日本国最後の幸運艦 外伝[大西洋の死闘]   作:刀持ちの烏

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寒すぎてずっと家に篭ってます。刀持ちの烏です。
ゆったりとしたペースにはなりますがこれからも頑張って小説書いていきます!!


Episode9 開戦初日

 

〜〜〜ウェールズ/グヴィネズ州〜〜〜

 

ロンドンから見て北西、カーディガン湾とリヴァプール湾に挟まれるような場所に、そこそこの大きさの山がその身を横たえている。

 

それが、戦時に英国軍総司令部が置かれるスノードニア空軍基地であった。

 

関係者やミリタリーマニアの人々からは、この場所は「ウェールズ要塞」などという二つ名で呼ばれるが、その外観は石と草ばかりが目立つ山のようにしか見えない。それもそのはず、その司令部機能は山の外ではなく内側にあるのだ。

 

この基地は、冷戦期真っ只中の1960年代後半にイギリス軍と特殊軍の共同で建造が開始された。

その建造目的は核戦争が起こった時の司令部として使うためであり、そのために司令部機能は地下に置かれ、さらにその外壁も分厚いコンクリートで固めていた。

さらに、この基地にはいざという時の弾道ミサイルサイロをはじめとする実戦装備も配置されていた。ブラッドハウンドMK.4中距離地対空ミサイルや対艦ミサイルが格納され、近距離防空用のレイピア地対空ミサイルがあちこちに配置され、カモフラージュネットで隠されていた。

この手の基地がこのような装備を施されているのは、日本の75年計画で建造された列島要塞群以外他になく、その点においてこの基地は「ウェールズ要塞」という名に相応しいと言えた。

 

とはいえ、今まで本土が直接危険が晒されるような事態がなかったため、この基地が大規模に稼働するようなことは今まで起きなかった。

 

 

 

しかし今、このスノードニア空軍基地は慌ただしく稼働していた。第二次アイルランド紛争の開戦とともに本土が危険だと悟った司令部は、その機能をこの基地へと移動させていた。

 

「状況はどうなっているんだ?」

 

焦りを感じるような声で、英国軍総参謀長のライオネル海軍大将は参謀長に対して聞いた。

 

「現在、敵軍はベルファストの目と鼻の先まで迫りつつあるとのことで、戦局は芳しくないと....」

 

「北アイルランドにいた特殊軍第3師団と第15師団はどうしたんだ?」

 

「どうやら、敵戦車の猛攻とアメリカからの義勇軍の攻撃により、両師団とも押され気味なようで....予備の部隊を参加させても戦線を維持できないとのことです」

 

厄介だな、と言ってライオネルは顔をしかめた。常に何か悩ましげに感じる彼の表情は、今やひどく疲れているように感じられる。

 

現在、強襲揚陸艦[サイパン]、[ナッソー]らに輸送された義勇軍と、密輸された東側兵器で武装した北アイルランド自由軍によりアイルランド領土の大半が制圧されており、ダブリンのアイルランド政府も拘束されていた。

 

少し考えた後、ライオネルは参謀長に対して聞く。

 

「そういえば、海軍と空軍は今どうなっているのだ?すぐに動ける部隊があれば教えてもらえるとありがたいのだが」

 

「海軍だと、第5空母打撃群と第1戦艦戦闘群がすぐに動けるようです。あと一隻だけですが第1防空戦闘群の巡洋艦が参加できるようです。空軍に関しては巡航ミサイル攻撃などで混乱しており、あまり戦力を回せないようです」

 

ライオネルはなるほどと頷いてから言った。

 

「よし、先ほど言った海軍の部隊の人たちを呼んでほしい。これから作戦会議を始めたい」

 

〜〜〜スコットランド/クライド海軍基地〜〜〜

 

まさか、こんなことになるなんてなぁ…

 

艦長たちによる作戦会議が終わって数分後、いまだに状況を掴みきれないまま、ナオキは乗せられたランドローバー[ディフェンダー]に揺られてクライド海軍基地へ向かっていた。

言わずもがな、その目的は北アイルランド自由軍と戦うため、彼が砲雷長を務めるカウンティ級駆逐艦[シュロップシャー]をすぐ稼働させるためであった。どうやらついて早々に出航するようで、車の速度も早めにしている。

 

目的地までつくと、車を途中で降り、彼は以前ステファニーが体験したのと同じ手順で地下ドックまで案内された。

地下まで降りたナオキは、さっそく[シュロップシャー]まで案内され、艦長室でブッシュ中佐と出会った。彼はもともと[ベッドフォード]の艦長を行っていたが、前回の潜水艦戦での功績を認められたため[シュロップシャー]へと配置が変わっていた。

 

「ようこそ[シュロップシャー]へ。歓迎するよ」

 

中佐はいまだに眠気の覚めない表情をしつつも、きちんとした格好で彼と握手した。ナオキもすぐに挨拶を返す。

 

「よろしくお願いします中佐。噂は友人から聞いております」

 

「君の友達に私を知ってる人がいるのか?」

 

ほう、といった表情を浮かべてブッシュは尋ねる。

 

「元々あなたの艦で航海長をしていたケッペルという者です」

 

「ああ、彼か。あの時はよくお世話になったな。彼は[アナン]の方でも元気かい?」

 

「ええ、フリゲートよりも大きい分、楽にできていいと言ってました」

 

そこまで言うならだったら安心だな、と呟きブッシュは頷いた。

その後すぐに表情を切り替える。

 

「よし、雑談はこれまでにしてそろそろ作戦の話といこうか」

 

「ですね」

 

ナオキも真面目な表情をしてブッシュ中佐の言葉に頷く。

 

「現在、敵軍は初動において迅速に行動し、わずかな時間でアイルランド主要部や北アイルランドの大部分を占領してしまった。なぜできたと思う?」

 

「そうですね....アメリカからの義勇軍の存在ですか?」

 

そう言ったナオキにブッシュは軽く頷く。

 

「それもあるね。ただ、もっと厄介な点がある。それは敵がすでに制空権をとっていると言う点だ」

 

「たしか、敵は密輸などでかなりの量の航空機を持ってるんでしたっけ?」

 

ナオキは、クライド海軍基地に来る前にテレビやケッペルからの話で聞き及んでいた情報からそう返答した。 

 

それらの情報によれば、今現在自由軍はF-7やCy-22M4をその主力としていた。前者は中国がMig-21をライセンス生産したJ-7戦闘機の輸出型であった。保有してる大半は中国から密輸されたものであるが、その裏ではアメリカやロシアが部品提供に一枚噛んでいるとの噂もあった。後者も前者と同じく輸出型で、ソ連時代にソ連が開発したSu-17を元にしたものであった。

 

両者はそれぞれ制空権確保や航空支援でイギリス軍を大いに苦しめていた。

 

「うん、そうなるな。その多数の機体をなんとかしない限り、この戦争を楽に終わらせることはできない。そこで、我々の出番が来るわけだ」

 

ブッシュはそう言うと、部屋に立てかけていた地図を手に取って机に広げた。

 

「現在、敵が押さえている飛行場はダブリンの2つと、チャールズタウンの1つだ。そのうち、チャールズタウンは交通の便が悪く航空機を搬入しづらいので、必然的にダブリンへ航空戦力が集中するようになる。一応、洋上にアメリカの強襲揚陸艦もいるけど、そっちはほとんど機体を持ってきてないようだから除外することとする」

 

「となると....つまりダブリンを敵から奪い返すってことですか?」

 

ナオキの言葉に、ブッシュは再びそうだねと言った。

 

「そのダブリンを奪還する手順としては、手始めにデヴォンポートを出発した第5空母打撃群が飛行場を破壊。その後に我々第1戦艦戦闘群に護衛された揚陸部隊がダブリンに上陸する、ということとなっている」

 

「ふむ、思ったのですが空軍は参加しないのですか?」

 

「ああ、空軍はね..北米の一件があってから一部航空団をカナダに移送し始めててね、さらに巡航ミサイルによる攻撃もあったから、本土防空で手いっぱいになってるのが現状だ」

 

そう言ってブッシュは苦い顔をした。ナオキもそれを聞いてなんとも言えない表情になる。

 

空軍が本土防空にしか使えない現状、揚陸部隊の護衛も第1戦艦戦闘群に委ねられているといっても過言ではなかった。それは、作戦を成功させる上でとても重大な任務だと言えた。

 

 

 

戦車の名前だと何がいい?

  • モントゴメリー
  • トライアンフ
  • ヴェネラブル
  • ブラックタイガー
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