なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 2分遅刻!!
 ごめんね!!




第40箱「任せてくれないかな」

 

 

 あの後イズナちゃんとはモモトークを交換し、今彼女が受けている依頼とシャーレが受けた依頼が完了したのちに再び集まり、忍術の使い方を教えることになった。

 

 いや、最初は断ったんだぜ。だけどイズナちゃん、それを聞いた瞬間見るからにしゅんっと落ち込んじまってさ。耳も尻尾も垂れ下がっちまって、いきなり太陽に雲がかかったみたいになってしまったというわけさ。ニアリー天岩戸。誰かアメノウズメを連れてこい。

 

 流石に「夢を応援する」とだけ言って、じゃあ後は頑張ってねとだけ伝えるのも、何となく居心地が悪い。それに、シャーレは生徒の味方だから。

 

 ……どうしようか。僕のこれはスキルであって忍術じゃねーんだけど──まあいっか、忍者系スキルを使って見せたあとにそれが出来るようになるまで鍛えてやれば。

 

 そうしてイズナちゃんと別れたわけなんだけど、去って行く時のスピードが速えのなんの。ホシノちゃんにどちらが速いか聞いてみたら「おじさんも寄る年波には勝てないよぉ〜」と言って苦笑いしていた。

 

 ……あの反応は多分、い(・)け(・)る(・)んだろうな。

 恐らくはギリギリってところなんだろうが。

 

 それはそうと、もう一つ驚いたことがあった。まあ端的にまとめるとイズナちゃんとハルカちゃんが仲良くなったってことなんだけど──いや、すまない。少し話を盛った。

 

 実際のところは思(・)っ(・)て(・)い(・)た(・)よ(・)り(・)も(・)意(・)気(・)投(・)合(・)し(・)て(・)い(・)た(・)といった感じか。まあこれにも理由はある。

 

 どうやらハルカちゃん、今回百鬼夜行に来るにあたってア(・)ル(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)達(・)を(・)呼(・)ん(・)だ(・)ら(・)し(・)い(・)。桜花祭を便利屋のみんなで回りたいんだとよ。健気でいいね。

 

 アルちゃん達とは最終日に合流するらしく、あまり長い間遊べるわけではない。それ故に、祭りを見て回る際に時間をかけ過ぎないため、イズナちゃんに案内役を頼んだらしい。実際は事情を聞き出したイズナちゃんが滅茶苦茶に押しまくってそうなっただけなんだが。

 

 ただまあ、ハルカちゃんとは意外といい感じだ。アルちゃんから頼まれた依頼の方も、この調子なら上手くいきそうだぜ。

 

 その後──つまりはイズナちゃんと別れた後、僕たちは今回の依頼主である河和(かわわ)シズコちゃんが看板娘を勤めている百夜堂(ももよどう)へと向かい……そしてたった今、そこに到着した。

 

「つーわけでここが百夜堂らしい。道ゆく人々のほとんど全員が『シズコたん』とやらにゾッコンらしいが、一体どういう店なんだろうねえ」

 

「もっ、もしかしたら危ないお店だったりするんでしょうか……そうだったら、消しちゃえば……いやでも、アル様はあんまりお店を消すなって柴関で言って……」

 

「いや〜ハルカちゃん、多分消さなきゃいけないようなお店じゃないと思うよ。噂から考えればメ(・)イ(・)ド(・)喫(・)茶(・)的な奴じゃない? お刺身あるかな〜」

 

「"ホシノ、多分あんまりこういうお店でお刺身は売ってないと思うよ……?"」

 

 いつまで刺身の話をするつもりなんだろうか、ホシノちゃんは。今度食わせてやるから我慢しろっての。

 

 と言っても、ホシノちゃん一人だけ海に連れて行ってやるのも違うか……とか、そんなことを考えながら、僕は百夜堂の扉を開けた。

 

「まあいいや、それじゃあ中に入ろうぜ。シズコたんとやらの顔を拝みに──」

 

「お頭(かしら)ァッ! ようこそいらっ──」

 

 僕は百夜堂の扉を閉めた。

 

「…………えっと、先生。こ(・)こ(・)が百夜堂で合ってんだよな? それとももしかして、間違えて任侠の事務所に来ちまったのかな」

 

「"えっ、いや、そんなことはないと思うけど……ちゃんと教えてもらった場所だし、看板にも百夜堂ってちゃんと書かれてるし"」

 

「もしかしたら安心院(あんしんいん)さんの聞き間違いかもしれないし、もう一回中に入ってみたら〜?」

 

「ふむ……ハルカちゃん、君はどうしたらいいと思う?」

 

「えっ? あっ、もう一回開いて、ダメそうなら……その後に全部消しちゃえばいいと思います……えへ、えへへ……」

 

 まあそれもそうか。それにもしかしたら、あの店員らしい子は劇の練習をしているだけかもしれねーし。

 

 そう考え、僕は百夜堂の扉を開けた。

 

「わざわざシャーレ組からいら──」

 

 僕は百夜堂の扉を閉めた。

 

「シャーレ組って言ってたぜ、先生。もしかしてここ、百夜堂じゃなくて百夜組だったりしない?」

 

「"いや、それはないと思うけどなあ!? えっ、いやでも、もしかしたらこの看板も実はあくまで表の顔で、裏の顔は任侠の事務所ってことなのかも……"」

 

「うへ、それじゃあ喫茶店はシノギってこと? うわ〜、恐ろしくて体の震えが止まらないよお〜!」

 

「えっと、それなら……折角ですし、私がこの辺り一帯全部消し飛ばして──」

 

「うわあああっ!! これは違う!! 違います!! 違うんですっ!! だから消し飛ばさないで!!??」

 

 突然扉が勢いよく開き、そして先ほどまでの声とは違う声が辺り一体に轟いた。飛び出して来た子の服装は、いわゆる和風メイドのものであるように見える。シンプルにウエイトレスと言うべきだろうか。

 

 なるほどな、この子が道ゆく奴らが言っていたシズコちゃん──シズコたんか。もしかしたら任侠趣味の子がそうなのかもしれないが、何となくこっちな気がする。

 

「"……初めまして、君がシズコかな? 私はシャーレの 観測不能 です、よろしくね"」

 

「はあ、はあ……初めまして、河和(かわわ)シズコです……ふう。先生方、百夜堂へようこそ! にゃんにゃん!」

 

「"にゃんにゃん……?"」

 

 わお、凄まじいプロ根性だ──と素直に感心していたところで、再び百夜堂の扉が勢いよく開かれ、そこからさっきの任侠趣味の子が現れた。

 

「百夜堂へようこそいらっしゃいマシタァッッッッ!! 不肖朝比奈(あさひな)フィーナ! シャーレ組からいらっしゃったお頭達を全身全霊でおもてなしいたしマスッ!!」

 

「フィーナ、フィーナ……! とりあえずそういうのは後にしよ! ねっ!?」

 

 わはは、シズコちゃんからは既に苦労人の匂いがするぜ。からかいすぎたのは少し悪かったかな。後でちゃんと謝るとしよう。

 

 それから、任侠趣味の子はフィーナちゃんと言うのか。元気が有り余っていて、見ているだけで気持ちがいいね。まあ少々元気すぎるとは思うがよ。

 

 ……っつーか、百鬼夜行の連中はどいつもこいつもキャラが濃いな──いや、アビドスやゲヘナも似たようなもんだったけど。

 

 今度アヤネちゃんとか、モモフレが絡んでいない時のヒフミちゃんとかと遊んでみるか。相当気が休まるはずだ。もちろん騒がしいのも、それはそれでアリだがよ。

 

 という風に、本日すでに何度目か分からない長考にふけっていたところで、突然近くから爆(・)音(・)が(・)聞(・)こ(・)え(・)た(・)。

 

 まさかハルカちゃんが何かしでかしたのかと思ったが、あの子は無意味な爆破はしないから違うね。というか僕の隣にいるから100%違う。

 

 みんな同じ方向を向いているので僕もそちらを見てみると、何やら天狗の面を被って暴れ回っている連中がいた。

 

 なるほどねえ、僕たちが呼ばれたのはあ(・)い(・)つ(・)ら(・)の(・)対(・)処(・)をしてほしいからってわけだ。

 

「もしかして、まさかまた暴れてるの!? あーもうっ!! 何でこのタイミングで来るのよあいつら!! ほんっとうにやってられな──あっ」

 

「おや、どうしたんだいシズコちゃん。別に暴れてる連中に対して怒ったところで、誰も君のことは責めねーと思うけどな」

 

「そっ、そういう問題じゃないんです……ちらっ……えっ、と、きゃーシズコ怖ーい……なんちゃってー……えへっ」

 

 ああ、なるほど。さっきから先生の方をちらちら見ていたから何かと思っていたが、かわい子ぶって先生の好感度を稼ぎたいのか。

 

 まあ止めはしないさ。そういうのも僕好みだし、したたかというか、計算深いのはまったく嫌いじゃない。意図せずして僕の好感度を稼いでいるとは、露程も思っていないだろうね。

 

 しかしシズコちゃん、僕からわざわざ君に伝えるようなことはしないが、君のその行動はま(・)っ(・)た(・)く(・)意(・)味(・)を(・)成(・)し(・)て(・)い(・)な(・)い(・)んだよ。

 

 先生の行動基準は好(・)感(・)度(・)で(・)は(・)な(・)い(・)からね。

 

「とっ、とにかく! 話の続きは魑魅(すだま)一座を始末してから──」

 

「あー、シズコちゃんだっけ? 張り切ってるところ悪いんだけど──ここは私と安心院(あんしんいん)さんに任せてくれないかな?」

 

「えっ!? いやでも、あの数を二人でって……」

 

「おいおいホシノちゃん、いきなり何を言ってんだよ君は。こんなに大人数なんだから──」

 

 と、そう言っていた途中だったんだが、ホシノちゃんは呆れたみてーな表情を浮かべると、ちょちょいと手招きしてきた。何だその態度。

 

 まあいいさ、しょーがねーから話だけでも聞いてやるか。僕は少しだけしゃがみ、ホシノちゃんの口元に耳を近づけた。

 

「安心院(あんしんいん)さんさあ、ハルカちゃんに私の戦い方を見せたいんじゃないの?」

 

「……その事、君には話してなかったと思うんだがね」

 

「何となく分かるってば。安心院(あんしんいん)さんと私の仲でしょ?」

 

「まあそうだね、以心伝心できるし阿吽の呼吸で動ける程度の仲ではある──ああ、なるほど。そ(・)う(・)い(・)う(・)こ(・)と(・)かい?」

 

「そゆこと〜」

 

 そういうことならで(・)き(・)る(・)限(・)り(・)分(・)か(・)り(・)や(・)す(・)く(・)やってやるとするか。僕は「失敗ばかりの銃作り(ガンスミステイク)」を応用して持っているSMG(サブマシンガン)をSR(スナイパーライフル)へと変化させた。

 

 つまりホシノちゃんは、僕に「アルちゃんになりきれ」と言いたかったというわけだ。そうでなくとも、SRを使えと。

 

 僕がそうした上でホシノちゃんがハルカちゃんの動きを模倣すれば、ハ(・)ル(・)カ(・)ち(・)ゃ(・)ん(・)も(・)理(・)解(・)し(・)や(・)す(・)い(・)だろう。

 

「"……二人とも、お話は終わったかな? それで、私の戦術指揮は必要? もしも必要なら、私も頑張るよ"」

 

「いんや、いらないんじゃないかな〜? ここにいる五人全員で戦うならまだしも、私たち二人だけだし」

 

「それにいつでも先生がいるってわけじゃない。特にハルカちゃんなんかは、むしろ先生の指揮を受けないで戦う方が多いだろうさ」

 

 僕たちがそう言うと、先生は優しく微笑みながら引き下がった。そしてそのまま、ハルカちゃんにも声をかけている。

 

「"ハルカ、あの二人──ホシノと安心院(あんしんいん)さんは強いよ。だから見ておけば、もしかしたら何かタメになることがあるかもね"」

 

「……わ、分かりました。それじゃあホシノさん、安心院(あんしんいん)さん……そ、その、私からの応援なんていらないかもしれないですけど……頑張ってください!!」

 

「うん、頑張るよ。安心院(あんしんいん)さんも、ね?」

 

「当然だとも。百夜堂の二人にも、僕たちの強さを見せつけて安心してもらおうじゃねーか(安心院(あんしんいん)さんだけに)」

 

 僕はそう言って、直後に「人間的得意点(シューマッチポイント)」を使って身体能力を強化した。制限時間は3分くらいかな。

 

「うへ、それじゃあア(・)レ(・)、一緒に言ってみようか、安心院(あんしんいん)さん」

 

「そうだね、別にお気に入りのセリフってわけじゃねーが、ア(・)レ(・)を言うと何故だか気合いが乗るし──それじゃあ」

 

 

「S.C.H.A.L.E(独立連邦捜査部)を執行する。」

 

 

 僕たちは同時にそう啖呵を切り、魑魅一座に向かって思い切り突撃した。

 

 






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