色つくの早くてびっくりしました。
ありがとう。
第3箱「話を聞かせてもらおうか」
拝啓、砂塵の彼方にいる君へ。
砂上の楼閣から、君に語って聞かせよう。
僕が歩んで来た、騙られた物語を。
僕がシャーレに所属してから、実に一週間と少々の時間が過ぎた。先生の手伝いをしに来た生徒達……
めだかちゃん達から学んだことだが、どうやら他人と仲良くしておくことは、巡り巡って自分のためになるらしい。返ってくるのはいつになることやら。
……帰れるのはいつになることやら。
「で、先生は急にどうしたんだい。大して似合いもしねえのに、なにやら深刻そうな顔つきをしているけれど」
「"似合わないってのは自分でも重々承知なことなんだけどね、ちょっと
おや、僕に話? 先生から? わざわざ深刻そうな面持ちで訊ねてくるということは、やはり僕の処遇についての話とかかな? そうでないならば、労働条件の見直しなども考えられるが。
恐らく、生徒から届けられた悩みが重大だったから一緒に解決しに行こう、とかそういうのだろうけど。
「いいだろう、話してごらん」
「"やたら上からだね……"」
「おやおや、僕と先生の間に上下関係なんて存在しないだろう? 確かに僕は生徒で君は先生だが、
あえて突き放すように、高圧的に、見下しているようにそう告げる。大して逼迫した事態でなければ、先生はこれでハゲ散らかしたマスコットみたいになるし、ならないのならば、それは事態が重いことを意味する。
さて……先生、君はどう出る?
「"……ナジミ、その通りだよ。私は君になにかを強制する権利を有しているわけじゃないし、仮にできたとして、そんなことをするつもりは一切ない。だからこれは、『私』という一人の人間から、『
なるほど。僕がわざわざ言葉尻一つ取って、敢えて食ってかかった理由もお見通し……普段は腑抜けているように見えるが、やはりいざという時はまともな大人に見えるね。
逆説的に、この大人がまともに見える時は、それほど重大な事態ということなのだろう。
それならば、まあ、親愛なる箱庭学園98・99代生徒会長である黒神めだかの流儀に則り、独立連邦捜査部を執行するのも……やぶさかでない。
「いいぜ、どんなお願いでも聞いてあげよう。どうやら大マジに重大な事態らしいしね。そうでなくとも、面白そうだから先生について行く気は満々だったが」
「"ふう……それならよかった。もし断られたら、私はきっと寂しい思いをしただろうからね。それはそれとして、話を聞く気になってくれてありがとう"」
どういたしまして、と返してから先生と共にシャーレの部室から出ていく。どうせ先生のことだから、何も考えずに、大した準備もせずに出発すると思っていたが……ここまで的中するとはね。善吉くんよりもよっぽど読みやすい。
「さて、それじゃあ詳しく話を聞かせてもらおうか」
「──なるほど。つまりその
「"うん。言葉数もかなり少ない手紙だったし、詳しい経緯も書かれていなかったからね。相当逼迫した状況だと思うんだ。それこそ、生徒達だけじゃあどうしようもないくらいには"」
「いやあ、それにしてもキヴォトスってのはどこもかしこも治安が悪くて困ったもんだぜ。こちとら先生の趣味の時間と睡眠時間を増やすことに躍起になってるっつーのにさ」
「"毎日本当に助かってるよ、ありがとう。おかげでこの前なんて9時間睡眠出来たんだから!"」
「人間にとってそんなことは喜ぶべき事柄じゃねえと思うんだが」
まあいいさ。アビドス……連邦生徒会から盗んだ情報によれば、かつてはかなりのマンモス校だったんだっけか。それが今となっては、度重なる災害やそれに伴う財政難によってほとんど壊滅状態、か。
一応学校の創設者だった身としては、なかなか思うところがあるね。運が悪けりゃ箱庭学園もそうなったりしたのかな。ま、僕がそんなことにはさせねーが。
「"アロナから聞いた話なんだけどね。どうやらアビドス自治区の辺りは色々大変なことになってて、砂漠化しちゃってるらしいんだよね。街のど真ん中で遭難しちゃうくらい、なんて噂もあるらしいよ"」
「先生……僕には君が、特にこれといって遭難時の対策をしてねえように見えるんだが。まさかとは思うけど、スポーツドリンクや塩分補給の手段も無しに砂漠に突入するつもりかい?」
「"うん。だって、
こいつ……なんだこいつ……? まだ出会って一週間とちょっとだぜ? 裏切りとか考え……なさそうだな。うん、先生はこういう大人だ。
「僕は『頼れ』って言っただけで、『盲信しろ』なんてことは一度も言っちゃいねーんだが」
「"盲信なんてしてないよ。でも、信じてはいる。生徒を『信じる』ことが、私なりの頼り方なだけさ。ほら、言葉の上でも『信頼』ってよく言うでしょう?"」
「本当にああ言えばこう言うね、君は。ただ先生として、そんな風にのらりくらりと誤魔化すのは、生徒にとって悪影響なんじゃないのかい?」
「"私は先生である以前に大人でもあるからさ、こうやってのらりくらりと教え諭すことしかできないんだよ。それに
本当によく口が回る。だが先生。いくら大人だからとはいえ、こんな時にまで、一応は生徒である僕にいいところを見せようとしてるのはどうかと思うぜ。
「ああ構わないさ。そう言い始めたのは確かに僕だし、先生に倒れられて困るのも僕の方だしね。だからいざとなったら助けるさ。だから一言『助けて』って言うだけで、この話は終わることなんだけど」
「"ぐっ……だけどね
「へえ、そりゃあ良かった。見渡す限り廃墟と砂の山だが……もしかして先生は、あの砂の山がアビドス高校に見えているのかな。幻覚が見えているとなると、結構まずいと思うぜ。素直に助けを求めたらどうなんだい?」
「
何を隠そう、僕と先生はすでにアビドス自治区に到着している。およそ
元はと言えば、先生が「"私も良いところがあるって証明したい!"」と言い始めたのが運の尽きだった。いや、正直言ってここまで砂漠が広いとは思ってなかったから、僕の落ち度でもあるんだが。
ここまでは先生の顔を立てていたが、しょうがない。そろそろ冗談を言っている場合でもなくなってきたし、助け舟を出してやるか。
「先生」
「"……何かな、
「そんなに僕の手を借りることに負い目があるなら……あっちから僕達を見ている子に助けを求めればいいんじゃねーの」
僕はそう言いながら、電柱に隠れてこちらの様子を伺っている、
「"えっ!? えっと……こんにちは! それで、君はいつからそこに?"」
「──もう少し様子を伺おうと思ってたけど……バレたならしょうがない。ちなみにここには5分前くらいからいたよ。だから口喧嘩も全部見てた」
白髪で青色の瞳が特徴的なその生徒は、電柱の影からその姿を表し、先生と僕の方へと近づいてきてから自己紹介を始めた。
「初めまして。私は
小首を傾げながら、彼女はそう言った。
アプリの顔兼メインヒロイン登場。
ちなみに僕はウイが一番好きです。
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