ぼくのかんがえた ベヨネッタ3 作:(-_-)zzz
『シンギュラリティ』と『消滅の霧』が消え、残ったのは、月光に照らされる『クイーン・シバ』。
『クイーン・シバ』はしばらく空を見上げていたが、やがて、完全に『シンギュラリティ』が消滅したことを確認したのか、その姿を髪の毛へと変化させながら消えていく。
そして、その足元にあった魔法陣の上には、3人の『ベヨネッタ』達が元の武闘服へと戻りながら、『ベヨネッタ』達やヴィオラ、ジャンヌを見やった。
「ベヨネッタ!」
ヴィオラが喜色を浮かべて駆け寄り、ジャンヌや『ベヨネッタ』達もそれに追随する。
その様子に笑みを浮かべるベヨネッタだったが、その視線を上へ向ける。
すると、強く黄金色に光り輝く立方体の物体がゆっくりと降りてきていた。
「これは…?」
ベヨネッタはそっとそれを右手で受け取る。
ほかの魔女たちも顔を見合わせて、その物体を見やるが、その答えは意外な方向から降ってきた。
「そいつは、『シンギュラリティ』のエネルギー源の塊、だな」
聞きなれた男性の声音に、彼女たちはそちらを振りむく。
瓦礫の陰から若干よたつきながら現れたのは、それこそ、見慣れた男だった。
「「「ルカ!?」」」
ベヨネッタと『赤のベヨネッタ』、そして、『青のベヨネッタ』の声が重なる。
そんな中、ヴィオラが訪ねる。
「ルカ、これを知ってるの?」
「詳しくは知らないぜ。ただ、そいつがあの『シンギュラリティ』の強大な力の源だってことくらいさ」
「これが? このちっこいのが?」
ヴィオラがそれを指さし、重ねて問いかけると、ルカは鷹揚に頷いた。
「そうさ、そいつが『シグルス博士』が開発した、世界を渡り、繋ぐもの。『シンギュラリティ』が悪用し、世界を破壊した、『秩序の粒子』」
ルカは、魔女たちの視線を受けながら、びしっとそれを指さすと、
「気をつけろよ、ベヨネッタ。下手に扱えば、それこそ、この星どころか、宇宙ごと、ドカン!だぜ」
ヴィオラが大げさなほどにのけぞり、ジャンヌは目を細め、『ベヨネッタ』達がそれを見やり、ベヨネッタはその手の中の光を見つめて、
「そうみたいね。こうしているだけでも、すごい力を感じるわ」
ルカの言葉を肯定した。
『赤のベヨネッタ』が言う。
「それで、これはどうしたら良いの?」
「一番良いのは、内包したエネルギーを全て発散させることだ。そうすれば、それは無力化し、悪用されることはなくなる。だが、下手に使えば―――」
『青のベヨネッタ』がその言葉を引き継ぐ。
「私たちがこの世界を壊してしまう可能性がある、ってことね」
その通り、とルカが答えた。
『ベヨネッタ』達は視線を交わし、不安げな表情を見せる。まあ、彼女たちの大切なものを奪った根源となれば、そうもなるだろう。
だが、そんな中、ベヨネッタが言った。
「それなら、方法は決まってるわね」
驚く魔女たちの視線を受けて、ベヨネッタは続ける。
「ルカ。あんたのことだから、『アレ』は持ってきてるんでしょ?」
「もちろんさ。ロダンにも集めるの手伝ってもらったんだぜ」
そう言って、ルカはコートの内側から5つの球体を取り出す。
「それは…」
桜色の髪の『ベヨネッタ』が見覚えのあるカラーリングに目を見張れば、中華服を纏った『ベヨネッタ』が答えを引き継ぐ。
「例の『混沌の歯車』か。だが、これをどうするつもりだ?」
ルカは魔女たちの間を通り、ベヨネッタへと歩み寄ると、恭しく5つの球体を差し出す。
それはふわりと彼の手から浮かび、ベヨネッタの差し出す左手の周りを回転しながら、本当の姿へと変形していく。
ベヨネッタは何でもないことのように言った。
「決まってるわ。あいつに奪われたもの、壊されたものを取り戻すのよ」
どういうことか、とヴィオラが問いかける。
だが、『ベヨネッタ』達やジャンヌはベヨネッタが何をしようとしているのか理解したのか、うなずきあうと、彼女のそばへと歩み寄った。
「ジャンヌ」
「何だ?」
だが、ベヨネッタはジャンヌをとどめると、言う。
「その子のこと、お願いできる?」
ジャンヌは足を止め、目を見開く。ゆっくりとキョトンとした顔のヴィオラを見てから、ベヨネッタを見る。
「セレッサ、それは―――」
「その子はまだ半人前なの。良い先生がいれば、1人前くらいにはなれるでしょうけど」
ベヨネッタのその言葉を受けて、ジャンヌは一人拳を強く握りしめた後、それをほどく。
「…分かった。任せておけ」
そう言って、呆けたままのヴィオラの手を取ると、歩き出した。
「行くぞ」
「え!? 行くって!? ちょ、ベヨネッタは!? ってか、
ヴィオラの叫びは無視され、ずるずると引きずられていく。
そんな二人へ、ベヨネッタが呼びかける。
「キティ。私がいなくても、ちゃんとレッスンはしておくのよ」
「!」
その言葉を聞いて、ヴィオラはベヨネッタが何をしようとしているのか、理解した。表情を変え、すぐに駆け寄ろうとして、ジャンヌに担ぎ上げられて阻止される。
「ジャンヌ!」
「邪魔をするなよ、半人前」
「待てよ! ベヨネッタが!」
「喋ると舌を噛むぞ」
「うぎゅう!?」
キティを肩に担いだまま、ジャンヌが跳躍し瓦礫を越えていく。
ヴィオラは小さくなるベヨネッタを見て、必死に叫びながら暴れるも、それを止めることはできなかった。
そんな騒々しい二人を見送ると、ベヨネッタは左手にまとわりつく5つの『混沌の歯車』と、右手に持つ『秩序の粒子』を合わせる。
すると、『混沌の歯車』は『秩序の粒子』を中心に回転を始めた。
「…」
ベヨネッタは周りにいる『ベヨネッタ』達を見やると、
「あとは、私一人で大丈夫。あんたたちは下がってなさい」
『赤のベヨネッタ』が肩をすくめて、
「あら、こんなところで追い返すなんて、ひどい話じゃない」
『青のベヨネッタ』も続く。
「そうね。せっかくのパーティだもの、最後まで堪能させてほしいわ」
他の『ベヨネッタ』達も引くつもりはないらしく、頷いて見せた。
ベヨネッタは苦笑して、
「仕方ないわね」
と、言う。
そして、足元の魔法陣から魔力を放ち、『ベヨネッタ』達とルカを一気に吹き飛ばした。
悲鳴が上がり、彼女たちは宙を舞い、だが、それでも、各々が着地して見せた。ただし、ルカは瓦礫にベチャっと叩きつけられていたのを、『赤のベヨネッタ』が視界の端にとらえており、そのまま地面へと落ちていくのも見えた。
だが、ベヨネッタとの距離は大きくあいた。
ベヨネッタが『ベヨネッタ』達へと言い放つ。
「悪いけど、一番おいしいところは貰っていくわ」
「待ちなさい!」
『青のベヨネッタ』がいの一番に駆け始め、それに他の『ベヨネッタ』達も続く。
だが、彼女たちがベヨネッタにたどり着くよりも前に、すさまじい光と魔力による風が巻き起こり、彼女たちの足を止めさせた。
「くぅ!」
「ダメよ! あなた一人じゃ!」
アンブラン二世が咄嗟に地面に伏せ、砂漠の国の『ベヨネッタ』が地面に武器を突き立てて吹き飛ばされそうなのをこらえながら叫ぶ。
そして、それぞれが必死に地面に縋りつく『ベヨネッタ』達の間を、一匹の獣が何事もないように駆けていく。
「…あれは…!?」
『赤のベヨネッタ』が見つめる先で、その獣は光の中に飛び込んでいった。
魔法陣の外側はすさまじい魔力風と光の暴力が溢れているというのに、内側は風一つない静かな場所だった。
そんななか、ベヨネッタはゆっくりと『混沌の歯車』と『秩序の粒子』が乗る左手を掲げた。それらは回転を速くしながら光が強くなっていく。
ベヨネッタはそれを見た後、ゆっくりと右手を掲げ、
「ドゥー・オー・イア」
「ベヨネッタ!」
突然飛び込んできたルカに驚てい思わず動きを止めてそちらを見やった。
ルカは着地に失敗し、ゴロゴロと魔法陣の上を転がった後、うめきながら立ち上がる。
そして、驚いた顔で固まっているベヨネッタを見て、服についたほこりを払うと、
「この俺から逃げようだなんてそうはいかないぜ」
「ルカ…」
驚愕の表情が悲痛なものに変わる。
「馬鹿ね、なぜ来たの? この場所がどうなるかわからないのよ?」
「だから、他の『ベヨネッタ』やジャンヌたちを追い出したってわけか。まったく、相変わらずだな、あんたは」
ルカは快活に笑ってみせて、ベヨネッタに歩み寄る。そして、ゆっくりと降ろされる右手を取ると、
「あんたは俺が追うと決めたたった一人の魔女さ。どんなところに至ったとしても、たどり着いて見せる」
「…」
ベヨネッタの顔が悲痛なものから驚き、呆れ、そして、笑みに変わっていく。
「…そうね。あんたは、ホントに…」
言いながら、ゆっくりと左手でルカの顔に触れる。
「唐突で、目が離せなくて、私を退屈させない…」
ルカは一度手を離すと、ベヨネッタを抱き寄せ、彼女は抵抗もないままその手の中に納まり、
「私の…愛しい人…」
そう語りかける。
ルカは嬉しそうに笑うと、頬に触れる左手に自分の手を重ねた。
ベヨネッタはおもむろに自分の眼鏡をはずし、ルカはそんなベヨネッタへと―――
魔法陣の外ではさらに光と風が強くなり、こらえきれなくなった『ベヨネッタ』達が吹き飛ばされていく。
そんな風の中、魔獣を召喚した砂漠の国の『ベヨネッタ』が他の『ベヨネッタ』達を回収し、彼女たちは『マルファス』の背中からその光の柱を見やった。
光の柱は空の果てまで届くように伸びていき、その光があらゆるものを飲み込んでいく。
空も大地も『ベヨネッタ』達も、距離を取るジャンヌとヴィオラにも迫り、
「マミーッ! 父さんーっ!」
その悲痛な叫びすらも、光の中へと消えていった。
===
ふと、目を開けると、見慣れたものが見えた。
大きな門に大きな提灯。浅草寺の象徴的な門構え。
それをぼんやりと見つめていた『ベヨネッタ』だったが、意識ははっきりとすると、慌てて起き上がった。
「ここは…!?」
周りを見回せば、何人もの人間が頭を振ったり、抑えたりしながら、起き上がるのが見えた。
『ベヨネッタ』は目を見開くと、そんな人々の間を走り出す。
途中、自衛隊員達が困惑した様子で通信機に向かって叫び様子や、家族で抱き合う人々を見かけたりもしたが、彼女の目的はその先だった。
「ジャンヌ…!」
奴と戦い、『ジャンヌ』が命を失った駅の線路内。
誰もいないその場所。その中央に降り立つと、『ベヨネッタ』はライバルの名を叫んだ。
「ジャンヌ! ジャーンヌッ!!」
声がかれるのではないかと思うほど、叫ぶ。
あの時、目の前で彼女を失ってしまった瞬間と同じように。
「セレッサッ!!」
だが、今は違った。
それに答える声がある。
ベヨネッタは振り返れば、そこには全力でこちらに駆けてくる『ジャンヌ』の姿があった。
「ジャンヌ!」
『ベヨネッタ』は、迷わずに彼女に向かって走る。
今度は、手が届くことを確信しながら。
===
「戦いは終わった!!」
無数の兵士たちを前に、中華服を纏った『ベヨネッタ』が声を張り上げる。
楼閣の上に立つ彼女を、多くの目が見つめている。
そして、そのほとんどが涙ぐんでいるようだった。
「我らと共に戦い、我らを救いし偉大なる魔女へ捧げる
彼女が拳を振り上げれば、それに答えるように、鬨の声が上がる。
喜びに、達成感に、生き残ったことに、失った命が取り戻されたことに、そして何より、果てなき戦いの終焉と勝利に、彼らは声を張り上げる。
それは大地を揺るがすかのように大きく、空へと響いていく。
鬨の声を聞きながら、『ベヨネッタ』は抜けるような青空を見上げた。
「…ありがとう。別の世界の私…」
そう、小さく告げて。
===
喜びを爆発させるフランス兵たち。
凱旋門の上からその様子を見ていたのはアンブラン二世だった。
その瞳は、寂しげに揺れていて、だからか、背後から飛来する手錠のような鎖に気が付けなかった。
「!?」
「ハァーッハッハッハ! やぁっと捕まえたぞ! 怪盗アンブラン二世!」
鎖を手に、勝ち誇ったように笑うのはもはや顔なじみとなったエンツォ警部だった。
その状態のまま焦りもせずに振り返ると、アンブラン二世が口を開く。
「あら、警部。元気そうで何よりだわ」
「何を言うか! お前らが好き勝手するせいで、母ちゃんにこっぴどく…うん?」
と、そこまで言ったエンツォは、きょろきょろと周りを見回し、
「何だ、今日はお前だけか!? 一世はどうした!? 一世は!」
「…」
アンブラ二世が黙り込むと、エンツォはその様子に調子が外れたのか、首を傾げ、だが、すぐに咳払いをして気を取り直すと、
「まあいい。お前だけでも、今日こそ逮捕だ!! かかれぇ!」
そう言って、控えていた警官たちに号令をかける。
警官たちはいっせいに彼女にとびかかろうと走り出す。
しかし、飛来した弾丸が連続で屋上をうがち、その轟音に思わず足を止め、そのまま、鎖が撃ち抜かれて砕かれるのを見送るしかなかった。
「何だぁ!?」
「これは…!」
エンツィオが思わず叫び、ちぎれた鎖を見て呆然とし、自由になったアンブラ二世は弾丸の発射元である空中を見上げた。
「何をしている二世! ここは引くぞ!」
「マ…一世!?」
そこには、『アンブランアーマー』の背に乗り、タルタロスの門を構えるアンブラン一世の姿があった。
一瞬呆けたアンブラン二世だったが、すぐに走り出すと跳躍し、一世の横に着地する。
信じられない、という顔で自分を見る娘へ、『ローサ』は一瞬だけ優しげに微笑むと、
「さあ、次の獲物へ向かうぞ!」
「…ええ、いつでも、どこへでも! 一世!」
アンブラン二世である『ベヨネッタ』がそう答えて見せると、『アンブランアーマー』は二人を乗せてフランスの夜空を飛んでいく。
凱旋門の上でわめき叫ぶエンツォと部下たちは、その姿を見送るしかなかった。
===
風が風車を回していく。
砂漠の中に点在する畑を、民たちが耕す。
その風景を見守っていた『ジャンヌ』は、ふと顔を上げた。
その先では、『マルファス』を操り、空から民たちを見守る姫の姿がある。
何人かの民たちが気が付き、頭を下げ、子供たちは手を振る。
姫はそれに応えて手を振り返すと、『ジャンヌ』のそばへとマルファスを着地させ、自分も降り立った。
「特に異常はなかったわ。魔界からの干渉も感じられなかったし、今年の水の供給も問題なさそうね」
「何よりです、姫」
立派にその役目を果たす親友を、『ジャンヌ』はやさし気に見つめた。
「フフ」
「何よ、急に笑って」
「いえ、本当にご立派になられました。私の役目もそろそろ―――」
「何言ってるの? 貴方には私のそばで働いてもらうにきまってるでしょ」
そう、堂々と言い放つ姿は、かつて出会った別の世界の『姫』を思わせた。
『ジャンヌ』が思わず笑みを浮かべ、『ベヨネッタ』もまた笑みを浮かべる。
マルファスが気ままに飛び上がり、風の中を飛んでいく。
それを見上げた『ベヨネッタ』は嬉しそうに『ジャンヌ』に言った。
「…ジャンヌ、私、負けなかったわ」
『ジャンヌ』はそれを聞いて嬉しそうに頷くのだった。
このエピローグが書きたくて、妄想小説を書き始めたようなもの。
雑でもハッピーエンドのほうが好きです。(唐突な告白)