なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 花粉症で遅れました。

 あと誤字報告マジでありがとうございます。気を付けてはいるんですけど、予測変換が悪さをすることが多々あるので、本当に助かっています。




第68箱「解明(バラ)してみたいんだ」

 

 

 コトリちゃんとマキちゃんが、C&Cを()()したアカネちゃんとの戦闘を開始したタイミングで。ある種この計画の要であるとも言える才羽姉妹と先生は、果たして何をしていたのかと言うと。

 

「いや〜、天下のセミナーといえどもセキュリティシステムを掌握されちゃえば、文字通りに手も足も出ないみたいだね! もうすぐで差押品保管室だし、思ってたより余裕じゃん!」

 

「ちょっとお姉ちゃん、それ()()()って奴だって! どうして物事が順調に行ってることを口に出して再確認しちゃうの!?」

 

「"まあまあ、実際進捗を口に出して常に状況を確認し続けるのは効果的なことだから……それにしても、この辺りはやけに静かだね……?"」

 

「先生!! それもフラグです!!」

 

 ……廊下に取り残された生徒会役員どもと警備用のドローンの追走を撒いた──もとい撃退した反動からか、随分と調子をぶっこいてるみてーだった。

 

 

⬛︎  ⬛︎  ⬛︎

 

 

「おいおい安心院(あんしんいん)さん、あたしにこいつらの居場所を見せちまっていいのかよ。分かってんだろうけど、あたしならこいつらの居場所まで、ここから()()()()()()()()ぜ?」

 

 走り出すような素振(そぶ)りは一切見せないまま、ネルちゃんはそんな風に挑発的な言葉を吐いた。

 

 もう少し騙そうって気概はないのかねえ。ま、僕のことを騙すとか出し抜くとか、そういうことをするにはネルちゃんは三億年早いんだがね。

 

 もしかすると、三億年どころではない可能性もある。何にせよ、ネルちゃんが僕を口論で打ち負かすことは未来永劫できないだろうね。物事には得手不得手というものがある。

 

「やりもしないことをわざわざ口に出して反応を窺うのはやめなさい。それともあれかな、最後はポーカーでの勝負をお望みかい?」

 

「誰がそんなかったるい勝負すんだよ。腕っぷしに決まってんだろうが、腕っぷし。つーかポーカーって道具使う勝負じゃねえか、お前のスキルで不正し放題だろ」

 

「バレた? いやー、勝負なら何でも二つ返事で乗ってくれると思っていたから意外だったよ。そうなったら楽に済んだというのに」

 

「てめえ……」

 

 楽に()()()()()()()というのに。

 

「……まあいい、あたしに対してそんな態度取って、最後に泣きを見るのはお前の方だしな。んなことよりよ、あいつらに()()()()()()()って教えてやらなくていいのか?」

 

「ん? ああ、数百メートルは離れたビルの屋上からモモイちゃんたちを狙撃しようとしている彼女──C&Cのコールナンバー・02(ゼロツー)であるカリンちゃんのことかい?」

 

 確かに、彼女の狙撃は驚異的だ。ミレニアムどころか、キヴォトス中を探し回ったとしてもあれほどの狙撃手はそうお目にはかかれないだろうね。

 

 だが、しかし。いくら()()()であるとはいえ。

 

「この程度、自力で突破してもらわねーとな──」

 

 

⬛︎  ⬛︎  ⬛︎

 

 

 モモイちゃんたちの歩みは軽快で、言い換えてしまうのならばそれは()()だった。

 

 彼女たちは窓際を歩いている。まさか()()()()()()()()()()()()()()とは、今はまだ気が付いていないらしい。

 

 が、しかし。気づいていないのはあくまで、その場にいるモモイちゃん・ミドリちゃん・先生の話であって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

『三人とも、伏せて!!』

 

「──ッ!」

 

 一足早く察知していたハレちゃんが通信越しにそう叫び、そしてその直後。

 

 なんとか反応できたモモイちゃんが、ほんの少しだけ頭を下げ──その直後、背後の壁が轟音を奏で大きな亀裂を走らせた。

 

「えっ、なっ……今なんか頭の上を凄まじい威力の弾丸が通り過ぎなかった……!?」

 

「壁に穴が空いてる──どころか、()()()()()()()()()()()()()()。お姉ちゃんの身長があと5cm高かったら……」

 

「ちょっと、怖いこと言わないでよ!? 萎縮しちゃうよ、しぼんじゃうよ! しぼんじゃったらこれ以上小さくなっちゃうよ!」

 

 ……元気だねえ、本当にこの子たちは。対物狙撃用の弾丸で狙われているというのに、怯えているような様子はほとんどなかった。

 

 いやしかし、実際どうなのだろうね。対物用の弾丸というのは、喰らってみるとどの程度の痛みを覚えるものなのかな。

 

「"狙撃が通ったということは、もうここはC&Cの狙撃手であるカリンって子の狙撃ポイントに入ってるってことか。ハレ、ありがとう、助かったよ"」

 

『ううん、これくらいお安いご用……というか、今回の私の仕事はこういうのだしね。役割を全うしただけ──みんな伏せて、二発目がくるよ!』

 

 ハレちゃんが続けてそう言った直後、予測の通りに二発目の弾丸がぶち込まれた。背後の壁は既にいつ粉々に砕け散ってもおかしくはない。

 

 が、しかし。その壁が粉々になることは、終ぞ訪れないのだろう。

 

 それは何故か? 理由は単純明快だ。

 

これから先。カリンちゃんがモモイちゃんたちを気にかけている余裕は、一切なくなるからだ。

 

 

⬛︎  ⬛︎  ⬛︎

 

 

「……なるほど、筋は悪くない。ゲーム開発部、名前だけで運動神経はそこまで良くないとは思っていたけれど……これは修正しないといけないな、少し侮っていたかもしれない」

 

 対岸のビルの屋上。絶好の狙撃ポイントから三人を狙い撃とうとしているカリンちゃんは、誰に向けてと言うわけでもなくそう呟いた。

 

 カリンちゃんの視界の先には──射線の先には、すばしっこく弾丸を避けたばかりのターゲットが写っている。そしてその一挙手一投足を観察し、ある程度の行動パターンを読み取っている最中らしい。

 

「……だが、それだけだ。筋はいい、素早くて当てづらい──行動パターンの予測は完了した。次は100%当てる

 

 そう言いながらカリンちゃんはスコープを覗き込み、その先にいるはずの標的を確実に仕留めようとして──しかし視界に写ったのは()()()()()()()()()()()()だけだった。

 

 というか、スコープから見える景色は機械(らしきもの)で埋め尽くされてしまっていて、それ以外には何も見えない。それもそのはず、その機械はスコープにほぼ張り付くかのような距離で()()()()()していた。

 

「……これは、ドローン、か……? いや、それにしては──」

 

 それにしては大きすぎる。果たしてこれはドローンで合っているのだろうか。何というか、全体的に()()っぽい。スコープから目を離し、ドローンらしきものを直視したカリンちゃんは、大体こんなことを考えていたのだろう。

 

 要約するに、カリンちゃんは()()()()()()()()。だからこそ、背後から近付いてきた()()()()()()()()()()

 

「──100%当てると、確かに言ったね?」

 

「ッ!? 誰だ!!

 

 カリンちゃんは声が聞こえると同時に、飛び跳ねるようにその場から移動し、声のした方向を向いた。

 

 するとそこには、()()()()()()()()()()()()()()()が佇んでいた。あまりにも大量すぎるため、普通ならばその中に誰がいるのかまでは分からないだろうね。

 

「私の計算結果は少し違う。きみの弾丸があの子たちに当たる確率は、0%だ」

「……その、声は──」

 

 が、しかし。カリンちゃんはその声色と()()()()()()()()()()()()()()という状況証拠から、既に相手が何者であるかを割り出していたようだった。

 

「──エンジニア部部長、ウタハだな?」

 

 その言葉が放たれたと同時に、もうこれ以上の偽装工作は意味がないと悟ったのか、ウタハちゃんは周囲に張り巡らせていたドローンを散開させた。

 

 ほとんど無風であるとはいえ、しかしそこは高所だったものだから、ウタハちゃんはその紫色の長髪をたなびかせ、挑発的に仁王立ちしていた。

 

「ご明察。まあこの程度の偽装、ミレニアムでは何の意味も持たないというのは重々承知の上ではあったのだけれどね。しかしここまで早く見透かされるとは、流石はC&Cと言うべきか」

 

「こんなのは当然だ──そんなことより。この()()()()()()()()()()、何なの?」

 

 ウタハちゃんの賛辞もそこそこに、カリンちゃんは今なお宙に浮かんでいる椅子のようなドローン──ガトリングらしきものも付いている──についての追及を始めた。

 

 まあ気になるよな。正直すげー変だし、気にするなって方が無理だろうぜ。

 

「ん? ああ、それはエンジニア部の新作、全ての天候に対応可能な二足歩行型戦闘用の椅子──(いかずち)の玉座、通称(いかずち)ちゃんだよ」

 

「本当に椅子だったのか……じゃなくて。それじゃあ何でこれは()()()()()()んだ?」

 

()()()()()()()の一言だけで伝わりそうなものだが、これ以上の説明が必要かな?」

 

「……いや、いい。つまりはあなたの()()()()()()()()()()と、そういうことだな?」

 

 カリンちゃんのその言葉を聞くと同時に、ウタハちゃんはほんの少しの笑みを携えながら満足げに頷いた。

 

 その行動はカリンちゃんに()()()()()()を意識させるのには十分だったし、また同時に、カリンちゃんはウタハちゃんに注目せざるを得なくなった。

 

「ずっと、気になってはいたんだ。いくら何でも()()()()()()()()()()()()()()と──エンジニア部、あなた達があの『先生』に協力していたんだな」

 

「当然私たちだけというわけでもないのだけどね。しかし解せないな、普通ならこういう時、真っ先に入れ知恵を疑うべきは安心院(あんしんいん)さんからじゃないのかい?」

 

安心院(あんしんいん)──シャーレの安心院(あじむ)ナジミのことか。彼女は、そうだな……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ」

 

 ……ここでもまた「アスナちゃん」か。

 

 いや、実際のところね。僕が一番警戒しているのはこれで案外彼女だったりするんだぜ。

 

 結構彼女たち──C&Cのことに関しては調べたんだがね、アスナちゃんのことだけは()()()()()()()()()()()()()()()

 

 まるで、何者かが隠しているみてーにさ。

 

 しかし転んでもただで起き上がる僕じゃない。むしろこの()()()()()は、僕に良い知らせをもたらしてくれる可能性すらあるのではないかな。

 

 僕の()()()()()()()では暴けないほどの情報秘匿能力。そんなものを有しているのであれば、それはもはや()()()()()()()()()()はずだ。

 

 僕が追い求めている()()()()()()()()()

 

 きみなら、情報秘匿を(おこな)っているきみなら。

 知っているのではないかな。

 

「……まあ当のアスナ先輩が今どこにいるのかは、正直な話私も知らないんだけど……それはいい。ウタハ、一応最後に忠告だけしておく」

 

 と、僕がまだ見ぬ何者かに思いを馳せていたところで。どうやらカリンちゃんは、ウタハちゃんに向けて何かを提案しようとしているようだった。

 

 何かっつーか、まあ。

 十中八九、降伏勧告だろうが。

 

「このまま私の、私たちの邪魔をされると、私としては不本意ながら、あなたを()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それは避けたい、だから──」

 

()()()()()()()()()()()と、つまりきみは私にそう言いたいわけだね? いやいや、ここまでわざわざ来ているんだよ。ドローンも大量に携えて、雷ちゃんまで持ってきて──それで()()()()()だなんて、全くもって非合理の極みという奴だね?」

 

 やれやれ、と。そんな感じで両手を肩あたりまで上げながら首を横に振るウタハちゃん。三年生の余裕と言うべきか──随分と自信満々なようだった。

 

「というかそもそも、私はここ最近ちゃんとした戦闘を(おこな)っていなかったからね。エンジニア部で開発三昧というのも、それはそれで乙なものだけれど、しかしあれはあれで意外とストレスが溜まってしまう時もあってね?」

 

「……つまり、ウタハ。あなたはあれか、私を──C&C(私たち)()()()()()()()()()()()()()使()()、と。そう宣言していると捉えてもいいのか?」

 

「いいや別に、何もそこまで自惚れちゃいないよ。だけど──そうだな。私はただ、解明したいのさ

 

「……解明? 何を──」

 

 ウタハちゃんは、そこでぐいっと口角を吊り上げ、半ばカリンちゃんを見下すような体制を取りながら。

 

 決定的な言葉を口にした。

 

「強いて言うのなら、()()()とでも言うべきかな。とにかく私は好奇心を抑えられない性質(たち)でね。だから私の限界というやつも、きみがどこまで強力であるのかも──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

解体(バラ)して解消(バラ)して

 解釈(バラ)して解説(バラ)して

 解析(バラ)して解題(バラ)して

 解像(バラ)して解禁(バラ)して

 解読(バラ)して解義(バラ)して

 解放(バラ)して解砕(バラ)して

  解剖(バラ)して解舒(バラ)して

 

 

 

 

解明(バラ)して 

   みたいんだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウタハちゃんは見方によってはもの凄い悪役のような発言──実際セミナーから見たらこちらは悪役だろうが──をしながら、不敵な笑みを浮かべている。

 

 自信満々に浮かべたその笑みと、風に吹かれて揺れる紫の髪が、これまた随分と雰囲気を出すのに一役買っていた。

 

 そして、その発言は、カリンちゃんに諸々のことを()()()()()には十分すぎた。

 

「……はあ。まあ、しょうがないか。ゲーム開発部に協力しているということは、つまりはセミナーの敵であるわけだし、言うなればそれはC&Cの敵であるってことだもんな」

 

 しょうがない、しょうがない──そんな風に自分を納得させるようにしながら、カリンちゃんはウタハちゃんに対して(うやうや)しく向き直り、それから彼女の愛銃であるホークアイを構えた。

 

 その立ち居振る舞いはまさしく()()()()()()()()()とでも言うべきもので──その目付きは「一挙手一投足をも見逃さない」と、そう雄弁に語っている。

 

 アカネちゃんと同じか──あるいはそれ以上の覇気。だというのにも関わらず、空気は凪いでいた。

 

 カリンちゃんが生粋の狙撃手(スナイパー)であることに起因するのだろうね、この辺りは。本当なら僕がこの身で体感したいところだが──しかしまあ、隣のネルちゃんがそれを許してくれないだろうね。

 

 ともかく。ウタハちゃんの目論見は、こうなった時点で()()()()された。

 

 僕がやることはといえば、あとはここから、ひっくり返されないことを願うだけさ。

 

「──……ふう。それじゃあ、エンジニア部部長、白石ウタハ。念のため、最後に確認しておくけど──どうなっても文句は言うなよ

 

 カリンちゃんは、そこで一度目を瞑って。

 最後の言葉を言い放った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

C & C     

開始する。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 状況は動き出す。僕の手を離れた混沌の中で、果たしてどこまで事態は転じて行くのか。

 

 それだけが気掛かりだが──それだけが気になって仕方がないが、ま、いいだろう。今回僕は、ほとんど手を出さないと決めたからね。

 

 ()()()()()()に向けて、僕も用意を始めなければならないし。

 

 だからまあ、精々上手くやってくれよ。

 なあ、先生。

 

 






 いつか間違えて「C&C」を「零崎」って書きそうで怖いです。

 感想・評価・ここすき等よろしくね。

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