ぼくのかんがえた ベヨネッタ3 作:(-_-)zzz
「っ…!」
ベヨネッタは己が構えた銃の先が震えるのを自覚した。
「は、速く、撃ちな、さい…!」
その銃口の先にいるのは見覚えのある魔女だった。
否、ただの見覚えのある、程度ではない。
「マミー…」
並行世界の自分の母親。
かつては救うことができずに、死なせてしまった大事な家族。
促され、何とか引鉄にかける指に力をこめた時、
「マミーから離れなさい!」
そう叫ばれた声とともに放たれた殺気に、咄嗟にその場から跳び退った。
ベヨネッタがいた場所に、魔導術による光弾が着弾し、炸裂する。
咄嗟にベヨネッタが攻撃がきた方向を見れば、そこから飛び込んでくるのは魔法の杖と帽子を手にしたこの世界の『ベヨネッタ』だった。
やむなくベヨネッタは彼女とローサから距離をとって着地する。
『ベヨネッタ』はそれを見て、急いでローサに走り寄った。
「マミー、ケガは―――」
「ダメよ! 離れなさい!」
ベヨネッタは聞き届けられないことが分かっていながらも声をかける。
無論、それは無視され、『ベヨネッタ』はローサへと駆け寄り、瞳を不気味な薄緑色に光らせたローサが振るう武器、『タルタロスの門』の銃口が向けられる。
「マミー!?」
「くっ!」
ベヨネッタはウィッチタイムの中を駆け出し、手に持っていた銃の引き金を引く。
放たれた弾丸はローサの持つ『タルタロスの門』に当たり、その銃口を目の前にいる『ベヨネッタ』からそらさせた。
そのまま飛び込んだベヨネッタは無理やり『ベヨネッタ』の手を取って距離を取らせる。
態勢を立て直したローサが『タルタロスの門』から繰り出すガトリングを連続で放ち、逆に態勢を崩していたベヨネッタは、数発その攻撃を甘んじて受け入れるしかなかった。
「あうっ!」
「!?」
自分を庇って攻撃を受けたベヨネッタを、『ベヨネッタ』が咄嗟ながら受け止め、支える。
「マミー!? 何を!?」
そう叫ぶも、ローサは答えず、代わりに腕の中で何とかうめき声をあげながら立ち上がったベヨネッタが答えた。
「操られてるのよ。あいつらに…うぅ…」
「そんな! じゃあ、あんたは―――」
止めようとしてくれていたのか、と『ベヨネッタ』が問う前に、ローサが『タルタロスの門』から再び攻撃を放つ。
『ベヨネッタ』はよろめくベヨネッタの前に立つと、手に持ったハットの中に、その弾丸を吸い込み、攻撃を無効化する。
「どうすれば助けられる!?」
「…ごめんなさい、分からないわ」
その絶望的な答えに、『ベヨネッタ』が愕然とするも、ベヨネッタが叫んだ。
「来るわ! 構えて!」
「!」
二人の間に飛び込んだローサが『タルタロスの門』を稼働させて、弾丸を撃ちまくる。
ベヨネッタ達はとっさにそれぞれいったん距離を取ってそれらを回避し、先に『ベヨネッタ』が銃弾の中へと飛び込んだ。
「マミー! しっかりして!」
「セ、レッサ…!」
苦しそうな口調で、だが体の方はすさまじい攻撃を繰り出し、『ベヨネッタ』を追い詰めていく。
手に持っている魔杖『アブラ』が弾かれ、『ベヨネッタ』の表情がゆがむ。
だが、そこへベヨネッタが持つ『カラーマイワールド』から放たれた光弾が『タルタロスの門』を撃ち、ローサの体勢を崩させて、『ベヨネッタ』が離脱する時間を作った。
「っ!」
「く!」
ベヨネッタの方が強敵と感じたか、ローサを操る存在は、標的をベヨネッタへとしぼり、走り出す。
やむなくベヨネッタが迎え撃ち、足についた銃と門がぶつかり合った。
そこへ『ベヨネッタ』も飛び込み、壮絶な魔女同士の戦いが始まる。
ベヨネッタ達を本気で殺そうと戦うローサと、それを止めようと、だが、本気を出すにはいかずにそれらを耐えるベヨネッタ達。
幾度かの交差。
ウィッチタイム内における攻防。
幸い、魔獣召喚が行われることはなかったが、それは単なる幸運か、それとも、取りついた『ソレ』の趣味か。
何度も『ベヨネッタ』がローサへ呼びかけるが、最早返事もなかった。
やがて、そうしているうちに、唐突に均衡が崩れる。
先ほどの攻撃で負傷していたベヨネッタの動きが一瞬鈍ったのだ。
その隙をぬってローサの『タルタロスの門』がベヨネッタを打ち据え、カバーに入ろうと魔杖をふるう『ベヨネッタ』を蹴飛ばして無理やり距離を取らせ、
「あぐっ!?」
倒れこみそうになったベヨネッタの手をものすごい力でつかんで引き寄せる。
「待―――」
「ヤメ―――」
二人が止める前に、ローサはベヨネッタが持つ銃の銃口を自分に向けさせ、引き金を引いた。
一瞬の静けさの中、やけに大きく響き渡る破裂音。
崩れ落ちながら愕然とした表情になるベヨネッタ。
必死に手を伸ばし、駆け寄ってくる『ベヨネッタ』。
そんな二人を見て、ローサは申し訳なさそうに、少しだけ笑うと、『タルタロスの門』を地面に落とし、自ら消滅の霧の中へと飛び込んでいった。
『ベヨネッタ』が、喉も裂けんばかりに母を呼ぶ。
だが、その声はもう届くことはなかった。
「あああ! お前が! お前がぁっ!」
そして、ベヨネッタを射殺さんばかりの形相でつかみかかる。
ベヨネッタは抵抗せずにそれを受け入れた。
『ベヨネッタ』は魔杖をベヨネッタに突き付け、
「う、うう…」
そこで力尽きたかのようにベヨネッタから手を放し、その場に膝をついた。
そんな『ベヨネッタ』へベヨネッタが声をかけようとして、耳障りな音に気が付いてはっと顔を上げる。
そこには、こちらへ向かってくるハチドリのようなホムンクルス。
咄嗟に両手に持った銃を連続斉射し、撃ち落とす、
「まさか、今の奴がマミーを?」
思わず呟き、その言葉を『ベヨネッタ』が拾った時、二人は別方向から聞こえる似たような音に気が付いた。
それらは別方向からこっそりと現れ、落ちていた『混沌の歯車』を拾い上げると、一目散に逃げだしていく。
「あれは…!」
「逃がさないっ!」
ベヨネッタが目を見開き、『ベヨネッタ』が即座に自分の魔獣である『ミクトランテクートリ』を呼び出す。
呼び出された兄弟魔獣は、空中で一回転しながら合体して加速し、ベヨネッタ達のもとへ向かう。
「来なさい!」
「!」
『ベヨネッタ』にそう叫ばれたベヨネッタは、咄嗟に『タルタロスの門』を拾い、その言葉に従って、『ベヨネッタ』とともに『ミクトランテクートリ』の背中に飛び乗った。
そして、奇妙な共闘状態のまま、それを追う。
しばらく進むと、小さなハチドリ型のホムンクルスはその体系を生かして、消滅の霧が舞う街の中へと紛れていった。
「私は下から探すわ」
ベヨネッタはそう言い残すと、魔獣の背中から飛び降りる。
『ベヨネッタ』は無言でそれを見送った後、前を向き、こぶしを固く握りしめながら、同じ目標を探すために高度を上げるのだった。
===
ホムンクルスを追って、ベヨネッタがたどり着いたのは広場だった。
その途上、操られたフランス兵たちと対峙する場面も何度があり、『シンギュラリティ』の卑劣さに歯噛みする場面も何度かあった。
『ベヨネッタ』も同じタイミングで降りてくる。
だが、『混沌の歯車』を餌にされた二人は、周囲を無数の寄生型ホムンクルスに包囲されていた。
歯噛みする『ベヨネッタ』に、鋭い視線で、空にいる『シンギュラリティ』を睨みつけるベヨネッタ。
「…私に合わせる気はある?」
そう尋ねられ、『ベヨネッタ』が胡乱な瞳をベヨネッタへと向けた。
「どういうこと?」
「『デッドリー・シン』をするわ」
「!?」
いわれた言葉に、思わず目を見開く『ベヨネッタ』。
ベヨネッタは鋭い視線のまま、告げた。
「ここにいるやつら、一匹たりとも逃すわけにはいかない」
「…」
『ベヨネッタ』はゆっくりと周りを見回した後、頷いた。
「良いわ。手伝ってあげる。私もこいつらには借りがあるもの」
「決まりね」
二人のベヨネッタが向き合い、同時に、呪文を唱え、召喚の舞を行う。
「「ドゥー・オー・イアー・ベヨネッタ!」」
足元に魔法陣が広がり、魔界への扉が開く。
「「ニラー・ダ・コンシェラー・オッド・アナナエル!」」
人の命を笑いながら摘み取る外道へ対抗するため、二人の魔女が吠えたける。
呼びかけに応じて現れた『バアル』がギョロリとあたりを見回した。
「「ファボーン・ザンヴィー・ファ・フェン・ニース・ブリオー・ヒー・パラディス!!」
そして、二人の魔力を糧に、その姿を変態させていく。
巨大なカエルの魔獣の中から、おぞましいほどに美しい女が現れた。
『バアル・ゼブル』
彼女は優雅にほほ笑むと、口を開く。
【まあ、まあ、わが主。ここが、舞台ですの?】
そして、嬉しそうに言う。
【私の歌を聴いてくださる方がこんなに】
その魔獣の秘めたる恐ろしさに、『ベヨネッタ』は思わず目を見開き、ベヨネッタは『バアル・ゼブル』に答えた。
「ええ。是非、あなたの歌声を聞かせて頂戴」
【かしこまりましたわ、我が主。では―――】
日傘を閉じて一拍置くと、『バアル・ゼブル』は大きく息を吸った。
===
ホムンクルス共を文字通り一匹残らず消滅させた『バアル・ゼブル』は、現れたときと同じく優雅にほほ笑みながら消えていった。
終わったのを見計らい、ベヨネッタは空からゆっくりと降ってきた『混沌の歯車』を見る。
同じく『ベヨネッタ』がそれを受け止めようと足を進めたとき、
【弱い者いじめをする気はないが】
何もない空間に突如消滅の霧が集まり、『シンギュラリティ』の顔を作り出して話し出した。
【君が苦しむ姿を見るのも悪くはないな】
「貴様っ!」
咄嗟に『ベヨネッタ』が魔杖から光弾を放つも、それは『シンギュラリティ』をすり抜けていく。
【もうすぐ会える。待っているよ、『アーク・イブ・オリジン』】
そう言い残し、『シンギュラリティ』が消えていくのを、ベヨネッタ達は見送るしかなかった。
「…」
「…くっ、マミー…!」
ベヨネッタが静かに瞠目し、『ベヨネッタ』が悔し気に呻く。ベヨネッタは歩みを進めると、空から降ってきた『混沌の歯車』を受け止めた。
「…揃ったわね」
5個目の『混沌の歯車』。ヴィオラの話が正しければ、これで『シンギュラリティ』がいる世界への扉が開くはずだ。
そう思っていると、ベヨネッタの後頭部に『ベヨネッタ』が持つ魔杖が押し付けられる。
「それをこちらに渡せ」
「どうするつもりかしら?」
「決まっている! 奴のところへ―――」
「無理ね。今のあんたには」
ベヨネッタは慌てることなく言い返すと、『ベヨネッタ』が手に力を籠め、
「遅いっ!」
「!?」
同時にウィッチタイムが発動する。
否、わずかではあったがベヨネッタの方が速かった。
一手遅れる形になった『ベヨネッタ』は突き付けていた魔杖を払われ、逆に銃口を突き付けられる形になった。
「言ったでしょ。『今』のあんたには無理だって」
「私は―――っ!」
そう言いあう間にも、徐々にベヨネッタの姿が薄くなっていく。
「私は行くわ。…あんたは頭を冷やしておきなさい」
『ベヨネッタ』はそう言い残して姿を消したベヨネッタがいた場所をにらみつける。
数秒そうした後、歯を食いしばって顔を上げると、その場を駆け出すのだった。
『アブラ・カタブラ』はクリア後のおまけ武器扱いへ。という設定という妄想。