ぼくのかんがえた ベヨネッタ3   作:(-_-)zzz

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「キ、ティ…!」

 ダメージを受けて体が動けない中、ベヨネッタは必至に視線だけを何とか自分を守るヴィオラへと向ける。

「ぐううう…」

 だが、その体はズルズルと後ろに向かって押されているし、刀を持つ手も震えている。

 あれ一本で光を押しとどめているのは、奇跡に近かった。

「逃げな、さい…!」

 先ほどとは逆になり、ベヨネッタがヴィオラへと訴える。

「ふざ、けんな…!」

 そして、ヴィオラは歯を食いしばりながら、呻くように言った。

 

 彼女の脳裏に浮かびあがるのは、無残に殺された仲間達。シグルスや、自分の母や、その親友。

 そして、自分たちを行かせるために落ちていったこの世界の『父』の姿だった。

 

「私は…! もう、逃げない…!」

 

 無力にも、何もできずに、逃がされた。

 そんな絶望を味わうのは、一度だけでいい。

 

「今度こそ、守ってみせるって…!」

 

 自分への怒りが、足を止める。

 手の震えを止める。

 魔力となって全身を駆け巡る。

 

「決めたんだよ!!」

 

 悲壮なまでの決意が、彼女にかけられた最後の「レッスン」を終わらせる。

 

「…!」

「あれは…!」

 『赤のベヨネッタ』と『青のベヨネッタ』がその目に映るものを見て思わず目を見開く。

 未だ敵やヴィオラやベヨネッタとの距離は遠くても、それははっきりと見えた。

 ヴィオラの掲げる太刀に、七色の美しい光がまとわりついていく。

 その光が刀身となって、空へと伸びていく。

 

 

「ううううおおおおおおおあああああああああ!!」

 雄たけびのようにヴィオラが声を上げる。

 それに答えるように、魔舞太刀が宝石のような煌めきを放つ刀身へと変化し、伸び、その長さは10メートルはあろうかと思わせた。

「キティ…!」

 その姿を見て、ベヨネッタは思わず目を見開いた。

 ただ、暴走する魔力に合わせているだけだった変身ではなく、自分の意思で魔力をコントロールし、それを力とする。

 魔女として、一人前と認められる魔力コントロールを、ヴィオラはものにしたのだということが分かったからだ。

「るおおおおあああああ!!!」

 ヴィオラはその刀身を思い切り振り下ろす。 

 光り輝くそれは自分たちに迫っていた攻撃の光を切り裂き、そのまま、『シンギュラリティ』を叩き切った。

【ギャアアアアアアアアアッ!!!!?】

 頭から袈裟切りにされ、『シンギュラリティ』が悲鳴を上げながら頭を押さえ、その場にうずくまる。

「どう、だ、この野郎…!」

 息も絶え絶えにそう言ったヴィオラがその場に倒れこみそうになるのを、『赤のベヨネッタ』がその首根っこをつかむことで阻止してやる。

 ヴィオラが顔を上げて『赤のベヨネッタ』を見ると、彼女は笑って見せて、

「やるじゃない」

 珍しく、褒めて見せた。

「あ…」

 その姿が『母』と重なり、思わず言葉を失うヴィオラ。

 ベヨネッタは、『青のベヨネッタ』の手を借りて、立ち上がりながら、その姿を見つめていた。

【ぎゅあ、あ、あが…ば、馬鹿な! こんな! こんな事象など!! ありえん! ありえない!!】

「まだ言ってるわ、あれ」

「ここまでくると、呆れを越えて感心するわね」

「惨めねぇ、現実が見えない男って」

 ベヨネッタ達がそう言いあう間にも、『シンギュラリティ』の傷が消えていく。

 再び戦闘が始まるかと思った時、あらぬ方向から飛来した弾丸が、ふさがりかけていた『シンギュラリティ』の頭の傷へと突き刺さった。

【…!!? !!? GYAAAAAA!!?】

 それを受けて、再び叫ぶ『シンギュラリティ』。

 ベヨネッタ達と、彼女たちに合流した『ベヨネッタ』達はその弾丸の発射元を見上げて、思わず目を見開いた。

 廃ビルの屋上で硝煙を上げる銃口を吹き消したその影が、言う。

「本物のシグルス博士からのプレゼントだ。ありがたく受け取っておけ」

 その相手の名前を、ベヨネッタが叫ぶ。

「ジャンヌ!?」

 呼ばれたジャンヌは笑みを浮かべると、廃ビルから飛び降りてくる。

 だが、その姿は無事とはいいがたかった。

 肩にかけていた上着はなく、服はところどころ血と焦げ付きで汚れていたし、頭につけていたサングラスも見えなくなっていたからだ。

 そばまで歩み寄ってきたジャンヌは、桜色の髪の『ベヨネッタ』が言った。

「何? その髪型」

 ジャンヌはムッとした表情で言い返す。

「お前こそ、なんだその髪の色は」

 気の置けない間柄を思わせるやり取りに、思わず桜色の『ベヨネッタ』が笑い、つられるように、ジャンヌもまた笑みを浮かべる。

 そんな彼女はベヨネッタ達に言い放った。

「どうやら、メインディッシュは残していてくれたようだな」

 ベヨネッタが代表するように問いかける。

「今のは何?」

「…本物のシグルス博士の置き土産さ」

「本物の、シグルス…?」

 ヴィオラが重ねて問いかける。

 彼女たちの視線を受けて、ジャンヌは未だもだえ苦しみ続ける『シンギュラリティ』を見た後、『その時』のことを思い出していた。

 

 

 現れる無数のホムンクルスに対して、ジャンヌは一人。

 やがて、体力も魔力も尽き、追い詰められ、膝をつく。

 ジャンヌへ襲い掛かるホムンクルス。

 だが、飛び込んできた誰かが、一瞬でそれらを切り裂いた。

「!?」

 驚くジャンヌを尻目に、その人物は手に持った黄金色の刃を振りかざし、次々とホムンクルスたちを切り払い、屠っていく。

 やがて、ある程度のホムンクルスを倒し、わずかにできた空隙をついて、ジャンヌに何かを差し出す。

 それは、『シンギュラリティ』がホムンクルスを召喚するときに使っていた、スクロールのようなものに近かった。

 手を差し出すのをためらうジャンヌは、代わりに自分を助けてくれた相手を見る。

「…! お、お前は…!」

 その顔は黄金色の仮面で見えなかったが、服装に見覚えはあった。

 かつて、『アンブラの魔女』と対になるように存在していた『ルーメンの賢者』。

 その最後の生き残りと同じ服を着ていた。

 だが、同時に首から下げていた何かにも、ジャンヌは気づく。

 それは、かつて親友から教えられたこと。

 母『ローサ』から受け継いだたった一つのもの。口紅のケース。

 黄金の意匠が施されたそれ。

 それと全く同じものを、相手は首から下げていた。

 それを見て、ジャンヌから迷いが消える。

 差し出されたスクロールを受け取り、広げた。

 相手はそれを見て、何も言わずに向かってくるホムンクルスの大群へと向かっていく。

 その光景を目の端でとらえながら、ジャンヌはスクロールの中で再生される映像に、目を見張った。

 

『私は、シグルス。この映像を見ている誰かへと、メッセージを残そう』

 

「シグルス博士!?」

 

『この映像が見られているということは、私はすでに命を落としている、もしくは『ホムンクルス』達の手に落ちているのだろう。ならばこそ、君に託したい。奴らに対抗するための『アンチホムンクルスプログラム』を』

 

 ジャンヌは映像を見つめ続ける。

 その中のシグルスは語った。

 

『私が奴らに狙われていることは分かっている。だから、私はそれを『魔界』へと隠した。あの場所ならば、『ホムンクルス』達も易々と手を出せないはずだ』

 

「魔界だと!?」

 思わぬ場所にジャンヌは驚きのあまり声を上げた。

 

『隠し場所には迷ったのだが、相談に乗ってくれた『友人』の『賢者』が、『魔界』が良いと言ってくれてね。そこならば、強き『魔女』が、きっとたどり着き、私の遺志を継いでくれると言ってくれた』

 

 それを聞いて、ジャンヌは一度戦う『ルーメンの賢者』の背中を見て、すぐに映像へと視線を戻す。

 

『「シンギュラリティ」と戦う強き魔女よ。どうか、それを有効に使ってくれ』

 

 一体どうやって、という問いかけは無意味だろう。

 大事なのは、その場所に『シンギュラリティ』を滅ぼすための何かがあるということだ。

 ジャンヌはそう決意すると、それを見計らったかのように、映像の中のシグルスが続ける。

 

『君に幸多からんことを。そして…』

 

 そう、少しうれしそうに笑うと、

 

『もし、私が生きていて出会えたならば、私と彼の『友人』となってくれれば嬉しい』

 

「博士…」

 それが、最早かなわぬ願いであることも、ジャンヌはどこか察知していた。

 映像の中のシグルスは茶目っ気たっぷりに笑って見せると、その姿を消した。

 そして、ジャンヌはスクロールから顔を上げると、ホムンクルスの一部を消滅させた『ルーメンの賢者』が、ちょうど足を止めてこちらを見やっているのに気が付いた。

 ジャンヌは叫ぶ。

「私は『魔界』へ行く! 貴様は!?」

 それが聞こえたのか、『ルーメンの賢者』は無言のままうなずいて見せると、向かってくるホムンクルスたちに向かって武器を構えた。

 

―――ここは任せろ。

 

 背中がそう言っていた。

「…武運を!」

 ジャンヌはそう言い残すと、駆けだす。

 ジャンヌを追おうとした『ホムンクルス』達は残らず切り伏せられた。

 無言のまま武器を構える『ルーメンの賢者』を前に、『ホムンクルス』達はわめきながら襲い掛かるしかなかったのだった。

 

 

 その場を離れたジャンヌは、ひたすらに走る。

「ロダン! 聞こえているだろう!? 奴らから離れた! 開けろ!!」

 そう叫ぶと、待っていたかのようにどこからともなくレコードプレーヤーが現れ、ジャンヌはそれに駆け寄り、すぐさまレコードをひっくり返した。

 すると、その場に『ゲイツ・オブ・ヘル』が出現する。

「来たか、ジャンヌ」

「ロダン、前置きは良い。すぐに、魔界への扉を開けろ」

 ジャンヌがそう言って、カウンターから身を乗り出しながら凄む。

 この男がちょくちょく、この『ゲイツ・オブ・ヘル』から直接魔界へ足を運んでいることは、もはや公然の秘密だったからだ。

 グラスを磨いていたロダンは大きくため息をつくと、

「おいおい。そう簡単に開けるわけないだろ、と、本来なら言うところだが…」

 拭いていたグラスをカウンターへ置き、ジャンヌを見た後、何もない壁へと目を向ける。ジャンヌがその視線を追うと、壁だった場所の空間がゆがみ、扉がねじれるように現れた。

「今回は本当に特別だぜ。開けといてやるから、さっさと用事を果たしてきな」

「言われずとも」

 ジャンヌはすぐさまその扉に飛び込む。

 扉の先は赤い雲や黒い風が吹きすさぶ『魔界』。

 間違いないその場所の地上へ着地すると、すぐさまジャンヌは獣となって駆け始めた。

 だが、すぐさまその足は止まる。

 なぜならば、向かう先から無数の悪魔どもがやってきたからだ。

「チッ。この忙しいときに!」

 舌打ちをし、憎々しげに吐き出しながら武器を構えるが、様子がおかしいことに気が付く。

 悪魔どもはジャンヌを目指しているのではなく、ジャンヌを目指して走る『誰か』を追いかけているのだ。

「!」

 その『誰か』が視界に入ると、すぐさまジャンヌは駆け始める。

 ウィッチタイムも駆使し、その距離を瞬く間に詰めると、

「はぁっ!」

 一番先頭で、まさに『誰か』に襲い掛かろうとしていた悪魔に蹴りを放つ。

「!!」

 そして、すぐさま魔獣を召喚し、悪魔どもを蹴散らし、膝をついた『誰か』に駆け寄った。

「貴方は…!」

 その相手に見覚えがあった。

 その姿は魂だけとなっていたけれども、その眼差しも、親友に似た面影も、間違うはずもない。

 死した魔女は魂だけになって魔界を漂う。

 そのルールにより、彼女は魂だけの姿であったが、その手にはしっかりとラグビーボールのようなカプセルのようなものが抱かれていた。

「ああ、貴方だったのね…」

 息も絶え絶えといった様子の『誰か』否、『彼女』を、ジャンヌが支える。

「大丈夫か? すぐに安全な所へ―――」

「いいえ。これを」

 『彼女』は手に持っていたカプセルをジャンヌへと押し付ける。

カプセルの中には液体と、たった一発の弾丸らしきものが入っているのがみてとれた。

「これが必要なんでしょう? さあ、急いで」

「ですが」

 ここに『彼女』を置いていけば、やがては悪魔どもの餌にされることは目に見えていた。

 だが、『彼女』は気丈に笑って見せると、

「私は死んだ身。あの子に必要なのは、生きている貴方の力だ。さあ!」

 その言葉に押されるように、ジャンヌはしっかりとカプセルを抱いて立ち上がる。

「偉大なる魔女に感謝を」

 そう言い残し、その身一つで悪魔どもと向き合う彼女を置いて、走り出す。

 彼女は振り返らなかった。

 そして、自分が飛び出してきた『ゲイツ・オブ・ヘル』へと続く扉へと飛び込んでいくのだった。

 

 

 ジャンヌはもだえ苦しむ『シンギュラリティ』へと言い放つ。

「お前に打ち込んだのは、お前という存在を消滅するための『プログラム』だ。シグルス博士の最後の置き土産の、な」

【お、おの、れえええ! 馬鹿な馬鹿な! あああ゛あ゛!】

 グズグズに溶けていく『シンギュラリティ』は、その姿を失っていく。

 だが、ただでは終わらんとばかりに、

【ま、まだだ! まだぁああ゛あ!】

 明朗だった声が醜く歪んでいく。それに合わせるように、『シンギュラリティ』の体もまたボコボコと泡立つように膨れ上がっていく。

【まだ終わっていないいぃぃ! まだぁ! 私はああ゛あ゛!】

 まだ、まだ、と繰り返すが、もはや、もう戻りはしないだろう、ということはだれの目にも明らかだった。

 制御を失い、ただただ、肥え太り、広がり、巨大化していく。

 先ほどまでのスマートともいえた人間に近い姿とはかけ離れた姿となっていく。

 そして、それはどこまでも止まらなかった。

 最初は大型の魔獣ほどの大きさだったものが、ビルほどの大きさとなり、さらに、巨大化し、周りのものを飲み込みながら広がっていくのだ。

 その巨大化していくその体から逃れて、廃ビルの上に着地した魔女たちが見たのは、町すらも飲み込まんとしていく『シンギュラリティ』の成れの果てだった。

「やつめ、どこまで…」

 思わずといった様子でジャンヌがつぶやけば、吐き捨てるようにヴィオラが答える。

「あいつは、無数の世界を取り込んだんだ。下手すれば、この星すら―――」

 その憤怒と絶望の言葉を断ち切ったのは、ベヨネッタだった。

「それじゃあ、アレには、この世界からご退場いただかないとね」

 そう、堂々と言い放ち、笑みを浮かべる姿は、文字通り、不敵で妖艶な表情だった。

 それを受けて、『赤のベヨネッタ』と『青のベヨネッタ』がうなずきあい、ベヨネッタに近づく。

 ほかの『ベヨネッタ』達やジャンヌは、彼女たちが何をするのかを理解したのか、それぞれの魔獣を召喚する。

 一人、話が見えないヴィオラがキョロキョロとするのを、ジャンヌが背中をたたいて立たせた。

「奴は、私たちが引き付ける。頼んだぞ、『セレッサ』」

「「「任せなさい」」」

 3人の親友が答え、ジャンヌはわずかに笑うと、手に持った武器の銃口を巨大化し続ける『シンギュラリティ』に向け、

「行くぞ!!」

 そう号令をかけた。

 『ベヨネッタ』達がそれに答えて、同じように魔獣たちと共に飛び出していく。

 一歩遅れてヴィオラもチェシャを召喚し、それを追った。

 残された3人の『ベヨネッタ』は視線を合わせ、うなずきあう。

 

「「「ドゥー・オー・イア・ベヨネッタ」」」

 

 そして、同時に呪文を唱えながら、召喚術を開始した。

 一糸乱れぬ動きに応じ、3人の足元に魔法陣が現れ、魔力が立ち上っていく。

 

「「「ニラー・ダ・コンシェラー・オッド・アナナエル」」」

 

 それに気が付いた巨大化した『シンギュラリティ』が攻撃をくわえて、止めようとするも、その手をアラクネアがの糸がからめとり、動きを止め、空を飛ぶ魔獣たちが肩をつかみ、とどめ、列車の魔獣が砲弾を撃ち込み続ける。

 

「「「テロクヴォヴィム・ア・グラム・オルス」」」

 

 しかし、『シンギュラリティ』はさらに巨大化し、やがては、高層ビルの高さを超え、成層圏にまで達するかの大きさになっていき、『ベヨネッタ』達の魔獣では抑えきれなっていく。

「チェシャアアアアッ!!!」

「!」

 そこへ、ありったけの魔力をつぎ込んだヴィオラが刀を投げ、同時に、ジャンヌもまた自分の魔獣を召喚した。

 『シンギュラリティ』の3分の2ほどの大きさとなったチェシャが、ジャンヌの召喚した『マダム・ステュクス』が、『シンギュラリティ』を抑え込む。

 

「「「アドゥナ・オヴォフ・アヴァヴェゴ」」」

 

 だが、それも数秒が限界、すぐに振り払われ、その拳が3人の『ベヨネッタ』たちへと振り下ろされる。

 その場にいた全員が目を見張る。

 拳が彼女たちのいた廃ビルごと、押しつぶしていく。

 そして、

 

「「「ファフェン・ニース!!!」」」

 

 膨大な光が立ち上り、瓦礫を粉砕しながら無数の髪が絡まりあい、一体の巨大な悪魔を編み上げた。

 その姿は『シンギュラリティ』よりも一回り大きく、女性らしい体つきが美しく、両目の赤い輝きがやさし気に微笑んだ。

 すべての悪魔の頂点である女王たる存在。

 

 『クイーン・シバ』

 

 その姿が完全に固着化されると、彼女は『こちら』へ向かって投げキッスをする。

 そして、その微笑みのまま拳を思い切り突き出した。

 それは、『シンギュラリティ』の顔面に突き刺さり、思い切りのけぞらせる。

 『クイーン・シバ』は巨体に見合わぬ素早さで『シンギュラリティ』の横へと回り込むと、その右足を思い切り振り上げ、『シンギュラリティ』の足をけり上げ、地面から浮き上がらせた。

 直後に右足を振り下ろし、顔面を蹴り落とす『クイーン・シバ』。

 すると、その勢いで『シンギュラリティ』の頭が下になり、足が上になる。

 さらに、右足を振り上げ、顔面を蹴れば、今度はその勢いで顔が上になり、足が下になる。

 つまり、腰のあたりを起点とした回転が生まれることになる。

 それが繰り返されるということは、『シンギュラリティ』が縦回転を続けることである。

【ギャアアァァアアァァァ!!?】

 エコーのような悲鳴が上がり続け、その回転は徐々に速くなる。

 そして、一定の速さになった時、『クイーン・シバ』は『シンギュラリティ』の顔面ではなく、下になった腹を思い切り蹴り上げた。

【グゲッ!】

 悲鳴を上げ、『シンギュラリティ』は回転しながら空へと打ち上げられる。

 成層圏を抜け、上昇していくていく『シンギュラリティ』。

 対して『クイーン・シバ』はその両手を頭上に掲げた。

 そこにすさまじい勢いで魔力が収束していき、それは空の光をさえぎっていた陰気な雲も、『消滅の霧』も一気に散らしていく。

 やがて、その魔力の美しい光が地球よりも大きくなった時、『クイーン・シバ』は一度手を下ろし、構え、拳で魔力隗を打ち上げた。

 それは凄まじい勢いで上昇し、『シンギュラリティ』に追いつき、飲み込んでいく。

 

―――アアア!!? 馬鹿な! 馬鹿な! バカナ! 私は! 私がこんな事象など認めな―――

 

 そして、最後までのあがきもセリフも許すことなく、『シンギュラリティ』は光の中に消えていった。

 

 





 『シンギュラリティ』決着編、完!

 なんでパパンと一緒にいる世界線無いの? やり直し!

 …もうちょっとだけ続くんじゃ。
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