なじみアーカイブ   作:Minus-4

54 / 70


 いつになったらゲーム開発部出せるんでしょうか。




第54箱「超天才病弱美少女ハッカー」

 

 

部長から離れて。」

 

 

 と、そんな怒気の籠った声が聞こえてきたのは、僕が液晶から身体を出して、ヒマリちゃんの頬に手を触れた瞬間だった。冷や汗が肌を伝って僕の指に触れている。

 

 声の主は──桃色の長髪と赤いヘッドホン、それから()()()()()()()()()()()といった特徴的な出で立ちをしていて、そいつが僕に向けてSG(ショットガン)を構えていた。

 

「おいおいちょっと待ちたまえよ。先に僕の情報を探ってきていたのはそっちの方だろう? それなのにこの程度で銃を向けるだなんて、一体どういうつもりだい?」

 

「部長から離れて。二回も言わせないで。それから、情報を探っていたのはそっちの方でしょ。ミレニアムのデータベースに侵入した上、ヴェリタスから逃げ仰せて──」

 

「いいや違う。確かに僕はミレニアムのデータベースから無傷で情報を引き抜いたさ。だけど、ヒマリちゃんが僕の情報を探り始めたのは()()()()()()()()なんだよ」

 

 確か……風紀委員会と交戦した後からだったかな。視線を追うスキル追視検(メイクアップイグザム)を使ってみたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()もんだから、それも含めて調べてみたんだよね。

 

「結果、ヒマリちゃんが僕のことを探っているらしいということが分かったのさ。だから、きみが考えているのとは順序が逆で、ヒマリちゃんが探り始めたのが先なんだよ──和泉元(いずみもと)エイミちゃん。その辺り、ご理解いただきたいところだがね」

 

私のことまで……部長。安心院(あじむ)ナジミの言ってること、本当なの?」

 

 冷や汗の量がどんどんと増えていくヒマリちゃんに対して、エイミちゃんは僕から視線と銃口を逸らさずにそう聞いた。

 

「──ええ、まあ……だって独立連邦捜査部シャーレに突如として所属した経歴不明の人物だなんて、そんなの気になるに決まっているじゃないですか?」

 

 えっ。ここで開き直る?

 もう少し言い訳頑張ってくれよ。

 

「……安心院(あじむ)ナジミ。さっき言ったこと、本当?」

 

「本当さ。あとそれから、僕のことは親しみを込めて安心院(あんしんいん)さんと呼びなさい──と、常々からそう言っているということは、わざわざ言わずとも知っているんじゃないのかな」

 

 さらにヒマリちゃんに顔を近づけて圧をかけながら、そんなことを聞いてみる。おい、目を逸らすなよ。なあ、知ってるんだろう?

 

「まあいいや。それよりもエイミちゃん、さっさとその銃を下ろしちゃくれないかな。このままじゃあ不安でおちおち話もできやしねーぜ」

 

「部長から手を離す方が先。さっきので確信したけど、安心(あじ)……安心院(あんしんいん)さん、指一本動かさずにヘイローを壊せるでしょ。だから、離すのが先」

 

「認識が甘いんじゃないのかい、エイミちゃん。()()()()()()()()()()()()()──ま、そんなことするつもりは全くもってねーんだがよ」

 

「……ちなみに、それは何故なのですか、安心院(あんしんいん)さん?」

 

 と、目の前のヒマリちゃんが不敵な笑みを浮かべながら──冷や汗も据え置きだが──そんなことを聞いてきたもんだから、僕は呆気に取られちまった。

 

 ミレニアム最高のハッカーともあろうものが、()()()()()()()()()()()()()()()んだがね。僕も一応、それなりにシャーレ所属生徒としての活動はしているから、人助けに精を出してみているのは余裕で分かるはずなんだが──。

 

 

エイミ!!

 

 

 ──なるほど、そういうことか。と、気付いた時には既にエイミちゃんは僕の隣にまで接近していて、その銃口はやはり僕の方を向いていた。

 

「おいおい、その程度なら生身で……?」

 

 生身で受けられる。そう言おうとしたのだが、しかし何か、今のエイミちゃんはどこか先ほどの彼女とは違う部分があるように思えてならなかった。

 

 指先は、既に引き金を引き始めている。

 

 ふと、ヒマリちゃんを見た。視線は僕の後ろに向いていた。思えば、先ほどからそうだった──ヒマリちゃん、()()()()()()()()()()()()()()()

 

 こういう時には相手の視界を覗き見るスキルである欲視力(パラサイトシーイング)があれば便利なんだがね。人吉くんに貸したままついぞ帰ってくることはなかったから、ないものをねだっても仕方あるまい。

 

 脱出した後に確認すればいいし。

 

「ッ! 消え……いや、後ろか」

 

「まったくもう、困っちまうぜ本当にさ。そんな風に脅されちまうと、僕としてはそっちの期待に応えるべく一京個のスキルを見せびらかしたくなっちまうぜ」

 

「なるほど、それが腑罪証明(アリバイブロック)というわけですか……実際にこの目で見てみると、想像よりもはるかに困惑しますね?」

 

 エイミちゃんの後ろを取ったものの、しかし二人して狼狽(うろた)えているような様子は見せない。やはりこれだけじゃインパクトが不足していたかな。

 

 エイミちゃんは冷静に僕との距離を取り、ヒマリちゃんを隠すような位置に移動した。ふむ、なるほど、そういう感じなのか。

 

 困っちゃうよね。こっちとしては、もっと面白い反応が見てみたいんだがよ。

 

「それよりも、だ。僕はたった今、エイミちゃんの放った銃弾を生身で受け止めるつもりだった。だけど直前でどうにも拭いきれない違和感を覚えてね──()()()()()()()()()()()、ヒマリちゃん?」

 

「ええ。増強のスキル果ての明星(パーフェクションヴィーナス)を使ってエイミの攻撃力を()()しましたから、まともに喰らって無事に済む人は……キヴォトス広しといえども、両手で数えられる程度なのではないでしょうか?」

 

 ヒマリちゃんが中空に手をかざすと、そこを起点としてタッチパネルのようなものが展開された。青白く発光していて半透明。近未来的な印象を抱かざるを得ない。

 

 恐らくは僕が気付いていない間にあれを僕の後ろに出現させ、それによってスキルを使ったのだろうね。まったく、油断も隙もあったもんじゃねーぜ。

 

 それから、スキルで攻撃力を増強したと。ふむ、確かにホシノちゃんとかヒナちゃんとかなら耐えられそうではあるがね。僕はスキルの数こそ多いけれど、あそこまで頑丈というわけではないから、まあその辺は人によりけりか。人外だけど。

 

「それより、安心院(あじむ)──安心院(あんしんいん)さん、もっと気にすることがあるんじゃないの?」

 

「ん? ああ、()()()()使()()()()のことかな。それなら問題ないよ、大した意味のない──効果の薄いスキルであれば、基本的にはどれだけ使っても大丈夫だということは分かっているからね」

 

「それでは、先ほどからスキルを大量に使っているのも……」

 

「意図的なものだよ。嘘やハッタリなんかじゃないってこと、これでよく分かっただろう?」

 

 杖を床について姿勢を正しながら、二人に向かってそんなことを言ってみる。僕としてはそろそろ対話に持っていきたいんだが、しかしエイミちゃんがいつまで経っても銃を下ろしてくれなかった。

 

 うーん、どうしようかな。一応こちらもヒマリちゃんに呼ばれて来ているわけなんだけど、この調子だと多分、エイミちゃんには情報が共有されていないのだと思う。

 

 大方僕の戦闘データでも取りたがっているのだろうが、しかしなあ。先生のいないところで生徒と戦闘すると、あとで色々と面倒なんだよな……。

 

 まあいいや。面倒なだけだし。

 とりあえずエイミちゃんの銃を壊すとしようか。

 

「……指を、銃の形に──ッ!?

 

 ヒマリちゃんはどうやら僕が何をしようとしているか気付いたらしい。少し遅れてエイミちゃんも事態に気付き、僕へと接近しようとする動きを見せる、が。

 

 ()()()

 

 指先を銃口に変えるスキル手銃の関係(ハンドサーヴァント)を使って、僕はエイミちゃんに向かって銃弾をぶっ放した。

 

「ばきゅ──」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「──ん?」

 

「……おや、ようやく目覚めましたか。気分はどうですか? 何か身体に違和感があったりは──」

 

 ……知らない天井──いや、さっき見たな。エイミちゃんと戦いになりそうになった部屋の天井だ。そして僕の横で何やらデータを取っているのはヒマリちゃんか。

 

 となると、僕は()()()()使()()()()()()()()後、あの二人に保護されたということになるのかな。いやしかし、別に直前まで頭痛は来ていなかったんだが……。

 

「そこのところ、きみはどう考えているのかな、ヒマリちゃん」

 

「まあ脳は『人体の神秘』とも言いますからね。特にあなたの脳──一京ものスキルを用いることが出来る脳ともなれば、何が起こっても不思議ではないと考えています。それは例えば、脳に対する過負荷による唐突な意識消失ですとか」

 

 ふむ、そうなるか。少なくとも、ヒマリちゃんにすら──『全知』にすら未だに未解明であると。

 

 いやしかし、こうなってくると僕の仮説もいよいよ疑わしくなってきたね。だって、()()()()()()()()()()()()()って、そんなことあるかな。

 

『スキルを使いすぎると神秘が枯渇するので気絶する』だとか、『段々と僕の存在がキヴォトスに馴染んできているから弱体化している』だとか。

 

 というか、そもそも。

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 どうにも、何か見落としている気がしてならねーぜ。

 

「まあいいや。それで? どうしてきみはエイミちゃんを買い出しに向かわせて、一人だけで僕と対峙しているのかな」

 

「おや、目覚めたばかりだというのにそこまで把握しているのですね。それも一京のスキルのうちの一つですか?」

 

「いいや、もっとシンプルに状況から推測しただけさ。まあきみは既に知っているようだが、あまりスキルに頼り切りとはいかない状況なんだよね」

 

「ふふ……ええ、存じていますとも。なにせこの私はミレニアム史上三人しか与えられていない『全知』の称号を与えられている超天才病弱美少女ハッカーこと明星ヒマリなのですから!!

 

 ……あー、そういう感じね。

 

「まあ超天才病弱美少女ハッカーであることは事実なんだろうし置いておくとして、だ。今回わざわざ僕と接触しようとしたのはどうしてなのか、そこのところお教え願いたいんだよ」

 

「ああ、先ほどから時々何かを気にしているような素振(そぶ)りを見せていたのはそういうことでしたか。それならば、そうですね。話を分かりやすくするためにも、ここは今一度自己紹介をさせていただくとしましょう」

 

 そう言ってからヒマリちゃんは居佇まいを正し、薄く儚げな微笑みを浮かべて、言い放った。

 

特異現象捜査部の部長、超天才病弱美少女ハッカーの明星ヒマリと申します。ぜひ仲良くしましょうね、『全能』の安心院(あんしんいん)さん?」

 

 ──その()()()()だけで、ヒマリちゃんが僕をここに呼んだ理由が分かった気がした。

 

 

 






 ここ最近結構意識して文字数を4500文字くらいに収めているんですけど、どうなんですかねこれ。迷いながら書いてます。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。