ようやくゲーム開発部出せます。
つーわけでシャーレの部室に戻ってきたわけだが、帰ってきてすぐさま仕事に手を出したもんだから、今日やるべきことは全部終わっちまった。
現在時刻は夕方の四時。出かけるには遅すぎるし、かといって暇つぶしをするには長すぎる。もうちょっとヒマリちゃんのところで時間を潰しておくべきだったか。
このまま帰ってくる先生を待ち続けるというのも、何というか芸のない話だ。書類の確認をしてもらうためだけに待つって、非効率極まりねーよな。
ま、今までが合理的すぎた分、こういうところでバランスを取っておくべきなのかもしれないね。合理的すぎて黒服の奴みたいになっても困るし。
前の世界ではともかくとして、少なくともキヴォトスでは『生徒の味方』として、なおかつ『先生の味方』として振る舞っておいた方が得だろうし。
そして何より、こっちの方が面白いしね。
「とりあえずは、そうだな。暇つぶしにカフェでも行って、そこにいた奴にだる絡みでもするか」
文字通り、暇な時間を潰すためだけに、僕はシャーレに併設されているカフェに向かうことにした。
ここ最近はアビドスの連中とも顔を合わせてねーし、そろそろ顔を出しに行くべきだろうか。セリカちゃんとか、もしかしたら寂しがっているかもしれないしね。
アビドスで思い出した。僕の学籍について赤裸々に語らせていただくんだが、結局アビドスに置きっぱなしのままだ。以前にも言ったことだとは思うが、学籍を置いていないと色々と面倒くさいことになりかねないのでね。
そこまで赤裸々じゃないって? いいんだよ細かいところは。
学校の授業──まあ
もっとも、そこで取り扱う教科なんかは極めて普通のものだから、少々物足りないのがたまに傷だが……しかしまあ、たまには初心に立ち返ってそんなことをするのもいいだろう。忘れがちだが、僕は休暇でここに来ているわけだしね。
いやはやまったく、いつになったら帰れるのやら。このキヴォトスに存在する全てのお悩みを解決することが帰還の条件とかだったら、流石に僕でも怒りのあまり暴れ散らかしちまうかもな。
そんなことしねーし、そんなことはありえねーと思うがよ。
さて。そんなことを考えているうちに、僕はカフェへと到着した。大抵の場合は十六時頃を境として遊びに来ている面子が変わるんだが、はてさて、今日はどんな感じに、なって、いる……ことやら……。
「……今日、定休日だったっけな」
いや、そんなことはないはずだ。だって今日の昼にユウカちゃんとここで話したし。いやいや、そんなことがないならこの惨状は何だ。閑古鳥が鳴きまくってるじゃねーかよ。
考えられる線としては、そうだな。
いや流石にないな。あの子に限ってそんなことはない、はずだ。完全に僕の偏見にはなるんだけど、こういう所が営業しているかどうかのチェックを、彼女は欠かさなそうな雰囲気がある。
それじゃあ、こんなのはどうだ。
これもないだろうね。スキルを使っている何者かがいるのであれば、僕のスキルで探知できる。敵意があった場合は侵入を察知するスキル「
だったらこの可能性はどうだろう。
……まあ、普通に考えたらこれか。特に今は先生もいないし、不在の
何となく気になって、携帯を取り出しアカウントのフォロワー数を確認してみる──うっわ128万人だって、わはは、やっべーなこの組織。
この規模の組織の広報アカウントが一応はいち生徒である僕に任されているの、リスク管理的にはどうなんだろうか。その辺りはアロナちゃんが上手くやってくれるんだろうか。
……いや、こう言っちゃなんだが、あの子に任せる方が怖いな。
まあいいや、いちいち考えるのもめんどくせー。どうせ何を考えたって、カフェには誰もいねーって事実は変わんねーんだし。
「っと。そういうわけでソラちゃん、僕ってば物凄く暇を持て余しちまってるからさ、エンジェル24のコンビニアルバイト、手伝ってもいいかい?」
「えっ──うわああぁぁぁっ!? い、いつから来てました!?」
「『
「……まあ、私としては助かるので、別にいいんですけど……いやでも、シャーレの人とはいえ部外者は流石に──」
何やら細かいことを気にしているようだが、そこまで気にしなくたっていいののに。
どっちにしろ僕は「
「あっ、あのっ
盗まねーっつーの。
僕のことを何だと思ってんだ。
そんなこんなでおよそ四時間ほどソラちゃんの仕事を手伝い……いや、嘘をつくのはやめよう。正直に語らせてもらうと、客が来なさすぎてやることがなかった。
最後の一時間なんて酷かったぜ。僕とソラちゃんの二人でレジのカウンター裏にある椅子に腰掛け、世間話に興じているという有様だった。
このご時世だ、客がいる時にこんなことしてたら即座にインターネットで晒し上げられた挙句、大炎上して店じまいって感じになっちまうだろうね。
がしかし、そもそもこのコンビニエンスストアには──エンジェル24
そういうわけだ。この僕が炎上なんてヘマをむざむざかますかよ。最悪スキルでどうとでもなる──ただの雑談にここまでする必要もないとは思うが。雑談なんだから雑でありたいところだぜ。
雑談の途中、ソラちゃんの勤務時間が二十四時間三百六十五日であるということが発覚したのには流石に驚いたが……まあ、あの子いっつもバイトしてるしな。
エンジェル24の営業形態はどうかしている──というかソラちゃんは、もはやエンジェル24と同化している。
どういう体力をしているんだろうかと思い、その辺りも突いてみたが、タネは単純に、来店する客の数が少ないから仕事も少ない、ということらしい。
それにしたってどうなんだって話ではあるんだがよ。
と、そんなことを思い返しながら読んでいたインターネット小説も読み終わっちまった。そこそこ面白かったから評価も付けておこう。
いやあ、こういう暇つぶしをしたい時にネット小説は最適だね。品質はピンからキリまで多種多様だが、何より無料で読めるのが大きい。
サイト内の最高評価は十作品にしか付けられないという縛りがあるのだけはいただけないが……しかしまあ、そうでもしないと平均評価がインフレしちまうか。
とりあえず今回の作品の評価は……星九ということにしておこう。暇つぶしのつもりだったんだが、途中からは結構夢中で読み進めちまったからね。
さて、それで? 今の時間は……なるほど、深夜0時ね。ふむ、そうかそうか。そういうことか。
先生のモモトークを確認してみる。外泊するという
もう一度時計を見る。深夜0時を跨いでいる。
日付が、変わっている。
……あの野郎。
土に埋められてえならそう言えよ。
どうせゲーム開発部とやらに捕まってこの時間になってるんだろ。こっちがらしくもなく律儀に待っててやったっつーのに、こんな扱いをされるなんてね。
つーかゲーム開発部とやらはいつまで先生を拘束してんだ。一体どんな用があったら丸一日先生を拘束できるんだ。
直接確認しに行くか。
僕は「
「なあ、おい、お前いつまでこんなところでゲームしてるつもりなんだ?」
「うわああぁぁぁっ何っ!? ていうか誰!?」
へえ、ここがゲーム開発部とやらの部室なわけか。いやあ、なんつーか、名前に恥じない部室をしているね。そこかしこにレトロゲームの機体が置かれている。
それから、先生。昔懐かしの携帯ゲーム機を随分と楽しんでいたみてーじゃねーかよ。
「"あ、
「よう。僕を放ったらかしてやるゲームは楽しかったかよ、先生。何時間待ってたと思ってるんだ?」
「えっ、
「いやいやいや!! どう見てもあの感じは私たちの味方じゃないよ!! ユウカとかの味方だよ絶対!!」
「知らない人……!」
「……? 部室内の人数増加を確認。検索……」
それで、こいつらがゲーム開発部の部員どもか。僕の目の前でひっくり返ってる桃色の奴と、こちらを警戒している緑色の奴と、
……なんだ、こいつ。こんなに精巧なロボット、僕は見たことねーぞ。もしかしたら、
あ。
ああ。
あーー。
「……なあ、
「当機の、機体名──
「ちょっと、アリスちゃん!? いきなり初対面の人にそれは──」
「そうか。そりゃあいいね、随分と愉快な感じだ」
「あれ、もしかしてこの人、意外とノリいい……?」
桃色の子からの評価を聞き流しつつ、僕は先生に対して「
(先生、聞こえているかな。聞こえているなら声には出さずに脳内で返答してくれ)
("……
(それはもういい。そんなことより、だ。このロボットについて聞きたいことがあるんだが、
("えっ? ああ、アリスがロボットだってこと、気付いてたんだ。立入禁止区域の廃墟の奥の方で眠ってたんだよ")
(そうか。詳細な説明は省くんだが、アリスは危険だ。だからこれからいくつかの質問をして
「"えっ!?"」
声に出すなっつってんのによ。ま、今のは流石に突拍子もなさすぎたか。反省しなければね──破壊に関してはマジだがよ。
だって、人間と見分けが付かないロボット──しかも高度な人工知能を搭載しているとなると、本人に自覚があるにせよないにせよ、デカグラマトンとの関与は疑ってかかるべきだろう。
「"ちょっ、
「理由に関しては後で説明してやるっつーの。それじゃあ
「ミドリ、ミドリ。もしかしてだけど
「もしかしたら、セミナーに頼まれて私たちの監視をしにきたのかも……」
桃色のと緑色のがこそこそと話してるが、やや的外れだね。確かにセミナーから今後
さて、僕の『どうしてここにいる』という質問に対して、
「はい。先生と
「そうかい、嘘はついていなさそうだね。それじゃあ次の質問だ──」
と、僕が次の質問をしようとしたところで。
「お姉ちゃん! なんか
「……よし。ここはお姉ちゃんに任せなさい! 絶対何とかするから!」
先ほどから僕を見ながら二人でコソコソ話をしていた二人──モモイちゃんとミドリちゃんという名前らしい──のうちモモイちゃんの方が、おもむろにゲームのコントローラーを取り出して、僕に向かって話しかけてきた。
「まあまあ! 今はアリスのことも気になるだろうけどさ、一旦これやってみてよ! さっきアリスにもクリアしてもらったんだけど、私たちの作ったゲーム、その名も
「……今は、アリスちゃんと話してるんだが。そのゲームをプレイするのは後じゃ駄目かな?」
「うっ……どうしよう、何か、何かしないと……あっ!!」
一通り頭を抱えた後、モモイちゃんは何かしら僕を言い負かし、
「それなら今、ゲーム開発部の才羽モモイからシャーレの
「──へえ? ちなみに念のため聞いておきたいんだが、どうして僕がその依頼を受けなければならないのかな」
「だって
ふうん、なるほど。モモイちゃんとやらは見た目や態度に反して、こういう時の機転はかなり効く方らしい。
確かに今の僕は、シャーレの
一本取られたぜ、わっはっは。
「……いいだろう、アリスちゃんに対する尋問は後にしてやる。僕だって鬼じゃないしね──それじゃ、そのTSCとやらをプレイさせてもらおうか」
「いやったあああ!! 見たかみんな、これがお姉ちゃんパワーって奴だよ!!」
(……とりあえず、破壊の判断は保留にしておいてやる。先生はあのアリスとかいう子をどう扱うのか、今のうちに決めておくといい)
("うん、ありがとう
……そうかい。まあそれならそれで、僕から言うことは何もねーんだがよ。
と、僕がそう考えているうちに、ゲーム機のセッティングが整ったらしい。モモイちゃんが目をキラキラと輝かせていて、ロッカーの中の奴は期待半分の眼差しを向けてきている。
「準備できたよ! ささっ、
「はいはい、そんなに急かさずともやってやるさ。これでも一応依頼だからね」
さて、それじゃあゲーム開発部の会心作、TSC。
どんなもんか、存分に見極めさせてもらおうじゃねーか。
TSCをやった
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