とりあえず4章終わりまで書きます。
あの後、話とゲームを続けること、およそ五時間。僕とアリスは夜通しそんなことを続けていたもんだから、気付けば朝日が差し込んでいた。
ミレニアムの事情がどんなもんなのかについて、僕は詳しく知っているわけではない。が、学校である以上はそろそろ授業が始まってもおかしくはない時間だ。
昨日まで夜更かししていたゲーム開発部の面々は、そんな時間になってようやく目を覚ましやがった。この調子なのを見るに、出席形式の授業ではないらしい。それならまあ、個人の好きにすればいいかな。
モモイちゃんだけはひと足先に目を覚まし、ヴェリタスにアリスの学籍偽造登録をお願いしに行っていた。僕のスキルで偽造してやってもよかったんだが、しかしそれだと、アビドスに迷惑がかかる可能性があるからやめておいた。
ほら、一応僕の学籍はアビドスにあるからさ。連邦生徒会──
ちなみにモモイちゃんが起きた時には、あえてアリスは黙らせておいた。全員揃った時にお披露目するのが一番効果的だろうからね。
何回も同じことをやるのは好きじゃねーのさ。
ちなみにちなむと、先生には事前に許可を取っている──まあ、早い話が
散々こき使われたんだ、少しくらい脅かしたって許されるだろうよ。
あとは、そうだな。特筆すべきことは特にない。あったことといえば、想像通りのことだけだ。
やはりというか、なんというか。
先生はアリスを生徒として扱うらしい。
ま、あいつならそうだよな。これに関して驚くようなことは一切なかった。だって、全部想像通りだったからね。
先生の中での【生徒】の定義がなんとなく分かるようになってきてからというもの、意思疎通が図りやすくなって助かるぜ。未だに僕に杖を持たせているのだけには納得いかねーがよ。
と、そんな感じだ。そういうわけで、現在はモモイちゃんがヴェリタスに頼んで偽造した学生証をアリスに渡している真っ最中。
ドッキリを仕掛けるにはそろそろかな。全員揃っているし……っと、そうだ。一つだけ忘れていたことがあった。
ゲーム開発部部長、
人見知り(とはまた違うのだが)故にロッカーの中に隠れていたユズちゃんは、なんと驚くことに昨日そのままロッカーの中で寝落ちしやがった。
存在自体は認識できていたものの、しかしどうやら僕は避けられていたようだったから、あえてそのままほったらかしにしていた。意地悪したとかじゃねーから、勘違いすんなよ。
そんなユズちゃんだったが、どうやら僕が例のゲーム……TSCをプレイ、尚且つ初見で、しかもとんでもない速度でクリアしたのを見ちまったもんだから、本当はすぐさまゲームの感想を聞きたかったらしい。
しかしなんやかんやでロッカーから出るタイミングを逃したユズちゃんは、もうそのまま籠城し、そこで寝落ちをかましてしまったとのことだった。
そしてつい先ほど、彼女が目覚めたタイミングで、ユズちゃんは即座にロッカーを飛び出し、僕にゲームの感想を聞いてきた。
聞かれたことには答えなければならないと思ったし、何やら不安げにしていたもんだから、僕はそこで「今までにやったゲームで一番面白かった」と返した。
嘘はついてねーぜ。
と、そんなことを言ったわけなんだが、直後ユズちゃんは、耳をやや赤くしたあと、泣きながらロッカーの中に戻って行っちまった。
何か目に見えねー地雷でも踏んじまったかな、とも思ったが、しかしどうやらそんな風にゲームを褒められたのは僕で四人目だったらしい。
そして、
もし僕が適当に嘘ついてたんだったら、ここで不信感の一つや二つでも覚えられるのだろうが、しかし生憎僕のこれは本心から来ているものだから、ユズちゃんにもそれが伝わったのではないかな。
となると、僕もだいぶとっつきやすい奴になっちまったもんだぜ、まったくよ。
ちなみにユズちゃんが出てきた時にも、アリスには一言も喋らずに黙ってもらっていた。恐らくユズちゃんには、アリスがゲームに熱中しているだけのように見えたはずだ。
これで本当に以上。あとはアリスと話しながらゲームをやっていただけで、特に変わったことは今度こそ一切ない。
話を戻そうか。
ゲーム開発部には現在全部員に加え、僕と先生、そしてアリスがいる。いやまあ、アリスも(偽装とはいえ)ゲーム開発部員なので、この分け方はありもしない悪意を汲み取られそうでやや怖いが、しかし便宜上こう分けておくことにする。
つまり、ただいま部室には
つーか、個人的にはモモイちゃんをビビらせてーだけなんだけどさ、実のところはよ。
さて、散々こき使ってくれたんだ。モモイちゃんがどんな顔、どんな反応をしてくれるか楽しみで仕方ねーぜ、わっはっは。
と、そんなことを考えて、僕はみんなに向けて口を開いた。
「さて、確かモモイちゃんの依頼は『アリスに言葉を教えてあげて』ってことだったね。一応本人がゲームで学びたいっつってたから、僕としてはアリスの意思を尊重して、ゲームのテキストから色々と教えてやったぜ」
「おおっ! いや〜流石
……こいつ、僕相手に上手く立ち回れたからって調子に乗ってんな? まあ今のうちに乗ってくれれば乗ってくれただけ、後々落差で絶望が深まるから、好きなだけ乗るといいさ。
ま、言われなくても口外するつもりなんかねーが。
その鼻っ面だけは、叩き折るとしよう。
「……まあ、最善は尽くしたんだけどね。本当に申し訳ないのだけど、きみたちが望んだレベルではないかもしれないんだ」
「……えっ? いやでも、まあ普通に話せてれば……最悪普通じゃなくても誤魔化せるだろうから、別にいいよ! ほら、ミレニアムって変わった人多いし」
「お姉ちゃん、それあんま外で言わないでよ……?」
モモイちゃんは一瞬だけ不安そうな顔付きになったが、しかしすぐさま、まあいいか、といった感じの表情を浮かべた。楽観的な子らしいね。
悲観的になってもらおう。
「あのさ、モモイちゃん。もしかしたら何か勘違いしていないかい? きみたちが望んだレベルではないっつーのは、
「……その、そういえば、私が朝起きた時、アリスは一言も話してなかったんだけど……」
「あっ。確かに、わたしの時もそうだった……ミドリの時はどうだった?」
「私も、起きてからはアリスちゃんの声は聞いてない……もしかして、詰め込みすぎで逆に話せなくなっちゃったとか……!?」
おっと、
それならしょうがない。もう少し溜めたかったが、このまま放っておくと悪い方向に加速していきそうだ。
僕はアリスの肩を叩き、目線を合わせ合図を送った。
それを見たアリスは、強く頷いてくれた。
よし、ネタバラシといこうか。
「まあまあ、落ち着きたまえよゲーム開発部。僕が言ったのは別にそういうことじゃなくてさ──」
「…‥別に」
「そういうこと」
「じゃなくて……?」
モモイちゃん、ミドリちゃん、ユズちゃんが順番にそんなことを言って、僕に不安げな視線を向けてきた。僕はすかさずそれに目を合わせ、そして、真実を告げさせてもらった。
「──ちょっとやりすぎちゃった!」
「えっ? いや、やりすぎって、それじゃあ、アリスは普通に話せるようになったの?」
「いいや、つまり何が言いたいかっていうとだね。やりすぎちまった結果、普通以上、即ち異常に──
「……はぇ?」
と、モモイちゃんが素っ頓狂な声を上げたのも、まあ無理のないことだろう。ミドリちゃんとユズちゃんが目を見開いたのも、また同様に仕方のないことだ。
何でかって? いや、だってさ。
さっき喋ってたの、僕じゃねーもん。
「おいおいどうしたんだよモモイちゃん。そんな風に鳩が
「え?? あれ、いや……え????」
「あ〜……そういうことか……
「あっ、そっか。アリスちゃんと
「まあ、そういうことさ。つーわけで今日からアリ……
「いや受けすぎ受けすぎ受けすぎ」
ふむ、この様子だとミドリちゃんとユズちゃんは何が起きているのか気付いていそうだね。まあ正直なところ、僕はモモイちゃんだけ騙せればそれでいいんだがよ。
「えっ、いやこれ、バレちゃうよ? 確かにミレニアムには変わった話し方の人も……いるかもしれないけど、これは、その、怪しさの次元が違うっていうか……」
「僕のことを怪しいっつってるようなもんだぜ、それ」
「そうだよお姉ちゃん。せっかく頑張って
「なんでミドリはそっち側についてるの? 味方してよ、お姉ちゃんの」
うん、ミドリちゃんは完全に気付いているね。そしてその上で、モモイちゃんをイジる方に回りやがった。何というか、したたかだねえ。
この調子だとユズちゃんも気付いているだろう──そう考えた矢先に、僕が考えた通りの展開になった。
「つーかモモイちゃん」「その評価は心外だね」
「僕は精一杯」「依頼をこなしただけなのに」
「怪しい」「だなんて」「そんな」「ことを」「言われる」「とはね」
「「二人で一生懸命頑張ったっつーのにさ」」
「あっ、息ぴったりの双子キャラしかやらないやつだ……すごい、初めて見た……!」
「ねえそれやるの普通は私とミドリの方でしょ!? なんで出会って一日の
ほらな。やっぱりユズちゃんも気付いてた。
と、そんな感じでモモイちゃんの鼻っ面がいい感じに丸潰れになってきたところで。
騒いでいるモモイちゃんを横目に、アリスがひっそりと話しかけてきた。なになに、耳を貸せばいいのかい──。
「大成功ですね、
……ああ、違いねーな。
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