なじみアーカイブ   作:Minus-4

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 厨二臭い異名とか出したいよねって話。




第9箱「仲良くしようぜ」

 

 

 あれから僕達は、わざわざ20kmほど歩いて……この入りは前もやったかな。

 

 まあいい、ともかくちょっとばかし張り切ってヘルメット団を撃退したわけだが、どうにもただのチンピラにしては、戦力・武装が過剰だったらしい。

 

 学校に着いてからアヤネちゃんが教えてくれたことだが、僕が破壊した対空砲はFlak41というらしく、これの出所を探れば、ヘルメット団がアビドスを狙う理由が分かるかもしれない──とのことだった。

 

 僕がスキルで調べてやっても良かったんだが、まあそこまでお節介を焼く必要もねーだろ。どうせ手伝おうとしたら先生が「みんなに任せて平気だよ」とか言うだろうし。

 

 というわけで、翌日。

 

「それでは、アビドス対策委員会の定例会議を始めます」

 

 アヤネちゃんがそう宣言し、部室は厳かな空気に……は別になってねーが、とにかく会議は始まった。思えばこういう会議に参加するのって、何気に初めてかもしれねーな。

 

「えっと、本日は先生と安心院(あんしんいん)さんにもお越しいただいたので、いつもよりは真面目な議論が出来ると思うのですが……」

 

「おいおいアヤネちゃん、友達のことをそんな風に言っちゃダメだぜ? その言い方だとまるで、いつもはみんな不真面目みたいな印象を与えてしまうぜ」

 

「……早速議題に入りましょうか」

 

 マジかよアヤネちゃん。「沈黙は金、雄弁は銀」という言葉が示している通り、時には語らず黙すことも大事だとは思うが、このタイミングで沈黙しちゃったら、みんな不真面目だということを認めることになっちまうぜ。

 

 いやまあ、こんなに濃い面子で会議がまともに進むとは思っちゃいねーがよ。

 

「本日の議題はズバリ『学校の負債をどう返済するか』です。具体的な案などがあれば、挙手してからの発言をお願いします!」

 

「はい! はい!」

 

 セリカちゃん、誘拐されてからたった一日だってのに随分元気がいいねえ。昨夜に先生とも和解できたみたいだし、僕も好き勝手やった甲斐があったってもんだ。

 

「はい、一年の黒見さん。お願いします」

 

「……あのさ、まず名字で呼ぶの、やめない? ぎこちないっていうか、なんかむず痒いんだけど」

 

「でも、ほら、安心院(あんしんいん)さんだけ名字呼びっていうのも、なんだか仲間はずれにしてるみたいで……」

 

「ああ、確かにそうかも……」

 

「二人ともすっかり忘れてるかもしれねーが、別に僕の名字って安心院(あんしんいん)じゃねーからな」

 

「あっ!?」

 

「そういえば、そうだったわね」

 

 まったく二人とも困ったもんだぜ。元はと言えば、ニックネームで呼ばせてる僕が悪いんだけどさ。

 

「つまりだね、この会議は始まった瞬間から真面目なんかじゃあなかったってわけさ。何せ、僕のことをニックネームで呼んでいるわけだからね。分かりやすく例えるのならば、ホシノちゃんのことを『ホシノおじさん』と呼んでるみたいなものだぜ」

 

「えー? おじさんはそれでも、別に構いやしないけどね〜」

 

「でも、折角先生達が来てくれてるんだし、たまにはお堅く行くのもアリだと思う」

 

「そっちの方が、なんだか委員会らしいですしね☆」

 

 へえ、なるほど。ホシノちゃんは別に委員会全体のストッパーってわけじゃねえのか。僕はてっきり、ホシノちゃんとアヤネちゃんのダブルブレーキかと思ってたんだが。

 

「とにかく我が校の会計担当としては、警鐘を鳴らさずにはいられないのよ! 毎月の返済額は利息だけで788万! これまで通りに指名手配犯を捕まえるでもいいけど、正直それじゃあ利息の返済でいっぱいいっぱい! ここらで一発デカいのを狙わないと、おばあちゃんになっても借金地獄!!」

 

「うへ〜、おじさん、おばあちゃんになるのは嫌だよ〜」

 

 一人称の性別が一周回って肉体のものに戻ってやがる。

 

「でもセリカちゃん……一発って言ったって、具体的にはどうするの?」

 

「ふふん、これよこれ! 街で配ってたチラシ!」

 

「これは……!?」

 

「ふーん、どれどれ……」

 

 そう言ってセリカちゃんが取り出したのは、『ゲルマニウム麦飯石ブレスレットであなたも一攫千金!』と書かれた──いわゆるマルチ商法のチラシだった。

 

「これでガッポガッポ稼ごうよ!」

 

 アヤネちゃんと目が合う。どちらともなく頷いた。

 

「この間、街で声をかけられて説明会に連れて行ってもらったの!」

 

 シロコちゃんと目が合う。どちらともなく頷いた。

 

「運気を上げるゲルマニウムブレスレットってのを売ってるんだって!」

 

 ノノミちゃんと目が合う。どちらともなく頷いた。

 

「これね、身につけるだけで運気が上がるんだって! それでこれを周りの三人に売れば──」

 

 ホシノちゃんと目が合う。どちらともなく頷いた。

 

「──あれ? みんなどうしたの?」

 

安心院(あんしんいん)さん、やっちゃってー」

 

「いやー助かったぜセリカちゃん。ちょうど悪徳商法のチラシを思いっきり斬り捨てたい気分だったんだ」

 

 僕はホシノちゃんに命令されるがままに、斬らずに斬るスキル無病死(ノーモーション)を使ってチラシを斬り捨てた。

 

「なっ!? ちょっと安心院(あんしんいん)さん! 何すんのよ!!」

 

「すまないね、折角仲良くなったセリカちゃんが、しょうもねえマルチ商法なんぞに騙されているのを見て、どうにもいたたまれない気持ちになってね。ついつい激情を抑えきれずに斬っちまったぜ」

 

「ええっ!? これってマルチなの!?」

 

 むしろそれ以外ねえと思うんだが……まあ大方、親身に話を聞いてもらった結果良い人だと勘違いしちまったんだろうな。そして後はそのまま、説明会へと直行だったと。

 

 このキヴォトスのカスみてーな治安で、よくそれだけで済んだもんだぜ。悪い大人にしては善良な大人だった、というわけか。下の上でも下衆は下衆だが。

 

「そんなぁ……私、頑張ってお昼を抜いて貯めたお金で、二つもブレスレット買ったのに……あんなに高かったのに……」

 

「先生、どうするよこれ。鉄血にして熱血にして冷血と名高くはない僕でさえ、あまりの哀れさに涙を禁じ得ないわけだが」

 

「"まあ安心してよ安心院(あんしんいん)さん。今リンちゃん──連邦生徒会に報告しておいたから、セリカを騙した奴らを引き渡せば、未然に詐欺を防いだとして、シャーレ宛に少しくらいはお金が入るかもね"」

 

 生徒のこととなると仕事が早えな。普段からこのくらい精力的に書類仕事をやってほしいもんだが。

 

「聞きましたかセリカちゃん? 形はどうあれ、セリカちゃんのおかげでまた借金返済に一歩近づきましたよ〜」

 

「ぐすっ……ノノミせんぱぁい……」

 

 あーあ、泣いちまった。尚のこと許せねえな、セリカちゃんを騙した奴ら。

 

 行ってくるか。

 

「先生。それじゃあ僕はS.C.H.A.L.E(独立連邦捜査部)を執行して来ようと思うんだが、構わねーよな?」

 

「"うん。リンちゃんに連絡して、護送車を市街地まで頼んでおくね"」

 

「オッケー。それじゃあみんな、存分に会議を踊らせておいておくれ。僕はちょっと憂さ晴らしに行ってくるぜ」

 

「ん、いってらっしゃい」

 

 シロコちゃんが訳知り顔で微笑みながらそう言ったのを尻目に、僕は腑罪証明(アリバイブロック)で詐欺グループの本拠地へと突入した。

 

 ちなみに連中のアジトの位置は、ついさっき知識を剥奪するスキル老体に無知打つ(オールドコールドウィップ)を応用してセリカちゃんの記憶から抜き出した。

 

 で、僕は連中のど真ん中に突如として現れたってわけだ。

 

「なっ……誰だこいつ!?」

 

「おいまさか、この制服……連邦生徒会、それもシャーレの奴じゃねえのか!?」

 

 ああ、そうだ。そういえばまだ言ってなかったんだが、僕は今日から連邦生徒会の制服を着てる。

 

 白いジャケットに白いスカート。スカート部分には連邦生徒会とシャーレのロゴが入っている。群青のネクタイと金のボタンがよく映える制服だ。

 

 一応だが今朝に完成した制服をリンちゃんに見せに行ったら、別に文句は言われなかったし大丈夫だろうってことで着てみることにした。ちなみに制服は服を作るスキル品行縫製(ビヘイビアソーイング)で一日で作った。

 

 この際言っちまうが、リンちゃんとは既に顔見知りさ。一応シャーレに所属したわけだし、初日のうちに挨拶に行っておいた。初めはひどく驚かれたが、今ではそこそこ話す仲だぜ。

 

 ま、郷に入っては郷に従えってことさ。曲がりなりにもしばらくこちらで過ごすわけだし、所属している組織は明確にした方がいいだろうと思ってね。

 

「なんでシャーレの奴がここに……! まさかバレたのか!?」

 

「おっ、まあ流石に知られてるか。シャーレも有名になったもんだぜ。というわけで、マルチ商法で幼気(いたいけ)な生徒を騙した容疑でS.C.H.A.L.E(独立連邦捜査部)を執行する

 

 一応何パターンか予想はしてたんだが、一番楽な全員ロボットのパターンを引いたね。犬とか猫とかだとちょっと気を遣わないと怪我をさせちまうが、これなら怪我の心配はしなくて済む。

 

 

壊しても、直せばいいだけだから。

 

 

「なっ……!? おい、俺の手足が!?」

 

「どうなってんだよオイ!! 何したんだよお前!?」

 

 四体のロボットが順々に喚き散らかす。一口に大人とは言っても、こうして見ると、先生とはえらい違いだなこいつら。つくづく思うぜ、先生の所に転がり込んで良かったって。

 

「まあまあそんなに騒ぐなよ。僕の持っている破壊するスキル『欠壊衝動(クラックラッキング)で手足を動かす部分の回路をぶっ壊しただけなんだからさ。後で修理してもらえよ」

 

 そう言いながら僕は腑罪証明(アリバイブロック)に四体の動かないロボット達を巻き込んで、こちらへ向かっている護送車へと飛んだ。助手席に座り、運転している子に話しかける。

 

「隣、失礼するよ」

 

「あっ、はい……なっ、えっ!? 誰!?」

 

「や、どうも。シャーレ所属の安心院(あじむ)なじみだ。気軽に安心院(あんしんいん)さんと呼んでくれたまえ。後ろに犯罪者達は積んでおいたから、まあ確認しておいてくれ。きっと喜んで自供してくれるぜ」

 

「あっ、シャーレの方でしたか! 了解しました、後ほどヴァルキューレの方で取り調べをしておきます! ご協力いただきありがとうございました!」

 

「ご苦労様、助かったぜ。それじゃあお仕事頑張りなよ」

 

 白髪で二つ結びの運転手の子……何となく場馴れしてなさそうな感じがしたが、この感じだと新人だろうね。新人に護送車一台任せるってのもよく分かんねーが……まあ大丈夫だろ。

 

 一仕事終えた頃にはちょうどお昼頃になっており、何となくお腹も空いてきた。さーて、柴関ラーメンにでも行って、その後みんなと合流しようかな。

 

 そう考えて、柴関ラーメンの近くに腑罪証明(アリバイブロック)で移動した。いきなり店の前に移動すると、周りにいる人がびっくりしちまうからね。

 

 普段ならこんなことは気にしねーんだが、店の前が騒がしくなったら柴大将に迷惑がかかっちまう。だから、少し遠くに移動したわけだ。

 

 わけなんだが、運悪くそこに人がいた。

 

「ん? ああ、驚かせてたらすまないね。ワープして来たのは僕のスキルによるものだから、怖がったりしないでもらえると──」

 

「──どうして、連邦生徒会がここに……?」

 

「ん? ああ、どこかで見たことあると思ったら……悪名高い険悪循環(シリアスサークル)ちゃんじゃないか。初めまして」

 

「……その異名、誰が付けたの? 本当に小っ恥ずかしいからやめて欲しいんだけど……私の名前は鬼方(おにかた)カヨコだから、変な名前で呼ばないで」

 

 おっとそうだった。

 

「なっなななななんですか誰ですか!? 敵ですか敵ですよねそうですね殺します!!」

 

「あははっ! なーんか強そうだけど〜……そう簡単にはやられないよ〜?」

 

「へえ、こっちも見たことがあるね。えーっと、紫髮の方の子が暴悪影響(バイオインフルエンス)伊草(いぐさ)ハルカちゃんで、白髪の方の子が獰悪童連(ギャングヴィシャス)浅黄(あさぎ)ムツキちゃんかな? いやー全く自信がないね、誰なんだか分からねーぜ」

 

 もちろん全員知ってるが。暇つぶしにゲヘナには下見に行ったことがあるしね。さて、後は──。

 

「そんな所に突っ立って一体いつまですまし顔をしているつもりなのかな、大悪悪戯(グレイテストミスチーフ)陸八魔(りくはちま)アルちゃん」

 

──私達に、便利屋68(シックスティーエイト)に、何の用かしら

 

まあそう警戒すんなよ。仲良くしようぜ、極悪人

 

 これはまた面白そうな奴らと出会(でくわ)したもんだぜまったく。キヴォトスにいると退屈しなさそうだ。

 

 





誰か連邦生徒会の制服を着た安心院(あんしんいん)さんとか書いてくれてもいいんですよ。

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