日本国最後の幸運艦 外伝[大西洋の死闘]   作:刀持ちの烏

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あけましておめでとうございます!!刀持ちの烏です。今年も拙いながらも小説を書いてきますんで、今後ともよろしくお願いします!!

それでは本編、お楽しみください。


Episode8 巨艦現る

 

〜〜バージニア州/ノーフォーク軍港〜〜

 

3月30日に入った段階で、バージニア州はやっと日中が暖かくなるほど春になりはじめていた。海軍最大の軍港が置かれるノーフォークでも、冬と比べてメインストリートが活気付きはじめ、街路樹も緑の葉を増やし始めていた。

市場では港町らしく新鮮なシーフードが売り買いされ、ダイナーやカフェでは客たちが席に座って談笑しながら提供されるクラムチャウダーや南部料理に舌鼓をうっていた。

 

そんな市外から見て奥、海上に停泊している戦艦[ウィスコンシン]の甲板上に、第4艦隊司令長官ジョン・デーリング少将はいた。

クラニー・アイランド・ビーチに停泊する[ウィスコンシン]の艦上からは、西側にいる[エンタープライズ]をはじめとする大型空母(スーパーキャリアー)や、列車が貨物を運びにくるランバーツ・ポイント。エリザベス川沿いに停泊する駆逐艦や強襲揚陸艦などを見渡せるようになっていた。

 

(やはり俺は艦にいる方が落ち着くな....)

 

そんなことを考えながら、デーリングはその風景を見渡していた。岸から吹く風が彼の頬をなでる。

前任の司令官が軍事クーデターにより殺されたことで跡を継ぐこととなったデーリングは、歴戦の軍人らしい精強な顔立ちとがっちりとした体格をしていた。しかし、今のところ彼自身実戦を経験したことは少ない。

現在52歳の彼が経験してきた戦争は大佐時代に参加したイラク戦争が主であり、それも大々的に活躍したというわけではなかった。だが、第7艦隊[アイオワ]戦闘群司令官として参加した2008年の太平洋日米合同演習では特務機関第1艦隊を無力化したりと、その実力はたしかなものがあった。

 

「ああ、そこにおられましたか。さっきまで探してましたよ」

 

ふと呼ばれたことに気づいたデーリングは、声のした方に振り向く。

 

「なんだ"大佐"、君か。わざわざここに何しに来た?」

 

「なにって、ただ世間話をしに来ただけですよ。たまにはそういう話もいいでしょう?」

 

"大佐"と呼ばれた男性は、そう言ってデーリングの隣まで歩いてきた。どこか虚な目をした彼は、大佐という階級にしてはどこか若い、いや、どの年齢か判別できない風体をしていた。

 

「まぁ、別にダメなわけではないからな。それで、なにについて話すんだ?」

 

隣まで来た"大佐"に対しデーリングは聞く。

 

「イギリスとのこれからについて、ですかね」

 

「イギリスとか?それはもう戦争不可避としか言えないだろうな。向こうを見てみろ」

 

何を今さらといった表情を浮かべたデーリングは、そう言って駆逐艦や揚陸艦が停泊している埠頭を指差す。

指差す先ではタラワ級であろう2隻の強襲揚陸艦や、ニューポート級戦車揚陸艦に戦車や装甲車などが運び込まれていた。隣にいるいささか古びたファラガット級やフレッチャー級も、すぐに出撃できるよう体制を整えている。

 

「あれらは、今後の作戦のために準備を整えてる艦たちだ。『北西の家』がしくじらなければ、すぐにイギリスと事を起こせるようになっている」

 

「起こせるように....ね。そうなれば、僕の第1艦隊も動くことになるんですかね?」

 

「どうだかな。一応そうなった時のために第1艦隊はすぐに動けるようにしてあったとは思うが....」

 

デーリングはそう言って頭をひねった。彼の話に出てきた第1艦隊は、ベトナム戦争および米朝戦争後に編成されたもので、その規模は約90隻と、アメリカの序数艦隊(ナンバードフリート)の中でも最大のものであった。

 

「まぁ、なんだっていいですよ。第1艦隊を使って戦えること自体僕自身本望でしたから」

 

気軽にそう言った彼の言葉に、デーリングはムッとした表情で返す。

 

「第1艦隊は君の私兵ではない。ステーツの大切な財産だ。そのことは忘れずに運用してくれよ」

 

「それぐらいわかってますよ。日本との戦争だってまだ始まったばかりです。そう簡単に切り札を切りやしませんよ」

 

「だったらいいけどな....」

 

デーリングは表情を変えないままそう返した。その表情を見た"大佐"は「ああそれから」と前置きした後、デーリングの耳元に寄って言った。

 

「これは内密の情報なのですが、現在例のものがそろそろ完成するとの情報がCIAから入りました」

 

「例のものだと、まさか!」

 

小声で言った大佐の言葉に、デーリングは驚きの表情を浮かべる。

 

「ええ、そのまさかです。これさえあれば、日本やイギリスを相手取ったとしてもうまくいきますよ」

 

「....そうか」

 

その言葉を聞いて不敵な笑みを浮かべた大佐は、さよならとだけ言ってその場を去っていった。

 

 

 

 

〜〜スコットランド/アーガイル・アンド・ビュート〜〜

 

ナオキと出かけてから2日がたち、ステファニーは特殊海軍第1艦隊司令長官のアンドリュー・ヴァレリー中将と共に輸送機で目的の場所へと向かっていた。

 

向かっている目的は、彼女が艦長となる戦艦[ヴァンガード]の改装が終わったので、それを見に行くためであった。

 

そんなわけで、2人はホーカー・シドレーHS.125輸送機でカーネクトン空軍基地まで向かい、そこからは車で目標を目指した。

 

「ついた。ここだよ」

 

しばらくして、着いた彼女は後部座席から降りて周囲を見渡した。辺りは森林で覆われており、木々の隙間からは軍艦や港湾施設が横たえてるのが見える。ここはスコットランドに置かれたクライド海軍基地と呼ばれる場所で、元々英海軍と共用で置かれた基地であった。

彼女は元々この場所に[ヴァンガード]がいると知らされてここまで来ていた。

 

「あれ、ここに戦艦みたいな艦艇いなくないですか?」

 

ふと違和感を感じたステファニーはヴァレリーに対し聞く。たしかに、桟橋や岸に係留された艦艇は潜水艦やフリゲートばかりで、大型艦の姿はない。

 

「そうだね。この洋上に君の乗る艦はいない。こっちをご覧?」

 

そう言って彼は懐から長方形の箱のようなものを取り出し、設けられていた顔や指紋、番号によるロックを解除する。

それと同時に、道路沿いの地面から電話ボックスのような箱が瞬時に迫り上がってきた。

 

「え!?なんですこれ」

 

いきなり出現した物体に彼女は呆気に取られて驚く。

 

「ほら、こっちだ。ここに入ればつくぞ」

 

その彼女を見てクスッと笑ったヴァレリーはそのまま箱の中に入る。ステファニーは驚きながらも彼に続いて中に入った。

箱はそのままエレベーターの要領で地下へと降下を開始する。

 

(まさかこんな設備があったなんて....)

 

彼女は感心した様子でその場に立っていた。箱には窓がついてないから外部の様子はわからなかったが、長い時間と感覚からかなり地下まで下がっているような気がした。

しばらく降下した後、感じた揺れが止まりドアが開いた。

2人はそのまま箱の外に出る。

 

「ここは…?」

 

「ここは、クラウド海軍基地の地下ドックだ。ここの艦艇ドックは土台がスライドして海上に出れるようになっていて、軍港に向かい合うような形で出入り口が置かれている」

 

「はぁ…なるほど…」

 

彼女らのいる場所は10km四方もの空間が広がっており、10を軽く超える整備ドックや、それを海上に出すための回転板付きエレベーターが斜めに配置されていた。艦艇は大小様々、比較的新型と思われるフリゲートや駆逐艦から半世紀前の小型艦まで揃っている。 

 

正直、この光景に彼女は驚きすぎて終始唖然としていた。

クラウド海軍基地は英海軍と特殊海軍の共用であり、原潜の根拠地として機能していたりと、冷戦期からかなり機密性の高い場所として運用されていることで知られている。

その話は以前よりステファニーも聞いていたが、まさか地下にまで軍港を隠しているとは思いもよらなかった。

 

「さ、[ヴァンガード]はこっちの方向にいる。ついてきてくれ」

 

そう言って、ヴァレリーはある方向へ向かった。ドックが並ぶ中をしばらく歩いた後彼は立ち止まる。

 

「君の乗るヴァンガードはそこにいるよ」

 

ヴァレリーはそう言ってある方向を指差す。彼女もそれに続いて指された方向に顔を向けた。

 

「これが、あのヴァンガードですか?以前聞いたものとは違うように見えるのですが…」

 

ステファニーは面食らった表情でその艦を見つめた。

 

目の前にいる艦は、彼女が以前教えられた[ヴァンガード]の外観とはかなりかけ離れていた。主砲塔の形状がまず違うし、ミサイルや副砲なども現代的な形状に変えられるように感じる。

 

「そう見えるのも無理はない。こいつは急ピッチでドック入りと共に大改装を行っていてね、主砲は最新式のMK.101に、他の兵装も最新式のものに更新されてある」

 

「しかし、戦艦を今でも保有するのはわかりますが…わざわざここまで改装する意味があったのですか?」

 

それを聞いたヴァレリーは、これを見てくれと言って写真を取り出した。写真には地上に置かれた戦車や装甲車が写っている。

 

「これはアイルランドの港町で撮られたものだ」

 

「ですね....でもあれ、アイルランド軍は戦車とか持ってましたっけ?」

 

「いや、持っていない。その点から、MI6やSFIDはクーデターの前兆の可能性があるとにらんでいる」

 

「クーデターって!?まずいじゃないですか」

 

ヴァレリーは彼女の言葉にこくりと頷いた。

 

「そういうことだ。もしかしたら、この[ヴァンガード]もすぐに出撃せねばならないかもしれん」

 

真剣な顔で言う彼の言葉に、ステファニーはかなりの緊張を覚えた。

 

そうしている間にも、各地では不穏な活動が動き始めていた。

 

 

〜〜イギリス/ロンドン特別区〜〜

 

夕方、ナオキは自室で夕飯の準備をしていた。もうすぐ海軍に復帰できることや、初めて艦長職をできることから、彼の気持ちはそれなりに良かった。

彼はそろそろニュースの時間かなと思いテレビをつける。

ところが、テレビにはニュースは映らず、画面に一瞬ノイズがかかったあと1人の男性が画面に映る。

 

『やぁ、英国の国民諸君。私は北アイルランド自由軍という組織のものだ。唐突で悪いが現在アイルランド首都ダブリンは我々の手に落ちている』

 

「え、おいおいまじかよ!?」

 

驚いた彼は、慌てて手に持った皿を落としそうになって体勢を崩してしまった。

そして、そんなこともお構いなしに画面に映る男性は続けた。

 

『そして、我々自由軍はアイルランドの自由のみならず、北アイルランドの自由を獲得するため、英国に対し宣戦を布告する』

 

 

 

同時刻、北アイルランド国境部をT55の履帯が叩き、航空機や野戦砲が轟音を響かせた。

 

かくして、第二次アイルランド紛争はその火蓋を切った。

戦車の名前だと何がいい?

  • モントゴメリー
  • トライアンフ
  • ヴェネラブル
  • ブラックタイガー
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