息抜きで書いていたはずなのにいつの間にか50話です。長すぎる。
それもこれもブルアカって奴が面白すぎるのがいけないんだ。
全部消し飛んだとは言ったものの、しかし実際のところ、まだ多くの魑魅一座が残っていた。ダメージが入っているのは確かだとはいえ、キヴォトスの奴らっつーのはどいつもこいつも頑丈で困るねえ。
それはかの老害──ニャテ・マサムニェも同じことだった。どうやらヘイローの有無に関わらず、キヴォトスの奴らは頑丈らしい。
「くっ……なっ、何が起こったんだ!? 爆発……一体誰が!?」
「"
「ふふんっ、とーぜん!」
「くっ……ここまでの爆発なのだから、あるいは先生ごと──と思っていたのだが……! 先生おぬし、
「"だから言ったでしょ? 『心配なんかしなくていい』ってさ。初めから分かりきっていることを、心配する理由なんてないからね"」
煽るねえ。カエデちゃんをはじめとした生徒連中を信用しすぎなんじゃあないのかい──っと。イズナちゃんが行ったね。こうなればもう、僕の仕事はほとんど無いみたいなもんだ。
「キヴォトス最強を目指す忍び! 真の主君の窮地を救うため、今ここに参りました!」
「っ……イズナ! まさか、今の話も全て──」
「はい、聞いていました。聞いてしまいました。雇い主の話も……イズナの夢を応援してくれる、先生の気持ちも!!」
「おぬしの言う夢は
「確かに、実在はしないという人もいるかもしれません! だけど、
「おぬしの夢を応援すると言っている、先生まで巻き込むことになるのだぞ! その我儘のせいで迷惑をかけてしまうことになるとは──」
「思うわけないじゃん、先生がそんなことを──底抜けのお人好しなんだってこと、商店街の会長さんも気が付いてるんじゃないの〜?」
「──いつの、間に……後ろに……?」
いやー、危なかったね。かの老害が余計なことを言って、イズナちゃんの決意を揺らがせようとしてきやがったが、ホシノちゃんの介入のおかげで何とかなった。
ま、今更その程度で揺らぐ程度の信頼でもねーとは思うがよ。現にイズナちゃんの目には、もう一切の迷いは見て取れない。
……段々と、周囲に隠れ潜んでいた魑魅一座が集結してきたね。あの爆発を見ても向かってくるって、一体何円積まれたんだか。
「あ、あなたは……ホシノ殿! この度はご迷惑をおかけして……!」
「うん? あー、いいよいいよ。どうやら事情が事情みたいだし……それに、おじさんも水を差すようなことしたくないしね〜」
「……ありがとうございますっ!! イズナ、夢を応援してくれた皆さんのために、頑張りますっ!!」
「んー……いんや、
「ホシノ殿……はいっ!! 肝に銘じますっ!!」
ふむ、やはりホシノちゃんを連れてきたのは正解だったね。本当ならばハルカちゃん相手に先輩風を吹かせてやりたかったんだが、まあこの際誤差みてーなもんだろう。
「さて、と。
「蹴散らすことには変わりない──が、そうだな。カエデちゃん、修行部とお祭り運営委員会の連中、あと何分くらいで到着すると思う?」
「えっ? うーんと……多分、もうすぐ着くと思うよ? だってほら、上見て、上!」
「うえ、というと──ああ、なるほど! 確かに
「ニャぁンてぇん丸うううゥゥゥッ!!」
「委員長!! これ危なすぎマスゥぅ!!??」
……百夜堂の屋台と一緒にシズコちゃんとフィーナちゃんが降ってきてるが、どうやって空から降ってくる屋台の上に乗ったんだろうか。
そんなくだらないことを考えている間に、百夜堂の屋台は地面に激突した。よくよく考えると地面に激突しておきながら傷一つ付いていないって、かなり頑丈だよな。
「──と、
「……到着するなり人の心を読むのはやめてくれたまえ、ミモリちゃん。それからツバキちゃんは随分と眠そうだが、どうしたんだい?」
「……ほら、夜……だよ……? 眠る時間、だし……」
まあそれはそうなんだが、ツバキちゃん、君ってば昼間も大概眠る時間じゃなかったかな。まあ寝る子は育つとも言うし、咎めるようなことはしねーがよ。
「ふう、着地成功! ここまでですよ、会長──いえ、ニャン天丸!」
「ほ、本当に着地成功なんデスか、これで……?」
「ニャン天丸じゃない、ニャテ・マサムニェだ!! どいつもこいつも、そこら中から駆けつけおって……!」
自分からニャン天丸を名乗っておきながら、よく言ったもんだぜこいつ。格好付けて眼帯なんか付けてやがるが、
……誰だか知らねーが、何となくイラついてきたな。鰐塚とかいう奴は、一体どんな奴だったんだろうか。思い出さなきゃいけねーことが多すぎて嫌んなるぜ。
「……だが、まあいいこの際だ。今この場で全員まとめて始末してしまえば、今度こそ本当に、儂が桜花祭の運営権を手にすることが出来るのだからな! やれ、魑魅一座! あいつらに目にもの見せてやれ!!」
「うへ、ハルカちゃんの爆破のおかげで減ったとはいえ、それでもまだ結構いるねえ。さて、それじゃあおじさんも頑張るとしようかな──」
「おっと、少し待ちたまえホシノちゃん、それに他のみんなも。まあこのまま戦っても勝てるとは思うがよ、しかしいかんせんこの人数差だ──20倍は下らねー差だ」
銃弾だって勿体無いし、あんまり長引かせるのも退屈だ。だからここは、僕も一つ手を打つべきだろう。
「イズナちゃん。君は確か、
「え? はい、初めて
「ああ、そうとも。桜花祭の花火にだって引けを取らねーくらいに、どでかい一発を見せてやるぜ」
僕はそう言い、頭上に片手を掲げた。使うスキルは……そうだな。火を司るスキル「
先生の方を見ると、特に心配そうな顔はしていなかった。ようやく僕が人前で無駄な無理をするような奴じゃねーってことを分かってくれたみたいで何よりだぜ。
さて、ホシノちゃんは──こちらも、問題はないね。やや心配そうにはしているが、こちらも同様に、僕が無茶をするような性格ではないと分かってくれたようだ。
頭上にはゆらゆらとゆらめく巨大な火球が出来上がった。イズナちゃんはこれ以上ないってくらいに目を輝かせている。尻尾も揺れまくっているし。
ここまで喜ばれると、サービスの一つや二つしたくなってくるね。技名でも叫んでみようか──ついでに、火の色も桜色に変えてみるとしよう。
「それじゃあいくぜ。
ま、焼かれるのは魑魅一座の連中の全身なんだが。
そんなくだらないことを考えながら、僕は頭上に火球をぶっ飛ばし──そして直後、上空で大爆発を起こし分裂した火球は、魑魅一座の連中を目掛けて飛んで行った。
「わっ!? 何だこれどうなってんだ!? 消えない!!」
「あっつ!! なんかギリギリ火傷しないくらいの熱さなんだけど!?」
「なっ……おい、魑魅一座!! 儂の悲願まであと少しなんだぞ、もう少し踏ん張ったらどうなんだ!?」
「流石に後遺症とか火傷跡とかを残すわけにはいかないからねえ。僕なりの配慮──もとい、嫌がらせだ。人に迷惑をかけた分くらいは焼かれていきなさい」
「
「わあ、火ダルマの刑、デスね!
「えげつないっていうか、ここまでされてるのを見ると、同情してきちゃうわね……」
……イズナちゃんとフィーナちゃん、あとはさっきから先生に爆破の出来を褒めてもらっているハルカちゃん以外にはドン引きされている気がするが、まあいいさ。
こんくらいキヴォトスでは日常茶飯事だろ。
まるで僕がおかしいみたいな扱いをするのはやめろ。
「……えっと、とりあえず……魑魅一座は私たちで追っ払っちゃおっか?」
あのさあホシノちゃん、僕たち友達だろう。そんな表情で僕を見ねーでほしいんだがね。
……頭痛まで来ちまった。ほんと、骨折り損だ。
付け焼き刃にしちゃあ、儲けは大きかったがよ。
後日談というか、今回のオチ。
魑魅一座・路上流とニャン天丸──ニャテ・マサムニェはあの後、大した反撃をすることもできずに敗北した。
まあ無理だろうね。イズナちゃんとハルカちゃん、そしてホシノちゃんまでいたんだから、並大抵の戦力じゃあ相手にすらなりやしねえ。
それに加えて怒っているシズコちゃんとフィーナちゃんもいたし、修行部だって実力者揃いだ。先生の指揮なんざなくとも、壊滅させるのにそう時間はかからなかった。
ツバキちゃんの注目を集めるスキル「
イズナちゃんのイズナ流忍法奥義──改め、速度超過のスキル「
加えてフィーナちゃんも同様に、連射速度上昇のスキル「
そうして魑魅一座を蹴散らしたあと、マサムニェを捕まえて一連の騒動は終わりを迎えた。シズコちゃんが
自業自得──もとい、因果応報だ。
絵面はほとんど血祭りだったがよ。
やはりお祭り運営委員会、血祭りも範囲内。
ああ、そうそう。何故か全てが終わったタイミングで廃墟にチセちゃんがやってきて、崩れてしまった廃墟の残骸を、高温持続のスキル「
話を聞くと、どうやら陰陽部の部長から頼まれていたらしい。手は貸さなかったというのに後処理だけしに来るというのは、何というか、ちぐはぐな印象を受けるね。
そもそも
折角解決した事件をわざわざ掘り返して、今後の時間を無駄にするのは悪手だろうよ。
ちなみにチセちゃんからは
「春の宵 空に浮かぶは 燃ゆる夢」
という俳句をいただいた。
多分、彼女なりに称賛してくれたのだろうね。うっすらと儚げな笑みを浮かべていたし、モモトークの交換も快諾してもらえた。耐え難い頭痛に耐えた甲斐があった。
今後陰陽部に用事ができた時は、チセちゃんを頼ることにしよう。
ちなみに連絡先については、今回関わった子たち全員と交換しておいた。百鬼夜行で何かあった時のためにも、パイプは繋いでおかなければいけないからね。
と、まあ、事件についてはこんな感じだ。
ここからは、その後の話。正しく後日談。
イズナちゃんはすぐさま関係各所に謝罪行脚に向かったが、騙されていたのならしょうがないということで、特にお咎めは無かった。
一応言っとくが、僕たちが手を回したから怒られなかったとか、そういうのじゃあないぜ。
この場合はもっとシンプルに、イズナちゃんの人柄や、その実直さがそうしたのだろう。シズコちゃん達とも仲直りし、今では百夜堂にもちょくちょく顔を出しているらしい。
それから忘れちゃいけねーのが、ハルカちゃんとの関係性だ。
僕はホシノちゃんと行動を共にしていたので、桜花祭の最終日に何があったのか、詳しいところまで把握していたわけではない。それでも大体は分かっているが。
一つだけ言えるのは、ハルカちゃんとは今も──桜花祭が終わった後も、たまに遊んでいるらしいということだ。シャーレに併設されているカフェで、二人仲良く話しているのをよく見かけるから、間違いない。
先生と一緒に花火を見たことによって、イズナちゃんの中ではより一層先生の存在が大きいものとなったらしく、今では先生のことを
ちなみに僕のことを師匠と呼ぼうとしていたが、流石にやめさせた。忍術を学ぶのなら、僕よりももっと適任がいるはずだからね。
次に、ハルカちゃんのこと。アルちゃんから依頼されて連れてきた彼女だったが、結果的には連れてきて大正解だったね。
ハルカちゃん本人の成長があったというのもさることながら、突発的な行動をする回数が以前より少しだけ減った、というのは、万年金欠の便利屋連中からすれば嬉しいことだろう。
まあハルカちゃんが何回建物を吹っ飛ばしたところで、あいつらは普通に怒りもしねーどころか、むしろハルカちゃんの身を案じていたのだろうが。
さて、そんなわけで、ハルカちゃんには友人もできたし、成功体験を積ませることもできた。アルちゃんからの依頼は達成できたと言っていいだろう。
……桜花祭に招待した便利屋の連中が、ハルカちゃんの「皆さんは私をどう思っているのか」という質問に対してどう答えたのかは、僕がわざわざ説明するまでもないことだろう。
ただ一つだけ言えることは、便利屋の連中は、イズナちゃんとハルカちゃんの案内で、楽しいお祭りの時間を過ごしたということだけだ。
お祭り運営委員会が用意した、ミレニアムに特注したホログラム花火も、おおむね大好評だったらしい。シズコちゃんもフィーナちゃんも、本当に嬉しそうに「頑張ってよかった」と語っていたよ。
修行部は桜花祭のフィナーレ当日も、自主的に会場の警備にあたっていた。魑魅一座が暴れてお祭りを台無しにすることを警戒していたらしい。
が、しかし、最終日が始まってしまえば、その魑魅一座の連中もお祭りを楽しんでいて拍子抜けしたらしい。最終的には、修行部もお祭りを楽しんだようだ。
これが、事の顛末。百夜ノ春ノ桜花祭に関連して発生した、一連の事案に対する決着。終わってみればおおよそ大団円で、どこもかしこも由緒正しいお祭りムードだったとさ。
以上、後日談終わり。
そういうわけで、一件落着。
果たして次は、どんな所からシャーレに対する依頼が来るのかね。僕としてはそろそろ、ミレニアム辺りから依頼が来てくれると嬉しいんだが。
僕の脳がどうなっているのかについて、そろそろ明かしておかなければいけないだろうし。
──後日談は、確かに終わった。
だけど一つだけ、一人分だけ、
平等主義者たる僕としては、流石にこれを無視するわけにはいかないだろう。故に、他の連中の後日談と同様に、これも思い出しておこうと思う。
小鳥遊ホシノの、
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