久々に更新。
完全に気分で書きました。
ミレニアムにおける最強集団、C&C。どのような状況にも対応し得るプロフェッショナル集団──と思われがちだが、実は
構成員四名それぞれが
しかし、裏を返せば。
「というのが、この僕の見解ということになるわけだ。いくら最強集団だったとはいえ、個人に分断して苦手なことを押し付けまくれば、それはもう最強でも集団でもない、ただのエージェントでしかないからね」
「ハッ、そりゃあそうだろうよ。だがな、てめえの言っていることは隙だらけだぜ、穴ぼこまみれでガタガタな
「とことん
ネルちゃんみたいな子が感情的になっているところを見るのを些細な楽しみとしている僕は、あえてそんな挑発じみた言葉を口にする。
「馬鹿野郎、そんなわけねえだろうが」
が、しかし。流石にここまでの一時間弱で喧嘩を売りすぎたからか、それとも彼女たち風に言うのならば、『C&Cが始まっている』からなのか。
「つーかそもそもな、てめえらチームレジスタンスはずーっと勘違いしてんだよ、それもとびきりアホみてえな勘違いを」
ネルちゃんは僕の挑発に乗ることはなく。
「えーっと、『各分野のプロフェッショナルでしかない』だっけ? ハッ、爆笑させるつもりかよ。いいか、てめえらは小賢しくもメンバーの各個撃破なんかを目論んでるみたいだけどな──」
それどころか、余裕を持ってこう返したのだった。
「
キヴォトスにおいてスキルを用いた戦闘が発生した場合、大抵の結末はスキル同士の相性によって勝敗を決することとなる。
例えばの話──現実的には起こり得ない例ではあるが──アビドス高等学校唯一の3年生であるホシノちゃんと、ミレニアムサイエンススクールの財布を握っているユウカちゃんとが、スキルを用いて戦闘を
ホシノちゃんは被弾した相手を気絶させるスキル「
するとどうなるか。
そもそもの話をすれば、ホシノちゃんが自らの愛銃として
が、しかし。いくら攻撃範囲が広かったところで、ユウカちゃんのシールドをすり抜けてその身体に銃弾が掠ることはない。
これがもっとシンプルに防御力を高めるスキルだったりとか、痛覚を無効化するスキルとかだったのなら、いくらでもやりようはあるんだがね。
けれどそもそも銃弾が掠る可能性がゼロなら──ユウカちゃんが
それならば、散弾銃では駄目ならば、他の武器を持てばどうか? ARやSMGなどを持った上でスキルを使ったのなら?
しかしそれもまた徒労に終わるであろうことは想像に難くない。ユウカちゃんが纏うシールドは、相当の威力がなければ一枚破るだけでも一苦労なのだから、SGの接射でもなければ簡単には破れない。
さらに最悪なのは、ユウカちゃんのスキルは単一のシールドを纏うのではなく
より厳密に言うのであれば。
ユウカちゃんはその身に切頂二十面体を纏う。
仮に一枚のシールドを破ることができたとして、しかしその先には最低でもあと
流石のホシノちゃんといえども、流石にこの量のシールドをぶち破るのは骨が折れる──だけならば、良かったんだろうが。
より最悪なのは、ユウカちゃんの纏うシールドは
つまり、銃弾を受け流す形になっている。
つまり、衝撃を受け流す形になっている。
ただでさえ強度が高くて、ただでさえ枚数が多いというのに。それに加えて、
時間をかければ、恐らくはホシノちゃんにも全てのシールドを割ることが可能なのだろうけれど、しかしここで新たに湧き上がる問題がある。
それはそんなに時間をかけていたらユウカちゃんのスキルが再度発動出来るようになってしまうということである。
千日手──には、ならない。この場合、つまりは防御側が一切のダメージを負っていない状況に限り、攻撃側にのみ疲労が蓄積する形となる。
極端なことを言うがね、ユウカちゃんはその場に立っているだけでいいんだよ。そうしていれば、勝手にホシノちゃんは疲れていくことだろう。
……というか、今更にはなるのだが。
こと
せいぜいが百鬼夜行の修行部に所属しているカエデちゃんくらいのものだろう。あの子のスキルは、ほんの一瞬とはいえ
しかしそれでも、やはり取り回しの良さなどを加味すると、
ぶっちゃけた話、アリスがレールガンを全力でぶっ放したとして、ユウカちゃんはそれを余裕で止められる──とまではいかないものの、しかし確実に止められることだろう。
と、このように。それほどまでに、キヴォトスにおけるスキルの相性というものは重要らしい。
前の世界とあんま変わんねーな。
──長い前置きになったが、ここからは今回の襲撃で最も初めに戦闘を開始した三人……室笠アカネちゃん、豊見コトリちゃん、小塗マキちゃんの話をするとしよう。
アカネちゃんの有するスキルは、爆破のスキル「
もっとも、それはアカネちゃんが『爆破しか出来ない』ということを意味するわけではない。あくまでも
使った際の効果についても何も難しいことはない。ただ、爆発する。それだけ。問題があるとすれば、概念として
威力についても当然のことながら折紙付きで、壁の一枚や二枚をぶっ飛ばすくらいのことは造作もない。
特徴としては、先ほども言った通りだが『爆破出来そうなものを爆破することが出来る』という点が挙げられる。
例えばそれは火薬の詰まった銃弾であったりとか、電気の通った何がしかの機械であったりとか、リチウムイオンバッテリーを用いた端末であったりとか。
なんとなくの位置関係さえ掴むことが出来ていれば、アカネちゃんのスキルは
液晶画面越しだろうと。
音声通話越しだろうと。
その効果範囲の広さと、発動タイミングの絞り込めなさから、裏の社会では《
C&Cの爆弾魔、室傘アカネ。
まず間違いなく、ミレニアム最強格の一人だろうよ。
話は変わって、そのアカネちゃんと対峙しているコトリちゃん。彼女が有するスキルは、身体保護のスキル「
こちらも出来ることは非常にシンプル。『保護したいと思ったものを保護する』ことが出来るということらしい。
肉体だろうと。
物体だろうと。
先ほど例に挙げたユウカちゃんの「
何より特徴的なのは、
実際聞いた話によれば、コトリちゃんはこのスキルを使ってエンジニア部による爆発被害を数割ほど抑えているらしい。まあ爆発の原因もコトリちゃんにあったりするので、ややマッチポンプの感が否めないが。
さて、今回の作戦で彼女をアカネちゃんにぶつけた理由は、ここまでの話から何となく分かっているだろうが、シンプルにこの子のスキルが爆発に対して有用だからだ。
保護の対象は人に限った話ではない。つまり、
どれだけ爆破してもそれらが破損しないのであれば、アカネちゃんは強制的に閉所での戦闘を余儀なくされる。そうなれば、爆弾を主体として戦闘するアカネちゃんには厳しい戦いを強いることができる。
これだけでもアカネちゃんにとっては十分に厳しい条件だろうが、しかし僕達はそれで満足せず、念には念を入れて、コトリちゃんともう一人、マキちゃんを向かわせた。
マキちゃんの有するスキルは、塗料の弾丸を撃つスキル「
先に挙げた二人と同じく、こちらのスキルも非常にシンプルなものとなっている。というか、さっき説明したのが全てだ。
塗料の弾丸を撃つ。なるほど使い所によっては非常に厄介だろうぜ。なにせ、
他にも、手を撃たれればしばらくは物が持ちづらくてしょうがないだろうし、足を撃たれればおちおちまともに歩いてもいられない。見た目はマキちゃんらしいスキルなのに、内実は陰湿にも程がある。
しかし、マキちゃんが対アカネちゃん用に第一の戦場へ駆り出されたのは、そんな
先ほども説明した通りだが、アカネちゃんの「
が、しかし。
普通の弾丸は、内部の火薬で爆破されてしまうだろう。しかしマキちゃん有する塗料の弾丸であれば、理屈はどうあれ火薬は未使用の弾丸を発射できる。
さて。つまり、作戦の全貌はこうだ。
まずわざとらしく無警戒を装って廊下を歩き回り、セミナーの部屋にいたアカネちゃんを引っ張り出す。
次にシャッターを二段階目まで封鎖し、強制的に密室状態を作り出す。その際コトリちゃんの「
戦闘が始まった瞬間にマキちゃんの「
ちなみにコトリちゃんはこの作戦を実行するにあたって、銃火器の類は一切持ってきていない。当然ながら、弾薬を爆破されることを考慮しての判断たというわけだ。
こうすることによって、アカネちゃんのスキルを完封できる。そうすれば他の連中も爆破に怯えなくて済む。
そうでなくとも、足止めが少しでもできれば、その分モモイちゃん達が任務を達成できる可能性も上がる。
スキルの相性はおよそ最高と言ってもいい。場合によってはノーダメージでの完封も可能であるくらいに、アカネちゃんとコトリちゃん・マキちゃんペアの相性は悪かった。
だからこの勝負は、あくまでオッズ通りに進む。
何の波乱もなく、何の驚きもなく。
ただ、そうだな。
思い通りにことが進むことの。
「
だから僕がそうして声を上げてしまったことに、何の落ち度もないはずだ。
間違いなく、アカネちゃんに対して切るべきこちらの手札は、コトリちゃんとマキちゃんの二人だった。
それについては僕たちチームレジスタンス側としても全会一致のことであったし、むしろこの二人以外にはあり得なかったはずなのだが。
「ははは、何だよ
「まさかそんな。君たちC&Cがプロフェッショナルの寄せ集めであるということは十分に認識していたからね、これでも敬意を持って、全霊の策を練ったつもりなんだが」
「こんなのいつも通りだよ、いつも通り。あたしらからすれば、相手が全霊の策を練ってくるだなんてことはいつものことだ。だからあたしらも、
しかし、まあ。
現状を見る限り、その全霊の策とやらは、不発に終わったらしい……
だからこそ僕は、あの子のことを、室笠アカネちゃんのことを、端的に『面白い』と形容したんだがね。
「案外これで、軽く見てたのかもしれねーな──」
一言で表すのであれば。
そこには、アカネちゃん以外の全てがなかった。
廊下を分断していたシャッターは、怪物に引き裂かれたかのようにずたぼろになっているし。
部屋を分断していた壁面は、化物に殴り飛ばされたかのようにめためたになっているし。
階層を分断していた床と天井は、人間になかったことにされたかのようにぼこぼこになっていた。
本人たちの名誉のために言っておくけれど、ぶっ飛ばされて床に突っ伏しているマキちゃんとコトリちゃんの二人が、作戦に失敗したからこうなった──とか、そういうわけでは断じてない。
むしろ作戦は成功した。
これ以上ないくらいに成功した。
成功しすぎているくらいに成功した。
それほどまでに圧倒的に成功した上で。
しかしそれでも、アカネちゃんに上回られたというだけの話だ。
さて、それではアカネちゃんが僕たちの全霊の策を打開するために、一体どれほど奇抜で、どれほど危険で、どれほど奇天烈な策を実行に移したのかといえば。
断じて、変わったことをしたわけでもなく。
ただ、いつも通りに
壁も爆破してシャッターも爆破して床も爆破して天井も爆破して制御装置も爆破して格納機構も爆破して塗料の弾丸も爆破して眼鏡も爆破して髪留めも爆破して上靴も爆破して靴下も爆破してネクタイも爆破して机も爆破して椅子も爆破して電子黒板も爆破してホワイトボードも爆破して銃も爆破して空気も爆破して持っていた爆弾も爆破して水分も爆破して薬品も爆破して鉄も爆破してガラスも爆破して鏡も爆破してコンクリも爆破して埃も爆破して汗も爆破して涙も爆破して監視カメラも爆破してロッカーも爆破して通信機も爆破して携帯端末も爆破して紙も爆破してパソコンも爆破して時計も爆破して温度計も爆破して実験器具も爆破して人体模型も爆破してダンボールも爆破して布も爆破して水道も爆破して電気回路も爆破してカーテンも爆破してエアコンも爆破して鍵穴も爆破してドアも爆破して放った銃弾も爆破して薬莢も爆破して自動販売機も爆破して缶も爆破してペットボトルも爆破してカバンも爆破して上着も爆破して光も爆破して闇も爆破して視線も爆破して音も爆破して匂いも爆破して人も爆破して希望も爆破して絶望も爆破して。
そうして三フロア分、ねこそぎ一切の物体と言える物体全てを爆破して回ったところで。
コトリちゃんによる『保護』を無視して万象一切を爆破し、木っ端微塵にしていたアカネちゃんは、ようやく一息つくことに決めたらしい。
「ふう。私のスキルである『
危ないところでした──と、全身の衣服、その一部が焼け焦げているアカネちゃんは口にする。もっともその口調には、煽りやら何やらは含まれていないようだったが。
「しかし、マキちゃんとコトリちゃん、どうして『そんなのおかしいです無茶苦茶じゃないですか』って感じだったのでしょうか?」
こてりと可愛らしく首を傾げながら。
「壁や床を、天井やシャッターを爆破できたことに驚いていたようですけど」
アカネちゃんはごく当たり前のように。
「壁も床も、天井もシャッターも、なにもかも」
何でもないみたいに、真相を口にした。
「──
《
裏を返せば。
なんでも。
いつでも。
どこからでも。
スキルによる『保護』など関係ない。
全てを爆破できるのだから──『保護』すらも爆破できるのだから。
「さて、C&Cを始めてしまった以上、敵対者であるところのチームレジスタンスは一人残らず全滅させなければ──おっと、全滅ではなく『お掃除』させていただかなければいけませんね」
倒れ伏したマキちゃんとコトリちゃんを気にするそぶりも見せず、そう言いながら、穏やかにその場を立ち去って行くアカネちゃんの姿は。
確かにネルちゃんの言う通り。
──しかし、しかしだ。
それは言ってみれば、
きみ達C&Cが、ただそれだけの集団なら。
悪いが、僕達の方が一枚
やっぱりインフレさせるのは楽しいです。その分バランス取るのも大変ですけどね。
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