけど、もうこれしかない。即効性があって、確実で、大量。大丈夫……みんなに迷惑はかけないから」

 

「シロコ先輩……あの時はホシノ先輩が止めてくれたおかげで、ギリギリ犯罪者にならなくて済んだんですよ!? セリカちゃんも、なんとか言って──」

 

「……私は、シロコ先輩に賛成する」

 

「えっ……!?」

 

「だって、だって……一週間で3()()()だよ? 今まで5人で一ヶ月必死に頑張って、寝る時間もちょっと削って、頑張って……返せてた額が7()8()8()()()──期間も考慮したら、今までの1()5()2()()なんだよ!?

 

「……セリカ、ちゃん……」

 

もう犯罪とか言ってられないの!! なんでもやらないと、学校がっ、なくなっちゃうんだよ!!??

 

 セリカちゃんはそう叫びながら、目から大粒の涙をこぼした。対策委員会の会計担当である彼女としては、もう押しつぶされてしまいそうなのだろう。

 

「……セリカちゃん。本当にいざとなったら、犯罪者になってでも、お金を手に入れたいんですか?」

 

「なりたいわけない!! 犯罪者になんてなりたくない!! だけどっ、ここでやらなきゃ全部終わっちゃう……!!」

 

「なるほど、分かりました──それじゃあ、()()を使いましょう。大丈夫、セリカちゃんもシロコちゃんも、犯罪者になんて絶対させてあげませんから」

 

「……ノノミ、先輩……?」

 

 セリカちゃんの背中をさすりながら、ノノミちゃんは妙なことを言い出し──そして返答を聞くやいなや、ゴールドカードを取り出した。

 

「ノノミ、それは違う。間違ってる」

 

「友達の間違いを止めるためなら、私は間違ったって構わないんです」

 

「ノノミちゃん、それはしまおっか。私、多分だけど()()()()()()()()〜?」

 

「……だけど」

 

「もー、『だけど』じゃないよ〜! それを使っちゃうと、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだってば〜!」

 

 ホシノちゃんがそう言って、ノノミちゃんにゴールドカードをしまわせた。しかし表情は渋々といった印象を受ける物なので、本当にいざとなればやるだろうな。

 

 ……しょーがねー、一発で解決できる策を出すとしようか。それも、犯罪は一切絡まない、とんでもなくクリーンな奴をよ。

 

「さて、ここまで散々怠慢を晒してきた僕から、対策委員会に提案があるんだが……聞いてくれるかな?」

 

「"……安心院(あんしんいん)さん?"」

 

「まあまあ、そんなに心配そうな顔をするなよ、先生。犯罪なんかに手は染めさせねーし、労力だってほとんど必要ないみてーなもんを提案するだけさ」

 

 そう言って説得してみるも、先生は怪訝な表情を浮かべたままだ。納得いかねーが、まあそれだけのことをしでかしてきている自覚はある。甘んじて受け入れてやるぜ。

 

「ま、つっても、君たちに何かやって欲しいことがあるでもない──つまり、僕がお前らの稼いだ金を今すぐスキルで9億まで増やしてやる

 

「えっ!?」

 

そんでもって借金返済後、あのカイザーとかいう顧客を舐め腐った企業は合法的に潰すそれでいいだろ?

 

「"……ダメだよ、ナジミ。やっぱりそれじゃダメだ。シャーレの長としては、絶対に許可できない"」

 

「……一体何が気に食わねーっつーのかな」

 

「"()()()()()()()()()()()()だよ。それをやって、無事に借金を返済できたとして……次に待っているのは、()()()()()()()だ"」

 

「おいおい、それはいつだか僕が、君に言ったことじゃないか──それよりも。僕の手にかかれば、市場経済を意のままに操ることだってできるんだぜ?活用しない手はないだろ」

 

「"……()調()()?"」

 

「さあね。僕の体調がどうなるかは分からない……ただ、()()()()()はアビドスを見捨てる理由にならない。それに、これでも僕は研究者気質でね。()()()()()()()()()は何がなんでも排除したい性質(たち)なんだよ」

 

「"うん、分かってる。でも私は【先生】だから、大切な【生徒】に()()()()()()()()()()()んだ"」

 

「……仮に僕が、先生の【生徒】ではないと言い張ったなら、君はどうするのかな」

 

「"それでも私は、ナジミのことを大切な【生徒】だと思ってる。それに……私は【大人】のやり方だってできる"」

 

 先生はそう言うと、僕の方をじっと見つめた──なるほど、先生には()()()()()()があるっていう話か。

 

 つまり先生は、何が何でもそれを使わせたくない僕の内心を利用し、()()()()()()()()()()わけだ。

 

「"……卑怯で申し訳ないけど、生徒にそこまでさせてしまうくらいなら、()()()()()()()()。私は【先生】だからね"」

 

「あまり僕が強情なようなら、先生も手段を選ばない……と。これはやられたね、相談なんかしねーで、さっさとスキルで金を増やすべきだったか。あと先生、僕のことは安心院(あんしんいん)さんと呼びなさい」

 

「"……というか安心院(あんしんいん)さん……『体調がどうこう』って、もしかして、()調()()()()()()()()()()使()()()()の?"」

 

「いや、別にそういうわけじゃねーよ。スキルなんざ使おうと思えばいくらでも使える──ただ、()()()()()()()使()()()()()()()()()()程度のことさ」

 

「それなら、安心院(あんしんいん)さんのスキルを頼りにするのは無理……どうしよう……」

 

「ま、本当にどうしようもなくなったらなりふり構ったりはしねーさ。思い詰めて、切り詰めに切り詰めまくって、何かの間違いで()()()()()()したら、僕は困っちまうからね」

 

「はーい!! 注目注目〜!!」

 

 セリカちゃんが再び泣き出しそうになってしまったところで、ホシノちゃんが両手をパンパンと二度叩き合わせ、注目をその身に集めた。

 

「みんな、頭から湯気が出ちゃってるよ〜? 今日は一旦お家に帰って休んでさ、また明日落ち着いて集まって!そこでもっかい話し合おう?」

 

「"……そうだね、私もそうした方がいいと思うよ。今はみんな冷静じゃないし……なれないと思うから"」

 

 先生はそう言うが、しかしホシノちゃんだけは依然冷静なままなんだよな。一番動揺していてもいいところだというのに、一体全体どういうことなんだろうね。

 

 ……どうしようか? スキル無しだと、僕が出来ることってあんまりないんだよな。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 あの後ノノミちゃんとセリカちゃん、アヤネちゃんは家に帰り、僕と先生、それからホシノちゃんとシロコちゃんだけが学校に残った。外はすっかり暗くなり、風が窓を強く打ち付けている。

 

「えっと……シロコちゃん、もしかしてまだ何かやることがある感じ?」

 

「いや、少し話したいことがあっただけ。だけど……」

 

 シロコちゃんはそこで僕と先生の方を一瞥し、再びホシノちゃんの方を向き直った。

 

「……今日のところは、二人に任せる。私も、色々あって疲れちゃったし……だから、ホシノ先輩。()()()()()()()

 

「……そうだね、そうしよっか。()()()()、シロコちゃん」

 

「ん……先生、安心院(あんしんいん)さん」

 

 去り際にシロコちゃんが、こちらを見て、何か心配そうな表情を浮かべていたので、安心させるためにも頷いておいた。先生もそうしている。

 

 それを見たシロコちゃんは、今度こそ安堵の表情を浮かべ……対策委員会室を後にした。

 

「うへ〜、先生たちやるねえ? 私のかわいいシロコちゃんと、いつの間にか目と目だけで意思疎通が取れるようになってたなんて」

 

「…………」

 

「いやー、やっぱり二人とも侮れないなあ。おじさんはもう流れについていけなくて、いっぱいいっぱいだよ〜」

 

「"ホシノ。一つ、聞いてもいい?"」

 

「ん〜? 何を? なんでもいいけど」

 

 いつまでものらりくらりとしているホシノちゃんに対し、先生は距離を詰め──彼女に、彼女自身が書いた退部・退会届を差し出した。

 

 それを見たホシノちゃんは、一瞬硬直し──やはり()()()()()、いつもの調子でおちゃらけてみせた。

 

「ええ〜!? もしかして先生が私のカバンから漁ったの〜!? ちょっとちょっと先生、私じゃなかったらヘンタイって言われてても文句言えないよ〜?」

 

「"それで生徒を守れるなら、受け入れるつもりだけど……カバンを勝手に漁ったのはシロコだよ。だから、もし何か言いたいことがあるのなら──シロコには明日、ホシノが()()()()()()()"」

 

「……そうだね〜」

 

 ホシノちゃんは窓の方をちらっと見るが、その()()()()はたった今僕が塞いだ。ドアの方は先生が塞いでいる。

 

 今この部屋に、逃げ場はない。

 

「……そこまでされなくても、もう逃げたりしないよ。どうせ逃げたところで、安心院(あんしんいん)さんに捕まって終わりだろうしね」

 

「なかなか分かってるじゃねーか。そうなったら僕はもう手段を選ばねーぜ」

 

「"そういうわけで、ホシノ。()()について、聞かせてくれる?"」

 

「……立ち話、ってだけだと味気ないからさ。ちょっとその辺、一緒に歩きながら話そうよ。それでいいでしょ?」

 

 ホシノちゃんのその返答を聞いた僕らは、同時に頷き、そしてホシノちゃんと共に、廊下へと出ていった。

 

 さて、ここからどう転ぶかな。

 ホシノちゃんの話から見極めなければね。

 

 






 次回はまたまたお話回。
 ホシノはどうするのか。

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