なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 重い過去に足を掬われた経験があるのなら、
 過去の想いに救われたとしても良いはずだ。






第36箱

 

 

 

 

「──ねえ、ホシノちゃん」

 

 ──ここは……生徒会、室?

 

 なるほど、夢か。

 

「私ね、ホシノちゃんと初めて会った時、これは夢なんじゃないかと思って、何度も頬をつねったの」

 

 ……そんなことも言ってましたね。

 

「ホシノちゃんみたいな、可愛くて強くて、頼れる後輩がそばにいてくれるなんていう夢みたいなことが、本当に嬉しくて……ただ、こうしてホシノちゃんと一緒にいられることが、私にとっては奇跡みたいなものなの」

 

「……毎日毎日一緒にいるじゃないですか。昨日も今日も、明日もそうです。こんな当たり前なことで、何を大げさなことを」

 

「はぅ……だって……」

 

「『奇跡』というのはもっとすごくて、珍しいもののことですよ」

 

 だから私は、あなたにとっての奇跡なんかじゃ──。

 

「……ううん、ホシノちゃん。私は、そうは思わないよ」

 

 ──っ、ユメ先輩、私は……

 

「ねえ、ホシノちゃん。いつかホシノちゃんにも、可愛い後輩ができたら、その時は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユメ先輩。

 

 

 

 

 なあに、ホシノちゃん。

 

 

 

 

私、わたしは……。

 

 

 

 

 大丈夫だよ。落ちついて。

 

 

 

 

……私、もう、

分からないんです。

 

 

 

 

 分からないって、いったい何が?

 

 

 

 

自分が。

 

 

 

 

 ……うん。そうみたいだね。

 他にも、ある?

 

 

 

 

どうしていいか、

分からないんです。

 

 

 

 

 自分の好きにすればいいんだよ。

 

 

 

 

なにをしたいのか、

分からないんです。

 

 

 

 

 やりたいことをやればいいんだよ。

 

 

 

 

もうなにも、分からないんです。

私が、どうして、まだ生き──。

 

 

 

 

 ねえ、ホシノちゃん。

 

 

 

 

──なんですか、ユメ先輩。

 

 

 

 

 それは、ダメだよ。

 絶対にダメ。

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

 ホシノちゃんがそう思ってても、

 私が絶対に許さないよ。

 

 

 

 

……なんでですか。

 

 

 

 

 私は、そんなこと思ってないもん。

 

 

 

 

…………。

 

 

 

 

 ねえ、ホシノちゃん。

 きっと今、苦しいんだよね。

 

 

 

 

……そんな、ことは──

 

 

 

 

 自分の気持ちに嘘ついちゃダメ。

 大丈夫、誰も聞いてないから。

 

 

 

 

…………わたし、は……。

 

 

 

 

 聞かせてほしいな。

 ホシノちゃんの気持ち。

 

 

 

 

……私、ずっと苦しかったんです。

 

 

 

 

 うん。

 

 

 

 

 ユメ先輩がいなくなってから、

 今までずっと。

 

 

 

 

 ごめんね、ホシノちゃん。

 

 

 

 

先輩は悪くないんです。

私が、私が……。

 

 

 

 

 そんなことないよ。

 悪いのは私だもん。

 

 

 

 

でも……。

 

 

 

 

 ……それじゃあ、こうしよっか。

 きっと、間が悪かったんだよ。

 

 

 

 

 

 

……ごめん、なさい。

 

 

 

 

 いいって言ってるのに……。

 ほらほら、ホシノちゃん。

 思ってること、聞かせて?

 

 

 

 

……先輩がいなくなって、

すごく苦しかったんです。

 

 

 

 

 うん。

 

 

 

 

すごく悲しかったんです。

 

 

 

 

 ……うん。

 

 

 

 

心臓がきゅっとなって、

ぽっかり穴が開いたみたいで。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

苦しくて、辛くて、

悲しくて、寂しくて、

どうにかなりそうでした。

 

 

 

 

 ……そう、だったんだ。

 そりゃ、そうだよね。

 

 

 

 

今でも、ずっとそうなんです。

あの時私がもっと……って。

多分、一生このままです。

 

 

 

 

 うん……。

 

 

 

 

先輩にどう思われても、

誰になんて言われても、

私はこれを引き摺り続けます。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

毎朝、あのポスターを見るんです。

びりびりに破いたポスター。

ユメ先輩の、夢の跡。

 

 

 

 

 ……とっといてくれてるんだ。

 ありがとう、ホシノちゃん。

 

 

 

 

絶対に、忘れないように。

消えてしまわないように。

 

 

 

 

 ……でも、ホシノちゃん。

 それじゃあ……。

 

 

 

 

はい。悲しいまんまです。

いつまでも。

 

 

 

 

 ホシノちゃん……。

 

 

 

 

見るたびに心が痛みます。

涙が溢れちゃいそうになります。

あのポスターみたいに、

胸が張り裂けそうになります。

 

 

 

 

 …………。

 

 

 

 

……でも。

 

 

 

 

 ……?

 

 

 

 

ユメ先輩、聞いてください。

私、後輩が四人もできたんです。

 

 

 

 

 っ……そう、なの?

 本当に、アビドス高校に?

 

 

 

 

はい、本当です。それになんと、

同級生の友達もできたんですよ。

 

 

 

 

 そう、なんだ……。

 ねえ。その子たちって、

 どんな子なのかな?

 

 

 

 

とっても、すっごくいい子たちです。

本当に真剣にアビドスのことを

考えてくれて。

 

 

 

 

 ……うんっ。

 

 

 

 

その子たちと、

信頼できる大人のおかげで、

最近は結構楽しかったんです。

みんなのおかげで、私は──。

 

 

 

 

 ようやく、

 前を向けた?

 

 

 

 

 

 

「先輩はすぐそこにいるはずです!!」

 

 

 

 

 

 

……ほんの、少しだけですけど。

ちゃんと前を向くための、

準備ができました。

 

 

 

 

 ……やっぱり、もう少し

 時間はかかりそう?

 

 

 

 

分かりません。

一体私が前を向くまでに、

どれくらいの時間が必要なのか。

 

 

 

 

 ……そんなの、どれだけ時間が

 かかってもいいんだよ。

 

 

 

 

 

 

「ん、壊れない……もう一度……」

 

 

 

 

 

 

……ねえ、ユメ先輩。

 

 

 

 

 なあに、ホシノちゃん。

 

 

 

 

私、まだあそこに──

アビドスにいても、

いいと思いますか?

 

 

 

 

 ……それは、それはさ。

 私が決めることじゃないよ、

 ホシノちゃん。

 

 

 

 

 

 

「ホシノ先輩!! ここにいるんでしょ!?」

 

 

 

 

 

 

……そう、ですよね。

これは、私が決めないと。

そうじゃないと、ダメなことだ。

 

 

 

 

 うん、そうだよ。

 それにさ、ホシノちゃん。

 決めるのはホシノちゃんだけど──。

 

 

 

 

……はい。

 

 

 

 

 ホシノちゃんがそうするのを

 望んでる人なら、きっと、もっと、

 たっくさんいると思うよ。

 

 

 

 

 

 

「くっ……中々扉が開きません……!」

 

 

 

 

 

 

……そう、なんですかね。

 

 

 

 

 きっとそうだよ。

 私が保証してあげるね。

 

 

 

 

……ふふっ。それじゃあ、

あんまり信用できませんね。

 

 

 

 

 あははっ……。

 確かに、言えてるかも。

 

 

 

 

 

 

「"みんな! 安心院(あんしんいん)さんがやるから、一旦離れて!!"」

 

 

 

 

 

 

……ユメ先輩。

実は最後に一つだけ、

聞きたいことがあります。

 

 

 

 

 ──うん。分かった。

 何でも聞いていいよ。

 何でも答えてあげる。

 

 

 

 

……わたしは。

先輩から見て、

どんな後輩でしたか?

 

 

 

 

 ……そんなの、

 決まってるじゃん。

 ホシノちゃんは──。

 

 

 

 

 

 

「うわああっ!? 安心院(あんしんいん)さんやりすぎ!!」

 

 

 

 

 

 

 とっても可愛くって。

 

 

 

 

 とっても強くって。

 

 

 

 

 とっても頼りになる。

 

 

 

 

 私にとっての宝物で、

 奇跡みたいな後輩だったよ。

 

 

 

 

 

 

「──おや、何か来ているね」

 

 

 

 

 

 

……そう、なんですね。

 

 

 

 

 うん。とっても

 大切に思ってたよ。

 

 

 

 

私も、同じです。

 

 

 

 

 うん。

 知ってる。

 

 

 

 

 

 

「なっ……なんですか、これ……!?」

 

 

 

 

 

 

……ねえ、ユメ先輩。

 

 

 

 

 なあに、ホシノちゃん。

 

 

 

 

私、まだみんなと……。

アビドスのみんなと、

一緒にいたいんです。

だから……──。

 

 

 

 

 ……うん、それがいいよ。

 そして、それでいいんだよ。

 

 

 

 

 

 

「……しょーがねー、やるか」

 

 

 

 

 

 

 それじゃあ、ホシノちゃん。

 

 

 

 

はい、ユメ先輩。

 

 

 

 

 いってらっしゃい。

 

 

 

 

いってきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あんまり早く、

 こっちに来ちゃ

 ダメだよー!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かって、ますよ。ユメ先輩」

 

 

 

 

 目が覚めた。

 そこは既に、生徒会室ではなかった。

 

 なんて、都合のいい夢だろう。

 笑えてくる。涙が出るほど。

 

 それでも十分だ。

 きっと安心院(あんしんいん)さん辺りの計らいだろう。

 

「…………ぁれ?」

 

 ……身体が、動く?

 何故か知らないが、自由になっている。

 

 まだ立てる。

 なら守護(まも)れ。

 

 後輩たちを。みんなを。そして私の居場所を。

 私にとって、唯一残された意味のある場所を。

 

 私は立ち上がって、声の方へと向かった。身体がとんでもなく重い。一歩歩くだけで気絶しそうだ。

 

 だけど私は歩く。ここで諦めるわけにはいかない。みんなの声がした、気がした。だから、向かわなきゃ。

 

 目に入った扉から、光が漏れている。きっとあそこだ。そう信じて、私は薄暗い地下から、ほのかに明るい地上へと──足を進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神になるスキル過身様ごっこ(スペックオーバー)悪魔になるスキル飽くまで遊び(タイアードプレイ)答えを知るスキル模範記憶(マニュアルメモリ)敵より強いスキル無様な背比べ(ユーモアコントラスト)夢落ちにするスキル現実がちな少女(ワーストドリマイズ)無限を操るスキル無人造(インフィニティクエスト)因果混乱のスキル冷や水で手を焼く(スタートプレイ)敵を味方にするスキル昨日の敵は今日の奴隷(フレンドリーワールド)地獄を呼ぶスキル豪華地獄をご招待(ウェルカムヘル)失敗しないスキル失態失敗(オートファンブル)時を操るスキル時感作用(タイムバニー)バックアップを取るスキル私の代わりはいくらでも(マイオルタナティヴ)カリスマのスキル蹴愚政治(サーカスアンドサーカス)名前を奪うスキル名乗るほどのものではない(フルネームノートリアス)命名権のスキル名を名乗れ(フルネームミステリアス)無を従えるスキル伊達の素足もないから起こる(クールフロムゼロクール)巨乳になるスキル脅威の胸囲(バーストバスト)次元を超えるスキル次元喉果(ハスキーボイスディメンション)他者の経験値を奪うスキル弓矢に選ばれし経験者達(アーチェリーピッキング)生命を与えるスキル巣食いの雨(ファフロッキーズ)他者を吸収するスキル人間掃除機(ノウハウバキューム)魔界へ行くスキル魔界予告!(アナザーアナウンス)対象をレベル1に戻すスキル帰路消失(ロストパスワード)卵を産むスキル卵々と輝く瞳(ボイルドアイ)永久世界のスキルいつまでも史話合わせに暮らしました(エターナルエターナルライフ)潜在能力を引き出すスキル勿体ない資質(ポテンシャルヒット)言葉が実現するスキル有言実現(ネクストオネスト)千里眼のスキル目の届く場所(エリアフリー)地獄耳のスキル話は聞かせてもらった(リッスンバイチャンス)替え玉のスキル馬鹿めそれは偽物だ(キラリティテスト)生殺与奪のスキル存亡(ゼロサムリアル)自爆するスキル有数の美意識(ビューティフルラストシーン)戦争を起こすスキル手書きの架空戦記(プロモーションウォーズ)記憶に残らないスキル忘脚(レフトレッグス)因縁無効化のスキル生合成無視(シーケンスカタストロフィ)殺し合わせるスキル殺人協賛(ラストマーダー)大量増殖するスキル舌禍は衆に敵せず(モストラージホルダー)ブラックホルを操るスキル穴崩離(ダークホール)ステジを選べるスキル選択の夜討ち(ステージアドバンテージ)生まれ変わるスキル収監は第二の転生なり(セカンドライフインジェイル)確率操作のスキル確率隔離食感(アイソレートアベレージスペース)パラメ操作のスキル自由自罪(フリークライミング)世界創造のスキル頓智開闢(インテリジェントスタート)歴史を変えるスキル歴史的かなり遠い(イニシャライズヒストリー)生命を合成するスキル禁断の錬金術(イリーガルアルケミー)弱点消去のスキル若輩者の弱点(ウィークポイントレス)弱点付与のスキル溺愛を込めて(プレゼントフォーユー)リテイクを出すスキル思いやり直せ(フィールリテイカー)見たら死ぬスキル即視(デストモーメント)時間旅行のスキル時系列崩壊道中膝栗毛(エブリタイムスリップエブリデイドリーム)身体を乗っ取るスキル全身全霊に転移(メタスタシスフロムヘッドトゥテイル)予言のスキル真実八百(エイトハンドレットトゥルー)スキル強奪のスキル鹵獲膜(ロブカーテン)座標操作のスキル王の座標(キングマッピング)受胎のスキル成功者の後継者(サクセスサクシード)不死のスキル死なない遺伝子(アンデッドジーニアス)人格を作るスキル美調整(チューニングキャラクター)死人を操るスキル行進する死体(マーチングバッド)より強いものに勝つスキル数値黙殺(マーダーマスマティック)宇宙を作るスキル生まれたての宇宙(ベイビープラネット)大進化を操るスキル軽い足取り(ステップバイステップ)消滅のスキル目障りだ(アイバーニッシュ)終戦のスキル競争排除息(ハブアブレイクブレス)人間を改造するスキルお気の無垢まま(イノセントリモデル)死んでも戦い続けるスキル死者会(デスミーティング)偉人召喚のスキル故人的な意見(パストインターベンション)例外を設けるスキル起立気を付け異例(エクセプションプリーズ)天罰を下すスキル天伐敵面(ダイムペナルティ)勝負を切り上げるスキル頂点衷死(コールドゲーム)生贄のスキル逃げ出した人達(エスケープゴート)遺言を残すスキル死んでもなお現在(ダイイングメッセージ)幽霊化するスキルぼやけた実体(エログラミラージュ)空間歪曲のスキル掌握する巨悪(グラップエンプティ)占いのスキル敵衷率(オキュパーセント)キャパシティのスキル懐が深海(ディープポケット)拠点を築くスキル不思議の国の蟻の巣(ストロングホールドインミステリー)地の文に干渉するスキル神の視点(ゴッドアイ)兵隊を指揮するスキル驚愕私兵(サプライズアーミー)思想感染のスキル影の影響力(シャドウインフルエンス)結界を張るスキル防御爪(ディフェンススレイヤー)運命支配のスキル命令配達人(トランスポートプラン)森羅万象のスキル全血全能(コンプリートジャングル)暗黒物質を操るスキル晦冥住み(ダークマイスター)封印のスキル寝室胎動(スリーピングシェル)法律制定のスキル頬規制(ルールメイク)成長停止のスキル不老所得(インカムサポート)物質具現化のスキル控え目に描いた勿論(ドローイングオフコース)座ったまま戦うスキル座して勝利を待つ(シッティングウィナー)魂を吸うスキル吸魂植物(ポータブルソウル)迷宮制作のスキルためらい傷の宮殿(ヘジテイトパレス)再生のスキル蘇生組織(リピーターキッチュ)神殿召喚のスキル別想地(クロスユートピア)後光が差すスキル光ある者は光ある者を敵とする(シャイニングバックライトエネミー)最初からやり直すスキル質問を繰り返す(リセットクエスチョン)生命燃焼のスキル最後の最後の手段(ラストファイナルオペレーション)単に強いスキル人間強度(マンパワー)人体を操るスキル不自由な体操(マリオネットエクササイズ)心を操るスキル心神操失(エブリシングロスト)スキルを使い熟すスキル目一杯(スキルフル)スキルを使わないスキル実力勝負(アンスキルド)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、えっと……安心院(あんしんいん)さん、今だけで何個スキル使ったんですか……!?」

 

「たったの100個でそんなに驚かれてもねえ。ほら、僕からすれば、こんなもんは全体の1%にも満たない量だからさ」

 

「ますます規格外……一回戦ってみたい」

 

「シロコ先輩!? 何であれ見てそんな感想になるの!? 戦闘狂すぎるでしょ!!」

 

「あっ、()()()()()()()、撤退していきます!!先生、どうしますか!?」

 

「"……いいよ、放っておこう。それよりも今は──みんな、ホシノに言わなきゃいけないことがあるからね"」

 

 先生がそう言うと──みんなの視線が、私に向いた。

 

「あっ、お……おかえりっ! 先輩!!

 

「あーっ!! セリカちゃんに先を越されてしまいました!!」

 

「うっ、うるさいっ! 別に順番なんてどうでもいいでしょ!」

 

「セリカちゃん、どんだけホシノちゃんのこと心配してたんだい?」

 

安心院(あんしんいん)さんだってそうでしょ!? とんでもない量のスキル使って、『心配してる』って言ってるようなもんじゃん!!」

 

「まあ僕S.C.H.A.L.E(独立連邦捜査部)だからね。そりゃあ心配にもなるさ」

 

「卑怯すぎる!!」

 

「まあまあ……おかえりなさい、ホシノ先輩!

 

「はい、おかえりなさい、ですっ!

 

おかえり、ホシノ先輩。無事でよかった」

 

「……あれ〜? 安心院(あんしんいん)さんは言わなくていいの〜? あっでもシャーレだから」

 

おかえり、ホシノちゃん。()()()()()()()()()()()()()()そう言わせてもらうぜ」

 

「やっぱり卑怯すぎるって!!」

 

「"まあまあ、落ち着いて、セリカ……うん、それじゃあ私も。ホシノ、おかえり"」

 

 ……いつも通りの、対策委員会だ。

 私が好きな、対策委員会の空気だ。

 

 どうやって、私を助けに来たのか分からないけど……きっと、先生が──大人が、頑張ってくれたんだ。

 

 安心院(あんしんいん)さんも、済ました感じに取り繕っているけど、額に汗をかいている。それだけ、真剣だったのかな。

 

 でも、みんな笑顔だ。まるでそれは、私を助けられたことが、本当に嬉しいと言っているようで。

 

 つられて自然と口角が上がる。一緒に涙腺も緩むけど……それは何だか恥ずかしいから、必死で押し殺した。

 

「……なんだかみんな、期待したような表情を浮かべているけど……求められてるのは、あの台詞?」

 

 いつもみたいに、おどけてそう言ってみる。

 なんだか、それだけで嬉しくなった。

 

 あなぼこまみれの心が、二度と埋まらないはずの心が、なんだか満たされていくような気がした。

 

「ああもうっ! 分かってるなら焦らさないでよ!!」

 

 しっかり者のセリカちゃんをからかってみると、いつも通りに顔を紅くしてそう大きな声を出した。

 

 何だか今の感じ、青春っぽいもんね。気恥ずかしいよね、分かるよその気持ち。

 

 だけど、やっぱり。

 

 私は、ここが大好きだ。

 アビドスのみんなだけじゃなく。

 シャーレの二人も、大好きなんだ。

 

 だから、これだけは茶化さずに。

 心からの本音で、みんなに伝えよう。

 

「うへ〜……全く、可愛い後輩たちのお願いだし、しょうがないなぁ──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なじみアーカイブ

 

 2章  小鳥遊ホシノの独善的救済 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第36箱

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 全てが終わって、後輩たちも私をもみくちゃにするのをやめてくれた頃。私は安心院(あんしんいん)さんに、どうしても聞きたいことがあったので話してみることにした。

 

「ねえ、安心院(あんしんいん)さん。一つ聞きたいんだけど、いいかな?」

 

「ん? ああ、構わないとも。救出作戦の成功祝いに、何でも一つ質問に答えてやるさ」

 

「……それじゃあ、さ。安心院(あんしんいん)さん、私とユメ先輩を──会わせてくれたりとか、した?」

 

「……会ったのかい? 梔子ユメ……君の先輩に?」

 

「え……何さその反応。いや、だって……スキルでも使わないとあり得なくない、かな。私が相当参ってたのもあるけど、それにしたって──」

 

 ()()()()()()。夢と断じるには、あまりにも。

 

「……そうか、なるほど……ホシノちゃん、先に言っておくが、その件に関しては僕は本当に何もしてねーよ。扉をぶち破るのに躍起になっていたからね」

 

「えっ……いや、でも、確かに『いってらっしゃい』って、背中を押してくれて……その後、手を振って……」

 

「ホシノちゃん、教えてやるよ。人はそういうのを、奇跡と呼ぶんだぜ」

 

 ……奇跡。

 

 そっか。

 

「本当に、奇跡なんて起こるんだ」

 

「奇跡なんて、本当はどこにでもあるんだよ。生まれてきただけで奇跡だし、今生きているだけで奇跡。こうして君を助けられたのも奇跡だし、後輩たちが君を助けられて喜んでいるのだって奇跡なんだよ」

 

「……そんな、ことでも?」

 

「ああそうだとも。君がそう思えば、あまねく全てが奇跡の仲間入りさ。そしてそれは、君に限った話じゃない。覚えておきなさい、ホシノちゃん。例え君がそう思っていなくても、自分に自信が無くなりそうになってしまったとしても──」

 

 

 

君の存在は、誰かにとっての奇跡なんだよ

 

 

 

 安心院(あんしんいん)さんは透き通った青い空を背にして、私に向かって指をさした。太陽の光で照らされた安心院(あんしんいん)さんの表情は、優しげな微笑みだった。

 

 ……何だか気恥ずかしくなって、私はその場で後ろを向いた。ちょうど、安心院(あんしんいん)さんに背を向ける形で。そして、声をかける。

 

「……ありがとね、安心院(あんしんいん)さん。それじゃあさ、帰ろっか。()()()()()()に」

 

「……ああ、そうするとしようか……楽しみ、だぜ」

 

 その言葉を聞いて、私は歩き出す──と、その瞬間。黒服の言っていたことを思い出した。

 

 そういえば……安心院(あんしんいん)さんは、私よりも神秘保有量が少なかったのだったか。それなのにスキルをあんなに連発しているということは、余程効率よくスキルを使っているのだろう。

 

 さっきも蛇っぽい兵器相手に、100個もスキルを使っていたようだし……私が全力でスキルを100回も使ったら、神秘が枯渇しちゃうだろうなあ。

 

 まあ、しばらくしたら回復するからいいんだけど……限界超えて使うと色々とヤバいらしいし、あんまりそこまでやりたくはないよね。

 

 ……でも、いざという時のことも考えたら、やっぱり鍛えておいた方がいいかなあ。安心院(あんしんいん)さんにスキルの神秘消費量を抑えるコツでも聞いてみようかな。

 

「ねえねえ、安心院(あんしんいん)さん。ちょっと気になったんだけどさ、どうやってスキルを使った時の神秘の消費量抑えてるの? コツみたいなのがあれば、おじさんに聞かせてほしいな〜」

 

 振り返りながら、安心院(あんしんいん)さんにそう問いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

安心院(あんしんいん)、さん?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 少し考えれば、分かることだった。

 

 安心院(あんしんいん)さんはキヴォトスの外から来たんだ。だから、()()()()()()()()()()()()()()なんて知っているはずがない。

 

 私が。

 そのことに気が付かなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 安心院(あんしんいん)さんは、砂漠に倒れ伏していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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