いつになったらゲーム開発部出せるんでしょうか。
「部長から離れて。」
と、そんな怒気の籠った声が聞こえてきたのは、僕が液晶から身体を出して、ヒマリちゃんの頬に手を触れた瞬間だった。冷や汗が肌を伝って僕の指に触れている。
声の主は──桃色の長髪と赤いヘッドホン、それから
「おいおいちょっと待ちたまえよ。先に僕の情報を探ってきていたのはそっちの方だろう? それなのにこの程度で銃を向けるだなんて、一体どういうつもりだい?」
「部長から離れて。二回も言わせないで。それから、情報を探っていたのはそっちの方でしょ。ミレニアムのデータベースに侵入した上、ヴェリタスから逃げ仰せて──」
「いいや違う。確かに僕はミレニアムのデータベースから無傷で情報を引き抜いたさ。だけど、ヒマリちゃんが僕の情報を探り始めたのは
確か……風紀委員会と交戦した後からだったかな。視線を追うスキル「
「結果、ヒマリちゃんが僕のことを探っているらしいということが分かったのさ。だから、きみが考えているのとは順序が逆で、ヒマリちゃんが探り始めたのが先なんだよ──
「私のことまで……部長。
冷や汗の量がどんどんと増えていくヒマリちゃんに対して、エイミちゃんは僕から視線と銃口を逸らさずにそう聞いた。
「──ええ、まあ……だって独立連邦捜査部シャーレに突如として所属した経歴不明の人物だなんて、そんなの気になるに決まっているじゃないですか?」
えっ。ここで開き直る?
もう少し言い訳頑張ってくれよ。
「……
「本当さ。あとそれから、僕のことは親しみを込めて
さらにヒマリちゃんに顔を近づけて圧をかけながら、そんなことを聞いてみる。おい、目を逸らすなよ。なあ、知ってるんだろう?
「まあいいや。それよりもエイミちゃん、さっさとその銃を下ろしちゃくれないかな。このままじゃあ不安でおちおち話もできやしねーぜ」
「部長から手を離す方が先。さっきので確信したけど、
「認識が甘いんじゃないのかい、エイミちゃん。
「……ちなみに、それは何故なのですか、
と、目の前のヒマリちゃんが不敵な笑みを浮かべながら──冷や汗も据え置きだが──そんなことを聞いてきたもんだから、僕は呆気に取られちまった。
ミレニアム最高のハッカーともあろうものが、
「エイミ!!」
──なるほど、そういうことか。と、気付いた時には既にエイミちゃんは僕の隣にまで接近していて、その銃口はやはり僕の方を向いていた。
「おいおい、その程度なら生身で……?」
生身で受けられる。そう言おうとしたのだが、しかし何か、今のエイミちゃんはどこか先ほどの彼女とは違う部分があるように思えてならなかった。
指先は、既に引き金を引き始めている。
ふと、ヒマリちゃんを見た。視線は僕の後ろに向いていた。思えば、先ほどからそうだった──ヒマリちゃん、
こういう時には相手の視界を覗き見るスキルである「
脱出した後に確認すればいいし。
「ッ! 消え……いや、後ろか」
「まったくもう、困っちまうぜ本当にさ。そんな風に脅されちまうと、僕としてはそっちの期待に応えるべく一京個のスキルを見せびらかしたくなっちまうぜ」
「なるほど、それが『
エイミちゃんの後ろを取ったものの、しかし二人して
エイミちゃんは冷静に僕との距離を取り、ヒマリちゃんを隠すような位置に移動した。ふむ、なるほど、そういう感じなのか。
困っちゃうよね。こっちとしては、もっと面白い反応が見てみたいんだがよ。
「それよりも、だ。僕はたった今、エイミちゃんの放った銃弾を生身で受け止めるつもりだった。だけど直前でどうにも拭いきれない違和感を覚えてね──
「ええ。増強のスキル『
ヒマリちゃんが中空に手をかざすと、そこを起点としてタッチパネルのようなものが展開された。青白く発光していて半透明。近未来的な印象を抱かざるを得ない。
恐らくは僕が気付いていない間にあれを僕の後ろに出現させ、それによってスキルを使ったのだろうね。まったく、油断も隙もあったもんじゃねーぜ。
それから、スキルで攻撃力を増強したと。ふむ、確かにホシノちゃんとかヒナちゃんとかなら耐えられそうではあるがね。僕はスキルの数こそ多いけれど、あそこまで頑丈というわけではないから、まあその辺は人によりけりか。人外だけど。
「それより、
「ん? ああ、
「それでは、先ほどからスキルを大量に使っているのも……」
「意図的なものだよ。嘘やハッタリなんかじゃないってこと、これでよく分かっただろう?」
杖を床について姿勢を正しながら、二人に向かってそんなことを言ってみる。僕としてはそろそろ対話に持っていきたいんだが、しかしエイミちゃんがいつまで経っても銃を下ろしてくれなかった。
うーん、どうしようかな。一応こちらもヒマリちゃんに呼ばれて来ているわけなんだけど、この調子だと多分、エイミちゃんには情報が共有されていないのだと思う。
大方僕の戦闘データでも取りたがっているのだろうが、しかしなあ。先生のいないところで生徒と戦闘すると、あとで色々と面倒なんだよな……。
まあいいや。面倒なだけだし。
とりあえずエイミちゃんの銃を壊すとしようか。
「……指を、銃の形に──ッ!?」
ヒマリちゃんはどうやら僕が何をしようとしているか気付いたらしい。少し遅れてエイミちゃんも事態に気付き、僕へと接近しようとする動きを見せる、が。
指先を銃口に変えるスキル「
「ばきゅ──」
「──ん?」
「……おや、ようやく目覚めましたか。気分はどうですか? 何か身体に違和感があったりは──」
……知らない天井──いや、さっき見たな。エイミちゃんと戦いになりそうになった部屋の天井だ。そして僕の横で何やらデータを取っているのはヒマリちゃんか。
となると、僕は
「そこのところ、きみはどう考えているのかな、ヒマリちゃん」
「まあ脳は『人体の神秘』とも言いますからね。特にあなたの脳──一京ものスキルを用いることが出来る脳ともなれば、何が起こっても不思議ではないと考えています。それは例えば、脳に対する過負荷による唐突な意識消失ですとか」
ふむ、そうなるか。少なくとも、ヒマリちゃんにすら──『全知』にすら未だに未解明であると。
いやしかし、こうなってくると僕の仮説もいよいよ疑わしくなってきたね。だって、
『スキルを使いすぎると神秘が枯渇するので気絶する』だとか、『段々と僕の存在がキヴォトスに馴染んできているから弱体化している』だとか。
というか、そもそも。
どうにも、何か見落としている気がしてならねーぜ。
「まあいいや。それで? どうしてきみはエイミちゃんを買い出しに向かわせて、一人だけで僕と対峙しているのかな」
「おや、目覚めたばかりだというのにそこまで把握しているのですね。それも一京のスキルのうちの一つですか?」
「いいや、もっとシンプルに状況から推測しただけさ。まあきみは既に知っているようだが、あまりスキルに頼り切りとはいかない状況なんだよね」
「ふふ……ええ、存じていますとも。なにせこの私はミレニアム史上三人しか与えられていない『全知』の称号を与えられている超天才病弱美少女ハッカーこと明星ヒマリなのですから!!」
……あー、そういう感じね。
「まあ超天才病弱美少女ハッカーであることは事実なんだろうし置いておくとして、だ。今回わざわざ僕と接触しようとしたのはどうしてなのか、そこのところお教え願いたいんだよ」
「ああ、先ほどから時々何かを気にしているような
そう言ってからヒマリちゃんは居佇まいを正し、薄く儚げな微笑みを浮かべて、言い放った。
「特異現象捜査部の部長、超天才病弱美少女ハッカーの明星ヒマリと申します。ぜひ仲良くしましょうね、『全能』の
──その
ここ最近結構意識して文字数を4500文字くらいに収めているんですけど、どうなんですかねこれ。迷いながら書いてます。
感想・評価・ここすき等よろしくね。