なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 めだかボックス度数を徐々に強めていきたい。
 あとなんか日間ランキングの12位にいました。高評価入れてくれてありがとうございます。確かに励みになっています。




第63箱「アリスのことを」

 

 

 かくしてユウカちゃんによる尋問──試験と呼ぶべきなのかもしれない──は終わり、無事にアリスは【ミレニアムサイエンススクールの生徒】として認可された。

 

 それに伴い、ゲーム開発部は部活動としての活動が許される最低条件である、「()()()()()()()()()()()()()」を満たしたため、無事に部の存続は確定した。

 

 嵐は去った。ゲーム開発部は安寧を手に入れた。めでたしめでたし。

 

「で、()()()()()()()()()()()()んだけどね」

 

 一難去ればなんとやら、だ。台風一過かと思っていたのに、実は台風の目(渦中というべきなのかもしれないが)に巻き込まれただけだった、なんて話、どこの世界でもザラだろう?

 

 前途は多難だ。依然変わりなく。

 

「いやー、まさか今学期から『部活動としての実績を証明すること』も部活動の要件に入ってたとはね……ユウカ、教えてくれてもいいのにね」

 

「お姉ちゃんがソシャゲのドロップアイテム二倍に気を取られて全体の部長会議に参加してなかったから知らなかっただけでしょ!?」

 

「……それは、えっと……ミドリ、モモイは悪くないよ。部長会議なら、本当は部長のわたしが出なきゃいけないから、悪いのは、部長らしいことがなんにもできてない私で──」

 

「それは違うよ! ユズは悪くない、ゲームにかまけて部長会議をすっぽかした私が……!」

 

 とまあ、ゲーム開発部の現状はこんな感じ。アリスは何が何だか分からねーといった雰囲気であわあわと慌ただしくしている。

 

 まあついさっきまで仲の良かった連中がいきなり不安な空気感を醸し出し始めたら、稼働し始めてから──自我を形成してから間もない奴は、そりゃあどうしていいか分からねーだろうぜ。

 

 さて。普通ならばここで僕が介入してことを収めるのが一番手っ取り早いんだろうが、しかしどうやら、その()()は僕のものではなさそうだった。

 

 忌々しいことこの上ないが、この状況で【子供】が【子供】に何かを諭すようなことを言ったところで、目に見えて状況が好転するとも思えねーしな。

 

 だからここは一つ、この場では一応、唯一の【大人】である先生に、鶴の一声で場を収めてもらおうじゃねーか。

 

「というわけでだ。きみに任せていいよな、先生?」

 

「"もちろん。こういう切羽詰まった時のために、私はここにいるつもりだからね"」

 

 ここまでハゲ散らかしたマスコットのようになっていたから、存在感のようなものは全くと言っていいほどなかった先生だが、その言葉の直後、気付いたら普段の先生の姿……世間一般で言うところの、いわゆる()()()()()()()の姿に戻っていた。

 

 いや、僕が言うのもなんだけどさ。

 それ、普通に意味分かんねーからな。

 

「"はい! みんな、一旦落ち着こうか! このまま話し合うのもいいけど、今はとにかく()()()()()()()を整理しなきゃいけないからね!"」

 

「でも、先生……ユウカはさっき、今月末までに成果を出せなければ廃部って言ってたんですよ?」

 

「そうだよ! まだ何のアイデアも固まってないっていうのに……もう終わりなんだあ!!」

 

「うぅ……わたしが、不甲斐ないばっかりに……」

 

「あの、安心院(あんしんいん)さん……なんとか、なんとか安心院(あんしんいん)さんからユウカを説得できませんか? どうにか──」

 

「僕がどうにかすることはできる。だけど、果たしてそうしたズルの末に生まれたゲームが、セミナーに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()は話が別さ」

 

 アリスは困ったような、焦ったような表情をさらに深め、先生と僕、そしてゲーム開発部の面々の表情を順々にうかがっている。

 

 と、それにどうやら先生も気付いたようで、二回ほど両手の掌を打ち付け合い、パンパンっと乾いた音を立て、ゲーム開発部の注目をその身に集めた。

 

「"慌てたくなる気持ちも凄く分かるよ。目に見えて締め切りが迫ってくると、どうしてもパニックになってしまいそうになるよね──だけど、そういう時こそ、()()()()()()()()()()、私たちは冷静にならなきゃいけないんだ。ユズ、このホワイトボードは使っていいやつかな?"」

 

「えっ? あっ、多分……いや、使って大丈夫なやつ、だったはずです」

 

「それならこれを使って説明をしようか──っと、よし。モモイ、ここに書いてある文章を一回読み上げてみてくれないかな?」

 

 ペン先が乾燥しないように蓋を閉じながら、先生はその文章を、ペンを使って指し示した。

 

「……『今月末までに成果を出せなければ廃部』って書いてあるけど……これを読んで何になるって言うのさ? 当てつけ?」

 

「"当てつけなんかじゃないよ。重要なのは文面じゃなくて、()()()()()の方ってことなんだ。確かモモイはゲームの()()()()()()だったよね? その能力を活かして、この文章をどうにかもう少し別の優しい言い方に直せないかな?"」

 

「別の言い方って……そんなの『今月末までに成果を出すことができなかった場合は廃部』って意味でしか──あれ? 今月末までに、成果を、出すことが、できなかった場合、だから……」

 

「……この場合の『成果』って、一体何? まあ一番あり得るのは、私たちの作品がミレニアムプライスで一位に入賞する、とかだけど……ユウカだったら()()()()()()()()()()()()だよね」

 

「となると、多分順位は()()()()()()()()()()。とにかく、セミナーに報告できるような完成度の作品さえ作ることができれば──」

 

「しかしそうなると、かなり高い完成度の作品が要求されるのではないでしょうか? 先ほどインターネットから情報を収集しましたが、TSCは酷評されてしまっていますし、追加メンバーのアリスに至っては、ゲーム開発は初心者です。順位はそこまで気にしなくてもいいとはいえ、そもそもの完成度を高めないことには、ユウカに廃部させられてしまいます……」

 

「うーん、結局話が振り出しに戻ってきちゃった感じがするよ、先生? 昨日見てもらったから分かると思うけど、私たちのゲームはクソゲーオブザイヤーにも認定されちゃってるから、ここからの挽回はやっぱり難しい気がするというか、そんな気しかしないというか」

 

 ゲーム開発部の面々は、結局話が一巡してしまっただけで、何の発展も得られなかったことに落胆している──()()()()()()()()()()()()()()とも知らずに、だ。

 

「"いいや。振り出しに戻ってきちゃったとみんなは思っているだろうけれど、()()()()()。というかむしろ、()()()()()んだよ。話をわざと振り出しに戻すことで、みんなも()()()()()()()()でしょ?"」

 

「あっ、確かに言われてみれば……」

 

 あくまでも先生の言っていることは、()()()()()()()()()()()()でしかない。

 

 だけどまあ、子供をその気にさせるのには十分だ。

 

「"つまりはね、ユウカが言っていたのは──っと、こういうことなんだよ。『セミナーに部の存続を認めさせるくらいの作品を今月末までに作って提出しなさい』ってね。これなら話がシンプルで分かりやすいよね"」

 

「でも先生、私たちのゲームはやっぱり、大衆ウケするようなものではないです。VRですら古臭いと笑われるこの時代に、16ビット音楽のレトロ風ゲームだなんて──」

 

「"ミドリ。これはただの質問なんだけど、例えばミドリの友達に()()()()()()()()()()()()子がいたとしてさ。その子が忍者になるために毎日努力を重ねていたら、ミドリはどう思う?"」

 

「えっ、忍者……? うーん、過程はよく分かりませんけど……でもまあ、普通に()()()()と思います。もしかしたらバカにする人もいるのかもしれないけど、()()()()()()()()()()()()()()()私たちは、少なくともそんな子をバカにはしません」

 

「"だよね。そしてそれは、()()()()()()()ことなんだよ、ミドリ。努力の苦しみを知っている人は、絶対に人の努力を馬鹿にはしない。例え努力の種類が違ったとしても、元々の気持ちは同じだからね"」

 

「……つまり?」

 

「"何も恥ずかしがることなんてない。必死になって努力することは、何も恥ずかしいことじゃない。中途半端に惰性で作られた量産型のゲームよりも、全身全霊を込めて作られた『好き』が溢れるゲームの方が、少なくとも、私は好きだな"」

 

 何の恥ずかしげもなく「好き」だのなんだの宣えるこいつは、きっと心の底からそう思っているからこそ、こんなふうにどうとでも取れる台詞をポンポンと吐けるのだろうね。

 

 いずれ敵を多く作りそうな感じはするものの、しかしそれは先生の生き方に問題があるだけだ。僕がわざわざ口を挟んでやるようなことでもねーか。

 

「でも、先生。確かにわたしたちはみんなゲームが好きでここに集まっています。だけど、ゲームが好きなことは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それに早く作ろうとすればするほど、クオリティはどうしたって下がっちゃうし……」

 

「"ユズは……この前廃墟に行った時はお留守番だったよね。私たちが廃墟に行った理由、モモイやミドリから聞いていたりする?"」

 

「……たしか、G.Bibleを探しに行ったんですよね。ゲームクリエイターにとっての聖書とも呼ばれる──って、あれ? モモイ、結局それって持って帰ってきたんだっけ?」

 

「ん? いや、それの代わりにアリスを拾ってきたんだよ。ほんと思わぬ拾い物だよねえ」

 

「だよね……? だったらもしかして、そのG.Bibleをもう一度取りに行って、そこに何か、()()()()()()()()みたいなのが載っていれば……!」

 

「あっ! それを参考にして面白いゲームを作成できるかもしれないってこと!? それならいけるんじゃない!?」

 

 モモイちゃんがそう大きな声を出したと同時に。ゲーム開発部の連中は、瞬時に色めき立った──()()()()()

 

 しかしそこでこの計画に難色を示したのが、他でもない、僕の袖を掴んで離さないアリスその人だった。

 

「……でも。ゲームを作成することになったとして、プログラミングとデバッグはアリスの担当です。これがアリスの初陣となるのに、本当にこの作戦で大丈夫なのでしょうか……?」

 

 ……まあ、その心配はごもっともではある。アリスを除いたゲーム開発部の三人は、確かに()()()()()()()()()()()()()。しかしアリスは、全くの未経験からこの大役をこなさなければならない。

 

 だがよ、忘れていないかい、アリスちゃん。

 

 僕たちはS.C.H.A.L.E(独立連邦捜査部)だぜ。

 

 僕と先生は目線を合わせ、互いに軽く頷いてから、()()()()()()()()()()()()()()()()動くことに決めた。

 

「"……アリス。アリスが心配しているのは、プログラミングのこと? それとも、デバッグのこと?"」

 

「両方……両方心配です。アリスが、みんなの足を引っ張ってしまうんじゃないかって──」

 

「おいおいアリス、まさかきみ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()わけじゃないだろうね? いいかい、よく思い出してみなさい。きみが掴んでいるその袖は、どこの誰のものだ?

 

 そう言って僕はアリスと目線の高さを合わせ、真っ直ぐと彼女の目を覗き込んだ。先ほどまでは確かに不安に揺れていたその(レンズ)が、ゆっくりと元の元気な雰囲気に戻っていくのが見て取れた。

 

 そうだ、アリス。きみはそうじゃねーとな。

 

「……シャーレの、安心院(あんしんいん)さんのものです! 安心院(あんしんいん)さん、お願いがあります。聞いてもらってもいいですか?」

 

「ああ、存分に聞いてみるといいさ。僕はシャーレの安心院(あんしんいん)さんだ、二十四時間三百六十五日、僕は誰からの相談でも受け付けるぜ」

 

安心院(あんしんいん)さん。ゲームを作る時、()()()()()()()()()()()()()()()おねがい、してもいいですか?」

 

 僕がそれに何と答えたかは、わざわざ明示するまでもないことだろう。

 

 さて、G.Bibleとやら。

 この子たちの糧として、存分に力を発揮しておくれよ。

 

 






 なんか安心院(あんしんいん)さん面倒見良すぎる。
 次回からだんだん長くなると思います。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

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