今書いてるやつが行き詰まったので息抜きでこっち書きます。逃げたわけじゃないです。本当です。
第52箱「暇つぶし相手くらいには」
おはよう、世界。
さあ、勇者よ、目覚めの時だ。
愛と勇気さえ有していれば。
AIでも勇者足り得るのだと、証明してみせろ。
百鬼夜行で行われた桜花祭でのごたごたをどうにかしてから数日が経過した。当然のことながら、大きな仕事をしたからといって数日休むなんてことは、僕たちシャーレの人間には許されない。
そんなわけでここ数日は仕事漬けだった。仕事っつっても、僕にできることはそう多くはねーんだけどさ。僕、別に好きで仕事してるわけじゃねーし。
つーか、好きで仕事してるやつは
「そういうわけで、僕としてはきみもそういう連中と同じ類の人間だと踏んでいるのだけど、その点どうなのかな、
「いや、別に全然そんなことはないんですけど……!?」
「あれ、そうなんだ。きみはミレニアムサイエンススクールの生徒会組織──セミナーに所属しているうえに、そこで会計職を勤めているんだろう? 好きでもないのによくもまあそんなことができるねえ」
「好きでもない、というわけでもないというか……うーん、正直上手く言語化できないというか……」
「ま、わざわざ言語化するほどのことでもない、と。そういうことなのかな──」
僕たちは今、シャーレに併設されているカフェで駄弁っているところだ。仕事はとっくに終わらせてるから、今日の午後は丸々オフだ。珍しいことに。
そんな折、シャーレのカフェにユウカちゃんが来ていたのを発見したので、こうして絡んでいるというわけだ。
ユウカちゃんはちょくちょくシャーレに来ては先生に
まったく、今の僕の姿を見たら前の世界の連中は何と言うことやら。
そんなことは置いておいて。ユウカちゃんがわざわざここまで来た理由は、どうやら先生に用事があったかららしいんだが。
「生憎先生はミレニアムの方に向かっちまってね。いやー、ここまで見事なすれ違いを見たのはいつぶりかな。ドンマイ、ユウカちゃん」
「……そこまで心のこもってない『ドンマイ』は初めて聞きましたよ、ナジミさん」
「僕のことは親しみを込めて
「そんなにこだわることなんですか、それ……」
僕にとっちゃあ大事なことなのさ。まあこだわり以外にも色々と、
スキルを連続して使うと耐え難い頭痛がくるという、どうにも生きづらい体になっちまった僕としては、そんなことは些事だがよ。
あーあ。先生は仕事が終わるなりミレニアムに向かっちまったから、本当に暇で暇でしょうがない。ホシノちゃんあたりを呼び出して遊ぼうかとも思ったが、しかし彼女だって忙しいだろうし。
そういうわけで、今に至る。
「ま、先生にはどうせ後々会うことになるだろうさ。えーっと、確か先生に助けを求める手紙を送ってきたのは……ゲーム開発部だったかな?」
どうやら部活がピンチらしいが、今回はアビドスの時とは違って、わざわざ僕が先生に付き添う必要はないと思ってね。
そういうわけで、今回はお留守番と洒落込んでいるわけだ。ユウカちゃんに絡んでいるのも、実は暇つぶしの一環だったりするんだぜ、マジで。
なんて、そんなことを考えながらまだ見ぬゲーム開発部とやらの顔を想像上で思い浮かべていたタイミングで、目の前のユウカちゃんは大きなため息を吐いた。
「はあ……あの子たちは、本当にまた……
「その辺はハッキ……情報収集のスキル『
「えっ今ハッキングって言いかけましたよね!?」
気のせい気のせい。
そんな風に誤魔化してやり過ごそうとしたものの、しかし目の前にいるユウカちゃんの驚きようを見るに、どうやら僕のしでかしたことは結構な大事らしかった。
キヴォトスならハッキングくらいは日常茶飯事だろうに、何をそんなに驚いているのやら。
「いやいやいやいや!
「ああ、そういうこと。確かにゲヘナやトリニティに比べれば随分と強固なファイアウォールだったね。でもまあ、現にこうして僕は情報を手に入れているわけだし」
「あの、いいですか
「顔に泥を塗られたどころの騒ぎじゃない、と。そういうわけかな?」
僕がそう質問すると、驚きのあまり立ち上がっていたユウカちゃんは一度深呼吸をしてから着座し、こめかみを抑えながらため息を吐いて、深刻そうに頷いて見せた。
「エンジニア部が作った超強固なセキュリティを突破した上で、ヴェリタスでも捕捉しきれないレベルのハッキングスキル……この前チヒロ先輩が言ってたのは
「ヴェリタスっていうと、あれかな。キヴォトス最強のハッカー集団、だっけ? 情報を探っている途中でこっちが探られていた感覚がしたから、偽装工作に偽装工作を重ねて逃げおおせたんだけど、なるほど。いいハッキングの腕をしているらしいね」
「ヴェリタスは『いいハッキングの腕』で済ませていい腕前のハッカー集団じゃないんですってば! ああもう、チヒロ先輩でも無理なんだったら、
と、ユウカちゃんが頭を抱えながら机に突っ伏しているのを眺めながら、僕は呑気にコーヒーなんて飲んでいたわけだが。
ちょうどそのタイミングで、僕のモモトークに一件だけメッセージが届いた。
「おや、僕にモモトークを送ってくるやつがいるだなんて珍しい。先生かな。アビドスの連中かな。それとも便利屋かな。はたまたヒフミちゃんかな。もしかして百鬼夜行の面々かな……おや?」
「十分多いじゃないですか……って、
「いやなに、どうやら僕の端末がハッキングを受けたらしくてね。知らない連絡先からメッセージが送られて来たんだ」
「……
「そのまさかさ。メッセージの送り主は──」
モモトークの相手は、そんな名前らしかった。
メッセージの内容は──。
はは、ははは。
面白い。こっちもちょうどミレニアムには行きたいと思ってたんだ。僕の身体がどうなっているのかも含めて、現状を確認したかったしね。
そうと決まれば話は早い。
お望み通りに動いてやるぜ。
「……ユウカちゃん。きみ、確か先生に用事があるんだったよね。それならこれからミレニアムに戻るんだろう?」
「えっ? ええ、まあ……そうですけど」
「そうかいそれなら都合がよかった。僕からきみに、
そんなことをユウカちゃんに向けて言い放ってから、およそ三秒後。ユウカちゃんは僕が何を言わんとしているのかを理解したらしく、本日何度目かの大きなため息を吐いた。
「──はあ……何となく、察しましたよ。それで? 私は一体これから何をさせられるんですか?」
「僕をこのヒマリとかいう子のいそうな場所まで案内してほしい。『
「別にいいですけど! 歩いて向かうんだったらちゃんと、その……
「もしかして先生からそう言えって伝えられてたりする?」
僕がそう問うと、ユウカちゃんは眉を少し吊り上げて怒っているかのような表情を浮かべながら、僕に向かって大きく頷いた。
僕が暇つぶしに出かけることと、カフェにいた誰かに絡むことを予測してないと、そんな真似はできない気がするんだが……もしや先生、僕の知り合いの全生徒にそんな言伝をしたのだろうか。
まったく、先生はどうしてここまで過保護なんだか。もう杖なんかなくたって歩けるんだぜ、今の僕は。
……あれか。先生は僕のことを、未だに『生徒』として捉えている、と。そういうことなのか。下に見ているとか、そういうわけではないというのは分かってるんだが、それにしたって過保護すぎやしないかい。
前に誰かが『
「ま、杖の一本や二本くらいは甘んじて受け入れてやるか。僕にとっては、こんなもんはあってもなくても変わらないから、持てるもんは待っといた方が得だしね──それじゃあ、ユウカちゃん」
「準備できました? それじゃあ早く行きましょう、ヒマリ先輩がいつまでも同じ場所にいるとも思えないですし」
へえ、その口振りから考えると、いくつか拠点を持っているのかな。パブリックイメージのハッカーとは少々ズレるところがあるけれど、まあこれも僕にとっては些事でしかないね。
「さて、それじゃあ行こうか。キヴォトス最強のハッカーチームを束ねる長だかなんだか知らねーが、暇つぶし相手くらいにはなってくれるかな──っと。そうだ、忘れてた」
危ない危ない。これでも僕は一度ヴェリタスの看板を傷付けたわけだし、今からその長の元に向かうことも考えると、
「ユウカちゃん。最後に一つだけ聞いておきたいことがあるんだけど」
「ん? なんですか改まって。まあ、いいですけど」
「菓子折りとか持って行った方がいいかな?」
「……自分で考えてください」
この調子だとそう遠くないうちに、ユウカちゃんの中で僕の扱いが先生と同列になるかもしれない。
ユウカちゃんの目付きは、いやがおうにもそう感じさせるもので、未だかつて僕にそんな視線を向ける奴はいなかったもんだから、新鮮だったぜ。
次回は未定です。
息抜きで書いてるだけなので。
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