ぼくのかんがえた ベヨネッタ3 作:(-_-)zzz
『ゲイツ・オブ・ヘル』の暗い店内で、妖刀『修羅刃』が怪しい光を放っている。
うっとりとその刃を見つめた後、軽く振り、納刀したのは、桜色の髪のベヨネッタだった。
「良い武器ね、借りるわよ」
それに答えたのは、髪の毛で編み上げた赤と黒の武闘服をまとう『赤のベヨネッタ』
「ええ、存分に使ってちょうだい」
妖艶なほほえみを浮かべるその後ろでは、『青のベヨネッタ』から借りた死神の鎌を思わせる三つの刃がうごめく武器『チェルノボーグ』を素振りする中華服のベヨネッタ。
「悪くないな」
満足そうにそれを見た後、彼女はエジプト風の衣装をまとうベヨネッタへと視線を向けた。
彼女は手足にそれぞれ1本ずつ刃を携えた武器『ラークシャサ』を振り回して試しており、そちらも問題ないようで、視線を受けてうなずく。
『青のベヨネッタ』がそんな二人を見て笑みを浮かべた時、怒号が響き渡った。
「行けないとはどういうことなの!?」
驚いた『ベヨネッタ』達がそちらを見やる。
視線の先には、カウンターに拳を叩きつけ、店主であるロダンを睨みつける怪盗アンブラン2世である『ベヨネッタ』と、その人の射殺せそうな視線を涼しい顔で受けているロダンその人だった。
彼は拭いていたグラスを一度カウンターに置くと、
「どうもうこうも、そのままの意味だ。今、ベヨネッタが戦っている世界には向かうことはできない」
『ベヨネッタ』達の視線が自分に注がれていることに気がつき、彼は一つ息を吐くと、説明する。
「あの世界は厄介でな。あの世界の『ベヨネッタ』つまり、『アーク・イブ』が存在しないせいで、ただでさえ空間が不安定な状態にある。ベヨネッタやヴィオラがあの世界に行けたのは、一時的にとはいえ、その世界への扉が開いたからだ」
「ならば、もう一度開ければ」
「おいおい、無茶言うなよ。あれは『妖精王』の力を受け継いだルカだからこそ開けられた扉なんだぜ。さすがの俺も同じことは出来ん」
アンブラン二世の言葉も、すげなく返される。
彼女が思わず唇をかみしめ、俯く横に、『赤のベヨネッタ』が歩み寄ると、
「あの世界の『ゲイツ・オブ・ヘル』はどうなってるの?」
「残念ながら、奴の攻撃で空間ごと消し飛んでる。じゃなきゃ、さすがの俺だってあの世界の『ベヨネッタ』に多少の融通はするぜ」
『シンギュラリティ』の行動は『天界』や『魔界』の在り方さえ捻じ曲げるものだ、とロダンが言っていたことを彼女たちは思い出した。
『青のベヨネッタ』が言う。
「本当に方法はないのかしら?」
そう詰問され、ロダンは「そうさなぁ」と顎に手をやり、
「例えば、向こう側からこちら側に扉を開けてもらえれば、その維持くらいはできるぜ」
「あんたねぇ」
それが出来ないんだから困っているのだ、と『青のベヨネッタ』が言いつのろうとした時、大きな音を立てて『ゲイツ・オブ・ヘル』の扉が開かれた。
全員がそちらを見やれば、誰かが扉を破壊せんばかりの勢いで開けながら転がり込んできたのがわかる。
その誰かがゴロゴロと床を2回転ほどしたあと、力尽きたようにうつ伏せになって動かなくなった。
「大丈夫?」
「何なの? 一体」
近くにいた砂漠の国の『ベヨネッタ』が慌てて駆け寄り、中華服の『べヨネッタ』も追随し、手を貸して、その誰かをあお向けにする。
そして、その顔があらわになった時、『赤のベヨネッタ』と『青のベヨネッタ』の声が同時に放たれた。
「「ルカ!!?」」
名前を呼ばれた男は、ゆっくりと目を開けた。
「う…?」
そして、視線をさまよわせて、状況を把握しようとする。
彼の視界に映るのは暗い店内で自分を見つめる何人かの愛しい女性の顔で。
「そ、そうか、ここが…天国…ガクッ」
と、どこか余裕がある様子で気絶した。
慌ててその頭を支えようとする砂漠の国の『ベヨネッタ』と、そんな様子を呆れた顔で見つめる『赤のベヨネッタ』と『青のベヨネッタ』が思わず顔を見合わせた。
「…ねえ、あれって…」
そんな中、桜色の髪のベヨネッタが、空いたままの扉をわずかに震える指で指す。
そこには、まるで穴が開くように存在しないはずの空間が口を開けており、その先には薄暗く光る空や廃ビルが見えていた。
「まさか…!」
「嘘でしょ…!?」
それが何かを理解した彼女たちが空間の先を見つめた後、床に転がるルカに目をやる。
ロダンもまた「おいおい」とあきれた様子を隠さない。
「まったく…」
そんな中、動いたのは『赤のベヨネッタ』だった。
彼女は優雅に倒れているルカに歩み寄ると、意識のないその額をなで、
「ホント、あんたって、私を退屈させない男ね」
そう言って投げキッスをしてやってから、空間を見やる。
『青のベヨネッタ』もその隣に並びながら、
「ホントね。いつもいつも、思わぬ場所からの登場で驚くわ」
と、嬉しそうに同意した。
そんな二人は同時にうなずきあうと、手にいつの間にか持っていたコインをロダンに向かって弾く。
「それじゃあ、私たちは行くわ」
「足りない飲み代はエンツォにでもつけといてね」
そう言い残し、二人は同時に駆け出し、空間へと飛び込んでいく。
それを追って残りの『ベヨネッタ』達も走り出す。
ロダンがその背中に声をかけた。
「おい、飲み代」
「つけといて!」
「あとできた時に払うわ!」
桜色の髪の『ベヨネッタ』が、中華服の『ベヨネッタ』が、口々に言い残して飛び出していく。
砂漠の国の『ベヨネッタ』は自分の服を一枚脱いで、ルカの頭の下に敷いてやり、立ち上がる。そして、待っていてくれたアンブラン二世がとともに扉へ向かうと、
「ごめんなさい! また来るわ!」
「私の分は警部につけといてちょうだい!」
そう口々に言い残して、同じように空間の向こう側へと消えていった。
「…やれやれ」
残されたロダンは大きくため息をつくと、わずかに笑みを浮かべ、
「頼んだぜ、アンブラの魔女さんたちよ」
そう言った。